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年間16.5日のムダ時間を削減!? 片づけのプロに学ぶ“かたづけ思考”とすぐ使える実践テクニック

片づけのプロ 小松易(こまつ・やすし)さんに学ぶ“かたづけ思考”と、オフィスですぐに使えるコツや実践テクニック

デスクの上が書類や文具で散らかっている、そこのあなた! 1日に何回も探し物をしていませんか? さらに、PCのデクストップやフォルダの中身も散らかっていると、探し物をしているムダな時間は、どんどん膨れ上がっていきます。

今の時代のビジネスパーソンなら、アナログもデジタルも整理できていてこそ一流。「片づけのプロ」からノウハウを学び、デスクとPC内のデータ整理をマスターしていきましょう。

目次

今回の登場人物

片づけのプロ かたづけ士:小松 易(こまつ・やすし)さん

かたづけ士:小松 易(こまつ・やすし)さん

日本初の「かたづけ士」。2005年、“かたづけ”を通して人生を変えるコンサルティング「スッキリ・ラボ」を開業。経営者・企業向けのかたづけコンサルティング、セミナー活動を通して、今まで延べ2万人以上に講演・研修を行っている。

  • 小松さんには、タイアップでご協力いただきました。
片づけないと年間16.5日ものロスが!?

仕事をする上での、ムダな時間の代表格は「探す時間」。これまで小松さんが約500社で行ってきた研修・コンサルティングのデータによれば、「あの書類はどこに置いたっけ?」「あのデータが見つからない……」というように、1時間につき4〜5分探している場合、1日で約30分以上を探し物に費やすことになります。

1日8時間勤務の場合で年間に換算すると、なんと30分×22日×12カ月=132時間(16.5日)ものロスに。その時間を削減し、生産性の向上や効率化につなげられることが、片づけの一番のメリットと言えるでしょう。

(参考文献:「かたづけ思考」こそ最強の問題解決(39ページ))

デスク編①:片づけの基本は「整理」「整頓」「維持」の3ステップにあり

まずは、小松さんと一緒に物であふれたデスクを片づけながら、快適な仕事環境を作るための基本を教えていただきました。

実際に片づけを始める前に、基本的な考え方を教えてください。

「整理」「整頓」「維持」の3ステップを習慣化することです。まずは、物を減らす「整理」。次に、物を取り出しやすく使いやすい状態にする「整頓」。そして、リセット(整理と整頓のこと)後にその状態を「維持」することで、片づけは成功します。

「整理」をするときは、どのように進めていけばいいですか?

整理には「① 外に出す」「② 分ける」「③ 減らす」「④ しまう」の4つのステップがあります。順番に見ていきましょう。

① 外に出す

「文房具を入れている引き出し」「書類を入れている引き出し」など、整理する場所を決めて、そこにしまってある物をすべて外に出しましょう。

デスクの上が物であふれている場合は、空いているデスクや床の上など、広いスペースを取れる場所を活用してもよい

② 分ける

整理の一番のポイントは、“思考を止めない”こと。このステップでは、「使った」「使わなかったか」を判断基準に分けていきましょう。整理の目的は“物を厳選する”こと。つまり、この「分ける」が一番重要なステップになります。

「使った」か「使わなかった」の判断基準の目安

  • 文房具:1カ月間
  • 書類:半年間または1年間※1
  • 本:1年間
  • 名刺:顔を思い出せるかどうか※2
  • ※1使用期間は職種やプロジェクトの内容によって変わるため、仕事に合わせて設定する
  • ※2名刺の場合は、上記の判断基準とは異なるので注意

少し大きな布と、分ける基準を書いた紙で「分別するシート」を用意しておくと、直感的に判断しやすい


文房具と名刺の場合。なお、名刺は「使った」「使っていない」では分けられないので、「顔が思い出せるか」「顔が思い出せないか」を判断基準にします。

左:本の場合/右:書類の場合

どうしても判断できない物がある場合は?

先ほど、思考を止めないことが大切とお話ししましたが、1アイテムにつき15秒以内で判断するように意識してください。あまり考えすぎず、どうしても悩む場合は「保留」にします。保留と判断した物は、1カ月後の「〇月▲日」など特定の期限を設定して、その日までに一度向き合うようにしましょう。

最初は文房具など、判断が簡単な物から取り掛かるのがオススメです。リズム良く手を動かしているうちに、素早く判断できるようになってきますよ。

「使った」「使っていない」のほかに「保留」のコーナーも用意しておくとなお良し

③ 減らす

②の「分ける」のステップで「使わなかった」と判断した物は、まさに「減らす」対象。捨てるのか、人にあげるのか、家に持ち帰るのか……1アイテムごとに、「二次仕分け」をしていきます。会社の場合、使わない文房具やストックは備品棚に戻すという選択肢もありますね。

二次仕分けの例

  • 使いかけのペンや付せん紙:捨てるか必要な人にあげる
  • クリップやホチキス針などの消耗品:会社の備品棚に戻す
  • デザイン性が高いけれど使いにくい文房具や雑貨:家に持ち帰る
  • 写真や装飾品など:家に持ち帰る
  • 読み終えた書籍:家に持ち帰る、他の人に読んでもらう(あげる)

④ しまう

そして最後のステップは「しまう」。「使った」に仕分けた物を、ひとまずそのまま元の場所に戻しましょう。いったん、ここで「整理」が完了です。

デスク編②:整頓は「欲しい物が一瞬で取り出せるか」が勝負!

整理が終わったら、次は整頓ですね。整頓にもいくつかステップがあるのですか?

整頓には「分類」「配置」「収納」の3つのステップがあります。整頓とは、端的にいえば“物を使いやすい状態にする”こと。使いやすい状態とは、欲しい物を瞬時に取り出せる状態のことです。まず、整理で厳選した物をグループ別に「分類」します。次に、デスクサイドのキャビネットの1段目は文房具入れ、2段目は小物入れ、3段目は書類入れというふうに、エリアごとに「配置」していきます。

今回は、最上段の引き出しは使わないことを前提にしています

「収納」のステップで意識したいのが、“機能性”と“美観”です。この2つを意識して収納することで、より効率良く、快適に仕事ができるようになるからです。基本として、使用頻度の高い物を手前に、使用頻度の低い物を奥に置くことを心掛けましょう。

ペンや付せん紙など、使用頻度の高い文房具は、すぐ取り出せる場所に収納しておくと効率的

小松「本は背表紙が見えるように立てて収納し、ブックエンドで支えましょう。平積みすると、どのような本を持っているか把握しにくくなり、探す手間がかかります。『2段目の引き出しの半分まで』など、あらかじめ本を収納する区画を決めておき、それを超えたら整理する、といったルールを決めておくと良いですね」

筆記用具の収納法、正解は?

ペン立ては、使いたい時にすぐにペンを取り出せて便利な反面、使わないペンや文房具をどんどん詰め込んでしまい、物が増える原因になります。物を増やしたくない方は、ペンケースを利用するといいでしょう。PCに集中したいときは引き出しの中にしまっておけますし、会議の時はサッと持ち運びができてスマートです。

片づいたデスクを維持し続けるためのテクニック

整理・整頓ができても、数カ月後に元の状態に戻ってしまうと意味がありませんよね。美しい状態を維持するためには、どのような行動や心掛けが必要ですか?

美しい状態を維持するための鉄則は「使ったらすぐしまう」「しまう場所を決める」「物を減らす」の3つです。物の定位置を決めて、使ったらすぐに定位置に戻す。欲しい物をいつでも取り出せるように、平積みではなく立てて収納する。物が1つ増えたら、1つ減らすようにする。
手元に来た書類を、デスクに置く前に選別するというのも、片づけのパターンの好例ですね。空中で選別するため、私はこれを「空中選」と呼んでいます(笑)。

空中選! ちょっとカッコいいです(笑)。

後でまとめて整理・整頓するのではなく、物を使うたびにこういった判断ができれば、デスクが物であふれかえるような状態にはなりません。

整頓グッズも活用しよう

「物を増やさないためにも、整頓グッズの使用は推奨しません」と小松さん。しかし、「ファイルボックス」「紙製フォルダー」「クリアフォルダー」「強粘着の付せん紙」の4つは、書類の整頓のために役立ってくれるそう。プロジェクト名や、どのフェーズの書類かを付せん紙に書いて貼っておけば、必要な書類にすぐにアクセスできます。書類をとじて保管したい場合は「ファスナー」を使用しましょう。

デスクも無事スッキリしました

PC編:デスクトップの厳選方法に、フォルダ/ファイルのネーミング。PCの片づけテクニック集

デスクがきれいになっても、PCの中身が散らかっていては、当然仕事のパフォーマンスは上がりません。先ほどのデスクの片づけメソッドは、果たして「データ」の片づけにも活かせるのでしょうか?

PC内のデータも、デスクの片づけと同じように「整理」「整頓」「維持」の3ステップで考えてよいのでしょうか?

はい。基本的には、デスクの片づけと同じです。データを整理するときは「外に出す」作業は必要ありませんので、「分ける」作業から始めましょう。

このように、デスクトップ上にたくさんのフォルダやファイルが散らばる理由は、片づけの習慣ができていないからです。作成したファイルやダウンロードしたファイルを格納せずに、とりあえずデスクトップに置く癖がついているんですね。この癖を一度リセットするために、フォルダやファイル、アプリケーションのショートカットなど、デスクトップに置くものを厳選していきます。

データを削除するのは、けっこう勇気が要るのですが……。

小松「データは一度削除してしまうと、復元が難しいですよね。そのため「ゴミ箱に入れるのも慎重になってしまう」という声をよく聞きます。そういう方は、『仮ゴミ箱』という名前のフォルダを作って、そこに仕分けていくことをオススメします」

「分ける」作業をするときの判断基準は?

デスクと同じように「使った(開いた)」「使っていない(開いていない)」を判断基準にしてください。古いバージョンのファイルをすべて残しておく方がいらっしゃいますが、最終バージョンさえ残っていれば問題ないはず。半年や1年など期限を決めて、開いていないファイルは「仮ゴミ箱」に入れていきましょう。

デスクトップがきれいになったら、各フォルダ内の「整頓」が必要ですよね。データを取り出しやすくするために、どのようなフォルダ名やファイル名を付けるべきですか?

そのフォルダやファイルを探す時に、どのような名前なら探しやすいか考えてから、名前を付けるといいですね。1社とのやりとりならば「20190430_顧客名」というふうに、日付を先に。複数の顧客とやりとりする場合は「顧客名_20190430」のように、顧客名を先にした方が探しやすいかもしれません。

ただし、顧客名を先に入力すると、あいうえお順にうまく並ばないことがあります。その場合は、あらかじめ顧客番号を決めておき「01_顧客名_20190430」と数字を先に入力するといいでしょう。一番上に表示したいものについては、「★」などの記号を頭に入れておくのもオススメです。

フォルダは、プロジェクトの前・中・後で考える

プロジェクトの資料などを保管する場合は、「01_前」「02_中」「03_後」という3つの大きなフォルダを作るのがオススメです。企画書などプロジェクトが始まる前の資料は「01_前」、今まさに進行中の資料は「02_中」、納品物や分析資料などは「03_後」に入れておくと、後からファイルを探しやすくなりますよ。

他に、データの片づけで気を付けるべきことはありますか?

プログラムをインストールするときに、ダウンロードフォルダを一度経由しますよね。インストールが完了すれば、その圧縮フォルダは必要なくなりますが、なぜかダウンロードフォルダに入れっぱなしにしている方が多いんです。

「圧縮フォルダを削除したら、何かトラブルが起きるんじゃないか」と思って取っておくようですが、削除しても問題はありません。ダウンロードフォルダも、使用後すぐにに整理・整頓して、きれいにしておきましょう。

パスワードの管理方法

パスワードの管理はエクセルシートで行うのがオススメです。下の表のように、項目・ID・パスワードを一覧で見られるリストを作成しましょう。更新したときのために、PW1/2/3のようにパスワード欄を複数設け、最終更新日を記載しておくと分かりやすいです。なお、パスワード管理用のエクセルシートにはロックをかけて、そのパスワードは頭の中で覚えておくこと。

できるビジネスパーソンの秘訣は「引き出し能力」&「結び付け能力」

「できる人のデスクは、いつもすっきり片づけられています」と小松さんは言います。多くの企業で“かたづけコンサルティング”を行ってきた小松さんに、これからの時代のビジネスパーソンに必要な力について、お聞きしました。

「デスクやデータが片づいた環境」と「仕事のパフォーマンス」には、どのような関係性があるのでしょうか。

デスクやデータの状態と、仕事の状態、頭の中の状態は、常に連動しています。デスクやPCの中が物やデータであふれていると、視覚情報が乱れて、集中力が妨げられる。それによって仕事の優先順位を見極められなくなったりすれば、仕事のパフォーマンスも落ちていきます。常に何かに追われているような焦燥感に駆られ、余裕がなくなり、「忙しい」ことを理由に片づけが滞っていくのです。

身に覚えがあります……。

そもそも「かたづけ」という言葉には、物や仕事を厳選してリセットする「片づけ」、習慣化を促し理想の仕事環境を維持する仕組みをつくる「型づけ」、ワークスタイルや目指したい生き方を方向づける「方づけ」といった3つの意味が込められています。

物が片づき、片づいた状態を維持し、理想のワークスタイルが確立される……といったサイクルを繰り返すことで、「かたづけ思考」は磨かれていきます。片づいた状態がゴールと考えずに、それを習慣化し、意識しなくとも物が片づく状態を目指してくださいね。

そうして手に入れた「かたづけ思考」は、具体的にどのようにビジネスシーンで活かすことができるのでしょうか。

「かたづけ思考」が身に付くと、頭の中の整理・整頓がうまくなり、情報の「引き出し能力」が高くなります。会議で話を振られたときに説得力のある意見を言えたり、企画書を書いている時にいい言葉が浮かんできたりする人は、インプットした知識や言葉を適切なタイミングで引き出せる能力が高いんですね。

あらゆる職業にとって重要な能力ですね。

さらにこれからの時代は、引き出した知識と別の知識を結びつける「結びつけ能力」が求められるようになっていくでしょう。これは「くくり力」や「企画力」とも言い換えられるかもしれませんね。既にある物同士を結びつけて、新しい価値観として提示する力は、ビジネスパーソンにとってきっと大きな強みになるはずです。

小松さんの「かたづけ思考」をもっと知りたくなったら

片づけを通して部屋、デスク、心を綺麗にすれば、人生さえも好転していく! 小松さんのメソッドがマンガで楽しく学べる、片づけ初心者に最適な一冊。

事例や対策を豊富に交えた、小松さんの最新「かたづけ思考」が詰まった一冊。チームのリーダー向けですが、リーダー以外の方にも役立つ、片づけ情報が満載です。

スマートなビジネスパーソンを目指して

ソフトバンクでは現在、社内スローガンとして「Smart & Fun!」を掲げ、“スマートに楽しく仕事をして、よりクリエーティブ、よりイノベーティブなことへ取り組める状態”を目指した「働き方改革」に取り組んでいます。皆さんの職場でも、今回紹介した「かたづけ思考」を個人からチームへと広げていくことで、よりスマートなワークスタイルを実現できるかもしれません。

ソフトバンクが取り組む
スマートワークスタイルを詳しく知る

(掲載日:2019年9月18日)
文:佐藤由衣
編集:エクスライト
撮影:山野一真