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テレワーク開始から1年以上。いまだに正解がわからない... 自宅オフィス環境のお悩み相談室

テレワーク開始から1年以上。 いまだに正解がわからない... 自宅オフィス環境のお悩み相談室

2020年春以降、新型コロナウイルス感染予防のために、多くの企業がテレワークの導入を始めました。自宅で仕事をするのにすっかり慣れたという人がいる一方で、テレワーク開始から1年以上たつ今でも、「自宅では仕事がはかどらない」「仕事環境にしっくりきていない」といった声を耳にします。

そこで、テレワークでよくあるお悩みを、人間工学の専門家である伊藤勝弘さんに相談してみました。人間工学は、人間の体の特性を考えて、働きやすい職場・生活しやすい環境を実現することや、安全で使いやすい道具・機械などをつくることに役立てる、実践的な科学技術です。自宅でより健康的に、快適に働くためにはどうすればいいのか。すぐに取り入れられる、実践的なアドバイスをいただきました!

すぐにお悩みの解決策が知りたい人はこちらからどうぞ

今回教えてくれた専門家

伊藤 勝弘(いとう・かつひろ)さん

人間工学専門家/整体師
伊藤 勝弘(いとう・かつひろ)さん

オフィス家具メーカーに入社し、商品企画、マーケティングなどに携わった後、「疲労軽減」「使いやすさ」「安全性」「生産性向上」をコンセプトに、人間工学の視点からオフィスや在宅でのワークスタイル、商品開発、健康管理に関するアドバイスを行う。人間工学に基づく最適なワークスタイルや身体に負担をかけない商品のデザイン監修、「人間工学に基づくテレワーク環境提案」などのテーマで情報発信。企業向けセミナーなどの実績多数。日本人間工学会 認定人間工学専門家。日本人間工学会 ワーク・アーゴノミクス研究部会メンバー。

  • 取材はオンラインで実施しました。

テレワークが負担になっていませんか?

2020年から続く、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、多くの人の働き方や暮らし方が変わりました。なかでも、日本で急速に広がったのは「テレワーク」です。オフィスに出社せず、自宅を仕事場にするスタイルは、まったく珍しいものではなくなりました。

これにより、感染予防だけでなく、通勤にかける時間を節約できたり、満員電車のストレスからも解放されたりと、さまざまなメリットを感じている人もいるでしょう。その一方で、テレワークにいまだに慣れない、しっくりこない、という人もいます。

伊藤 勝弘(いとう・かつひろ)さん

「自宅とオフィスでは大きく環境が異なります。例えば、長時間の作業に適した机や椅子などを持っていないので、首や肩・腰などを痛めてしまったという人は多いですね。あるいは、一日中パソコンを見て仕事をして、休憩時間にはスマホやテレビを見て…と、目を酷使してしまっている人。あとは、仕事とプライベートが分けにくく、気持ちの切り替えができないことに悩んでいる人もいます」

実際に立てる収納やPCスタンドを使ってみました

なんだか働きづらい……。自宅オフィスの一例

伊藤流! 自宅での仕事環境を整えるための3つのポイントとは?

ポイント① 正しい姿勢を取りやすい環境に。長時間のデスクワークで、体にかかる負担を軽減しましょう

長時間、同じ姿勢で作業を続けると、首や肩、腰など体のさまざまな部位に負担がかかってしまいます。改善のためには、まず正しい姿勢を取りやすい環境をつくること。さらに、体の各所にかかる負担をうまく分散させる、サポートアイテムも活用しましょう。

ポイント① 正しい姿勢を取りやすい環境に。長時間のデスクワークで、体にかかる負担を軽減しましょう

ポイント② 光の強弱に注意。窓の位置やモニターの輝度調整で適切な明るさを

テレワークになって、前よりも目が疲れるなと感じるなら、部屋の明るさが適切に調整されていない可能性があります。部屋の照明はもちろん、窓との位置関係やモニターの輝度調整なども関係してきます。

ポイント② 光の強弱に注意。窓の位置やモニターの輝度調整で適切な明るさを

ポイント③ 視覚や聴覚からアプローチ! 仕事に集中できる環境づくり

自宅に書斎などがあればいいですが、仕事をする場所とプライベートな空間を分けられない場合は、気が散ってしまい、仕事モードがなかなかオンにならないという人もいるでしょう。自分が集中するためにはどのような環境が必要なのか。視覚や聴覚などさまざまな面からアプローチしてみましょう。

ポイント③ 視覚や聴覚からアプローチ! 仕事に集中できる環境づくり

続いて、実際にテレワークに取り組んでいる人が抱えているお悩みに対して、伊藤さんからアドバイスをいただきます。

お悩み① 体のコリや痛みをなんとかしたいのですが、どうすればいいでしょうか?

長時間デスクワークをしていると、首や肩がどうしても痛くなります……。何か負担を軽減する方法はありますか?

回答① 自分に適した高さを把握し、パソコンスタンドやクッションで調整を

伊藤 勝弘(いとう・かつひろ)さん

「自然で無理のない姿勢を取れるように、机や椅子、パソコンのモニターの高さを調整することが大切です。自宅の場合は、部屋のスペースや机・椅子などの条件によって、以下のようなポイントを押さえましょう」

ワークチェアを使用する場合

  • 体形に合わせて、座面の高さを調整する
  • 姿勢の変化に対応するため、安定していて、簡単に移動できる椅子を選ぶ
  • 上半身を支える背もたれがある椅子を選ぶ
  • 背もたれを体にフィットさせ、腰をサポートできるように座る位置を調整する
ワークチェアを使用する場合

出典 日本人間工学会ワークアーゴノミクス研究部会編:在宅ワーク/在宅学習実施事のFAQ.2020

伊藤 勝弘(いとう・かつひろ)さん

「足はしっかり床につけ、目からモニターまでの距離は40cm以上が理想的。人間は常に真っすぐ正面を向いて座っているわけではなく、体をひねったり、前後左右に動いたりする動作が発生します。そのため、体に合わせて自然と動かせる椅子の方が、負担がかかりません。できれば、キャスター付きのものや座面が回転する椅子がおすすめです。椅子の高さ調整も重要なポイントです。机に対して座る位置が高いと、前傾姿勢になって腰や肩に負担がかかり、低すぎると、腕が高く上がり、見上げるような姿勢になるので、腕や首に負担がかかります」

伊藤流!ワークチェアを選ぶときのポイント

体にかかる圧力を分散させられることが重要。背もたれがしっかりあることが基本で、ヘッドレストやアームレストなどが付いているとより良いでしょう。自分の体に合っているものを選ぶことも大切です。座面を前後にスライドさせられるタイプであれば、座る人の体格に合わせて奥行きを調整できます。

ダイニングチェアを使用する場合

  • クッションや座布団を使い、背中や腰部をフィットさせる
  • ひじが床に対して平行になるように、キーボードの位置を調整する
  • モニターは目の高さよりやや低い位置になるように、パソコンスタンドなどで高さを調整する
  • 足元にも台などを置き、姿勢をサポート

ダイニングチェアを使用する場合

出典 日本人間工学会ワークアーゴノミクス研究部会編:在宅ワーク/在宅学習実施事のFAQ.2020

伊藤 勝弘(いとう・かつひろ)さん

「ダイニングチェアは、そもそも食事用の椅子なので、長時間の作業をするのは不向き。パソコンをのぞき込むような姿勢になり、腰に負担がかかってしまいます。クッションなどで背中や腰をフィットさせたうえで、パソコンスタンドなどを使ってモニターの高さを上げ、骨盤がしっかり立った状態の作業ポジションをつくりましょう。本などを積み重ねて代用もできます。ノートパソコンであれば、外付けキーボードを使うことで画面からの距離を保ちつつ、腕も無理のない位置に。足が床につかず、浮いてしまう場合は、台などを置いて高さを調整しましょう」

座卓を使用する場合

  • 壁などを背もたれにする
  • クッションなどを使って骨盤を立たせる
  • ひじが床に対して平行になるように、キーボードの位置を調整する
  • モニターが目の高さよりやや低い位置になるように、パソコンスタンドなどで高さを調整する

座卓を使用する場合

出典 日本人間工学会ワークアーゴノミクス研究部会編:在宅ワーク/在宅学習実施事のFAQ.2020

伊藤 勝弘(いとう・かつひろ)さん

「椅子に座って作業をする方が理想的ですが、小さなワンルームに住んでいて、机や椅子を置くスペースがない場合も、画面をのぞき込むような姿勢になると、腰や首への負担が大きくなります。おすすめは、壁などを背もたれにすること。さらに、座布団や座椅子、少し厚めのクッションなどで腰やお尻をサポートし、骨盤を立たせる姿勢をつくってあげてください。ダイニングチェアなどの場合と同様、ノートパソコンで作業するのであれば、できれば外付けキーボードを活用して腕の位置を調整しましょう」

お悩み② 足のむくみが気になります……。

長時間座ったままだからか、足のむくみが気になるようになりました。解消するコツや役に立つアイテムはありますか?

回答② 時には立って作業をするのがおすすめ。足を刺激するアイテムも活用

伊藤 勝弘(いとう・かつひろ)さん

「人間のふくらはぎの筋肉には、心臓から下りてきた血液を上に戻し、全身に血をめぐらせるポンプ機能があります。長い時間座ったままでいると、このポンプが働かず、足がむくんでしまうのです。なので、時には椅子から立ち上がって歩き回ったり、ストレッチをしたりして足を動かすことが大切。最近は立ったまま作業ができるデスクもあるので、立って仕事をするのもおすすめです。また、足の裏への刺激は、脳の活性化にも効果的なので、青竹踏みのような足裏を刺激するアイテムを足元に置くのもいいですね」

伊藤流!スタンディングデスクを選ぶときのポイント

スタンディング用のデスクを新しく買う場合は、高さ調整ができて立っても座っても使えるデスクがおすすめです。キャスター付きのものであれば、移動もスムーズ。たまには家の中で作業場所を変えるのも気分転換になります。天板が折り畳めて、未使用時はコンパクトに収納できるタイプも便利です。

お悩み③ 自宅で仕事をしていると目が疲れやすいような気がします。

オフィスで仕事をしていたときに比べて、目が以前よりも疲れやすくなった気がします。何か原因があるのでしょうか?

回答③ 照明環境やモニターの明るさ、窓との位置関係に注意しましょう

伊藤 勝弘(いとう・かつひろ)さん

「モニターや部屋の明るさが適切でないのかもしれません。モニターと部屋の明るさに差がありすぎると目に大きな負担がかかります。外からの光の入り方は季節や天候、時間によって変わるので、照明を調整するとともに、窓に対する机の向きや配置を考えることも重要です。

ポイントは、太陽の光がモニターに映り込まないようにすること。強い光でモニターが見づらくなるので、近距離で画面を凝視したり、モニターの輝度を上げすぎたりして、目の疲労がたまります。また、パソコンの背面を窓側に向けて座れば、太陽の光が画面に入り込まないだけでなく、顔に光が当たるので、ビデオ会議のときに顔を明るく見せる効果も。まぶしいときは、カーテンなどで光の量を調整しましょう」

NG例:モニターに窓からの光が映り込む

NG例:モニターに窓からの光が映り込む

OK例:モニターに窓からの光が入らない

OK例:モニターに窓からの光が入らない

伊藤 勝弘(いとう・かつひろ)さん

「部屋の照明についても同様で、強い光がモニターに入らないようにしましょう。まぶしすぎるときは、明るさを調整するか、モニターの角度を変えるだけでも、光が直接差し込まなくなり、目が楽になります」

眼精疲労を減らすための「20-20-20ルール」

スマホやパソコンなどを長時間見続けると目に負担がかかるため、「20分ごとに休憩し、20フィート(約6m)以上先にあるものを、20秒間見る」ことで、目を休めるという方法。アメリカ眼科学会が推奨。

出典:⽇本⼈間⼯学会「タブレット・スマートフォンなどを⽤いて在宅ワーク/在宅学習を⾏う際に実践したい7つの⼈間⼯学ヒント」

お悩み④ プライベートな空間では集中できません。仕事モードをオンにするにはどうすればいいでしょうか?

部屋の中だとどうにも仕事に集中できません。ついダラダラと休んでしまったり、家族の視線や生活音が気になったり……。うまく仕事モードに切り替えるために工夫できることはありますか?

回答④ 視線や音を遮断したり、時間を区切ったりすることで切り替えを

伊藤 勝弘(いとう・かつひろ)さん

「パーティションやカーテンなどで空間を仕切ると気分が変わり、家族の視線も気になりません。あるいは、ノイズキャンセリングイヤホンなどを使って、周囲の音を遮断すると集中しやすいという方もいます。仕事の時間と休む時間を分けて、細かくスケジュールを設定することも大切ですね」

伊藤流!パーティションを選ぶときのポイント

軽くて動かしやすいカーテン状のものや、折り曲げられて形を自由に変えられるものは使い勝手が良く、おすすめです。吸音効果のあるパーティションもあり、ビデオ会議の際の余計な雑音の遮断にも使えます。

他にもある!素朴な疑問・困りごと

お悩み:高機能チェアは、値段が高いものを買うべき?

お悩み:高機能チェアは、値段が高いものを買うべき?

高機能チェアを買おうと思っているのですが、値段は数千円のものから、数十万円するものまでかなり幅があり迷っています。やはり高ければ高いほどいいのでしょうか?

回答:座り心地などメリットはありますが、サイズや性能が適しているか注意しましょう

回答:座り心地などメリットはありますが、サイズや性能が適しているか注意しましょう

伊藤 勝弘(いとう・かつひろ)さん

「値段が高いものは一般的に長持ちしやすく、通気性の良い素材やしっかりしたクッションが使われており快適です。ただ、体を深く沈み込ませるようなタイプの椅子は、体を動かしにくいので長時間の作業ではかえって疲れてしまうことも。また、海外製のもので日本人の体格に合わないケースや、小さな部屋や机に対してガッチリした大型の椅子を置くと邪魔になることもあるので、体格や空間、用途に合わせて無理のないものを選びましょう」

お悩み:デスクまわりを整理するアイテムが知りたい!

お悩み:デスクまわりを整理するアイテムが知りたい!

机の上がノートパソコンだけでほとんどいっぱいになってしまうのですが、資料や文具、飲み物を置けるスペースがほしいです……。整理するためのアイテムがあれば教えてください!

回答:“立てる収納”などを使い、作業スペースを確保しましょう

回答:“立てる収納”などを使い、作業スペースを確保しましょう

伊藤 勝弘(いとう・かつひろ)さん

「文房具や書類などを立てて収納し、机の上のスペースを有効に活用しましょう。パソコンスタンドを使えば、その下に物を置くこともできますね。ちなみに、パソコンの横に、マウスを動かせるスペースをつくることも忘れずに。スペースがないために、マウスをパソコンの手前などに置いてしまうと、無理な姿勢になり、体に負担がかかります」

実際に立てる収納やPCスタンドを使ってみました

実際に立てる収納やPCスタンドを使ってみました

体にやさしい仕事環境を整えて、仕事の効率やモチベーションも向上

伊藤 勝弘(いとう・かつひろ)さん

「オフィスであれば、仕事をするのに適した家具や設備などがそろっていますが、自宅で仕事をする場合は、自分が働きやすい環境を自分で整える必要があります。そのため、悩んだり苦労したりすることもあるかもしれませんが、今回ご紹介したポイントを参考に、まずは自分なりにどんな環境であれば仕事をしやすいのか考えることから始めてみましょう。快適な仕事環境を整えることは、体に負担をかけないだけでなく、仕事の効率やモチベーションアップにもつながるはずです」

テレワークで疲れたときに役立つストレッチも忘れずに

長時間パソコンの画面を見続けて疲れたときは、目や首、肩などに疲れが蓄積します。自宅オフィスの環境を整えると同時に、こまめに目を休める習慣や簡単なストレッチなどを取り入れるのも効果的です。

(掲載日:2021年8月23日)
文・編集:エクスライト

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