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「Web3」って何? 知っておきたい基礎知識を解説

「Web3」って何? 知っておきたい基礎知識を解説

2021年後半頃から注目されるようになった「Web3」。NFTやメタバースを活用したWeb3サービスに注目が集まる中、そもそもWeb3とは一体何なのか、その本質をきちんと理解できていない人も多いのではないでしょうか。

今回は、経済産業省「Web3.0時代におけるクリエイターエコノミー創出に係る研究会」や総務省「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」の委員でもある弁護士の増田雅史さんに、Web3が注目されるようになった背景やWeb3の意味、メリットなどについて、お話をうかがいました。

目次

お話を聞いた人

増田 雅史さん

増田 雅史さん

弁護士・ニューヨーク州弁護士(森・濱田松本法律事務所)。スタンフォード大学ロースクール卒。理系から転じて弁護士となり、IT・デジタル関連のあらゆる法的問題を一貫して手掛け、業種を問わず数多くの案件に関与。特にゲームおよびウェブサービスへの豊富なアドバイスの経験を有する。金融庁でのブロックチェーン関連法制の立案経験もあり、コンテンツ分野、ブロックチェーン分野の双方に通じる。経済産業省「Web3.0時代におけるクリエイターエコノミーの創出に係る研究会」や総務省「Web3時代に向けたメタバース等の利活用に関する研究会」の委員にも就任。

Web3って何?

Web3って何?

Web3とは、特定の管理者がいない、ブロックチェーン技術によって実現した分散型インターネットのことをいいます。情報の発信者と閲覧者が固定され、一方向だった「Web1.0」、SNSなどの情報の発信者と閲覧者の双方向でコミュニケーションする「Web2.0」、そしてその次に出てきたのが特定のプラットフォームに依存しない新しいインターネットの在り方、すなわちWeb3です。

増田さん

「Web3.0と表記されることもありますが、Web3(ウェブスリー)と表記する方が正確です。Web3は、個人に関連する情報を自分自身で保有し、自分自身の判断によって管理することを前提とした仕組みです。コンテンツの売買や送金などの取引を個人間で行うことが容易になります。

Web3の最大の特徴は、『非中央集権』です。例えば、Web2.0では、GAFAMをはじめとするプラットフォーム事業者に情報が集中していました。しかし、 Web3は誰でも情報の管理に参加でき、中央管理者を持たないブロックチェーン技術を利用することで、そうした中央集権型のプラットフォームを介さず、個人同士で情報のやり取りを行うことができます」

「ブロックチェーン技術」とは?

「ブロックチェーン技術」とは?

ブロックチェーン技術とは、暗号資産を扱う基盤技術として開発された取引履歴をまとめた台帳のようなもの。
インターネットに接続した複数のコンピューターで、ブロック単位の記録をチェーンのようにつないで記録します。典型的なパブリックブロックチェーンの場合、管理者がおらず、不特定多数の人が取引の正当性を検証するため、改ざんが極めて困難だといわれています。

Web3が生まれた背景は?

Web3が生まれた背景は?

Web3という言葉は、イーサリアムの最高技術責任者だったギャビン・ウッドが提唱し、2014年に「Web3ファンデーション」という団体を作り世に広めたものだといわれています。

増田さん

「Web3が生まれた背景としては、特定の巨大企業による個人情報管理への疑念、ブロックチェーン技術の発達、仮想通貨の普及などが挙げられます。特にNFTの普及を受け、2021年後半から全世界的にWeb3が注目されるようになりました。

Web2.0は、インターネット上でのインタラクティブなコミュニケーションが主流ですので、特定の巨大企業がユーザーから大量に情報を得て、ユーザーの好みに合わせて広告を配信するというビジネスモデルが大きな成功を収めました。

その結果、情報を持てば持つほど企業が強くなり、個人もそうしたサービスへの依存を強めていく状況が生まれました。特定の巨大企業はグローバルでサービス提供をしていますので、国境を越えたある種の支配者が誕生し、国家単位での規制には限界があることも露呈しました。そんな中央集権的な情報権力を分散させ、個人をエンパワーすることを目指して、Web3という概念に注目が集まるようになったわけです」

Web1.0、Web2.0との違い

増田さんによると、Web1.0という言葉は、Web2.0という言葉が誕生した後で、Web2.0と比較するために作られた言葉だそう。Web1.0、Web2.0、Web3の主な違いは下記のとおりです。

Web1.0、Web2.0との違い

Web1.0 1990年代からのインターネット。htmlを用いたテキストが主流。閲覧者はテキストやコンテンツを見るだけ。メールでのみコミュニケーションが可能。双方的なコミュニケーションはほぼできない
Web2.0 2000年代からのインターネット。SNSの普及により、双方向でコミュニケーションが可能。インターネットサービスを提供するビックテック(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)に情報が集約されることが課題に
Web3 2020年代からのインターネット。ブロックチェーン技術を活用した自立分散型のネットワークで、中央管理者を必要としないことが特徴。個人情報はユーザー自身が管理可能

Web3が注目されている理由とメリットは?

Web3が注目されている理由とメリットは?

2021年以降にWeb3が注目された理由としては、前述したように、企業による個人情報管理への疑念、プラットフォームを握っている大企業への反発心などが挙げられますが、昨年からのNFTの普及もWeb3が注目されるきっかけを後押ししました。

増田さん

「ブロックチェーンを活用したNFTが昨年から話題になったことの影響は大きいと思います。一般の人にとって身近なアートやゲームなどに関連したNFTが作られ広まりつつあることで、その背景にあるWeb3も同時に注目されるようになったのでしょう。

とはいえ、ブロックチェーンの特性を利用したサービスは、NFT関連のサービスにとどまるものではありません。今後はNFTだけでなく、ブロックチェーンを用いたさまざまなWeb3関連サービスが登場すると思います」

Web3のメリットは?

Web3のメリットは?

Web3には、現在主流となっているWeb2.0の課題をクリアし得る、さまざまなメリットがあります。

増田さん

「まず、Web3で用いられているブロックチェーン技術には、不正や改ざんを防ぎ、透明性が高いという大きなメリットがあります。中央管理者がおらず、ネットワークを管理している端末の一部が攻撃を受けても、よほどのことが無い限りネットワーク全体は問題なく動き続けますので、サイバー攻撃などセキュリティ面のリスクも減少するでしょう。

また、前記のとおりWeb2.0の世界では、ユーザーの意識していないところで事業者が個人情報や行動履歴を取得・利用することが常態化しており、そうした情報を大規模なプラットフォーマーが独占することに伴う弊害が課題とされています。ブロックチェーンの利用を前提としたWeb3的なサービスの登場はまだこれからであり、どのような形で個人が主体的に自分の情報を利活用できるようになるかは未知数ですが、Web2.0的な世界観に対する一定の歯止めとなることは期待されています」

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Web3を理解するうえで知っておきたい5つのキーワード

Web3を理解するうえで知っておきたい5つのキーワード

最後にWeb3と一緒に語られることが多い5つのキーワードについてその概要を解説します。よく誤解されがちですが、このキーワードはWeb3の主要な要素ではなく、あくまでもWeb3と関連性のあるワードの一部です。

  1. DAO(分散型自立組織)

    DAO(ダオ・Decentralized Autonomous Organization)とは、ブロックチェーン上で中央管理者なしで管理・運営される組織のことです。参加者全員が平等であり、かつ誰でも自由にDAOの活動に参加できることが最大の特徴です。

    DAOの運営ルールや決まりごとは、基本的に全てがあらかじめスマートコントラクトに書き込まれており、そのとおり動作していることも検証可能であるので、透明性の高い組織体系といえます。DAOは組織の運営方針に対して参加者一人ひとりが投票を行うことができる、ガバナンストークンによって意思決定がなされます。

  2. DeFi(分散型金融)

    DeFi(ディファイ・Decentralized Finance)とは、ブロックチェーンをベースとした金融システムのことです。銀行などの仲介役なしで、直接個人間の取引ができます。

    主にイーサリアム(Ethereum)のブロックチェーン技術を基盤に構築されており、一定の条件で取引を自動実行する「スマートコントラクト(Smart Contract)」という機能によって、さまざまな金融取引が可能になります。

    中間業者がいないため、銀行など金融機関にお金を管理されないことが特徴です。スマートコントラクトのコードは公開されており、透明性や検証可能性が高いといえます。

  3. メタバース

    メタバースとは、meta(メタ)とuniverse(世界)を組み合わせた造語で、インターネット上で利用できる仮想空間や仮想空間で行われるサービスのことを指します。

    仮想空間上に自身のアバターを作成し、他者とコミュニケーションや、ゲームやサービスの受け取りなどが可能です。今後は現実世界と同じように仮想空間上でビジネスや経済活動が行われると予想されています。

  4. NFT

    NFTとは、「Non-Fungible Token(ノン-ファンジブル トークン)」の頭文字を取ったもので、日本語では「非代替性トークン」という意味になります。ブロックチェーン技術によってデジタルデータに固有性を持たせることができ、中には数億円の価格がつくアート作品なども登場しています。

    NFTはデジタルデータを1つ1つの「モノ」のように扱うことができる特性から、アート以外にもスポーツ、ファッション、音楽、ゲームなど、幅広い分野での活用が進められています。

  5. 仮想通貨

    仮想通貨は、インターネット上でやり取りが可能な財産的価値があり、「暗号資産」とも呼ばれています。代表的な仮想通貨としてビットコインやイーサリアムなどがあり、仮想通貨交換業者から入手・換金が可能です。

    銀行等の第三者を仲介することなく財産的な価値をやり取りできる仕組みで、ブロックチェーン技術によって記録・管理されています。注意点としては、価格が急落する、ハッキング等によって通貨を失うなどのリスクが挙げられます。

Web3サービスの今後の利活用に期待

Web2.0による個人情報の流出やプライバシーの侵害といったリスクから、Web3のようなブロックチェーン技術の活用に注目が集まる一方、Web3の課題も存在します。近年は、NFTの普及により、仮想通貨による取引や、メタバースを使ったコミュニケーションも浸透しつつあります。個人情報をユーザー自身が管理する時代へと移行しつつある今、Web3の今後の動きに注目していきましょう。

(掲載日:2022年11月2日)
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