最近になって耳にする機会もだんだん増えてきた「メタバース」。ユニバース(宇宙)と何かしら関係が? いや、やっぱりよく分からないです……。
このキーワードは押さえておかないときっと取り残される! と危機を感じた(言いすぎ)ので、メタバースで楽しめる体験型コンテンツ「さわれるライブ™ 5D LIVE™」の提供を開始したリアライズ・モバイル・コミュニケーションズのメタプロ(?)の担当者に、その意味や話題のNFTとの関係性、活用事例などを解説してもらいました。
目次
- 実は約20年前からあった? ゲームから浸透してきたメタバースの定義とキホン
- メタバースが注目されるようになった背景。最近話題の”NFT”とどう関わっている?
- 具体的に何ができる? メタバースで変化するライフスタイルやコミュニケーション
今回、教えてくれた人
リアライズ・モバイル・コミュニケーションズ株式会社
勝本 淳之(かつもと・あつし)
ソフトバンクのグループ会社でもある同社で、xR※技術の専門知識を有し「xRスタジオ」全般の技術を取りまとめているプロフェッショナル。
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「VR」「AR」「MR」などの総称
実は約20年前からあった? ゲームから浸透してきたメタバースの定義とキホン
Meta(超越)とUniverse(空間)の造語であるメタバース。分かるようでいまいち分からないのですが、結局一言でいうと何なのでしょうか?
「僕の解釈では、複数の異なる空間を超越(Meta)して束ねる空間(Universe)です。しかし、実は各社によってメタバースの定義が異なっていて、まだ曖昧な状態なんです。例えば最近社名を変更したかの有名な米国企業の定義するメタバースはVRのような仮想空間を前提にしているように思えますし、あるゲーム会社では現実世界を拡張するようなメタバースをビジョンとして掲げています」
新しい概念だから、定義があいまいなんですね。とは言いつつ、2000年代にもメタバースブームが一度起きたと聞きました。
「メタバースの先駆けのようなものはゲームで経験したことある人が多いんじゃないんですかね。ただ、当時のメタバースは複数のコミュニティーや空間を横断的に活動したり、互換性をもって参加することができませんでした。
さまざまな価値観を持った複数のコミュニティーに横断的に参加できることがメタバースの本質だと思うので、このような閉じた世界は少し外れていますね」
VRとメタバースは何が違うのでしょうか……。言われてみれば説明できない、という方もたくさんいると思います。
「VRは仮想空間を体験できる入れ物や基盤技術、『ツール』であるのに対し、メタバースは『空間(=コミュニティー)』ですね。メタバースはポリシーというかサービスのレイヤーを含んだコミュニティーサービスの総称です。ちなみに、現実世界をデジタル空間に再現するデジタルツインとも意味は異なります」
勝手にメタポイント①「VRとメタバースの違いって?」
VR:仮想空間を体験できる入れ物や基盤技術などの『ツール』
メタバース:サービスなどを体験できる仮想の『空間(=コミュニティー)』
メタバースが注目されるようになった背景。最近話題の”NFT”とどう関わっている?
複数空間を横断したコミュニティ空間とされるメタバース。社会の発展とともに注目されるようになりましたが、最近話題のNFT(非代替性トークン)※とも深い関係にあるそうです。
- ※
通常ならば簡単に複製できるデジタルファイルを、代替不可能で唯一のものにするデータ形式のこと
「そもそもメタバースが注目されるようになった背景には、こんな理由が考えられますね」
メタバースが注目されるようになった理由
- コンピュータの演算能力の向上による現実世界の再現性や、体験するハードウェア開発技術の進歩
- AIによるユーザーインターフェイスや現実世界の認識精度の向上によるユーザー体験の向上
- コロナ禍によるオンラインでのコミュニケーション・仕事など経済活動の一般化
- 5Gによる高速大容量低遅延の通信の実現、クラウド技術の向上によるコンピューティングパワーのさらなる効率化
- NFT技術の普及によるプラットフォームをまたぐあらゆる価値交換の実現
この中でも、NFT(非代替性トークン)は最近よくテレビやニュースなどで見かけるようになりました。メタバースとどう関係しているのでしょうか?
「NFT技術を使うことで、デジタル空間上で自分が所有するアイテムを自分のモノだとちゃんと証明できるようになります。つまり、メタバース上で別の空間へアイテムを持って移動することが可能になるんです」
デジタル空間上の自分の持ち物を証明できる…というと?
「例えば、デジタル空間上で所有している自分のSNSアカウントや、クラウド上にアップロードした写真をイメージしてみてください。
もしそのサービスやサービス提供会社が明日突然終了したら、SNSアカウントで投稿したデータや写真は全て削除され、取り戻すことはできません。その写真が自分のモノであるということは、誰も証明してくれないんです」
自分のSNSアカウントが消えたらつらいです…。NFT技術を使えばそれを防げるということでしょうか?
「簡単にいえば、そうですね。NFT技術を使えば、データが消える可能性はあっても、少なくともコピーやバックアップさえ持っていれば、自分のモノであると証明する手段になるんです」
なるほど!それで、データやアイテムをメタバース上で別の空間へ移動させることができるんですね。NFTってすごい! 始めようかな……。
「ただ、NFTにおいては法的整備がこれからです。最も重要なデジタルアイテムの所有権については凡例がなかったり、NFTの所有権や再販に関する取り決めが各サービスで共通化しておらず、真の意味で所有していないケースも見られるので、一定のリスクを含むと考えた方がいいですね」
気を付けます……。
勝手にメタポイント②「メタバースとNFT技術で何ができる?」
メタバースにおける複数の異なる空間で、アイテムなどの”価値”の持ち運びができるようになる
メタバースで具体的に何ができる? 変化するライフスタイルやコミュニケーション
メタバースで具体的にどんな体験ができるようになるのでしょうか。
「これまで存在していた地域や物理的なコミュニティーの壁がますます低くなるので、文化的な営みはもちろん、衣食住といった基本的な営みの自由度が増します。例えば、メタバースの中で完結する仕事が現れたりすると思いますよ。単なるミーティングとかではなく、就職するくらいのレベルです」
仕事や買い物、遊びもメタバース内でできたら、人生の選択肢が広がりそうですね。
「まさにその通りで、文化的にも経済的にも自由度が増すと思います。自分らしく生きられるというか。地域の学校に行く必要がなく、自分の好きな学びを好きなコミュニティーを選んで学習できるなど。不登校はなくなるかもしれませんね」
最近提供を開始した「さわれるライブ™ 5D LIVE™」でもメタバースで楽しめると聞きましたが、どんなサービスなんでしょうか。
「『さわれるライブ』は、画面を介してファンとアーティストがやり取りするのではなく、同じ空間の中で価値を共創していくようなサービスを目指しています。例えば、音楽ライブを一方的にアーティストが提供するのではなく、ファンと一緒に演出を行い、一緒に体験できるみたいな。障壁を取り除くことができるコミュニティーサービスとも言えますね。これはアーティストとファンだけではなく、企業と顧客の関係にも当てはまります」
メタバース上でライブを一緒に演出できたら、おもしろいですね。コミュニケーション自体が変わっていくというか。
「いずれは、バーチャルSNSみたいなサービスも登場するかもしれないですね。今のSNSでは自分の体験の記録をシェアしますが、いずれはメタバース上での体験のシェアもできるようになるかもしれませんね……」
勝手にメタポイント③「メタバースで私たちの生活も変わる?」
今後メタバースが普及すれば、メタバース内の仕事だけでお金を稼ぐ、自分の好きなコミュニティーに自由に参加して学びを深めるなど、新しいかたちの体験を通して、人々の働き方や遊び方に変化をもたらすかもしれません。
メタバースでは、従来のコミュニケーションやライフスタイルが大きく変わっていきそうですね。メタバースを始める前に気を付けるべき点はありますか?
「経済活動の大きな部分を占めれば占めるほど、プライバシーやコミュニティーにおけるモラルなど、現実世界ですでに起こっているような問題が発生する可能性があると考えておいたほうがいいです。どのようなポリシーでメタバースが運営されているかは必ず確認すべきだと思いますね。
もちろん、、個人情報が盗まれたり、ネットいじめがあったり、インターネットと同様の一般的なリテラシーは必要です。あとは、目が悪くならないように……(笑)」
目の健康も確かに大事……。それにしても、今後メタバースがどのように普及していくのか、とても気になります。
「デバイス技術の発展とセットなので、それ次第でこれからどんなメタバースの世界になるのかは正直予測できないところではありますが。ひとつの会社がプラットフォームを持つのもいいですが、開かれたメタバースが普及して、横断的にサービスが連携したり情報を検索できたり、参加できるようになったらいいと思いますね」
技術の進歩にも期待ですね。メタバースへの理解が深まりました。ありがとうございました!
「さわれるライブ™ 5D LIVE™」で体験できることも聞いています
(掲載日:2022年3月16日)
文:ソフトバンクニュース編集部