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空からの通信で産業のデジタルデバイド解消へ。ソフトバンクが取り組む3つの非地上系ネットワーク

空からの通信で産業のデジタルデバイド解消へ。ソフトバンクが取り組む3つの非地上系ネットワーク

地上の基地局から電波が届かない海上やインフラが整っていないエリアに対して、宇宙空間や成層圏から通信ネットワークを提供する非地上系ネットワーク「NTN(Non-Terrestrial Network)」。ソフトバンクは、NTNによって地球上の通信の空白地帯をゼロにすることに取り組んでいます。そのプロジェクトリーダーを務めるソフトバンクのサービス企画技術本部 本部長の北原 秀文に、2022年中のサービス開始に向けた意気込みを聞きました。

北原 秀文(きたはら・ひでぶみ)さん

ソフトバンク株式会社 テクノロジーユニット サービス企画技術本部
本部長 北原 秀文(きたはら・ひでぶみ)

2004年に米パデュー大学を卒業後、2005年にソフトバンクBB株式会社(現ソフトバンク株式会社)に入社。固定ブロードバンドのエンジニアを経て、Wireless City Planning株式会社の立ち上げなど通信ネットワークの技術分野の業務に従事。2015年から米国の携帯電話事業者Sprintへの出向を経験。2018年からソフトバンクのグローバルビジネス戦略を担当し、現在は通信ネットワークに加え、IoTや衛星通信などの事業戦略を担う。

目次

地球上のデジタルデバイドを「三種の神器」で解決する

ソフトバンクはなぜ宇宙空間や成層圏からの通信サービスに取り組んでいるのでしょうか?

地球上のデジタルデバイドを「三種の神器」で解決する

世界中にはまだインターネットを使ったことがない人が約35億人いると言われています。経済的な理由で使えない人もいるし、そもそものネットワークを持っていない人もいる。そういう人たちを含めて、世界中のインターネットに触れられない人をなくす、コネクティビティを提供するというのが目的でありゴールです。

ソフトバンクは「Skylo(スカイロ)」「OneWeb(ワンウェブ)」「HAPS(ハップス)」という3つの空からの通信サービスによるソリューションを展開しますが、これらはインターネットにアクセスするためのツールというより武器なんです。ですから、ソフトバンクが宇宙産業ビジネスをやるとかではなくて、あくまでインターネットへのコネクティビティを提供するための手段として、3つの通信サービスを持つということです。

なぜ3つなのでしょうか

通信がどういうところで使われるか、どういう使い方をされるか、B to BであれB to Cであれ、業種や産業によって要求されるネットワークの品質やスピード、料金もさまざまです。ニーズが多岐に渡るため、SkyloやOneWeb、HAPSという3つのソリューションを提供します。これを社内では「三種の神器」と呼んでいます。

地球上のデジタルデバイドを「三種の神器」で解決する

「三種の神器」と呼ばれる3つのサービスはどのような違いがあるのでしょうか

まず、SkyloはいわゆるIoTの通信。海のど真ん中とか、最近ではトンガの大噴火もそうですけれど、島国で通信が遮断されてしまったときに、SOSや位置情報だけでも伝えたい。そういう万が一のときのために毎月10万、20万円を払わないですよね。そんなに通信速度はいらないし、常時使うわけではないけれど、SOSとか簡単なメッセージでコミュニケーションしたい。そういう場合には、グローバルカバレッジで低価格なナローバンド通信サービスを提供するSkyloが適しているでしょう。

一方で、船舶業界などはまさにそうなんですが、内航船・外航船といろいろあるんですが、一回海に出ると3カ月は帰って来られない。家族ともコミュニケーションがとれないんですね。若い人はみんなLINEが当たり前になっているので、通信できない環境の職場で働きたくないということで、若者が集まらない。

インターネットが利用できないために若い労働者が減少しているということですね?

そうです。船の上でもYouTubeを見たり、ある程度高速の通信サービスを使いたい人たちからすると、SkyloじゃなくてOneWebだよねと。OneWebはSkyloより料金は高くなりますが、グローバルカバレッジでLTE並みの速度で低遅延の通信環境を提供できます。高速大容量の通信サービスをリーズナブルな価格で提供できれば、若手の乗組員の減少といった産業課題を解決できるかもしれません。

HAPSの場合は、「モバイルダイレクト」と言うのですが、専用の端末が必要ないんです。高度20キロメートルの成層圏からLTEや5Gなどの通信サービスで、スマートフォンにダイレクトに通信を届ける。日本であれば、東日本大震災の時のように通信が途絶えてしまった場合、HAPSを活用することで直径約200キロという広大な通信エリアを構築できます。これは災害時に通信を届ける、スマホが使えるようにするといった、先進国での使い方の例です。

BCP対策での活用が期待されますね

そうですね。もちろん、山間部や島、へき地などの地上通信網が整備出来ていないエリアで、鉄塔などの地上設備なしに通信サービスを提供できることも魅力の一つです。特に海外に目を向けると、通信が未整備のエリアは多く存在します。発展途上国では、都市部に住んでいる人しかスマートフォンを使えず、2Gや3Gで生活してる人がほとんどというところには、空から4Gや5Gの電波を吹いて安く使えるようにしましょうというのがHAPSの構想です。

今言ったようなユースケースはあくまで一例ですけれど、ユースケースや金額などユーザーのニーズにあわせて、最適な三種の神器を提供していくということが、NTNソリューションで実現したい計画です。

地球上のデジタルデバイドを「三種の神器」で解決する

  • ソフトバンク株式会社は、OneWeb Ltd.と2021年5月に、Skylo Technologies, Inc.と2021年6月に日本およびグローバルでの衛星通信サービスの展開に向けた協業に合意。また、ソフトバンクの子会社であるHAPSモバイル株式会社が提供する成層圏通信プラットフォームを活用して、宇宙空間や成層圏から通信ネットワークを提供する非地上系ネットワーク(Non-Terrestrial Network「NTN」)ソリューションの日本およびグローバルでの展開を推進しています。

2022年はNTNソリューションのサービス元年

ユーザー企業と連携した共同実験や共同検討の取り組みが始まりました

2022年はNTNソリューションのサービス元年

そうですね、空からのネットワークを届けるというプロジェクトを開始して5年になりますが、5年前は影も形もありませんでした。それが今年はいよいよサービス元年になるわけで、身が引き締まる思いです。

これまで仕込んできたものをちゃんとユーザーに届けるという意味で、端末も料金も、必要なものを全部ちゃんとつめて、今年の半ばから年末にかけてサービスインしていけるように準備をしています。本当の意味でのローンチに入ってきています。

現在の進捗状況を教えてください

OneWebは、現在ロシアのソユーズという宇宙船を使って、月に33基から38基の衛星を打ち上げています。最終的に648基が打ち上がるのですが、そのうちの6割5分ぐらいは打ち上げを終えていて、高度1,200キロメートルのところを2時間に1回の速度で地球を周っています。

Skyloは、自社で衛星を打ち上げるのではなく、他社が持っている既存の静止衛星から帯域を借りて、IoT専用のサービスを提供します。2020年からインドでサービスを開始し、農業や漁業、物流などの業界に展開されていて、現在日本での展開に向けて準備を進めているところです。OneWebとSkyloの2つは、同じタイミングでのサービスインを想定しています。

衛星ではないHAPSについてはいかがでしょうか

衛星というのは60年以上の歴史があって、ある意味成熟した技術を使ってそれを進化させているという状況なんですけれど、HAPSというのはまだサービスとして生まれていないんですね。成層圏はだれも挑戦したことがない領域なので、それをやっていくためには今日明日ではなく、5年とか10年という単位で物事を見ていかないと、なかなか普及・定着しません。時間軸という意味でも、まずは衛星のOneWeb、Skyloから始めて、それが中継ぎになって、HAPSに切り替わっていくというのも一つのシナリオかなと思います。

2022年はNTNソリューションのサービス元年

産業のバリューチェーンの最適化を図るプラットフォームを提供

NTNの今後の展開、展望を教えてください

NTNによってアナログな産業が抱える課題を解決していくこと。そして、それによる産業の再定義ですね。アナログで動いている産業というのは、まだまだいっぱいあって、DXだ、AIだ、IoTだと日本の中では言われてますけれど、そういう恩恵を受けている会社というのはほんとに一握りなんですね。

何度も申し上げるように、海の産業ではインターネットがそもそもないので、DXなんかやりようがないんです。ですから、産業をデジタル化して効率化することによって、働く人も、その産業が届けるサービスを受けるエンドユーザーもみんなハッピーになるようにしないといけないと思っています。通信ネットワークをフックとした社会通信のプラットフォームがNTNソリューションによって拡大して、産業の課題解決につながっていくと言えるでしょう。

冒頭で世界中のインターネットに触れられない人をなくすとおっしゃっていました

ソフトバンクはSmart Africa Secretariatというアフリカのデジタル課題に取り組むアライアンスと協業して、NTNソリューションを活用してアフリカで安価に利用できるインターネット環境の構築を目指しています。アフリカなども含めて、世界中の隅々にまで通信を届けて、インターネットに触れられていない人がいなくなることが僕らのゴールなので、そこに行き着くためのプランを何回も見直してやっていくということを、これから取り組んでいかないといけないと思っています。

ソフトバンクのDNAというのは、大義名分をもって事を成してきたということが一番大きいと思うんですよね。かつて日本は先進国の中でブロードバンドがなくて、だれもインターネットを触ったことがない状態だったのを孫さんが変えようとした。高くて遅かった日本のインターネット環境を一気に整備しました。

すると今度はインターネットによって買い物がオンラインでできたり、LINEができたり、人々の生活が変わってくる。そういう大義名分をもって事を成すというところがソフトバンクのDNAなのかなと思っています。日本でやってきたことを世界でもやっていくということですね。

そのサービス元年が2022年ですね

はい。やるからにはナンバーワンを目指して、しっかり構えをつくっていきたいと思っています。

産業のバリューチェーンの最適化を図るプラットフォームを提供

ソフトバンクのNTN構想

世界中に通信ネットワークをつなぐソフトバンクのNTN構想

ソフトバンクは世界のどこからでもインターネット接続を実現するために、宇宙空間や成層圏から通信ネットワークを提供する非地上系ネットワーク「NTN(Non-Terrestrial Network)」ソリューションの日本およびグローバルでの展開を推進しています。

世界中に通信ネットワークをつなぐ
ソフトバンクのNTN構想を見る

(掲載日:2022年1月31日)
文:ソフトバンクニュース編集部