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次世代電池の早期実用化を加速。「ソフトバンク次世代電池Lab.」現地見学会リポート

次世代電池の早期実用化を加速。「ソフトバンク次世代電池Lab.」現地見学会レポート

中央に六角形の建物が並んでいるのが印象的ですね。ここは宇都宮から車で20分ほどの場所にある、エスペック株式会社のバッテリー安全認証センター・宇都宮試験所です。

近い将来やってくるであろうデバイス革命を見据え、ソフトバンクでは次世代電池の開発に取り組んでいる中、その研究をさらに加速させるため、この一角に「ソフトバンク次世代電池Lab.」が設立されることが2021年3月に発表されました。設立から5カ月がたつ、ラボの見学会に参加してきました。

安全性・信頼性に優れた試験設備と技術により、次世代電池の研究開発を支えるラボ

充電と放電を繰り返して使用できる、バッテリーなどと呼ばれる二次電池。現在はリチウムイオン電池が主流ですが、高エネルギー密度化(軽量化)や寿命、安全性、コストなどを大幅に改善した次世代電池は、進化するデバイスを支えるために必要不可欠なものです。

安全性・信頼性に優れた試験設備と技術により、次世代電池の研究開発を支えるラボ

ソフトバンクは、半分の重量で同じエネルギー(Wh、ワットアワー)になる電池、つまり高質量エネルギー密度の電池の開発を目指しています。高エネルギー密度な電池を作るため、次世代400~500Wh/kg(最大550Wh/kg)クラスの電池の実用化や、さらに高エネルギー密度な次世代600~1000Wh/kg(最大1000Wh/kg)クラスの実現を目指し、設立されたのが「ソフトバンク次世代電池Lab.」です。

安全性・信頼性に優れた試験設備と技術により、次世代電池の研究開発を支えるラボ

なぜソフトバンクが次世代電池を開発するのか?背景や戦略に関する詳細はこちら

「空飛ぶデバイスに搭載できる電池」が現在のターゲット。数年後の実用化を見据えた次世代電池の開発状況

「空飛ぶデバイスに搭載できる電池」が現在のターゲット。数年後の実用化を見据えた次世代電池開発状況

ソフトバンクが電池の研究開発を始めたのは、HAPS事業において、より軽量かつ高用量の電池を必要としたのがきっかけです。電池は容量を増やそうとするとその分重くなるため、飛ばすのによりエネルギーが必要になり、高度が不足したり、飛行時間が短くなるという課題がありました。一方、車載などEV用電池に要求される寿命が1000サイクル(充電してから放電するまでが1サイクル)に対し、ドローンやHAPSでは200サイクルほどでも許容されます。そのため、まずは質量エネルギー密度を向上させて、その後長寿命化が実現できたらスマートフォンやEVへ展開するという、大胆な戦略で研究開発が進められています。HAPS向け電池からスタートした研究は、現在、小型の宅配ドローンや人を乗せるドローンタクシーなど、あらゆる空飛ぶデバイスに向けて拡充しています。

「空飛ぶデバイスに搭載できる電池」が現在のターゲット。数年後の実用化を見据えた次世代電池開発状況

次世代400~500Wh/kg(最大550Wh/kg)クラスの電池は実用化まであと数歩

次世代400~500(最大550Wh/kg)クラスの電池は数年後の実用化まであと数歩

現在開発されている次世代400~500Wh/kg(最大550Wh/kg)クラスの電池の1つに、Enpower Greentech Inc.と共同で開発した電池があります。質量エネルギー密度450Wh/kgの実証に成功し、電池を構成する各材料をさらに最適化した結果、520Wh/kgのセル(蓄電池の最小単位)作製に成功しました。現在は将来の実用化を目指し、充放電を繰り返して劣化具合をみる、「寿命試験」が行われています。

電池の単位
セル 蓄電池の構成単位の1つで、単電池ともいう

セルの例

セルの例

モジュール セルを複数重ねたもので、組電池ともいう

モジュールの例

モジュールの例

520Wh/kgの実セル作製の実証成功により、次世代400~500Wh/kg(最大550Wh/kg)クラスの電池の完成は見えつつありますが、さらなる軽量化も模索しており、ソフトバンク次世代電池Lab.では、負極の集電体で置き換え可能な材料として検討されている「次世代樹脂箔」の開発が進められています。

次世代400~500(最大550Wh/kg)クラスの電池は数年後の実用化まであと数歩

次世代樹脂箔は、銅を薄く伸ばした銅箔と見た目は変わらないように見えますが、持ってみると重さの違いがわかり、ひらひらとしてフィルムのようです。この樹脂箔を実用化するための技術が実現できると、より軽量になり電池の安全性も高まると期待されています。

次世代樹脂箔
銅箔

次世代樹脂箔(左)と銅箔(右)

より高度な電池、次世代600~1000Wh/kg(最大1000Wh/kg)クラスの研究も進行中

現地説明会では他に2つの研究について報告がありました。これらはさらに高質量エネルギー密度を実現するための取り組みです。

高質量エネルギー密度に向けた全固体電池用正極材料

高質量エネルギー密度に向けた全固体電池用正極材料

現在の二次電池の電解質には液体が使用されていますが、耐熱温度が低く、衝撃で発火するリスクがあるため、安全性を考慮すると、将来的には固体電解質を使った「全固体電池」の開発が必要と考えられています。東京工業大学と住友化学株式会社との共同研究では、固体電解質と組み合わせる新たな正極材料を開発し、これまでの正極材料を大きく上回ることができました。

全固体電池で1000Wh/kgを目指す

固体電解質は電解液に比べて重くなりますが、安全性が高まる分、より大きな電圧をかけることが可能。また、軽量化に適したバイポーラ構造にも適していると考えられており、高度な電池の実現が期待されています。

全固体電池で1000Wh/kgを目指す

機械学習を用いた材料探索手法のMI(マテリアルズ・インフォマティクス)による有機正極材料の性能モデルの開発

機械学習を用いた材料探索手法のMI(マテリアルズ・インフォマティクス)による有機正極材料の性能モデルの開発

次世代600~1000Wh/kg(最大1000Wh/kg)クラスの電池を実現するには、レアメタルが使われている現在の正極材料を有機材料に変更する必要があると考えられています。しかし、材料の候補はなんと10の60乗(1那由多=1兆の4乗)個も存在するそうで、その中から適切な材料を特定するのは大変な作業。慶應義塾大学との研究では、少ない文献を使用しながら精度の高い結果が得られる予測モデルを作成し、1000Wh/kgを目指せる有機物質を特定することができました。今後はその材料の合成をし、電池作製の研究に進んでいくそうです。

世界中のさまざまな次世代電池が集結する最前線拠点「ソフトバンク次世代電池Lab.」

10年、20年先を見据えた研究開発が行われる「ソフトバンク次世代電池Lab.」。早速中へ。ゴーーーッという音がしている部屋に、大人の背の高さほどの機器がずらっと並んでいます。電池の充放電試験設備です。ここではさまざまなメーカーの次世代電池を集め、性能評価が行われています。

2021年12月現在、恒温槽は15台

2021年12月現在、恒温槽は15台

設備は大きく分けて3つ。業務用冷蔵庫のような銀色の箱の「恒温槽」と、恒温槽とケーブルで接続された「充放電機」と「電気化学測定システム」が設置されています。

恒温槽(こうおんそう) 内部の温度をコントロールする装置。さまざまなメーカーの電池を同一条件で評価することが可能。また、電池は温度の高低により性能が変わるため、温度を変化させての評価も実施。
ガス・熱検知器があり、万一のイベント(発火等)発生時も安全を保てるようになっている。
充放電機 ケーブルを介して恒温槽内の電池に電流を流す装置。「ソフトバンク次世代電池Lab.」では、電圧・電流の違いにより機器を使い分けている。
電気化学測定システム 電池の抵抗の値を測るなど、内部の細かい分析を行う装置。

電池の性能は各メーカーから発表されていますが、それぞれの電池が最も性能を発揮できる環境下での数字のため、一様に比較することが困難です。そのため、環境をそろえて評価することが非常に重要になります。

評価している次世代電池の一例

評価している次世代電池の一例

恒温槽の中はこのようになっており、セル(蓄電池の最小単位)の電池が入っています。最大8つのセルを同時に試験できるそうです。

Enpower Greenteck Inc.の520Wh/kgの電池の寿命試験中

Enpower Greentech Inc.の520Wh/kgの電池の寿命試験中

実際のセルは茶色の板の間に挟まれている

実際のセルは茶色の板の間に挟まれている

スピード感のある研究開発に欠かせない、充放電試験のステップを自前化

ソフトバンクの次世代電池開発では、高密度化の実現を優先しているとはいえ、電池の寿命は実用化にあたって重要な性能の1つ。電池の開発には試験や認証など数多くのステップがあり、世の中に出るまでに時間がかかります。そこで、開発プロセスの中でも重要なポイントになる充放電試験を自社でコントロールできるようにし、開発プロセスの短縮を図る狙いがありました。電池セットなどのノウハウが蓄積されることも、開発スピードを後押ししています。

また、リチウム金属電池は過去に発火事故が相次いだこともあり、商用化にあたっては高い安全性が求められます。バッテリーの安全性・信頼性評価に優れた設備と技術を持つエスペック社と連携することで、同社の知見を生かした開発プロセスの効率化を図っています。

スピード感のある研究開発に欠かせない、充放電試験のステップを自前化

今後はセルより大きな単位のパック・モジュールの試験に対応できるよう、設備の増強も計画しているとのことでした。また、環境試験機の世界トップメーカーであるエスペック社の強みを生かし、成層圏環境を模擬できるような機器開発についても共同で取り組んでいくそうです。

リチウム金属電池モジュール

リチウム金属電池モジュール

車載用バッテリーの安全認証センターにも潜入

「ソフトバンク次世代電池Lab.」があるバッテリー安全認証センター・宇都宮試験所内の試験用施設も見学してきました。

温度サイクル試験器

温度サイクル試験器

大小さまざまな試験機がありましたが、中でも1番大きなものは、中にテーブルを入れてお茶を飲めるくらいの広さがあるそう。車載用バッテリーくらいになると、かなりの規模が必要なのですね。

安全試験室(内部)

安全試験室(内部)

バッテリーに落下などの衝撃を与えて安全性を確認する部屋です。当初、内部のコンクリートは写真のようにキレイな灰色でしたが、数多くの試験を重ね、何度もイベント(発火等)を経験した実際の部屋は、天井まで黒くなっていました…。

バッテリーの試験には予期せぬ危険が起こりえるので、迅速に対処できるよう、さまざまな安全対策が施されていることが分かりました。

(掲載日:2021年12月2日)
文:ソフトバンクニュース編集部

SDGsの達成に向けた、マテリアリティ「テクノロジーのチカラで地球環境へ貢献」

サステナビリティ

ソフトバンクは「すべてのモノ、情報、心がつながる世の中を」をコンセプトに、SDGsの達成に向けて6つのマテリアリティ(重要課題)を設定。SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」を踏まえた「テクノロジーのチカラで地球環境へ貢献」では、自然エネルギーを活用した再生可能エネルギー事業やサービスの普及・拡大などに取り組んでいます。

マテリアリティ(重要課題)