2020年5月に「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中を」というコンセプトを掲げ、SDGsの取り組みを強化したソフトバンク。いま実際に、どのような取り組みが行われているのか、担当社員が自らの言葉で事例を紹介します。第5回は、安定的につながるネットワークを目指して構築した災害対応システムです。
今回、話を聞いた人
ソフトバンク株式会社
テクノロジーユニット エリアネットワーク本部 エリア戦略統括部 ネットワーク推進部 イノベーション課
石川 健太(いしかわ・けんた)
新卒入社後は技術部門に配属され、携帯電話基地局の保全業務に従事。2018年に全国の保全・建設部門の取りまとめを行う現部署に異動し、災害対応システムの開発を担当した。
重要なインフラだからこそ、復旧スピードを追求
ソフトバンクは、2021年9月から新たな災害対応システムの現地コントロール運用を開始しました。本システムは、地震や台風などの災害によって通信基地局に支障が生じた際に、復旧作業を支援するためのものです。今回、本運用を開始したことで、これまで以上に迅速な復旧作業が行えるようになると考えています。
通信基地局で支障が生じたときの迅速な復旧。これは、ソフトバンクが長年にわたって取り組んでいるテーマです。
その背景には、スマホが生活必需品となり、「通信」が電気やガス、水道と同じようなライフラインになったことが挙げられます。災害時にスマホが使えなければ、ご家族と連絡を取ることも難しいですし、避難情報の取得などにも影響が出てしまう。もはや通信は、日常生活を送るうえで、なくてはならないインフラの1つ。ソフトバンクでは、災害に強い通信インフラを構築する取り組みと並行して、インフラに支障が生じた際に最速で復旧させるための取り組みも強化しているんです。
同時進行する復旧作業を、システムで一元管理する
今回の災害対応システムは基地局の支障状況や作業の流れを見える化して、復旧作業をスムーズにする機能を備えています。どのような機能があるのか、実際の復旧作業の流れをもとに説明します。
まず、災害によって基地局で支障をきたすと、本システムと連携している監視システムがアラームを発報。どの基地局に、どのような支障が生じているか、被災データが次々と蓄積されていきます。
続いて、災害対策本部でアラームの内容から復旧手段を検討。停電が原因なら発電機を用意する、光ファイバーの断線などで通信ができない状態になっているなら衛星アンテナを用意する、といった感じですね。そして、復旧に必要なツールを持っている現地稼働班に本システムを通じて作業指示を出します。この指示の中には、基地局の場所や作業内容など、必要な情報が全て集約されているんです。
本システムはスマホでも利用できるため、現地稼働班は到着時間や支障要因の切り分け情報などをフォームに入力していきます。こうすることで、対策本部は現場の状況をリアルタイムに把握できます。これまでも現地作業班の確保や作業指示、完了報告などは行っていたのですが、本システムに一元化したことで、複数の場所で同時に行われる復旧作業の進捗管理がしやすくなったんです。
開発のきっかけは、他エリアからの応援部隊
新しい災害対応システムの必要性が顕在化したのは、今から2、3年前。広範囲で基地局に支障が生じた大規模災害で、復旧スピードを上げるために、全国から応援部隊を呼び寄せる取り組みが始まったことがきっかけです。
それまでの復旧作業は、原則として地域ごとに実施されていました。関東の災害対応は関東の保全部門が、北海道の災害対応は北海道の保全部門が復旧を行うという感じです。しかし、通信インフラの重要度が上がる中で、災害が発生した地域以外からも応援部隊を集めて復旧を行うようになりました。
そこで課題となったのが、復旧作業の一元管理です。当時は、地域ごとに進捗管理の方法が微妙に違っていたり、独自の管理システムが存在していたり、地域メンバー間の連携に課題がありました。
これらの課題解決のために開発されたのが、新しい災害対応システムです。全国の保全部門と協議しながら仕様を決めていったので、誰でも使いやすいシステムになったと思います。部分的な導入を経て、ようやく9月から本運用開始です。いざというとき、迅速な復旧作業に貢献できるシステムになってくれることを期待しています。
原点は、携帯電話がつながることを喜んでくれたお客さま
現在は全国の保全・建設部門の取りまとめ業務をしているため、復旧作業の現場に足を運ぶことはありません。しかし、通信インフラの維持に携わる一人として、お客さまの顔は常にイメージしています。
数年前の話ですが、関東で基地局の復旧作業を行っていて、ちょうど携帯電話が使えるようになったタイミングで、住民の方々と話をする機会がありました。そのとき「使えるようになったんだ!」と喜んでくださったことを、今でも鮮明に覚えています。ソフトバンクが提供する通信は生活の中に息づいていて、復旧するとこんなに喜んでもらえるものなのかと。
いまは直接お客さまの声を聞くことはありませんが、安定した通信をお届けしたいという思いの原点は、やはりお客さまの笑顔。通信の先にあるお客さまをイメージしながら、これからも通信の安定運用に取り組んでいきたいと思っています。
ソフトバンクのマテリアリティ⑤「質の高い社会ネットワークの構築」
ソフトバンクは、SDGsの達成に向けて6つのマテリアリティ(重要課題)を特定。そのうち、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」を踏まえた「質の高い社会ネットワークの構築」では、どんなときでも安定的につながる通信サービスを提供することで、生活インフラの整備を目指しています。
(掲載日:2021年9月22日)
文:ソフトバンクニュース編集部