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船がテクノロジーで進化する瞬間がここに。衛星通信や高精度測位で変わる、海上DXのミライ

船がテクノロジーで進化する瞬間がここに。衛星通信や高精度測位で変わる、海上DXのいま

街、山、島……。

どこへ行っても、ほぼネットワークに繋がる現代。ところが、それは陸の話。実は、海上ではほとんどネットワーク環境が整備されていません。

そこで、「海上DX」と銘打ち、電気推進(EV)船の開発を行う株式会社e5(イーファイブ)ラボが大規模な実証試験を実施。ソフトバンクの通信技術で船内のネットワーク環境整備を図り、船内でネットワークを利用するサービスと連携させることで、新たな事業や価値創造への道筋を示しました。

今回の実証実験

船舶に平面アンテナおよびローカル無線局を設置し、既存の通信衛星を伝送路にした通信試験を実施。実施した試験内容は以下の5つ。

  1. 通信衛星を活用した海上通信の実現性検証
  2. 衛星/セルラーのハイブリッド通信の実現性検証
  3. 小型軽量平面アンテナ搭載・運用の実現性検討
  4. 衛星帯域の利用効率検証試験
  5. 船舶向けデジタル/メディカルソリューション・IoT機器の効果検証

実証実験が行われたのは、東京湾付近。

多くの家族連れが休日を楽しむ、商業施設のど真ん中に佇む一隻の船。一見、何の変哲もない普通の船に驚くべきテクノロジーの数々が搭載されていました。

船がテクノロジーで進化する瞬間がここに。衛星通信や高精度測位で変わる、海上DXのいま

早速、船に乗り込もうとすると……。

船がテクノロジーで進化する瞬間がここに。衛星通信や高精度測位で変わる、海上DXのいま

天井に何かある……?

ソフトバンク 衛星事業推進部 担当部長 押田さん

ソフトバンク 衛星事業推進部 担当部長 押田さん

「これは、最適な海上通信を提供するために、衛星通信とセルラー通信の電波を受信する平面アンテナ。皆さんがよく見かける、中華鍋のような形状のパラボラアンテナと比べて、サイズも小さく低コストなので、小型船のような設置条件が限られている船体にも取り付けやすいんですよ」

船がテクノロジーで進化する瞬間がここに。衛星通信や高精度測位で変わる、海上DXのいま

高度なアンテナ技術を有するKymeta社のものを使用

陸地から近い位置では基地局からセルラー通信を受信し、陸から離れると衛星通信を受信します。電波状況に合わせて適切な通信方法を切り替える「ハイブリッド通信」を実現しているとのこと。

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そして、出港へ。船の遠隔操作や衝突事故の減少をサポートする、小さくても力持ちな高精度測位端末

船がテクノロジーで進化する瞬間がここに。衛星通信や高精度測位で変わる、海上DXのいま

ゆらゆらと東京湾の波に揺られながらデッキへ移動すると小型の端末を発見。

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よくよく探してみると、船尾に2台、デッキに2台設置されていました。

これは、高精度測位サービス「ichimill」のGNSS受信機といわれるもの。゙全国に設置された3,300以上の独自基準点で衛星の信号を受け、正確性・安定性に優れ、誤差わずか数センチの位置情報の測位が可能になります。

誤差わずか数センチの位置情報を提供する「ichimill(イチミル)」

準天頂衛星「みちびき」などのGNSS※1から受信した信号を利用して、RTK測位※2を行うことで誤差数センチメートルの測位を行うことが可能です。

  • ※1GNSS(Global Navigation Satellite System)とは、QZSSやGPS、GLONASS、Galileoなどの衛星測位システムの総称
  • ※2RTK(Real Time Kinematic)測位とは、固定局と移動局のふたつの受信機を利用し、リアルタイムに2点間で情報をやりとりすることで、高精度での測位を可能にする手法のこと

船がテクノロジーで進化する瞬間がここに。衛星通信や高精度測位で変わる、海上DXのいま

ソフトバンク 5G&IoTソリューション本部 舟井さん

ソフトバンク 5G&IoTソリューション本部 舟井さん

「船体の4隅に受信機を設置することで船の位置だけではなく、船体の向きや傾きもセンチメートル単位で取得することができます。航路の軌跡を取ることはもちろん、船の衝突事故防止にも。特に、船の運転で一番神経を使う着岸時の船体操作も、『ichimill』を使うことで精度の高い操舵アシストが実現できると考えています。今後、船舶の遠隔操作、自動運行にも応用していきたいですね」

船がテクノロジーで進化する瞬間がここに。衛星通信や高精度測位で変わる、海上DXのいま

緯度・経度などの位置情報はパソコンやタブレットなどでリアルタイムで確認可能

他にも、長い航海中で孤独になりやすい船員向けのメンタルケアロボットや、新型コロナウイルス対策用の「抗菌・抗ウイルスフィルター」なども設置されていました。

船がテクノロジーで進化する瞬間がここに。衛星通信や高精度測位で変わる、海上DXのいま

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e5ラボ CTO 末次さん

「この試験結果を踏まえて、e5ラボとソフトバンクで、通信衛星や次世代通信衛星を利用した海上ブロードバンドサービスの商用化と普及に向けて、日本の海運業界の持続的な発展および新たな事業や価値創造へつなげていきたいですね。また、日本だけではなく、世界のマーケットも狙っていきたいです!」

船がテクノロジーで進化する瞬間がここに。衛星通信や高精度測位で変わる、海上DXのいま

(掲載日:2020年12月2日)
文:ソフトバンクニュース編集部