2020年5月に「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中を」というコンセプトを掲げ、SDGsの取り組みを強化したソフトバンク。いま実際に、どのような取り組みが行われているのか、担当社員が自らの言葉で事例を紹介します。第6回は、レジリエントな経営基盤の構築に向けた女性活躍推進の取り組みです。
今回、話を聞いた人
ソフトバンク株式会社
コーポレート統括 人事本部 人事企画統括部 人事企画部 人事企画課 兼 ダイバーシティ推進課 課長
木戸 あかり(きど・あかり)
現・SBヒューマンキャピタル株式会社に新卒入社し、求人広告営業を担当。ソフトバンク入社後は、組織人事などを経て、人材戦略部門へ異動。女性活躍推進に関する取り組みを始め、2017年からは全社的なダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包摂)の推進を担う。
女性管理職比率20%へ。女性活躍推進の取り組みが加速
ソフトバンクは2021年6月22日に、管理職の女性比率を2035年度までに20%にするという発表を行いました。今年度と比較すると、約3倍となる数値目標です。その達成に向けて、外部の有識者を招いて「女性活躍推進委員会」を発足させ、8月には第1回目の委員会を開催しました。
日本企業において、女性活躍推進はダイバーシティ推進の一丁目一番地と言われており、多くの企業が取り組みを進めています。その中でも、外部の有識者を迎えて委員会を設置するケースはかなり珍しく、一歩踏み込んだ内容の取り組みです。ソフトバンクはこれまでも女性活躍に関する取り組みを行っていましたが、今後ますます加速していくと思います。
ソフトバンクの女性活躍推進委員会
女性活躍推進に対する見識を高め、施策検討や方針決定に生かすことを目的に設置された委員会です。役員で構成された推進委員および社員の推進メンバーに加え、外部の有識者3名を招いて発足。2021年8月にオンライン開催された第1回目の委員会でも、活発な意見交換が行われました。
私は2017年から、ソフトバンクのダイバーシティ&インクルージョン推進を担当しており、女性活躍推進委員会の運営に加えて、社員の意識調査アンケート、eラーニング、ワークショップなどを実施しています。また、キャリアで一歩先を行く先輩社員とマッチングさせるメンタープログラムや管理職向けのダイバーシティマネジメント研修など、社内の意識変革を推進していくことが主な業務です。
女性の活躍は、確実に企業の成長につながっていく
日本は、男女平等の度合いを示すランキング「ジェンダー・ギャップ指数」が世界的にも低く、企業においても女性活躍推進の取り組みが遅れています。多くの企業では女性管理職が少なくても、男女ともにそれが当たり前だと感じており、具体的なアクションにつながっていません。そして、残念ながらソフトバンクも、こうした課題を抱える1社でした。
これには根深い、構造的な問題があります。例えば、ビジネスパーソンが自分自身のキャリアを構築していくうえで、一歩先行く先輩がいることは、男女ともに社会的な地位や経済的報酬の高さと相関関係があることが分かっています。しかし、男性優位の企業の場合、女性はお手本となる先輩が存在せず、キャリアの形成に不平等が生じてしまいます。そして、それを認識すること自体も非常に難しいのです。
この他にも、多くの人が無意識のうちに性別役割のバイアスをかけてしまう「アンコンシャス・バイアス」の問題もあります。「負担が大きい仕事だから」「子どもが生まれたばかりで育児で大変だろう」といった理由で、女性に重要な仕事を任せることを避けてしまう思い込みのことです。ほとんどの人が無意識に、場合によっては善意で行っているので、意識を変えることは容易ではありません。
しかし、入社したときのスキルや仕事の貢献度が同じなのに、リーダーや管理職になる女性が少ないのはアンフェアですし、企業としても人的リソースをフル活用できていないわけですから、純粋にもったいないですよね。女性が力を発揮できてこそ、企業の成長につながる。いまソフトバンクでは、そんな思いを持って女性活躍推進に取り組んでいます。
ダイバーシティの摩擦を内包できる強い組織を目指して
私がこれまで参加したダイバーシティに関するワークショップで、非常に印象的だったものとして、ゲーム形式で社会に生じる不均衡を体感するプログラム「クイズ&ギャンブル・ゲーム※」があります。
解答を導くための資料が与えられ、複数チームでクイズに挑戦するのですが、多くのチームが連続で正解を出す中、ごく少数のチームだけが、どうしてもクイズに正解することが難しい状態になるんです。
そのとき何が起きるかというと、うまく回答できないチームは「なぜ、答えられないのか? 原因はなんだろう?」と疑問を持ち、さまざまな思考を始めます。一方で、回答できているチームは成功に満足して、そのチームが置かれた環境に目を向けることはありません。
恵まれた強い立場のマジョリティになったときの危うさ、そしてマイノリティの視点の多様さを感じるためのゲームなのですが、女性が活躍できない男性優位の会社がどのような環境なのかをゲームを通じて疑似体験し、ハッとさせられました。
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- ※一般社団法人組織変革のためのダイバーシティOTD普及協会提供
女性活躍推進の取り組みは、大きな枠組みでいうとダイバーシティの推進です。この言葉は近年は単独で使うのではなく、ダイバーシティ&インクルージョンとして表現するケースが多いのですが、これには理由があります。
ダイバーシティに富んだ組織は、さまざまな属性や考え方を持った人の集団ですから複雑ですし、コミュニケーションを取るうえでも摩擦が生じます。変化を求めず、平穏な日々を過ごすだけなら、ダイバーシティは不要かもしれません。
ただ、同じであることを大事にする組織は、同じ視点でしか物事を眺められません。一方で、お互いが違っていることを「いいね!」と認め合える組織にはさまざまな視点があり、アンテナも知識もアイデアも、どんどん広がっていきます。
ソフトバンクは、常に新しいビジネスの創出やイノベーションに挑戦する企業です。
そして、それを実現していくためには、世の中のトレンドや変化を敏感に感じ取れる多様性を含んだ組織でなければなりません。女性が活躍できる環境を整備していくことは、ダイバーシティ&インクルージョンの推進、そしてさらなる成長につながるものだと信じて、これから取り組みを加速させていきます。
ソフトバンクのマテリアリティ⑥「レジリエントな経営基盤の発展」
ソフトバンクは、SDGsの達成に向けて6つのマテリアリティ(重要課題)を設定。そのうち、SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」を踏まえた「レジリエントな経営基盤の発展」では、多様な人材が活躍できる先進的な職場環境を構築することで、女性活躍の推進やLGBTQに関する取り組み、ハラスメントの防止に取り組んでいます。
(掲載日:2021年9月24日)
文:ソフトバンクニュース編集部