福岡 PayPayドームをメタバース化したり、アジア最大規模のメタバース ZEPETO(ゼペット)に「ソフトバンクショップ in ZEPETO」をオープンしたり、ソフトバンクのメタバースの取り組みが加速しています。
ソフトバンクでメタバースの事業開発・サービス企画を担当している加藤欽一に、サービスの取り組みと今後の展望について話を聞きました。
今回、話を聞いた人
ソフトバンク株式会社 サービス企画本部
コンテンツ推進統括部 メタバース・NFT部 部長
加藤欽一(かとう・よしかず)さん
ファンやお客さまに喜んでいただけるものを提供したい
福岡PayPayドームやソフトバンクショップをメタバース化しました。どういったことを目指しているのでしょうか。
今回、ソフトバンクとしてメタバースの象徴的な場所をつくろうということで、ソフトバンクホークスと一緒にメタバース空間にPayPayドームを精巧に作りました。実際の球場は行ける方が限られますが、メタバース空間に作れば、いつでも誰でも行くことができます。そこがメタバースのひとつの価値だと思っています。
そして、行ったことのある方もない方も、ドームってこういう感じなのかということがわかるように、ドームの外観だけでなく館内についても象徴的なエリアをピックアップして、メタバース空間に再現しました。メタバースならではというところでは、リアルであれば本来立ち入り禁止の選手のロッカールームも公開しています。球場に来た感覚になれるようなこと、メタバースならではのことで、ファンの方が喜ぶものにしたいと思って作りました。
ソフトバンクショップのほうは、メタバースである「ZEPETO」の中に、「ソフトバンクショップ in ZEPETO」というショップをオープンしました。ショップクルーがいて、実店舗の営業時間内は本物のショップクルーがアバターとなって接客します。
ZEPETOはメタバースとしては世界最大規模で、アジアを中心に世界中で約3億のユーザーが使っています。そういうところにソフトバンクが専用の “ワールド” を作ってショップをオープンしたというのは、今までにない非常に大きな取り組みではないかと思っています。
「ソフトバンクショップ in ZEPETO」オープンに関する詳細は、以下のプレスリリースをご覧ください。
メタバースでアバターのクルーが接客する日本初の携帯キャリアショップが、「ZEPETO」にオープン(2022年6月23日、ソフトバンク株式会社 プレスリリース)特にこだわっているのは体験と空間
今回のサービスで工夫したことやこだわったことはありますか
いま、いろいろなサービスがスマホで体験できますが、一般的なところと違うのはその「空間体験」だと思っています。ソフトバンクのサービスでは、実際にその場所に行ったらどうなんだろうというワクワク感を作りたくて、音やアクションなどで、その場にいる感覚になれるものを入れています。
球場であれば、応援歌が流れていたり、自分のアバターが応援したり、ジェット風船を飛ばしたり、音やアクションの部分はこだわったところです。
もう一つ、いままでのVRの取り組みは、どちらかというと、どういう「映像」であるかなんですけど、映像よりもその場所がどういう「空間」なのかということを意識して、精巧な3DCGで大きさとか、臨場感を感じられるように施設を作ったところがこだわりのポイントです。
それは、技術的には難しいのでしょうか
やはり、精巧な3DCGを作れば作るほどデータが重くなります。データが重くなるとパソコンでもスマホでも処理するときにすごくCPUの能力が必要になりますので、デバイスの進化、ソフトウェアの進化、両方あわさって、いまは技術の進化と共にスマホひとつでも再現できるようになってきています。
もちろん、そこにかかる処理や通信も高速化しているので、5Gの通信と、デバイスも最近のものであれば、すごくサクサク動きますね。
PayPayドームでは「仮想空間サービス」と「拡張現実サービス」を行っていましたね
今回、仮想空間の中にPayPayドームを作って、来れない人が来れるという楽しみを作りました。もう一つ、実際に現地に来られた方に、今までにない体験をしていただくという楽しみもあると思っています。言葉としては「リアルワールド・メタバース」と言うのですが、現実に見えているところにさらに付加価値がつくような、AR(拡張現実)を使ったサービスなんです。
今回それを期間限定のイベントで行ったのですが、スマホを空間にかざすと画面上にビッグフェイス藤本や福岡ソフトバンクホークス公式VTuberの鷹観音海&有鷹ひな(うみひな)などが出現するようにしました。そうしたところ、ご家族で一緒に写真を撮られる方が想像以上に多く、こんなに多くの方に興味を持って楽しんでもらえるんだと、新たなニーズを発見できました。
実際に現地に行くことで新しい体験ができると、よりまた現地に行きたいと思ってもらえるのではないでしょうか。
リアルとバーチャルが相互に作用していく世界へ価値を提供
今後の展開を教えてください
そうですね、たくさんアイディアはありまして、順次やっていこうと思っています。いまはまだほんの第一歩で、お客さまの声を聞きながらアップデートしていきたいと思っています。
PayPayドームで言えば、ファンの方が集まってくださるので、メタバースショップでしか手に入らないオフィシャルグッズなどを考えています。ファンの方の参加型で、オリジナルのユニホームやキャップなどのアイテムを作れるようにして、ファン同士で交換したり、値段を付けて販売したり、いわゆるUGCコンテンツ(ユーザーによって作られたコンテンツ)もやっていきたいと思っています。
コンテストをやって、1番人気のあるユニホームはイベントで使われるとか、そういうふうになったらすごくいいかなと思います。デジタルアバターは着替える事もできるので、自分のアバターが着飾ることができると、より没入感が高まると考えています。
あとは、ドーム内外でのアトラクションも、いろいろリサーチしながら、増やしていきたいと思っています。この先も、たくさんアイディアが列をなして待っている感じです。
最後に、ソフトバンクが目指すメタバースはどのようなものでしょうか
昨年からメタバースというワードがトレンドワードというか、すごいんじゃないかという空気が世の中にできています。いろいろな活用方法があると思っていまして、何がお客さまにとって楽しいかとか、課題解決になるかとか、エンターテインメントにおいてもさまざまなユースケースがあると思います。いろいろ展開しながら、決め打ちしないで各種取り組んでいこうと思っています。
それから、PayPayドームもそうですが、仮想空間という閉じられた世界と、現実の空間との連携を、両方やっていけるといいなと思っています。PayPayドームを仮想空間に作ってそこだけで楽しむのではなくて、それによって実際のPayPayドームにも何か付加価値がついて、実際に現地に行きたくなるようなことを。
例えば、メタバース空間でもらったクーポンが現地で使えるとか、現地でもらったものがメタバース空間で使えるとか、そこに垣根がなくて、どちらにもつながった世界がいいのかなと。仮想空間だけで過ごす人と、仮想空間に行かない現実世界の人とに分かれていくということではなくて、両方が相互に作用していくのが一番いいのではないかと思って、どちらも常にセットでやっていこうと思っています。
メタバースの来場体験でさらに楽しさ広がる! PayPayドームがバーチャル空間に登場
今回ご紹介したARによる観戦体験のほかに、福岡ソフトバンクホークスの本拠地「福岡PayPayドーム」の一部をバーチャル空間に再現した「バーチャルPayPayドーム」が5月27日より提供されています。アバター同士のコミュニケーションや実際の試合と準リアルタイムで連携した「バーチャル投球体験」など自宅にいながらまるで球場にいるような体験ができますよ。
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(掲載日:2022年6月23日)
文:ソフトバンクニュース編集部
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