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企業が食品ロスに取り組む意義とは? フードシェアプラットフォーム「KURADASHI」創設者が語る ー食品ロス問題にイチから向き合う【後編】

企業が食品ロスに取り組む意義とは? フードシェアプラットフォーム「KURADASHI」創設者が語る-食品ロス問題にイチから向き合う Part.2

SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」によって、「食品ロス問題」が大きく注目を集めるようになりました。私たち消費者は、この問題に対して、どのようにアプローチしていけるでしょうか?

今回は、企業が取り組む食品ロス解決のサービスとして、社会貢献型ショッピングサイト「KURADASHI」を紹介。SBロジスティクスと提携し無駄な中間輸送を無くすことで、脱炭素にも取り組んでいます株式会社クラダシ(以下、クラダシ)代表取締役の関藤竜也さんに、サービスの仕組みや社会的意義、これからの食品業界のあり方について語っていただきました。

  • SDGsの目標12「つくる責任 つかう責任」をこちらの記事でわかりやすく解説しています。

目次

関藤 竜也(せきとう・たつや)さん / 株式会社クラダシ代表取締役社長

関藤 竜也(せきとう・たつや)さん / 株式会社クラダシ代表取締役社長

1995年、総合商社に入社。戦略的コンサルティング会社の取締役副社長を経て、国連でのSDGs採択の1年2か月前となる2014年7月に、株式会社クラダシを創業。

社会貢献型ショッピングサイト「KURADASHI」

社会貢献型ショッピングサイト「KURADSHI」はどんなサービス?

KURADASHIのミッションや企業理念を教えてください。

当社は「ソーシャルグッドカンパニーでありつづけること」をミッションに掲げています。社会課題は時代に応じて形が変わっていき、常に変化しています。当社は、社会性・環境性・経済性に優れた活動を同時進行し、そのような社会課題をビジネスの力で解決していきたいと考えています。

KURADASHIは「三方よし」のフードシェアリングプラットフォームといわれていますが、その仕組みを教えていただけますか。

「誰一人取り残さない」というSDGsの目標の文脈で考えると、KURADASHIは「誰もが参加できるSDGsサイト」です。消費者が食品を安く購入でき、購入代金の一部が社会貢献活動に寄付される点がKURADASHIの特徴。支援先は、環境保護、海外支援、社会福祉、災害対策、医療、動物保護、地方創生、フードバンクなどさまざまです。

また、メーカーをはじめとする協賛企業にとっては、食品ロスを減らすだけでなく、SDGsに積極的に参加することで企業価値を上げることにもつながります。NPOなどの団体は、寄付を受けることで事業を回していくことができます。このように、KURADASHIは、食品ロス削減のみならず社会課題を解決していくプラットフォームを構築しています。

社会貢献型ショッピングサイト「KURADSHI」はどんなサービス?

KURADASHIを利用することで、どのぐらいの食品ロス削減につながったのか利用者が確認することはできるのでしょうか?

会員登録をし、商品を購入するとマイページで食品ロスの削減量と支援総額が確認できるようになります。

社会貢献型ショッピングサイト「KURADSHI」はどんなサービス?

どれだけ貢献できたか、社会のためにどう使われたか、パッと見てわかるんですね!どのような人に利用してほしいですか?

やはり、子育て世代ですね。実際のユーザーも、30〜50代がメイン。子どもの未来を考えると、大人がまず食べ物を粗末にしないよう意識や行動を変えていかなければなりません。とはいえ、意識や行動の変容を促すのはなかなか難しいもの。

社会課題を解決するには「お得」「楽しい」「人のため」「なんかいいね」といった雰囲気づくりが大切だと考えています。「KURADASHIでPTA用のお茶菓子を買ったことで、食品ロスや食育、SDGs教育を考えるきっかけになった」というユーザーの声を聞くことがありますが、日常の何気ない会話に食品ロスの話題が出てくるようになるといいなと思いますね。

KURADASHIでは、さまざまな人が楽しめるよう季節や時期によって食のキャンペーンを行い、無意識的に社会貢献できる仕組みを作り出している

KURADASHIでは、さまざまな人が楽しめるよう季節や時期によって食のキャンペーンを行い、無意識的に社会貢献できる仕組みを作り出している

サービスが生まれた理由がココに。日本の食品業界の課題

食品業界で大量廃棄・余剰生産が起こる理由として、どういったことが挙げられますか?

日本の食品業界には、「3分の1ルール」という「製造してから賞味期限までの3分の1の期間に商品を納品する」という暗黙の商習慣があります。例えばアメリカでは2分の1、イギリスでは4分の3と国によって期限が異なります。最も精度が高いのは日本ですが、言い方を変えれば寛容性が低く、ロスが出やすい仕組みになっているんですね。

また、印字ミスやラベルがめくれているなどパッケージの不備への寛容性も、日本が一番低い。その根底にあるのはお客さま第一主義という思想。納期が過ぎてしまったり、パッケージに不備がある食品は、ディスカウントか廃棄の2択しかありません。

年間約1/3の食料が廃棄されている

年間約1/3の食料が廃棄されている
出典/農林水産省・環境省調べ、FAO、総務省人口推計(2017年)

そのような問題を解消するために、「KURADASIH」はどのような役割を担っているのでしょうか?

日本の食品のEC化率は2.7%程度と、他業界に比べてかなり出遅れています。その理由は「事業者への信頼性がないと口に入れるものは買えない」といった消費者心理から、「商品が安価なため配送料のほうが高く流通コストが見合わない」といったものまでさまざまです。
ディスカウントか廃棄ではなく、「KURADASHIに卸す」という流通の選択肢を増やすことで、毎年数億円かかっている食品の廃棄にかかるコストやエネルギー消費の削減につながります。

KURADASHIのサイトでは、食品ロス削減数、CO2削減数、経済効果が数値化され、視覚化されている。社会貢献度が一目瞭然のため、生産者、消費者双方に大きな指針となっている

KURADASHIのサイトでは、食品ロス削減数、CO2削減数、経済効果が数値化され、視覚化されている。社会貢献度が一目瞭然のため、生産者、消費者双方に大きな指針となっている

「KURADASHI」が描く食品流通の未来

喫緊で取り組んでいるプロジェクトがあれば教えてください。

ソーシャルグッドカンパニーとして社会貢献活動を自ら行うために「クラダシ基金」を立ち上げています。集まった基金は、地方創生事業、フードバンク支援事業、災害対策支援事業、SDGs教育事業の4つに充てられます。

例えば、地方創生事業では、社会貢献型インターンシップ「クラダシチャレンジ」として、地方の農家に学生を派遣。クラダシ基金から交通費、宿泊費、食費、保険代などを拠出して、種子島にサトウキビの収穫に行ってもらうなど、人手不足による農作物の未収穫を防ぎます。収穫した農作物はKURADASHIで販売して、農家の売上を向上しつつ売上の一部をクラダシ基金に還元し、それを次のインターンシップの派遣費用にあてる循環型の事業となっています。

ソフトバンクのつながる募金を通じて、クラダシ基金に協力できる!

ソフトバンクのつながる募金を通じて、クラダシ基金に協力できる!

つながる募金とは、ソフトバンクの iPhone、スマートフォンをご利用のお客さまが、募金を継続して携帯電話利用料と一緒にまとめてのお支払いやTポイントでもお支払いいただける募金プラットフォーム。2021年4月、クラダシ基金はこの「つながる募金」の利用を開始し、SoftBankのスマートフォンやパソコンからでも簡単に寄付が可能になりました。ソフトバンクは、「つながる募金」を通じてクラダシ基金が取り組んでいるクラダシチャレンジやフードバンクのマッチングなどの社会貢献活動を支援しています。

若者世代のSDGs教育としても、いい取り組みですね。

社会課題解決は、明るく楽しく元気良くやらなければ持続性がないと思っています。これから社会に飛び立って行く学生に、インターンシップを楽しみながら日本の現状を見てもらい、関心を持つ人を増やすことも、この事業の目的のひとつですね。

クラダシチャレンジは2018年から展開をしていて、自治体と連携協定を結んでいます。いまは学生だけですが、今後はシニアチャレンジも展開していきたいと考えています。食品ロスや空き家問題など、「もったいない」を価値にする事業を増やしていきたいですね。

「KURADASHI」が描く食品流通の未来

(掲載日:2021年10月26日)
文:佐藤由衣
編集:エクスライト