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難しい話ほど「図解」で伝える。3つのパーツを覚えて、図解力をマスターしよう

難しい話ほど「図解」で伝える。3つのパーツを覚えて、図解力をマスターしよう

オンラインでの打ち合わせも多い昨今、「その場で物事を決めるのに時間がかかる」「議事録を見返してもパッと内容を思い返せない」と悩める声も聞こえてきます。そんなモヤモヤを抱えているビジネスパーソンこそ「図解力」を鍛えることがおススメです。複雑な物事も図にまとめることでパッと視覚で伝わり、仕事もぐんとスムーズに進むはず。今回は、「なんでも図解」の著者であるアートディレクターの日高由美子さんに、明日から実践できる “図解” のコツを教えてもらいます。

目次

日高由美子(ひだか・ゆみこ)さん

日高由美子(ひだか・ゆみこ)さん
株式会社TAM アートディレクター。 「えがこう!」主宰。東京学芸大学美術科卒業後、日本デザインセンターイラストカンプ部に就職。1995年より株式会社TAMにてアートディレクターとして勤務。2015年ごろより、絵を描くのが苦手な若手スタッフに「描いて伝える」トレーニングを始め社外でもセミナーを開催。得意分野は、グラフィックデザインを通じてのビジュアル構築やグラフィックファシリテーション。

制限時間は2分。あなたはこの文章を「図解」できますか?

まずは編集部で「図解」にチャレンジ。お題の文章を、制限時間2分間でそれぞれ図解してみました。

ソフトバンクニュースでは、「IT × ライフスタイル」をテーマに、暮らしに役立つ小ネタ、専門家やアーティストのインタビューなどを発信しています

いざペンを持つと…うう~ん(悩)

【お題】「ソフトバンクニュースでは、『IT×ライフスタイル』をテーマに、暮らしに役立つ小ネタ、専門家やアーティストのインタビューなどを発信しています」

さて、編集部2名の図解デビュー作がこちら。

【お題】「ソフトバンクニュースでは、『IT×ライフスタイル』をテーマに、暮らしに役立つ小ネタ、専門家やアーティストのインタビューなどを発信しています」
【お題】「ソフトバンクニュースでは、『IT×ライフスタイル』をテーマに、暮らしに役立つ小ネタ、専門家やアーティストのインタビューなどを発信しています」

描けました! 日高さん、いかがでしょうか…?

【お題】「ソフトバンクニュースでは、『IT×ライフスタイル』をテーマに、暮らしに役立つ小ネタ、専門家やアーティストのインタビューなどを発信しています」

「お2人とも、上手です! でも、ここからさらに図解をレベルアップさせることができますよ」

そう言って日高さんが見せてくれたお手本がこちら。

【お題】「ソフトバンクニュースでは、『IT×ライフスタイル』をテーマに、暮らしに役立つ小ネタ、専門家やアーティストのインタビューなどを発信しています」

わぁ…! ソフトバンクニュースが何を発信しているのかが一目でわかる図解ですね。私たち、絵心がないんですが、それでも図解って上達するんでしょうか?

「もちろんです。図解に必要なのは絵心ではなく、相手にどうしたら伝わるだろうかという想像力を持つこと! それを具現化するために必要なのは、基本となる『3つのパーツ』をマスターすることだけです。とっても簡単なので気を楽にして、一緒にチャレンジしてみましょう!」

絵心はなくてもOK。覚えるのは「囲み」「矢印」「人」の3つパーツだけ!

さて、ここからいよいよ図解のレッスンスタートです。

さっきのお題では短い文章を図解にしてみましたが、図解には他にどんな使い道があるのでしょう?

「図解は、アウトプットだけではなくインプットにも使えます。アウトプットは、会議やプレゼンテーションの場で自分の考えを他人に示すときや、大量の情報をまとめて資料を作るときなど。そしてインプットとしては、ミーティング中にリアルタイムで議事録をとったり、情報収集したしながら図を使ってメモ書きしたり。複雑な内容を図解で残すことで、直感的に理解できるようになって便利なんです。まずは、情報を読み取り図解にするまでの流れを見てみましょう」

図解にするときのステップ

  1. 図解する対象全体の意味を「読み取る」
  2. 物事を分解・分類して、「キーワードを洗い出す」
  3. 囲み・矢印・人の「3つの基本パーツ」を駆使して構造化

絵心はなくてもOK。覚えるのは「囲み」「矢印」「人」の3つパーツだけ!

「図解する情報が文章、音声、動画など何であれ、まずは全体像を理解します。描く図解に盛り込むべき内容を把握したら、話のポイントを整理して図解に描き込むキーワードを洗い出す。あとはそれぞれのキーワードに、補足となるパーツを描き足して構造化するという流れです」

❷まではなんとなくできそうですが… ❸の「基本パーツを駆使して構造化」が難関に感じます。

絵心はなくてもOK。覚えるのは「囲み」「矢印」「人」の3つパーツだけ!

「大丈夫! 『囲み』『矢印』『人』の3つの基本パーツさえ覚えれば、難しいことではありません。例を見ながら、一緒にやってみましょう」

【基本パーツその①】囲み:丸や四角で囲むことで、文字をシンボル化

「そもそも図解は、キーワードとごくシンプルな図形で成り立っています。『囲み』を使うと、図にしにくいキーワードを一瞬でシンボル化することができるんです。例えば『顧客』『企業』『コミュニティ』という3つのキーワードがあったとして、これを丸で囲んでみるだけで… ただの言葉ではなく、質量のあるモノに感じられませんか?」

日高さんの図解例

あっ、本当だ! なんというか、パッと目に留まる存在感が生まれた気がします。

日高さんの図解例

「さらに、丸や四角など『囲み』の形を使い分けることで、図解の中で、そのキーワードがどんな立ち位置なのかを視覚的に理解できるようになります。例えばこの図解だと、とある組織の構造として『間接部門の中に人事部と総務部があり、間接部門の外には開発部と営業部が別にある』という情報がひと目見ただけでわかります。また、下の図のように『点線の囲み』を使うというテクニックもありますよ」

日高さんの図解例

「『点線の囲み』は、例えば内輪だけの話や未確定の事項、関係性を補足する言葉を入れるときに使うといいでしょう。この例では、『社員のストレスを減らすには、産業医と企業間で(月1回の報告レポート提出など)の連携が大切』といった情報が伝わってきますね」

【基本パーツその②】矢印:対象の関係性や力の流れが明確に

「『矢印』は、付け加えるだけで対象同士がどのような関係性なのか、物事がどう流れているのかが可視化できます」

矢印にも種類があるんですか?

「『矢印』のバリエーションは、たった3種類です。『流れ』は、矢印の方向に物事が移る様子を表したり、『原因→結果』のような使い方ができます。『双方向』は、矢印がつなぐもの同士のやり取りや交換など、両者の力が行き来するイメージ。『対立』は、両者が相反する存在で、例えば競合や対比の関係にあったり、お互いが対応しあうようなイメージも表現できますね」

日高さんの図解例

描き慣れている矢印がこんなに万能だったなんて!

【基本パーツその③】人:一気に具体性が増す。アレンジでさらなる表現も

「最後は『人』。絵心がないという方はここで不安になるかもしれませんが、描き方はとても簡単です。まず数字のゼロを描いて、その下に湾曲した1本線をつけます。はい、出来上がり」

【基本パーツその③】人:一気に具体性が増す。アレンジでさらなる表現も

1秒で人が描けちゃいましたね(笑)

「簡単でしょう? 数字のゼロと1本の線だけで描けるので、私はこの人のパーツを『ゼロワンくん』と呼んでいます(笑)ちなみに、頭の部分を少し面長にすれば大人に見えますし、逆にまん丸にすれば子どもを表すこともできますよ。『人』のパーツがあるのとないとでは、図解の伝わりやすさがこんなにも違います」

「人」のパーツがない場合

「人」のパーツがないパターン

「人」のパーツを加えた場合

「人」のパーツを加えたパターン

「ユーザー」に命が吹き込まれた感じがして、図解の具体性が増しますね。

「そうなんです。ゼロワンくんの何がいいかというと、圧倒的に目に留まりやすくなるんですね。生身の人がそこにいる、という感覚もより伝わってきます。さらに線を少し足してゼロワンくんに表情をつけると、もっと図解に厚みが出ますよ」

日高さんの図解例

感情が表現できると、良いことか悪いことかが一目瞭然ですね。これなら絵心がなくても描けそうです!

「この3つの基本パーツさえ押さえれば、図解は怖くありません。何度か練習したら、自分が書いた図解を他の人に見せてみましょう。『分かりやすいね』と言ってもらえればそれが自信につながり、どんどん図解力がアップしますよ!」

練習、がんばってみます!

【基本パーツその③】人:一気に具体性が増す。アレンジでさらなる表現も

「図解をすらすら描けるようになったら、上級編として、長時間の会議やブレスト、セミナーなどの議事録をリアルタイムで図解に起こしていく『グラフィックレコーディング(以下、グラレコ)』という技術に挑戦してみてもいいかもしれません。グラレコでは、スピーディかつ正確に情報を可視化していくことが求められます。図解とはまた別の訓練も必要ですが、図解で残る議事録は、動画や音声よりも一覧性があって振り返るときに非常に効率的。もしトライするなら、初めのうちは、解説系のYouTubeなどの動画やドキュメンタリー番組などを題材に練習してみるのがおススメですよ」

なるほど。あと、グラレコ特訓におススメの道具も知りたいです!

「皆さんはパソコンの画面を見ながら描く機会が多いと思うので、机の広さやパソコンの大きさによっては、描きやすいように横型のノートが使いやすいですよ。また、電子メモパッドや折り畳めるホワイトボードは、描いて消して繰り返し使える上に、持ち歩きにも向いていて便利ですね。タブレットで描くとしたら、PDFファイルに直接描き込みができるアプリを使うのがおススメ。特にオンライン会議の議事録をグラレコする場面では、参加者に画面共有しながら描き込めますし重宝しています」

【基本パーツその③】人:一気に具体性が増す。アレンジでさらなる表現も

図解は、みんなが同じ目線でコミュニケーションをとれる手段

図解は、みんなが同じ目線でコミュニケーションをとれる手段

図解って、描けるようになるとすごく楽しいですね! その場の空気も明るくなるし、コミュニケーションも活発になりそうです。

「オンライン会議でも、図解が役に立ちますよ。対面の会議ではその場の空気やボディランゲージで共有できていた感覚的なところが、画面上では伝わりづらかったりしますよね。そんなとき、話していた内容や考えていることをササッと図解して、自分の頭の中を見せることができると、相手との情報共有がスムーズにできるんです。オンライン会議のツールには、ホワイトボードのように手書きのメモを画面共有できる機能が使えるものもありますね」

図解は、みんなが同じ目線でコミュニケーションをとれる手段

図解を描くことで、自分の頭の中も整理できそうです。

「そうなんです! 複雑な話も図解すると全体像がはっきりして、情報の取りこぼしやミスにも気づきやすくなりますよ。そして何より、楽しさもある。受け手にとっては文字の羅列を読むよりも、図やイラストがあるほうが楽しく情報をインプットできますよね」

図解は、効率的で楽しいコミュニケーション方法なんですね。

「私は、経営者や管理職に就いている人ほど、図解を活用してほしいんです。組織の中でのポジションによって、思い描いているビジョンや抱えている思いは異なりますよね。人を束ねる立場にいる方々は、部下への伝え方に苦悩される場面もあると思うんです。でも、図解とは、みんなが同じ目線でコミュニケーションをとれる方法です。会社だけではなく、社会でも家庭でも、図解がみんなの共通言語になれるんじゃないかと私は考えています」

図解力は、誰かに「伝える力」。あなたも自分の考えを図解してみませんか?

(掲載日:2023年5月23日)
写真:大崎あゆみ
文:井上麻子
編集:エクスライト

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