SNSボタン
記事分割(js記載用)

小学校の校長に聞いた「GIGAスクール構想」の今。デジタル学習がもたらす学びの変化とは

小学校の校長に聞いた「GIGAスクール構想」の今。デジタル学習がもたらす学びの変化とは

教育のICT化を目指すGIGAスクール構想で、2021年に全国ほぼ全ての小・中学校で子どもたち1人につき1台のタブレットやパソコンが普及しました。その後、学校の授業や子どもたちの学びにどんな変化が起きているのか気になりませんか?

Instagramで学校の様子を発信するなど、情報端末を活用した積極的な取り組みを行う横浜市立山内小学校の校長に、情報端末導入後の教育現場の今についてお話を聞きました。

GIGAスクール構想とは?

【GIGAスクール構想】~1分でわかるキーワード

教育のICT化を推進する文部科学省の取り組み「GIGAスクール」を簡単に解説しています。

【GIGAスクール構想】~1分でわかるキーワード

お話を聞いた先生

佐藤 正淳(さとう・しょうじゅん)先生

神奈川県横浜市立山内小学校 校長
佐藤 正淳(さとう・しょうじゅん)先生

クラスメートに考えが伝わる。教室に生まれたポジティブな変化

情報端末が導入された後、授業や子どもの学びにどんな変化がもたらされましたか?

「最も大きな変化は、授業中に児童が自分の考えをアウトプットする機会が増えたことです。たとえば、1つのテーマに関する自分の考えをまとめるときに、皆で同じスライドを使って共同作業をするので、自然と考えがクラスメートに共有されます。これまで自信がなくて人前で発言がするのが難しかった子でも、周りの子に『その考え、いいね!』とほめられて自信がついてくる、という好循環が生まれるんです」

クラスメートに考えが伝わる。教室に生まれたポジティブな変化

タブレットといったデジタルツールは、授業でどう活用しているんでしょうか?

「山内小学校の場合は『使いたいときに使う』というやり方で、授業中に分からないことがあれば iPad を使って自分で調べてもらい、情報収集をする手段の一つとして活用しています。クラウド型授業支援アプリ『ロイロノート・スクール』を使った課題の提出や、オンラインドリルを使った学習、『ロイロノートの共有ノート機能』を使ってホワイトボードのように手書きで共同作業をするなど、教科にとらわれずタブレットを使っていますね」

クラスメートに考えが伝わる。教室に生まれたポジティブな変化

保護者とはどんなコミュニケーションを取っているんでしょうか?

「保護者と信頼関係を築くために、行事や子どもたちの様子、教師の教育にかける思いなどを知ってもらう機会を作りたくて、Instagramを活用して情報発信しています。投稿を見た保護者に、『山内小学校ってあったかくていいな』と思ってもらいたいんです。他にも、PTAが子どもたちの描いた学校の公式キャラクターの絵をLINEスタンプにするなど、保護者の力も借りて新しいことに挑戦しています」

クラスメートに考えが伝わる。教室に生まれたポジティブな変化

斬新な発想ですね。今のデジタル社会に合った取り組みのように感じます。

「たまに僕のところに、『動画を作ったから見て!』と児童がやってきたりします。今の子どもは、YouTubeやTikTokなど新しいメディアにどんどん触れて、デジタルが当たり前の社会で育っています。学びのツールであるタブレットを用いて、子どもがわくわくすることを学びに生かしていきたいですね」


教室の学びだけじゃない。教員の働き方改革に求められる「新しい視点」


子どもたちの学び以外に、ICT化によって先生の働き方はどう変わりましたか?

佐藤校長

「学校から家庭への連絡は、資料をファイルで送るなどペーパーレスを推進しています。欠席児童などへの連絡は、教員が必要事項を手で書くのではなく、写真を撮って共有するようにして手間を省く取り組みも進めています。

教員の人数も年々減少していて、将来教職に就きたいと思う人が減っている中で、ICTを活用したプラットフォームを構築し、教員の負担を減らすことは喫緊の課題だと思います」

一気に導入が進んだからこそ、現場にいる先生は大変そうです。

「働き方改革の一つとして校務を効率化をするにあたり、GIGAスクール構想への対応自体が負担と感じている教員がいるのも実情です。端末の使い方をまだよく分かっていない教員もいますが、教師歴数十年のベテランの先生でも、若い先生にデジタルツールの使い方を学ぼうとする場面はよく見かけるようになっていますよ」

教育のICT化では、校長のリーダーシップも求められていると思いますが、大切なことはなんでしょうか?

「少しずつ教育現場のDX化は進んでいますが、教員一人一人が『情報端末を使って、他にどの作業を効率化できるか』『子どもの学びにどう生かせるか』という事例をもっと知り、新しい視点を得ることが大切です。校長はそれを全力でサポートするし、新しいことにも率先してチャレンジする。

子どもの学びを豊かにするために、文部科学省は『チーム学校』という学校のマネジメントモデルの転換を提唱しています。学校だけでなくて保護者や地域を巻き込んで、みんなで子どもを育てていくことが大事だと思います」

今すぐ始められる、タブレットの活用法を発信。先生が学び合う「GIGAスクールサミット」

今すぐ始められる、タブレットの活用法を発信。先生が学び合う「GIGAスクールサミット」

授業改革・教育改革にチャレンジする全ての先生を応援したい、との思いからソフトバンクが開催する「GIGAスクールサミット」は、ICT活用によるさらなる新しい学びのアイデアやヒントの発見につなげる場です。3度目の開催となった本イベントでは、情報端末を活用した新しい取り組みにチャレンジする全国の学校の校長や教頭を招き、さまざまな事例を発表。運営に携わるソフトバンクの担当者に話を聞きました。

田中光太郎(たなか・こうたろう)

ソフトバンク株式会社 公共事業推進本部 教育ICT推進部
田中光太郎(たなか・こうたろう)

ソフトバンクの教育現場のITC化支援の取り組みは、こちらの記事でも紹介しています。

3度目の開催となるGIGAスクールサミット。前回との違いはありますか?

「前回までは『授業でこんなアプリを使った』というツールや使い方の発表が多かったのですが、学校で起きている急激な変化に対して、現場の先生がどう対応したらいいかといったプロセスに焦点を当てたいという思いがあり『人』に注目しました。情報端末が一気に整備されて、苦慮している管理職の先生も多くいます。各校の校長や教頭が登壇してくれたおかげで、組織のマネジメント視点からの発表をいただけたと思います」

今すぐ始められる、タブレットの活用法を発信。先生が学び合う「GIGAスクールサミット」

今回は田中さんもファシリテーターとして登壇されていましたが、登壇者からはどんな印象を受けましたか?

「今回登場された全ての先生はとにかく明るく前向きでアイデアが豊富でありながらも、決して1人だけで走られるわけではなく、現場の先生方のチャレンジを応援し、見事に後押しされていました。現場の取り組みを先生たちの言葉で伝えられたのは良かったと思いますね」

今すぐ始められる、タブレットの活用法を発信。先生が学び合う「GIGAスクールサミット」

参加者の反応はどうだったんでしょう?

「他校の先生の取り組みの成果を聞くことで、『自分もできるかもしれないと思った』という声が多く寄せられました。身近で、自分にもできそうな活動がたくさん紹介されていて、背中を押されたと感じた方が多かったようで、我々運営側も大変うれしく思いました」

今回のテーマである『チーム学校』。振り返ってみるとどう思いますか?

「『チーム学校』の意味は決してその学校の先生の一致団結だけではなく、保護者や地域社会、他の学校や教育委員会、そして我々ソフトバンクなど、学校を取り巻くすべての人たち、もっと言えば子どもたちも含めた『チーム学校』であること、そしてやっぱり最後は『人』であることに改めて気付きました。

情報端末は課題を解決する一つの手段であって、導入したら終わりではありません。何のためにツールを整備するのか、どうやったらさらに効果的な学習活動につながるのか、新しい学びを実現できるのかを考える必要があります。学校にも多様性があり、取り組みやアイデア次第でさまざまな効果が上げられるとまず知ることが大切だと思っています。私たちはそういう情報を全国の先生方に広くお伝えするようなご支援を今後も続けていきます」



第3回GIGAスクールサミット

教育現場のICT化について、先生方が課題や取り組みの様子を紹介し、シェアする目的で開催された「第3回GIGAスクールサミット」は、アーカイブ動画でどなたでもご覧いただけます。

  • 「ゲストとしてログイン」からご視聴いただけます。

アーカイブ動画をみる

(掲載日:2022年9月21日)
文:ソフトバンクニュース編集部