SNSボタン
記事分割(js記載用)

低気圧や寒暖差が不調の原因!? 地味にしんどい「気象病」の対処法

低気圧や寒暖差が不調の原因!? 地味にしんどい「気象病」の対処法

雨の日はなんだか調子が悪い、季節の変わり目はよく体調を崩す… そんなことはありませんか? その不調、もしかしたら「気象病」が原因かもしれません。気象病とは、ひとつの病気の名前ではなく、低気圧や寒暖差など、気象が原因でさまざまな疾患の症状が悪化することを示しています。近年よく耳にするようになったこの病態について、天気痛ドクターの佐藤純さんに原因やメカニズム、自宅や会社ですぐにできる対処法をうかがいました。

目次

お話を聞いた人

佐藤純(さとう・じゅん)さん

佐藤純(さとう・じゅん)さん

愛知医科大学客員教授、中部大学生命健康科学研究科教授。疼痛生理学・環境生理学の研究を大学院で開始し、名古屋大学教授を経て、愛知医科大学病院で日本初の「気象病外来・天気痛外来」を開設。竹橋クリニック(東京)でも気象病・天気痛外来医として診療を手掛ける。気象病研究・診療の第一人者、天気痛ドクターとしてメディア出演も多数。2020年には株式会社ウェザーニューズと共同開発した「天気痛予報」をリリースし、注目を集めている。

天気の悪い日や季節の変わり目に調子を崩しやすい… 実はそれ気象病かも?

天気の悪い日や季節の変わり目に調子を崩しやすい… 実はそれ気象病かも?

雨や曇りの日、季節の変わり目などに起こる体調不良。頭痛、めまい、倦怠(けんたい)感、関節痛、気分の落ち込みなど、症状は人によってさまざまですが、天気の悪い日や寒暖差の激しいタイミングで体調を崩しがちなら「気象病」の可能性があります。まずは、こちらのチェックリストで自分が気象病かどうかをチェックしてみましょう。

気象病チェックリスト

  • 該当するものが複数ある場合は気象病の可能性が考えられます
  • 雨が降る前(数日前~直前)や降っているときに体調が悪くなる(頭痛、めまいなど)
  • 天気が変わるときにメンタルの不調がある
  • 雨がやんで晴れてくるときなど、天気が回復する際に体調が悪くなる
  • 雨が降る前に関節や過去に骨折などのケガをしたところに痛みを感じることがある
  • 台風や熱帯低気圧が発生したあたりから体調が悪くなる(頭痛、めまいなど)
  • 「もうすぐ雨が降りそう」など、天気の変化をなんとなく予測できる
  • 雨の日はやたらと眠くなる
  • 春や秋、梅雨など季節の変わり目に体調を崩しやすい
  • 冷え性である
  • 急に寒くなったりすると体調が悪くなる
  • 湿気が多いと胃腸の調子が悪くなる

佐藤さん「気象病は頭痛やめまいという症状が有名ですが、頭痛があまりはっきりしてなくて、そもそも頭痛を自覚していないケースもあります。そういう場合はおなかが痛い、下痢をすることが前面に出ていることも。特に子どもや女性に多いですね。私の患者さんの中には、天気が崩れる前々日におなかを壊し、その翌日に頭痛が起こるなど、症状が二段階で現れる人もいますよ」

気象病の代表的な症状

  • 頭痛
  • だるさ
  • めまい
  • 耳鳴り
  • 倦怠感
  • 関節痛
  • 肩こり
  • 腰痛
  • 気分の落ち込み
  • 眠気
  • イライラ
  • ブレインフォグ
  • 腹痛
  • 下痢
  • 頭痛
  • だるさ
  • めまい
  • 耳鳴り
  • 倦怠感
  • 関節痛
  • 肩こり
  • 腰痛
  • 気分の落ち込み
  • 眠気
  • イライラ
  • ブレインフォグ
  • 腹痛
  • 下痢

佐藤さん「一言に気象病と言っても、このようにさまざまな症状が出るんです。もともと片頭痛を持っている人は天気の変化によって症状が悪化することもありますよ。それから霧がかかったように感じるブレインフォグは、新型コロナウイルス感染症に関連してよく聞くようになりましたが、これも気象病の症状のひとつです」

低気圧や寒暖差で不調になる原因は?

低気圧や寒暖差で不調になる原因は?

天気が悪くなったり、季節の変わり目になるたびに頭痛などの症状が出てくるのは困ってしまいますよね。そもそも、低気圧や寒暖差が大きい時期にどうしてこのような不調が起こるのでしょうか。実は、その原因には耳のある器官が関係しているようです。

実は「内耳」が不調に関係している

低気圧のときの不調の原因は耳にある「内耳」。鼓膜のさらに奥にある内耳は、耳で受けた情報を脳や神経に伝える役割をしている器官。内耳にあるセンサーが気圧の変化を感知し、前庭神経が過剰に興奮することで、自律神経のバランスが乱れます。その結果、交感神経が優位になりすぎると、めまいや片頭痛、関節痛の悪化などの症状が。また、副交感神経が優位になりすぎると、眠気やだるさ、うつ症状が生じやすくなるそうです。

佐藤さん「生まれつき内耳が敏感な人がいる一方で、後天的に気象病になる人もいます。むち打ち損傷や耳の病気をきっかけに気象病の症状が現れる場合も。その場合、内耳が変わったのか、もともと敏感な内耳を持っていたことが顕在化されたのかは、まだわかっていません」

温度や湿度も不調の原因に

温度や湿度を感じるセンサーは、皮膚や粘膜、脳や脊髄の中枢神経など、体中のいたるところに存在します。これらのセンサーが温度や湿度の変化を敏感に感じ取り、その刺激が自律神経のバランスを乱すため、寒暖差が体調不良につながるそうです。

佐藤さん「寒冷順化・暑熱順化といって、人間の体は自然と暑さや寒さに順化する働きがあります。しかし、現代人は自力で順化できない人が増えているんです。その理由は、住宅事情の進化により家の中が一年中適温になったことや、外に出て体を動かす機会が減ったこと。そうすると、私たちの自律神経はだんだんサボりはじめるんです」

気象病になりやすい人、なりやすい時期は?

気象病は、全年代を通じて男性より女性の方がなりやすいと言われているそうです。また、10代の子どもや高齢者は自律神経が弱いため、気象病になるリスクが高いのだとか。

佐藤さん「内耳の特性以外に、自律神経が乱れやすい生活習慣の人は気象病になりやすいです。睡眠時間が不規則、朝ごはんを食べない、運動不足、午前中に陽の光を浴びていない人は要注意ですね」

もともと片頭痛持ちの人や乗り物酔いをしやすい人の内耳は、そうでない人に比べて少ない刺激でめまいを感じてしまうことから、気象病になりやすい傾向があるそうです。

佐藤さん「内耳の特性は母から子に遺伝しやすく、母親が片頭痛持ちの場合、その子どもにはおおよそ2分の1の確率で発現します。片頭痛持ちの人の約半分は気圧の影響を受けやすいと言われていますので、子どもが気象病である確率は4分の1になりますね」

気象病になりやすい時期としては、台風シーズン、天気が悪くなる2〜3日前、天気が回復するタイミング、季節の変わり目などが挙げられるそうです。

佐藤さん「一番大きいのは季節の変わり目です。例えば体が冬に切り替わるタイミングで、うまく切り替えられずに体調を崩す人が多い。体を冬に順化させるためには、自分にある程度の負荷をかけることも必要です。外に出ないと体が冬型にならないので、寒くてもなるべく外に出るようにしましょう」

気象病による体調不良への対処法

気象病による体調不良への対処法

気象病がどんなものかわかったところで、実際に症状が出ている場合、どうすればいいのでしょうか? 自宅や会社でもすぐにできる対処法としてはこのようなものがおすすめだそうです。

  • 耳をマッサージする
  • 天気痛用の耳栓※をつける
  • 着圧ソックスを履く
  • 血糖値を下げないように朝ごはんをしっかり食べる
  • お昼ごはんをドカ食いしない、炭水化物は少なめにする
  • 天候によるゆっくりとした気圧の変化に対応するように作られた気圧調整用耳栓

佐藤さん「気圧を感じる内耳は耳の奥にあるため、耳のマッサージや耳栓が有効です。耳のマッサージは調子が悪いときだけでなく、朝昼晩に1回ずつ、毎日続けてみると予防にもなりますよ」

耳のマッサージのやり方

  1. 親指と人差し指で両耳を軽くつまみ、上・下・横に、それぞれ5秒ずつ引っぱる
  2. 耳を軽く横に引っぱりながら、後ろ方向に5回、ゆっくりと回す
  3. 耳を包むように折り曲げて、5秒間キープする
  4. 手のひらで耳全体を覆い、後ろ方向に円を描くようにゆっくりと回す。これを5回行う

佐藤さん「低気圧の日にむくみや冷えだけでなく、頭痛も出やすいという人は着圧ソックスを履いてみましょう。ただし、着圧ソックスは昼間に履いて、夜に寝る時は脱ぐように注意してください。着圧ソックスを履いたまま寝ると、脚はすっきりして美脚になりますが、そのぶん血液や水分が頭に上がってきて頭痛の原因になることもあるんです。お風呂でしっかり湯船に浸かって余分な水分を出すことも大切です」

また、血糖値が下がると頭痛が出やすくなるため、血糖値を下げない工夫も大切。朝ごはんをしっかり食べ、お昼は食べ過ぎないようにするのが良いそうです。

佐藤さん「朝にセロトニンを作るため、セロトニンの原材料であるトリプトファンが含まれた食材を摂取するといいでしょう。ビタミンB群を多く含む食材がおすすめです。お肉ももちろん良いのですが、手軽に取るならバナナやヨーグルトなどの乳製品、発酵食品などがいいですね。昼ごはんはパスタとかうどん、丼ものなどの炭水化物だけにしないように気をつけてください。バランスよく食べられるように定食を選ぶのが良いでしょう」

不調がひどいなら早めに病院へ

気象病による頭痛があるとき、病院へ行かずに市販の頭痛薬でしのぐ人もいると思います。しかし、その場しのぎの対処ではどんどん症状が悪化してしまうことも…。気象病がひどいときは、我慢せず早めに受診するのがおすすめだそうです。

佐藤さん「気象病は怠けていると誤解されやすい病気です。職場やパートナーなど、周りの人たちにも体調が悪いことを伝え、理解してもらうことが重要になります。気象病で病院を受診する際は、あらかじめ天気と体調の関係がわかるような日記をつけていくと医療者に伝わりやすくなります。

日記といっても、毎日細かく書く必要はありません。どのタイミングでどんな体調不良が起きたかを簡単にメモしておくだけで大丈夫ですよ。記録をつけると、意外と体調がいい日もあることに気づくでしょう。病院を受診しない場合でも、自分の体調と向き合いやすくなるはずです。紙のノートやアプリ、エクセルなど、自分が続けやすい方法で記録をつけてみてください」

気象病による体調不良を予防する方法

気象病による体調不良を予防する方法

気象病の症状を少しでも軽くするためには、事前に予防をしておくことが大切。毎日のルーティーンとしてこのような行動を心がけておくのがおすすめだそうです。

  • 朝食をしっかりとる
  • 朝起きてすぐに日光を浴びる
  • 朝起きて散歩をする
  • 定期的に運動をする
  • 睡眠の質を上げる
  • ストレスをためすぎない
  • 腸内環境を整える
  • 気象病対策アプリを活用する

佐藤さん「朝起きて朝ごはんを食べると、副交感神経優位から交感神経優位へと、スムーズに切り替わります。また、午前中に最低でも15分は日光を浴びましょう。カーテンを開けて光を入れる、散歩する、ベランダに出て洗濯物を干すくらいでも大丈夫です。

日光を浴びると体内にセロトニンができるんです。セロトニンにはわれわれの体を活性化し、記憶力や活動量を上げる働きがあります。14時間すると、セロトニンは眠気を催すホルモンのメラトニンへと変換されます。そのまま夜の11時くらいにメラトニンが最高値になった頃に眠ることを繰り返すと、体のリズムが整います。このように、生活習慣を整えることによって体のリズムも整い、自律神経のバランスが良くなることにつながります。これが気象病の予防の基本的な考え方ですね」

また、それ以外にもストレスをためないことも大切なんだそうです。しかし、天気予報を見て「この先、天気が崩れるな」と思うと、その恐怖感がストレスになってしまうのでは……?

佐藤さん「天気予報をチェックして体調が崩れるタイミングを事前に知っておくのは、自分の行動を決めるために重要なことです。予報をネガティブにとらえずに、『気圧の変化がありそうだから予定をずらそう』『早めに寝て睡眠時間を多めに確保しよう』など、自分の調子を整えるためにポジティブに活用してくださいね」

気象病対策に使えるアプリ

気圧の変動を予測するアプリをご紹介。ぜひ、気象病の予測・予防に役立ててください。

■天気痛予報

アラーム機能があり(アプリ限定)、注意や警報のときは前日にお知らせしてくれる。「わたしの天気痛メモ」機能では、そのときの天気・気圧・気圧差・気温を自動で記録することも。
https://weathernews.jp/s/pain/introduction.html

■Yahoo!天気

ユーザーが設定した地域で、翌日の最高・最低気温が前日と比べて3℃以上差があると予想された際、プッシュ通知で知らせてくれる機能がある。(プッシュ通知は3、5、7、9℃のいずれかを選択可能)
https://weather.yahoo.co.jp/weather/promo/app/

まとめ

頭痛やめまい、倦怠感など、気象病の症状はつらいもの。しかし、アプリを使って気圧の変化を予測したり、自律神経を整えたりと、事前に準備できることもあります。

「天気予報をマイナスに捉えるのではなく、『明日には天気が回復するからもう少しの辛抱だぞ!』などとプラスに捉える癖をつけてください」と佐藤さん。

低気圧などの気象の変化に負けず、かと言って頑張りすぎず、天気の悪い日も気楽に過ごせるといいですね!

あわせて読みたい

(掲載日:2022年12月21日)
文:吉玉サキ
編集:エクスライト

病院に行った方がいいか迷ったときは、オンラインで相談

病院に行った方がいいか迷ったときは、オンラインで相談

2022年12月から個人向けサービスが開始したヘルスケアアプリ「HELPO」。健康医療相談機能では、24時間365日いつでもチャットでの相談が可能なサービス。医師・看護師・薬剤師からリアルタイムにアドバイスを受けられます。気になる症状があるけど様子見していていいのか、病院に行くならどの科がいいのかなど、迷ったら相談してみましょう。

ヘルスケアアプリ「HELPO」
サービスサイト