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もし、火山が噴火したら…。想定される影響や必要な備えは? -防災行動ガイド

もし、火山が噴火したら…。想定される影響や必要な備えは? -防災行動ガイド

近くの山からもくもくとした噴煙を見かけたら。街中を歩いている時、ざらざらとした灰が降ってきたら。どうやら、火山が噴火し始めたようです。もしあなたが同じような状況に置かれたら、一体どうすればいいのでしょうか? 

正しい知識とすぐにできる小さな行動が防災意識を高め、あなたとあなたの大切な人を救います。

今回は、火山噴火による被害想定や、噴火が起きた際の対処法などをご紹介。

この災害テーマのポイント

この災害テーマのポイント

  1. 日本は「火山大国」。どこに住んでいても被災のリスクが
  2. 火山現象が引き起こす多くの災害。それぞれの現象の特徴を知っておこう
  3. 事前の備えには「ハザードマップ」。あなたの地域は大丈夫?

この災害テーマのポイント

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  1. 日本は「火山大国」。どこに住んでいても被災のリスクが
  2. 火山現象が引き起こす多くの災害。それぞれの現象の特徴を知っておこう
  3. 事前の備えには「ハザードマップ」。あなたの地域は大丈夫?

目次

日本国内に111もの活火山が点在! 決して人ごとではない火山噴火

2022年現在、日本にはなんと111もの「活火山」があります。「活火山」とは過去1万年以内に噴火したことのある火山のこと。富士山や箱根山など、誰しも一度は聞いたことがある有名な山も、実は「活火山」なのです。(気象庁:活火山とは

「活火山」は、次の5つの「噴火警戒レベル」に分けられています。

レベル5:居住地域から避難する
レベル4:居住地域で避難準備をする
レベル3:居住地近くの危険地域の立ち入り禁止
レベル2:火口周辺の立ち入り禁止
レベル1:特別な対応は必要ないが注意が必要

たびたび噴火のニュースが伝えられている、鹿児島の桜島でさえレベル3。レベル4、5に至ったら、早急な避難が求められるというわけです。

ちなみに、もし富士山が噴火したら……。周辺地域はおろか、100km以上離れた東京都新宿区にも、火山灰が5cmも降灰するのだそう。たとえ火山から遠方に住んでいたとしても、決して人ごとではいられない「災害」なのです。

トンガ火山噴火被害について

2022年1月、南太平洋トンガ諸島のフンガ・トンガ-フンガ・ハアパイ火山の大規模噴火が発生したことは、記憶に新しいのではないでしょうか。噴火の爆音は遠く離れたアメリカまで聞こえたのだそう。トンガ政府は、全国民10万5000人のうち、約84%が影響を受けたと発表。海岸沿いの家々が崩壊したほか、国土のほとんどの地域に火山灰が降り積もり、ライフラインに多大なる影響を与えました。

リスク:噴火で起こる火山現象とは?それぞれの特徴と影響をチェック

噴火が起こると、山に近いエリアから順にさまざまな被害がもたらされます。主な被害の要因は、次の5つです。

1 噴石…噴火の衝撃で吹き飛ばされた石や岩。大小さまざまなサイズがあり、小さいものなら数㎞先まで飛ぶ場合も。

2 火砕流…高温の火山灰や岩石、マグマなどが混ざり合って火山を高速で流れる現象。スピードが速く、非常に危険。

3 融雪型火山泥流…山の上に積もった雪が噴火の熱で一気に融け、土や砂などを巻きこんで、流れ出す現象。道路や家などを破壊する威力がある。

4 溶岩流…地下のマグマが液状で地表に噴出し流れる現象。流出スピードは控えめで、ふもとにたどり着く前に冷えて固まるケースも。

5 火山灰・火山ガス…いずれも噴火による噴出物。火山灰は主にマグマが発泡してできる細かい破片。火山ガスは火口から噴出する水蒸気や二酸化炭素、二酸化硫黄などの成分を含んだ、重さのある有毒ガス。くぼみにたまったり、火口から山を下り、ふもとの集落にまで届く可能性がある。

1〜4の現象はいずれも破壊力が強く、ひとたび発生すればふもとの集落に壊滅的な影響を与える可能性があります。また、最も広範囲に影響を及ぼすのが5の火山灰。噴火によって降る火山灰は量が多く、遠方であっても届いてしまいます。

火山灰がもたらす影響

  • 人体への影響
    サラサラとしていながらも、1つひとつは鋭利な形状。この特性のため、人が吸引すると呼吸器官へ影響を及ぼすほか、目に入れば失明のリスクも。
  • ライフラインへの影響
    • 停電:水分を含むと電気を通す性質がある火山灰。降灰のあとに雨が降ると、電柱に積もった灰に電気が流れ、停電が起きます。また、非常用発電機にも影響を与えるリスクも。
    • 断水:停電によって浄水場のモーターが停止したり、火山灰が水路に詰まったりした場合には、断水が起きることも。
    • 交通インフラの停止:火山灰+雨の影響で路面が滑りやすくなって通行止めが発生したり、鉄道の運行が停止するリスクもあります。また、火山灰が飛行機の航路をふさいだり、滑走路の路面状況を悪化させたりした場合は、欠航が起きることも。

対処法:火山噴火への事前準備と、噴火発生後の動きかたは?

事前準備編

  • ハザードマップをチェック
    自治体のホームページでチェック可能。過去のデータから降灰や溶岩流、火砕流による被害予測を出している自治体も。避難場所も家族や友人間で取り決めておきましょう。
    関東近郊にお住まいの方は、近隣の火山である富士山のハザードマップをチェックしてくのもよいでしょう。(富士山火山防災マップ
  • 噴火警戒レベル別にとるべき行動をチェック
    レベル1以外は危険信号。レベル2以上にひんした際の動き方を、あらかじめ気象庁のホームページで確認しておきましょう。
  • 食糧の備蓄&防災アイテムの購入
    停電や断水が起きた際の備えをしておきましょう。水や食料、懐中電灯、簡易トイレなど、地震のときの備えと同様です。(家庭用食糧備蓄のコツ
  • 火山灰の処理アイテムの用意
    火山灰は被害を最小限に抑えるため、乾燥しているうちに集めて袋に入れ、まとめておくのが望ましいです。防塵(じん)マスク、ゴーグル、角型のスコップ(一気に灰をかき集める時に便利)、ゴミ袋の用意を。また、降灰が多い場合は、処理している最中でなくても火山灰を吸いこんでしまう可能性も。不織布マスクも常備しておくといいでしょう。

発生後の動き方編

  • 火山の近くにいる場合
    まずは「噴火警戒レベル」別に動くようにしましょう。ただし、大きな噴石や火砕流は噴火直後に発生する上、猛スピードで周囲を破壊していくため、情報と目の前の状況、両方を把握して、かみ砕いて判断することが重要です。できるだけ早く遠くに逃げることが、命を助けるケースも多いです。また、溶岩流は他の現象に比べれば移動速度が遅いため、大量の荷物を運べる車で逃げるのはもちろん、小回りのきく徒歩で逃げることで、確実に回避できるケースもあります。
  • 火山から離れたエリアの場合
    たとえ離れていても、火山灰が降り積もる可能性が。停電などが起こる前に火山灰を早急に片づける必要があります。火山灰処理時の注意点は、「とにかく乾いているうちに」片付けること。水に触れると重くなり、運ぶだけでも困難になるほか、用水路などに入り込んでしまうと、つまりの原因となります。また、通信機器への影響も考えられるため、情報収集手段として手回し充電ラジオなども備えておくと安心です。(大規模停電時の対策
断水期間を乗り切るテクニック

火山灰の影響で長期の停電が発生し、断水が長引く可能性も。水を備蓄しておくのはもちろん、日頃から断水時に役立つ知識を得ておきましょう。(断水時のトイレについて

  • 食器にラップをかけ、使い終わったらラップをはがすことで、洗い物を減らす
  • 水の要らない「ドライシャンプー」や、使い捨てのボディシートを使って清潔を保つ
  • 近隣の防災用井戸の分布を知っておく

防災用井戸とは…
近隣の住民に飲料水や生活用水を提供するため、あらかじめ市区町村に登録された井戸。自治体によってはない場合もあるので、お住まいの自治体でどのような体制がとられているのか、ホームページなどで確認を。散歩がてら、井戸の配置を知っておくとより安心です。

火山噴火に備える・噴火が発生したときに役立つサービス・ウェブサイト

  1. 気象庁「各火山の活動状況」

    気象庁

    全国に点在する111の活火山について、気象庁による観測結果をリアルタイムに提供するサービス。日常的に天気予報などとあわせて見る習慣をつけておくことで、有事の際もいち早く行動できます。

  2. Yahoo!防災速報

    Yahoo!防災速報

    さまざまな災害情報をプッシュ通知で迅速に知ることができるアプリ。気象庁による噴火速報や噴火警報(噴火警戒レベルが3以上)が発令された際も、いち早く通知が得られます。

  3. Yahoo!天気・災害「火山情報」

    Yahoo!天気・災害

    日本各地の活火山の噴火警戒レベルや、ライブ映像を一覧で確認できるサービス。活火山への登山前にチェックしておくと安心です。噴火の際には「降灰予報」もチェックできます。

監修者:防災講師・防災コンサルタント 高橋 洋(たかはし・ひろし)

高橋洋先生

1953年、新潟県長岡市生まれ。1976年、練馬区に就職し、図書館、文化財、建築、福祉、防災、都市整備等に従事。1997年より防災課係長として、地域防災計画、大規模訓練、協定等に携わる。現在は、防災講師・コンサルタントとして、自治体等で講演、ワークショップ指導などを行う傍ら、復興ボランティア、終活ガイド・エンディングノート認定講師としても幅広く活動。防災関係著書・論文、防災関係パンフレット類監修多数。

(掲載日:2022年11月25日)
監修者:高橋洋
文:佐藤葉月
編集:エクスライト
イラスト:高山千草、鎌田涼