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全ての避難所に入浴と手洗いを。WOTAの小規模分散型水循環システムを活用した災害支援

全ての避難所に、入浴と手洗いを。水循環システムを活用した災害支援

このたびの令和6年能登半島地震により被災された皆さまに、心からのお見舞いと一日も早い復興へのお祈りを申し上げます。

ソフトバンクは、WOTA株式会社やパートナー企業と協力して、能登半島地震の影響により断水したエリアを中心に複数の避難所などで、断水時でも利用可能な小規模分散型水循環システムを利用した手洗いや入浴支援を行っています。実際の設置状況や活用の様子を現地の写真などを交えご紹介します。

宮島 一哉(みやじま・かずや)

宮島 一哉(みやじま・かずや)

宍倉 健太(ししくら・けんた)

宍倉 健太(ししくら・けんた)

高橋 鉄平(たかはし・てっぺい)

高橋 鉄平(たかはし・てっぺい)

山下 頌太(やました・しょうた)

山下 頌太(やました・しょうた)

  • 所属は全員、ソフトバンク株式会社 法人事業統括 デジタルトランスフォーメーション本部 次世代インフラ事業推進部

一日でも早く快適な水環境を届けたい

避難所などで活用されているのは、断水時でも利用可能なポータブル水再生システム「WOTA BOX」と水循環型手洗いスタンド「WOSH」。「WOTA BOX」「WOSH」の設置や、「WOTA BOX」を利用したシャワーによる入浴支援の運用サポートを行う担当者に話を聞きました。

WOTA BOX

WOTA BOX

水道のない場所での水利用を実現する、ポータブル水再生システムです。独自の水処理自律制御技術により、排水の約98%を再生循環します。公衆浴場水質に準拠した水として供給でき、100L(リットル)の水で約100回のシャワー入浴が可能。

WOSH

WOSH

使った水をその場で浄化し再利用する、人にも、地球にもやさしい水循環型の手洗いスタンドです。特殊なフィルターによるろ過と、紫外線照射・塩素増加により、ウイルス・不純物を99.9%以上除去します。

WOTA BOX、WOSHに
ついて詳しくみる

1月1日の地震発生を受けて、1月4日から「WOTA BOX」の設置が始まりました。交通機関などのインフラが大きな影響を受ける中、どんな経緯で早い段階での支援を決めたのか教えてください。

宮島

「過去に発生した災害のときにもWOTA社と一緒に被災地支援に向かっていたこともあり、発災直後からWOTA社と連携し、被災地の状況把握に努め、支援をすることを決定しました。これまでの支援の経験から、社内の関係者やパートナー企業からも自主的に声がけいただいたのも大きかったと思います」

山下

「ソフトバンクのパートナー企業である株式会社Hatch PLANNINGから、被災地にボランティアに向かうので、ソフトバンクが持っているWOTA BOXを貸してほしいとの相談があり、出荷の手続きにすぐに取り掛かりました」

一日でも早く快適な水環境を届けたい

「WOTA BOX」は常にすぐに持ち出せる状態でスタンバイしていたのでしょうか。

山下

「ソフトバンクでは、いつ発生するか分からない災害に備え、CSRおよび物流の両部門と協力し、被災地支援用としてWOTA BOXを数台倉庫に保管していました。

今回の被災地支援でソフトバンクが設置しているWOTA BOXの全台をソフトバンクが所有している訳ではありません。現地では設置の要望がとても多かったため、過去にWOTA BOXを購入している自治体や企業などに協力を要請し、被災地に送ってもらったケースや、自主的に提供の申し出をしていただいたケースなどもあります」

避難所への道のりや宿泊先の手配はスムーズでしたか。

山下

「ソフトバンクが担当したのは、能登半島の南部にある志賀町と七尾市です。金沢から車で1時間15分程度のエリアで、寸断している道路が比較的少なく、交通事情としてはスムーズだったと思います。WOTA社やWOTA社のパートナー企業が担当していた北部のエリアは道路の寸断が多く、積雪も大きく影響していたため交通状況はかなり悪かったと聞いています」

高橋

「被災地の道路は、緊急輸送車両の通行が優先されているため、われわれの車両は少し待てば通れる状況でした。また金沢駅周辺に宿泊施設を確保できたので、そこを拠点にして、WOTA BOXを設置する避難所へ通いました」

いざ避難所に設置してからWOTA BOXを組み立てるのには、どのくらいの時間がかかるのでしょうか。

山下

「2名で15分程度で物としての組み立てが可能です」

一日でも早く快適な水環境を届けたい

一日でも早く快適な水環境を届けたい

水の確保はどのように行うのでしょうか。

山下

「避難所の状況次第で、使える水を選んでいます。今回は、例えば、給水車の水や、避難所に届けられた飲料水などが多く使われました。WOTA BOXの小規模分散型水循環システムは、海水以外の澄んでいる水であれば種水として活用可能なため、少量の水で多くの方が入浴でき、なおかつ大量に排水しないという点で災害時に大きな利点になると思います」

一日でも早く快適な水環境を届けたい

施設内スタッフや避難住民自身による自律運営を促し、温かいシャワーをより多くの人へ

設置されたWOTA BOXにはどんな反応がありましたか?

山下

「ボランティアの方や他地域から支援に来られている自治体職員など設置先のスタッフの方からは、『100Lで通常2人分の水量のところ、100人が入浴できる』ことへの驚きや、『短時間で設置できてびっくり』『思っていたより省スペース』『スタイリッシュ』などの声が上がりました」

施設内スタッフによる自立運営を促し、温かいシャワーをより多くの人へ

施設内スタッフによる自立運営を促し、温かいシャワーをより多くの人へ

宍倉

「設置先のスタッフさんから、『テレビで、避難所に設置されたWOTA BOXを中学生が受け付けや操作している様子を見ていて、自分たちのところに来るのが待ち遠しかった』とも言われました」

高橋

「ある福祉施設に設置したところ、職員さんが避難所でもWOTA BOXを使っている方で、『それならこのWOTA BOXは、私が操作方法を覚えますよ』と申し出てくれたので、職員さんにメンテナンス方法をレクチャーしてWOTA BOXを運用してもらったこともあります」

WOTA BOXで入浴された方の感想を教えてください

高橋

「避難生活は普段の生活とは違い肉体的にも精神的にもつらい状況です。そのような中で、入浴できたことで『水のありがたみを感じた』『シャンプーの香りで安らぎや癒やしを感じた』などの感想がありました」

宍倉

「初めてのWOTA BOXを前に、入浴前は心配そうな表情だった方が『1週間ぶりに入れたよ』など、出てくると笑顔になってくれて、こちらもうれしく感じました」

入浴時間は決まっているのでしょうか。

山下

「WOTA BOX1台を1人約15分で利用していることが多いようです。服を脱いで入浴してまた服を着るまでの時間を含んでいます」

施設内スタッフによる自立運営を促し、温かいシャワーをより多くの人へ

WOTA BOXの設置先はどのように決定されるのでしょうか。

山下

「十分な設置場所や水が確保できるか、灯油が調達できるか、メンテナンスできる人がいるかなど、事前に調整もしながら、現地に入ってからも自治体の方々とこまめに連携し合って必要とされている避難所へ設置先を広げていきました」

設置後のメンテナンスはどのくらいの手間がかかるのでしょうか?

山下

「水をろ過するフィルターなどは徐々に消耗していくので、定期的な交換や塩素補充などが必要ですが、かかる作業時間は各2〜3分程度です。循環させる水も、入浴するたびに体や髪についた水はタオルなどでふき取られていくなど徐々に減っていくので定期的な補充が必要です」

宮島

「メンテナンスが簡単なので、他の自治体から支援にいらっしゃっている職員や避難者の方にもやり方を覚えていただき、私たちがいなくても運用できるようにしてもらっています。避難所の方がどうすれば自分たちだけで運用ができるのか、どんな情報を提供すればいいのかなどを検討して、ツールの整備なども行いました」

宍倉

「例えば、病院などの医療機関では、看護師や施設管理者の方が日々のメンテナンスをしているところもあります。中学生がメンテナンスしているニュースを見て、これなら自分たちにもできそう、とやる気になってくれた方もいました」

施設内スタッフによる自立運営を促し、温かいシャワーをより多くの人へ

手洗いスタンドのWOSHについても設置状況を教えてください。

宮島

「WOTA BOXと同様に、WOSHも学校やコミュニティセンターなどの避難所の入り口やトイレの前、より衛生環境の整備が重視される医療機関や介護・福祉施設を中心に設置しています。水道が復旧したエリアでは、避難所の統合や閉鎖などがあるため適宜撤去し、新たに必要な場所への移設を進めています」

施設内スタッフによる自立運営を促し、温かいシャワーをより多くの人へ

支援活動を通じて、避難所生活における「入浴」について、どんなことを感じましたか。

高橋

「現場で感じたのは、入浴は、衛生環境を向上し健康状態を維持する一助でもあり、WOTA BOXがコミュニケーションを取る場もなっているということです。『気持ち良かったね』『何時から入るの?』など、何気ない会話が気分が落ち込んでしまうときのちょっとした支えになったりと、地域の助け合いの場になっていたように感じました。また、つかの間の個室空間が、精神面の安定にもつながっているようでした」

施設内スタッフによる自立運営を促し、温かいシャワーをより多くの人へ

宍倉

「私自身が以前台風の影響で停電したエリアにいたことがあり、数日、水でシャワーを浴びた経験をしたのですが、本当に苦しかったことを覚えています。そんな思いをしている方を救ったり、手助けすることができてよかったと感じています」

宮島

「WOSHを中心に設置活動をしていましたが、設置先でいつも感謝の声をもらいました。『本当に困っていた』『久々に水を流して手を洗えた』などの声を聞くと、水道の重要性を改めて感じ、被災地支援を通じて、水に関連する課題解決のプロジェクトを今後も推進していきたいと思いました」

施設内スタッフによる自立運営を促し、温かいシャワーをより多くの人へ

山下

「さまざまな自治体が災害備蓄品の対策を強化していますが、食料や飲料水の備蓄などが中心になっているのが実態です。

過去の災害においても、生活用水の確保ができず避難所の生活で困ったこととして入浴が挙げられていたり、入浴できないことで感染症のまん延やストレスなどが影響し災害関連死に至る可能性も考えられます。今回の地震をきっかけに、改めて『入浴に対する自助』としての対策を検討する自治体や企業などが増えてほしいです」

(掲載日:2024年3月4日)
文:ソフトバンクニュース編集部

ソフトバンクの被災地支援活動