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ご覧いただきありがとうございます。ソフトバンクの小柳です。
本記事ではAlibaba Cloud、AWS、Azure、Google Cloudへ既存サーバを移行する際に利用できる、各パブリッククラウド提供のサーバ移行サービスについて、概要と特徴を比較します。
パブリッククラウドへ自社サーバを移行したいけれど移行は難しいのではないか、システム移行をどうしたらよいかわからないという方は、ぜひご一読ください。
はじめに、パブリッククラウドのサーバ移行サービスとは何かについてご説明します。
自社で稼働するサーバをパブリッククラウド環境へ移行するには、稼働中の物理的なハードウェアを持っていくことはできません。
インターネットもしくは別の方法でクラウドに接続された環境があるなら、OS内のデータやOSのイメージをもとにしたデータを、パブリッククラウド環境へ複製して移行することができます。
ただし、コピーといっても日常利用しているパソコン上でデータをコピー&ペーストするのとサーバ移行では、サーバ移行のほうがデータ量が多かったりコピー中にサーバ側ではデータが更新されてしまったりするため、事情が違います。
そうしたサーバ移行の特殊なコピー処理を効率よく安全に行ってくれるのが、パブリッククラウド各社が提供しているサーバ移行サービスになります。
次にパブリッククラウドへのサーバの移行方法についてご説明します。
自社内で稼働しているサーバをパブリッククラウドへ移行するには、大きく分けて3つの方法があります。
1つ目は、各パブリッククラウドが用意しているサービスを使用して、既存サーバをクラウド上に移行する方法です。
2つ目は、新しくパブリッククラウド上でサーバを構築し、既存サーバからアプリケーションやデータだけを移行する方法です。
3つ目は、各パブリッククラウドが用意しているサービスを使わず、別のツールや方法を用いてサーバを移行する方法です。
細かいところでは移行元の自社サーバが物理的なサーバなのか、仮想化されたサーバなのかによっても移行時の手順が変わる場合がありますが、大別するとこの3つの方法になります。
これら3つの方法のどの方法で移行すればよいかというご質問については、3つの方法のメリットとデメリットを下表に記載しますので、参考にしていただければと思います。
・移行方法別のメリット、デメリット、ユースケースの比較表
| 移行方法 | メリット | デメリット | ユースケース |
|---|---|---|---|
| 移行サービスを使用する。 | ・手順通り進めることで、専門知識を必要とせず、移行を進めることができる。 ・データ移行や同期も同時にできる。 | ・OS内の構成を変更できない。 | ・移行のタイミングで新しいサーバのOS内の構成を変更しない。 ・社内でサーバ移行に対応できる人材がいない。 ・テストサーバでサービスを利用したテストができる。 |
| 新サーバを構築しアプリケーションやデータのみ移行する。 | ・切り替えに失敗した場合の切り戻しが、サービス利用に比べてコントロールしやすい。 | ・サーバの構築とデータの移行に手間がかかる。 | ・移行のタイミングで新しいサーバのOS内の構成を変更する。 ・社内の人材でサーバ移行に十分対応できる。 ・重要なシステムなため、トラブル発生時の長期化を避けたい。 |
| 移行サービスを使用せず、別の方法で移行する。 | ・移行サービスが必要とする要件を回避できる場合がある。 | ・手順を自分たちで確立する必要がある。 | ・移行サービスの要件を満たせず、サービスが利用できない。 ・社内の人材でサーバ移行に十分対応できる。 |
サービスを使用する場合は、画面の表示に従って情報を入力したり、選択していくだけになっており専門知識を必要としなくても移行できることが大きなメリットです。
デメリットはウィザードに従った操作になるため、移行のタイミングでOS内の構成を細かくカスタマイズしたいという場合は対応できず、あくまで「現在のサーバをそのままクラウドに持っていく」というクラウドリフトの考え方になります。
サービスを使用せず、あらかじめ新しいサーバを構築してデータのみ移行する場合は、移行方法の選定を含めて自分たちで段取りを整えて移行を行いますので、トラブル時のコントロールがしやすく、移行後のOS内の構成も移行前に自分たちが望む形にすることができます。
しかし、自分たちでサーバ構築やデータ移行方法を考慮しなければならないため、自社内で対応できる人材がいない場合はデメリットになります。
サービスを使用せず、別の方法でクラウドへサーバを移行する方法として、既存サーバをイメージ化し、そのイメージ使ってクラウド上でインスタンスを作成する方法が考えられます。
ただし、既存サーバをイメージ化して移行する方法では、実際には移行サービスが行っていることを自分たちで実行しているのと変わりがないため、サービスが定めている要件に抵触するのでサービスが利用できなかったり、予算上の理由でサービス利用が許されないといった事情がない限りメリットは低いでしょう。
移行サービスを使用した場合のいくつかの手順は、別の記事にまとめられていますので、そちらもご覧いただければと思います。
サーバ移行サービスと移行方法についてご説明しましたので、シェアの高いパブリッククラウドであるAlibaba Cloud、AWS、Azure、Google Cloudのサーバ移行サービスについて、概要や特色についての比較表とコメントを掲載します。
基本的な機能は各社横並びではありますが、サーバ移行サービスの挙動や料金部分に差があります。
※パブリッククラウドの比較表とコメントについては、アルファベット順で記載しています。
| Alibaba Cloud | Amazon Web Services | Microsoft Azure | Google Cloud | |
|---|---|---|---|---|
サービス名 | Server Migration Center | AWS Application Migration Service | Azure Migrate | Migrate for Compute Engine |
専用クライアントのインストール | 必要 | 環境次第で選択可能 | 環境次第で選択可能 | 必要 |
対応している移行元サーバのタイプ | 物理サーバ | 物理サーバ | 物理サーバ | 物理サーバ |
対応している移行先のサービス | Elastic Compute Service | Amazon EC2 | Azure Virtual Machine | Compute Engine |
移行後のOSライセンス | BYOL | BYOL | PAYG / BYOL | PAYG / BYOL |
料金 | Server Migration Center自体は無料。 | 最初の90日間無料。 | Server AssessmentとServer Migrationは、最初の180日間無料。 | Migrate for Compute Engine自体は無料。 |
注意が必要な事項 | ・Linux LVMのパーティションは複製できません。 | ・一部古いOSはサポートされません。 | ・Server Assessmentでは180日が経過するとLog Analyticsの料金がかかり、Server Migrationでは各仮想マシンごとに料金が発生します。 | ・バージョン5.0では、VMware環境のみをサポートしており、他クラウドや物理サーバからの移行をサポートしていません。 |
クラウド移行の資料 |
Alibaba Cloudは、日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、世界やアジアでも指折り、中国では圧倒的なシェアを誇るパブリッククラウドサービスです。
Alibaba Cloudには、中国国内での利用がメインの「中国サイト」と、中国国外向けの「国際サイト」の2つのサイトが存在します。2つのサイトの違いは、サービスを運営する企業が異なることで、日本から利用する場合は、Alibaba Cloudシンガポールが運営している「国際サイト」が主に利用されます。
Alibaba Cloudでは、Server Migration Centerというサービス名で移行サービスが提供されています。
Server Migration Center1つで、移行元のサーバをクラウドに移行したり、Alibaba CloudのContainer Registryに移行してコンテナ化することもできます。
Server Migration Centerでは、移行の過程で中間インスタンスを作成し、この中間インスタンスも従量課金で料金が発生する点には注意が必要です。
Alibaba Cloudでは中国向けのサイトとそれ以外の国際サイトでサービスを運営する企業が異なっているため、サイトのアカウントも別になっています。
ご相談いただくこともあるのですが、中国サイトと国際サイトのサイト間でサーバ環境を再構築せずに移行したい場合にも、Server Migration Centerを利用して環境を移行することができます。
Amazon Web Servicesは、ECサイトで有名なAmazon関連のAmazon Web Services社が提供しているパブリッククラウドサービスで、通称AWSと呼ばれています。パブリッククラウドの分野では、世界シェア1位で業界の第一人者でもあります。
AWSでのサーバ移行サービスは、以前はCloudEndure Migrationというものが提供されていましたが、現在はAWS Application Migration Serviceの使用が推奨されています。
AWS Application Migration Serviceでは、移行の過程において、テストインスタンスや、カットオーバーインスタンスというものを作成して移行します。テストインスタンスやカットオーバーインスタンスのリソースにも料金がかかるなど、他のクラウドでは無い概念のため注意が必要です。
サーバ移行サービス自体の比較ではないのですが、今回比較しているクラウドの中では唯一、System Managerを使用したWindowsのインプレースアップデートに対応しており、サポート終了を2023年10月に控えているWindows 2012ユーザには心強い環境でしょう。
Microsoft Azureは、Windows OSやOfficeソフトで有名なMicrosoft社が提供しているパブリッククラウドサービスで、Azureはアジュールと読みます。
Microsoft Azureでは、Azure Migrateという名前でサーバ移行サービスが提供されています。
Azure Migrateでは移行を評価するServer Assessmentと実際に移行を行うServer Migrationに分かれており、事前に移行できるのか評価できるのはよい点です。
移行サービス自体の比較ではないのですが、Microsoft AzureへWindows環境を移行すると、拡張セキュリティ更新プログラムが最長3年間無料で提供されます。サポートがこれから切れてしまうWindowsでも、今後も更新プログラムが提供されるのは、他クラウドには無いメリットです。
ただし、Azure Migrateでは移行のためにエージェントをインストールするか、インストールしないかを選択できますが、既存のサーバとは別にアプライアンスが必要になり、アプライアンス用のリソースの確保を考えると他のサービスよりもしきいが高くなっています。
もし、アプリケーションだけを移行する場合は、App Service Migration Assistantを使用して、Azure App Serviceに移行できます。
コンテナへの移行サービスは、2022年8月現在は用意されていません。
Google Cloud は、検索エンジン、Gmail 、YouTube などを提供しているGoogle 社が提供しているパブリッククラウドサービスです。
通称GCPと呼ばれていますが、これは2021年までの名称だった Google Cloud Platform から来ています。
Google Cloudでは、Migrate for Compute Engineという名前でサーバ移行サービスが提供されています。
最新のバージョン5ではVMware社のvCenterやESXiの移行のみに対応するなど、既存のVMware環境の移行を強力にサポートしています。
一つ前のバージョンでの利用になりますが、もちろんVMware以外の環境からの移行もサポートしています。
Google Cloudのコンテナサービスに移行する場合は、Migrate to Containers。アプリケーションだけを移行する場合は、Application Migrationと、移行先に応じて使用するツールが分かれているものの豊富な移行サービスが提供されています。
本記事では、パブリッククラウド各社が提供しているサーバ移行サービスに焦点をあてて説明しましたが、実際のシステム移行では、サーバ移行の前後に調査、関係者へ周知連絡、切り替え、既存環境の終了といったステップを踏むことになります。
確かにパブリッククラウド各社が用意している移行サービスを利用することで、ある程度は移行作業者の負荷を軽減することはできます。
しかし、移行プロセス全体を考えた場合、パブリッククラウド各社が用意している移行サービスを利用することが必ずしも最適とは限らないため、自社環境にあった移行方法を検討いただき、最適な方法を選択いただければと思います。
Alibaba Cloudは中国国内でのクラウド利用はもちろん、日本-中国間のネットワークの不安定さの解消、中国サイバーセキュリティ法への対策など、中国進出に際する課題を解消できるパブリッククラウドサービスです。
ソフトバンクはAWS アドバンストティアサービスパートナーです
「はじめてのAWS導入」から大規模なサービス基盤や基幹システムの構築まで、お客さまのご要望にあわせて最適なAWS環境の導入を支援します。
Microsoft Azureは、Microsoftが提供するパブリッククラウドプラットフォームです。コンピューティングからデータ保存、アプリケーションなどのリソースを、必要な時に必要な量だけ従量課金で利用することができます。
Google サービスを支える、信頼性に富んだクラウドサービスです。お客さまのニーズにあわせて利用可能なコンピューティングサービスに始まり、データから価値を導き出す情報分析や、最先端の機械学習技術が搭載されています。
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