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空からの通信で産業のデジタルデバイド解消へ。ソフトバンクが取り組む非地上系ネットワーク

空からの通信で産業のデジタルデバイド解消へ。ソフトバンクが取り組む非地上系ネットワーク

地上の基地局から電波が届かない海上やインフラが整っていないエリアに対して、宇宙空間や成層圏から通信ネットワークを提供する非地上系ネットワーク「NTN(Non-Terrestrial Network)」。ソフトバンクは、NTNによって地球上の通信の空白地帯をゼロにすることに取り組んでいます。サービス提供に向けた意気込みをグローバル通信事業の担当者に聞きました。

目次

地球上のデジタルデバイドを空から解決する

ソフトバンクはなぜ宇宙空間や成層圏からの通信サービスに取り組んでいるのでしょうか

世界中にはまだインターネットを使ったことがない人が約35億人いると言われています。経済的な理由で使えない人もいるし、そもそものネットワークを持っていない人もいる。そういう人たちを含めて、世界中のインターネットに触れられない人をなくす、コネクティビティを提供するというのが目的でありゴールです。

ソフトバンクは「OneWeb(ワンウェブ)」「HAPS(ハップス)」などの空からの通信サービスによるソリューションを展開します。これらはソフトバンク自身が宇宙産業ビジネスをするということではなくて、あくまでインターネットへのコネクティビティを提供するための手段として、空から通信サービスを提供するということです。

通信がどういうところで使われるか、どういう使い方をされるか、B to BであれB to Cであれ、業種や産業によって要求されるネットワークの品質やスピード、料金も異なりますので、複数のソリューションを提供していきます。

地球上のデジタルデバイドを空から解決する

空からの通信サービスは例えばどのような産業に求められているのでしょうか

例えば、船舶業界では内航船や外航船などいろいろありますが、一回海に出ると3カ月は帰って来られない。家族ともコミュニケーションがとれないんですね。若い人はみんなLINEなどでコミュニケーションすることが当たり前になっているので、インターネットができない環境の職場だと、若者が集まらないわけです。船の上でもYouTubeを見たり、ある程度高速の通信サービスを使いたい人たちに、OneWebのようにグローバルカバレッジでLTE並みの速度で低遅延の通信環境を提供できれば、若手の乗組員の減少といった産業課題を解決できるかもしれません。

HAPSの場合は、「モバイルダイレクト」と言うのですが、専用の端末が必要ありません。高度20キロメートルの成層圏からLTEや5Gなどの通信サービスで、スマートフォンにダイレクトに通信を届ける。日本であれば、東日本大震災の時のように通信が途絶えてしまった場合、HAPSを活用することで直径約200キロという広大な通信エリアを構築できます。これは災害時に通信を届ける、スマホが使えるようにするといった、先進国での使い方の例です。

HAPSはBCP対策での活用が期待されますね

山間部や島、へき地などの地上通信網が整備出来ていないエリアで、鉄塔などの地上設備なしに通信サービスを提供できることも魅力の一つです。特に海外に目を向けると、通信が未整備のエリアは多く存在します。発展途上国では、都市部に住んでいる人しかスマートフォンを使えず、2Gや3Gで生活してる人がほとんどというところには、空から4Gや5Gの電波を吹いて安く使えるようにしましょうというのがHAPSの構想です。

このようなユースケースはあくまで一例ですけれど、ユーザーのニーズにあわせて提供していくということが、NTNソリューションで実現したいことです。

地球上のデジタルデバイドを空から解決する

  • ソフトバンク株式会社は、OneWeb Ltd.と2021年5月に日本およびグローバルでの衛星通信サービスの展開に向けた協業に合意。また、ソフトバンクの子会社であるHAPSモバイル株式会社が提供する成層圏通信プラットフォームを活用して、宇宙空間や成層圏から通信ネットワークを提供する非地上系ネットワーク(Non-Terrestrial Network「NTN」)ソリューションの日本およびグローバルでの展開を推進しています。

産業のバリューチェーンの最適化を図るプラットフォームを提供

OneWebの衛星打ち上げの様子

OneWebの衛星打ち上げの様子

ユーザー企業と連携した共同実験や共同検討の取り組みが始まりました

ソフトバンクが空からのネットワークを届けるというプロジェクトを開始して5年になりますが、5年前は影も形もありませんでした。サービス開始に向けてこれまで仕込んできたものをユーザーに届けるという意味で、端末も料金も、必要なものを全部きちんとつめて準備をしていきます。OneWebは、最終的に648基が打ち上がるのですが、そのうちの6割5分ぐらいは打ち上げを終えていて、高度1,200キロメートルのところを2時間に1回の速度で地球を周っています。

HAPSは、まだサービスとして生まれていないんですね。衛星というのは60年以上の歴史があって、ある意味成熟した技術を使ってそれを進化させているという状況ですが、成層圏はだれも挑戦したことがない領域なので、それをやっていくためには今日明日ではなく、5年、10年という単位で物事を見ていかないと、なかなか普及・定着しません。時間軸という意味でも、まずは衛星のOneWebから始めて、それが中継ぎになってHAPSに切り替わっていくというのも一つのシナリオではないかと思います。

産業のバリューチェーンの最適化を図るプラットフォームを提供

NTNの今後の展開、展望を教えてください

NTNによってアナログ産業が抱える課題を解決していくこと。そして、それによる産業の再定義ですね。アナログで動いている産業というのは、まだまだたくさんあって、DXだ、AIだ、IoTだと言われていますけれど、そういう恩恵を受けている企業というのはほんの一握りです。

先ほどの事例のように、海の産業ではインターネットがそもそもないので、DXをやりようがないんです。ですから、産業をデジタル化して効率化することによって、働く人も、その産業が届けるサービスを受けるエンドユーザーもみんなハッピーになるようにしないといけないと思っています。通信ネットワークをフックとした社会通信のプラットフォームがNTNソリューションによって拡大して、産業の課題解決につながっていくと言えるでしょう。

世界中の、インターネットに触れられない人をなくす取り組みとはどのようなものでしょうか

ソフトバンクはSmart Africa Secretariatというアフリカのデジタル課題に取り組むアライアンスと協業して、NTNソリューションを活用してアフリカで安価に利用できるインターネット環境の構築を目指しています。アフリカなども含めて、世界中の隅々にまで通信を届けて、インターネットに触れられていない人がいなくなることがゴールなので、そこに行き着くためのプランを何回も見直してやっていくということを、これから取り組んでいかなければならないと思っています。

ソフトバンクのDNAというのは、大義名分をもって事を成してきたということが一番大きいと思います。かつて日本は先進国の中でブロードバンドがなくて、だれもインターネットを触ったことがない状態だったのを孫さんが変えようとし、高くて遅かった日本のインターネット環境を一気に整備しました。すると今度はインターネットによって買い物がオンラインでできたり、LINEができたり、人々の生活が変わってくる。そういう大義名分をもって事を成すというところがソフトバンクのDNAなのかなと思っています。日本でやってきたことを世界でもやっていくということ。やるからにはナンバーワンを目指して、しっかり構えをつくっていきたいと思っています。

ソフトバンクのNTN構想

世界中に通信ネットワークをつなぐソフトバンクのNTN構想

ソフトバンクは世界のどこからでもインターネット接続を実現するために、宇宙空間や成層圏から通信ネットワークを提供する非地上系ネットワーク「NTN(Non-Terrestrial Network)」ソリューションの日本およびグローバルでの展開を推進しています。

世界中に通信ネットワークをつなぐ
ソフトバンクのNTN構想を見る

(掲載日:2022年1月31日、更新日:2022年8月5日)
文:ソフトバンクニュース編集部