「楽しかったよ〜、ありがとう」「一生の思い出になったわ」と、参加者の楽しそうな笑顔。
シニア世代を対象に、石垣島を観光しながらスマホの使い方を体験するという「 デジタル体験バスツアー 」が開催されました。
沖縄県と石垣市、そして広告代理店である株式会社ブレーン沖縄とソフトバンクという官民のタッグとともに、地域企業との協業で実現した、その舞台裏に密着します!
目次
どうすればスマホを手にとってもらえるか
デジタル化・DXが進む現在。生活の中でスマホの役割はますます重要になる一方、シニア世代を対象としたスマホセミナーやスマホ教室が開催されても、なかなか参加に結びつかない現状があります。
どうすればデジタルデバイスに興味の無いシニア世代を巻き込むことができるのか。
「スマホセミナーに参加してもらえるようなアイデアを提案してほしい」という沖縄県からの要望をきっかけに、デジタル体験バスツアー構想がスタートしました。
「今回の取り組みのゴールは、デジタルデバイスに興味を持ち、そしてデジタル体験を楽しんでもらうこと。とてもシンプルな目標だと思われるかもしれませんが、興味の無い方にスマホを体験いただくことは、想像以上にハードルが高いんです」
そう教えてくれたのは、スマホセミナー開催を通してスマホ普及を推進する営業推進統括部 DX推進課 課長の神田忠明さんです。本セミナーの管理者である玻名城均さんと共に、責任者としてプロジェクトを率いてきました。
「スマホを手に取っていただくきっかけとして考えたのが、観光バスツアーでした。シニアの方々が興味を持っていること、楽しんでいることに、スマホをくっつけて参加を促したいと思ったんです」と玻名城さんは言います。
シニアの方に楽しい挑戦を
スマホを手に取っていただけたら、次はその価値を体感いただくために何ができるのか。
どういった機能やツールを使えばスマホの初心者・未経験者が喜び・楽しめるのかという点を、観光スポットを下見しながら吟味。QRコード・カメラ・ Google レンズ などを中心に、こんなに便利なんだというバリューを体験いただく工夫を考えていったそうです。
また、企画から素案作りの中で重要だったのが、リスクヘッジをいかに行うかということでした。
「全体をどう作り上げるかを議論しつつ、当初から危ない点などを出し合いながら作り上げていきました。コロナ禍であり、参加者がシニア世代ということで、万が一の場合にも対応できる準備が必要だったんです」
イベント開催当日も、足の悪い参加者がいることが分かると、1日目終了後すぐに翌日のツアー対応を確認し、車椅子を手配。どうすれば参加者に楽しんでもらえるか、最悪の事態を避けられるかと考え、バスツアーは進められていました。
すぐに聞ける安心感は、楽しさの秘訣
「自撮りってどうやるの?」
参加者の初めての自撮りをサポートするのは、スマホアドバイザーの天野綾さん。
前日の入門講座からバスツアー当日も、参加者への説明を行う中心的存在です。難しくなりがちなスマホ用語は、なるべくカタカナを使わず、シニアの方が聞き取りやすいように少しゆっくり、分かりやすい言葉で説明するようにしていると言います。
また、通常スマホセミナーやスマホ教室は屋内で実施するもの。屋外を移動しながらとなる今回の取り組みは、スマホアドバイザーにとっても初めての経験だったそうです。
「実際の生活の延長として、参加者の皆さんが興味を持たれていることをサポートするよう心がけました。また屋外での実施ということで、歩きスマホにならないよう説明するタイミングを見計らったり、基本的なことですが、スマホを落としたり、つまずいたりしないように、安全面にも注意を払いました」
スマホアドバイザーとして何よりも大切にしていることは、お客さまからの信頼だと言います。
「スマホ教室ではお客さま一人一人のペースに合わせて進めることと、積極的に褒めるようにしています。スマホを楽しんで使っていただけることが、私自身への信頼と『次も来てみよう』というきっかけにもつながるから。何よりもお客さまが笑顔になっていただけるとうれしいですね」
デジタルデバイド解消の一助に
「晴れてくれて、そして参加した皆さんが喜んでいただけてよかったですね」と率直な感想を述べられた、沖縄県 企画部 デジタル社会推進課 主幹の福原 兼悟さん。
参加者の半数ほどが事前にスマホを利用されていることから、アンケート結果を見ないと結論は出せないと前置きしながらも、「今回の取り組みは『沖縄県地域デジタル活用支援モデル事業』の一環でしたが、全国の地方自治体の皆さんにも真似していただきたいと思っています。これをヒントにもっといい取り組みが生まれ、日本全体でデジタルデバイド解消を促進できればと、その一助になればと思います」とのこと。
通常行われるスマホセミナーでは冒頭に、「今日覚えてもらいたいのは、楽しかったということだけですよ」と伝えるのだとか。楽しいという体験を、さらに使ってみようという興味のきっかけにつなげていきたいと神田さんは言います。
「当日参加された皆さんを見て・接していると、今回のバスツアーを通して一歩は踏み出していただけているのかなと。バスツアーに限らず、こういった実体験できる機会を提供するという試みは、違う形でも派生させていきたいですね」
最初の一歩目を踏み出すハードルをいかに低くできるかが鍵であり、デジタルデバイド解消に向けた取り組みへの挑戦は、これからも続く。皆さんお疲れさまでした!
(掲載日:2022年12月14日)
文:ソフトバンクニュース編集部
撮影:内藤壮大(OKINAWA GRIT)、ソフトバンクニュース編集部