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掛け合わせたデータから生み出される付加価値を追求し、未来を創造。ソフトバンク CTOの佃 英幸が語る技術戦略

掛け合わせたデータから生み出される付加価値を追求し、未来を創造。ソフトバンク CTOの佃 英幸が語る技術戦略

ソフトバンクの基盤である通信事業のみならず、AIやロボット、さまざまな新規事業を推進するには、日々の技術研究がキーとなっています。
2021年4月より、ソフトバンクのCTO(技術最高責任者)として技術部門を率いる専務執行役員 兼 CTOの佃 英幸に、ソフトバンクがテクノロジーで目指す未来について話を聞いてきました。

Index

通信で培った技術を礎に世の中をリードする存在へ

ソフトバンクの事業において、テクノロジーはどのような位置付けなのでしょうか?

通信で培った技術を礎に世の中をリードする存在へ

ソフトバンク株式会社 専務執行役員 兼 CTO 佃 英幸

もともと出版流通事業から始まったソフトバンク。みなさんは、ソフトバンク=携帯というイメージがあると思いますが、携帯電話を作っているわけではなくて、われわれはこれまで通信ネットワークを構築しながら、それを世界最高水準のレベルで維持するための技術発展に取り組んできました。 技術はソフトバンクの礎であり、これからも通信インフラは5G/6Gに向けて発展させていかねばなりません。そして、それだけにとどまらず、技術で世の中をリードし、日本の産業 DX を推進していく企業として、テクノロジーでの取り組みをどんどん発信していきたいと思っています。

ソフトバンクのCTOとして、技術革新に向き合う上で大事にしていることは何ですか?

私は若い頃からいわゆるデジタルオタクで、ハードウエア・ソフトウエアのエンジニアをしてきましたが、深く突っ込むような洞察力とか、「どうして」という探究心、それから新しいものへの興味を持つように常に心掛けています。 どんな技術の領域でも、技術以外の領域だとしても、それを理論的にどう解決できるかという視点が芽生えれば、お客さまにとって何か別のところで助けになるかもしれない。その部分を研ぎ澄ますことが大事だと思っていますし、ソフトバンク社員にもそういう意識を持っていてほしいと思っています。

ソフトバンク株式会社 専務執行役員 兼 CTO 佃 英幸

新しい技術というのは、やってみないと分からない部分があるんですよね。そういう意味では、ソフトバンクの「なんでもやってみよう」という社風は技術者としてはやりやすいと思います。失敗を恐れずにやらせてもらえて、もし失敗したとしても、「次は失敗するな」と。そういうソフトバンク流の社風が根付いていて、トライした人は背中を押してもらえる。 でも、もちろん挑戦中は苦しいです(笑)。結果が見えるかどうか分からない時は、ものすごいフラストレーションで、模索し続けるのは苦しい。でも、そのトンネルの先にちょっと薄暗い明かりが見えてきた時や、トンネルを抜けた時に技術者魂というか技術者冥利(みょうり)に尽きる。そのゴールがあるから楽しいんです。

DX進化のカギは、遠隔でも伝わるリアルなフィードバック

DX進化のカギは、遠隔でも伝わるリアルなフィードバック

日本の産業DX を推進する企業として、どんな分野に注力しているのですか?

昨年サービスを開始した5Gは、大容量・低遅延・多数同時接続などの特徴がありますが、5Gの登場で重要なのは遠隔で何かができる時代になったということ。

皆さん今はオフィスにいかなくても、ZOOMなどでどこからでも会議ができるようになりましたよね。これからは、それが会議だけではなく、いろいろなものがリモートからオペレーションできる環境へもっと進化していきます。

例えば、ハプティクス技術で、手を握ったら、あたかも相手がそこにいるかのように相手の手の感触が分かるとか。こういった技術があらゆるロボットや産業に入り、リアルなフィードバックと人々がつながることなどが、大きな進化のキーになる。

リアルなフィードバック…具体的には?

以前、お医者さんと遠隔操作の手術ロボットについてお話しする機会があり、「硬いものやメスの先端の感覚がもっとリアルに指先に伝わってくるようになると最高なんだ」と話されていました。まさにそういうことなんです。リモートで何かをしようとした時に、高速でフィードバックがもらえるようになると、ものすごく価値が上がる。

また、今までだったら実際に現場に行って試していたものが、データを集めてきて仮想空間上でいつ工事をしたら交通量はどうなるのかなどのシミュレーションをすることで、リアルにフィードバックできる。

低遅延の5Gが展開されていくと、世の中はますます場所にとらわれないようになり、働き方やコミュニケーションの輪も変化していきます。

その変化が「日本の DX を推進していく企業」としての立ち位置につながるということですね。

はい。こういったデジタル化をさまざまな産業やサプライヤーの皆さまと一緒になってやっていきたいですね。

通信インフラを提供しながらも、データを集めるプラットフォームをソフトバンクが作り、データをマイニングしていく。データを掛け合わせて、思いもよらなかった価値が出てきたときに初めてそれが意味あるものとして認識され、バリューを生む。その大きな付加価値をお客さまに提供できる企業となれるように、各部門と連携しながらベースの技術を作っていこうと考えています。

業種が異なれば利用する技術や課題も異なると思います。どのように付加価値を生み出していくのでしょうか。

われわれは、これまで行ってきた通信以外の領域についてはもちろんまだまだな部分もあります。ただそれぞれの領域のテクノロジーの進化には、それぞれエキスパート企業がいます。われわれは、東大さんと共に行っているAIの研究だとか、さまざまな企業との共同研究などで集めたデータにエッセンスを注入し、それをさまざまな産業に対して提案していく。 つまり、ハードを作るのではなく、ソフトエンジニアの部分をうまく提供してデータを集め、AIなどの技術を活用しデータをより最適なものにしていく。そういった部分が得意なデジタルプラットフォーマーへと進化していきます。

今後さまざまな産業セグメントに対してサービス提供を行っていく時に、データをAIを使って事前シミュレーションしたり、探知したり、想定外の動作の回避方法を提案したり、そういったことに寄与できる企業になっていきたい。

単なる省力化ではなくて、新たな領域で、これは便利だ!という価値を追求し、お客さまに還元していければと思っています。

未来をクリエイトする企業集団へ

未来をクリエイトする企業集団へ

ソフトバンクの10年後の姿はどんな風になっていると思いますか?

これからも通信は必ず必要であるということは変わらないと思いますけど、ソフトバンク自体はもっともっと未来をクリエイトできるような企業集団になっていけたらいいなと思っています。社会のいろいろな産業や企業が抱えている、もしかしたら今は問題として捉えられていない課題に対しても、こうしたらもっと便利になるという気づきを提供できる存在になりたいですね。

一つ例をあげると、3年前、私はモバイル技術部門を統括する立場だったのですが、その時に基地局エンジニアリングチームの人員の半分を、建築プロセス、基地局エンジニアリングプロセスをDX化する業務にシフトさせました。 自分たちでソフトを作って、業務が楽になるような仕組みを作り上げて半分の人員で推進していこうというコンセプトです。現在では、自分たちの組織でRPAを含めた自動化などプロセスのスリム化を行った経験を生かして、新規事業に取り組む組織として法人部門と共にお客さまへの提案などを行っています。

テーマは何であってもやることは同じで、基地局の無線建設プロセスか、お客さまの課題かの違いだけなんです。論理的に考えて、こうすればもっと楽になるという、その概念を持っていればシフトできる。そういう柔軟性がソフトバンクにはより求められていくと思いますね。

技術者の人材育成にはどのように取り組んでいるのでしょうか

将来何が課題となるか先読みして、課題解決のためにコーディネートができるイマジネーターと言うか、コンサルティングができる部隊をもっと強化していきたいと思っています。

ここでいうコンサルティングは、単に一つの技術による解決を提案するのではなく、その技術の限界を理解し、違う技術も組み合わせてトータルとしてその課題を解決しよう、という発想を含んだもの。これは技術を深く理解している人材にしかできません。若い技術者たちには、早い段階からそういった想像力の訓練をしていくことで、より良いエンジニアになってほしいですね。

そのためには、ある領域を深くやることも良いですが、違うセグメントに行くことで、今の自分の技術をどう応用できるのか考えるきっかけにもなります。同じことをずっとやっていると、その領域はすごく詳しいように見えますけど、違う概念を入れたらもっと簡単になるんじゃないか?という視点がなくなりがちです。 ですから、ソフトバンクの技術部門の中でも結構な人が動いてますし、法人部門との入れ替えをどんどんやっています。そうやって環境を変えることで、技術者の次のスキルアップストーリーを作ってあげたい。

そして、今年オープンしたEBCもそうですが、1月に開催される「Deep Tech」をはじめ「ギジュツノチカラ」などのテクノロジーイベントを通して、技術の成果や当社の技術力を情報発信する場を定期的に作っていきたいと思っています。ぜひ期待していてください。

ありがとうございました。

佃CTOには、これからの技術者に求められる力や姿勢についても、お話をお聞きしています。

(掲載日:2021年12月14日)
文:ソフトバンクニュース編集部

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