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持続可能なまちづくりを目指す自治体をサポート。「SDGsデジタル社会推進機構」事務局長インタビュー

持続可能なまちづくりを目指す自治体をサポート。「SDGsデジタル社会推進機構」事務局長インタビュー

2015年9月に国連で国際目標として採択された「SDGs」。それから約6年が経過し、SDGsへの取り組みは、日本政府を中心に、企業・自治体・各種団体・個人に浸透してきています。

そのような中、「新しい未来をデジタル社会の推進で」をスローガンに、一般社団法人SDGsデジタル社会推進機構が2021年7月1日に活動を開始し、ソフトバンクもSDGsデジタル社会推進機構の会員企業として参加しました。SDGsデジタル社会推進機構がどんな活動を目指しているのか、事務局長の木暮祐一さんに話を伺いました。

木暮祐一(こぐれ・ゆういち)

一般社団法人SDGsデジタル社会推進機構 事務局長 木暮祐一(こぐれ・ゆういち)さん

出版社勤務、携帯電話情報サイトの編集長などを経て、2013年から青森公立大学経営経済学部地域みらい学科の准教授に。2008年からSDGsデジタル社会推進機構の前身一般社団法人ブロードバンド推進協議会に参加し、利活用部会長として地方でのICT利活用推進のための活動に従事。日本有数の携帯電話コレクター

SDGsデジタル社会推進機構とは

一般社団法人SDGsデジタル社会推進機構は、ブロードバンドの普及・啓発を目指して2003年に発足した一般社団法人ブロードバンド推進協議会(略称:BBA)を前身として設立されました。
最先端技術によるビジネスの創出に貢献すべく、有望なベンチャーの育成や、教育機関・政府自治体との研究、啓発活動に取り組んできたBBAの活動を基盤に、今後は地域におけるSDGsおよびDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進とデジタル技術の社会実装の支援に産官学民連携で取り組んでいきます。

BBAからODSへ

地方は「地方創生」を求めているのか?

地方は「地方創生」を求めているのか?

政府は「SDGs実施指針」の中で地域社会の活性化を優先課題のひとつとして挙げており、人口減少が進む地域での、暮らしの維持など、地方創生はSDGsをベースにした持続可能なまちづくりを通した地域活性化が大きな課題です。

地域創生が叫ばれて久しい昨今ですが、地域・地方の課題や現状をどのように見ていますか?

木暮「少子高齢化による人口減少は日本が抱える大きな問題ですが、地方の地域社会こそ、その影響の大きさを実感しています。単に経済面での影響だけでなく、地域からサービス産業の撤退が進めば、生活に必要な商品やサービスを入手することが困難になり、日々の生活が不便になるのは明白です。分かりやすい事例では、赤字で維持が困難になった鉄道やバス路線が廃止されていけば、その路線にあった集落は衰退しかありません。そこを何か新しいアイデアで解決していかなくてはなりません」

そういった課題に対して、各地域はどのような取り組みをしているのでしょうか?

木暮「最新のテクノロジーを導入して劇的に変わるのは、都市部ではなく地方地域だと思います。各地域もICT活用の重要性はわかっていますが、何をどう取り入れていいのかわからない。解決すべき課題は多岐にわたるため、どこから、どう手をつけていいのか? どんなところと手を組んで一緒に進めていけばいいのか? ノウハウも含めて、わからないところが多い」

地方創生に関する取り組みは、すでに多くの事例があるイメージなのですが…。

木暮「2013年から青森に住むことになり、地方の地域社会で実際に暮らし、地域活性化に向けた実践活動を行ってきて考えたことは、『地方は地方創生を求めていない』ということです」

それは、どういう意味でしょうか?

ていねいな支援で、各地方・地域に合った「地方創生」を

木暮祐一(こぐれ・ゆういち)

日本全体の社会課題を地方地域に当てはめ、インフラが整備されている都市部の価値観から、「地方は困っている」と先入観を持って、上から目線で「地方創生」を考えるケースが多いのではないか? 木暮さんは、自身が地域社会に暮らすなかで、これまでの地方創生のやり方に疑問を感じていたといいます。

木暮「私が住んでいた青森県内だけでも、いくつか地域性があって文化や人々の考え方などに大きな違いがある。地域には地域のやり方があります。従来は、『経済発展は喫緊の課題なのだから、それをもたらす施策は正義であって、地元に歓迎されるべき』と思い込んでいる地方創生の取り組みがあったのでは? 地域に根付いた実態、実情を理解していなければ、本当に地域に貢献できる『地方創生』はできません」

具体的にどのようにやるのが良いと思いますか?

木暮「辞書で調べると『創生』の意味は、『初めて生み出すこと。初めて作ること』とあります。しかし実際の地方の地域では、新しいことを望んでいるわけではありません。むしろ他の先行事例を参考に、一方的に押し付けるような提案ではなく、考え方、技術、サービスがその地域に合わせたやり方でうまく入り、地元の人たちと一緒にICT活用を進めていくのが重要。もちろん地方でICTをうまく導入・活用するにはさまざま支援が必要ですが、地方は求めていることに対して、外部からの支援とうまく関わりを持つことを模索しているのです」

地方創生にはさまざまなアプローチの仕方があると思いますが、SDGsデジタル社会推進機構はどのような役割を担うのでしょうか?

木暮「長く地域でのICT利活用とその定着の取り組みをする中で、ICTを使った地方創生を担う専門の団体が必要だと考え、SDGsデジタル社会推進機構を発足しました。地方公共団体と足並みそろえていくためにSDGsデジタル社会推進機構は中立性が重要です。それを保ちながら、公務員、地方自治体、地域の企業や団体、情報通信企業に参加いただき、同じ土俵で議論する場を提供し会員同士をうまくつなげていきたい。やりたいけどICT化の方法がわからないという、地方で一生懸命やっている自治体や企業をそれぞれの立場に寄り添って支援し、持続可能な地域づくりに取り組みたいと考えています。特に優れた先行事例を共有し、地域の実情に合わせて横展開していく仕組みづくりが重要と考えます」

志を一緒に。自治体と自治体を支援する企業や団体をつなぐプラットフォームを目指す

研究会で講演した、伊那市役所 企画部 企画政策課 新産業技術推進係長 安江 輝氏(上段左)元佐賀県CIO/キャリアシフト株式会社 代表取締役 森本 登志男氏(上段右)

研究会で講演した、伊那市役所 企画部 企画政策課 新産業技術推進係長 安江 輝氏(上段左)元佐賀県CIO/キャリアシフト株式会社 代表取締役 森本 登志男氏(上段右)

SDGsデジタル社会推進機構は第1回目となる研究会を7月29日にオンラインで開催。冒頭、同機構の代表理事を務めるソフトバンク株式会社 青野史寛 専務執行役員 兼 CHROがあいさつし「SDGsデジタル社会推進機構は、産官学民共同の課題解決の場です。新しい未来をデジタル技術で切り開き、SDGsの開発目標にのっとって、持続可能な地域社会の実現に向けて活動していきたい」と今後の活動について抱負を述べました。

  • Chief Human Resource Officer(最高人事責任者)

「地域でイノベーションを起こす自治体の先進事例とそれを実現させる組織、職員、地域とは」と題した研究会では、長野県伊那市と佐賀県での地域振興やICT活用の取り組みについて、それぞれの担当者が講演し、200人以上がオンラインで聴講。講演後はICT化推進に欠かせない議会対応のコツや、ICT導入の有効な手段など多様な質問が相次ぎ、SDGsデジタル社会推進機構が目指す情報共有の場として活用されました。

司会進行を務めた木暮事務局長は「2021年9月からデジタル庁がスタートします。SDGsデジタル社会推進機構は、国の動きや方針を注視しながら、これを地域社会の転換にしていくためにも、会員企業、自治体、有識者をつなぎ、産官学民協働で地域社会の問題解決に取り組む『プラットフォーム』として活動していきたい」とし、デジタル技術をうまく取り入れながら、地方を魅力的かつ住みやすい地域にするため、SDGsを活用した地域づくりに貢献すると語りました。

ソフトバンクのサステナビリティ

サステナビリティ

今回の紹介した内容は、SDGsの目標「1、8、9、11、17」に対し、「DX(デジタル・トランスフォーメーション)による社会・産業の構築」に貢献することで、SDGsの達成と社会課題解決を目指す取り組みの一つです。

課題解決への取り組み

(掲載日:2021年8月13日)
文:ソフトバンクニュース編集部