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眠れない夜はどうするのが正解? 寝つきをよくする効果的な対処法

眠れない夜はどうするのが正解? 寝つきをよくする効果的な対処法

疲れているはずなのにベッドに入ってもなかなか眠れない、たくさん寝たはずなのに疲れが取れない… そんなことはありませんか? 実は、日本では約9割もの人が睡眠に不満を持つといわれています。そこで今回は、上級睡眠改善インストラクターでもある睡眠の専門家 安達直美さんにお話をうかがいました。寝つきが悪い原因や、睡眠不足が体に与える影響、寝つきをよくするコツなどを教えていただきます。

目次

お話を聞いた人

安達 直美(あだち・なおみ)さん

安達 直美(あだち・なおみ)さん

上級睡眠改善インストラクター(日本睡眠改善協議会)、大阪公立大学健康科学イノベーションセンター特別研究員。国内大手航空会社において国際線客室乗務員として勤務後、寝装品メーカーの研究所で主任研究員として睡眠の研究に従事。リラクセーションや眠りに関するコーディネーターとして、エビデンスをもとにユーザーオリエンテッドマーケティングに携わる。雑誌・ウェブ掲載やテレビ出演もあり、現在は主に、睡眠健康教室などの講師として活躍中。

眠りたいのに寝つけない! その原因を5つに分類

眠りたいのに寝つけない! その原因を5つに分類

明日も仕事があるので早く眠りたいのに、ベッドや布団に入ってもなかなか眠れない…。そんな経験は誰しもあるのではないでしょうか。まずは、眠れない原因について解説します。

安達さんいわく、ほとんどの人にとって眠れない原因はひとつではなく、いくつかの要因が複合的に絡み合っているそう。安達さんは眠れない原因を、以下の5つに分類しています。

  1. 就眠時の精神的・身体的状態
  2. 日中の精神的・身体的状態
  3. 就眠環境
  4. 前夜の睡眠状態と現在の体調
  5. 睡眠習慣

眠れない原因①就眠時の精神的・身体的状態

布団に入ったときの心と身体の状態が、眠れない原因であることも。心の状態としては、ストレスや悩みごとがあったり、刺激を受けたとき。例えば、「寝る直前に見たドラマが面白くて興奮した」などのポジティブな刺激であっても、目がさえて眠れなくなることがあります。身体の状態としては、就寝前に食事をして内臓が活動している、コーヒーなどでカフェインを多く摂取しているなどが挙げられます。

また、寝る1~2時間前に食事をとる、寝る直前にお風呂に入ってポカポカのまま布団に入る、といった生活習慣は睡眠にいいとは言えません。

安達さん「人間の身体は、体温を下げて代謝を落とすことで眠る準備をします。そのため身体の深部の温度が下がっていないと、なかなか眠りにつけないんです。特に冬はお風呂に入って体を温めてから寝るという方もいるかと思いますが、入浴によって身体の深部の体温が0.5~1℃上がると、上がった分が下がるまで寝つけないこともあるんです」

眠れない原因②日中の精神的・身体的状態

実は夜だけでなく、日中の過ごし方も寝つきに関係してきます。日中あまりに運動不足だったり、日光を浴びていなかったり、昼寝をしていたりすると、夜の寝つきが悪くなります。また、日中に強いストレスを受け、ストレスがたまったままの状態でも寝つきに悪い影響が出ます。

眠れない原因③就眠環境

部屋が明るい、音や匂いが気になる、寝具が合わないなど、眠るときの周囲の環境も寝つきに影響します。また、旅行先など、いつもと環境が変わることで寝つきが悪くなる人もいます。

安達さん「人によって、落ち着く環境は違います。一般的には静かなほうが寝つきやすいイメージですが、中には「ラジオや音楽などの音があったほうが安心して眠れる」という人も。枕や布団などの寝具は、いいものを使うことより「合わないものを使わない」ことが大切です」

眠れない原因④前夜の睡眠状態と現在の体調

前の日に徹夜をしていれば翌日はぐっすり眠れるように、前の日の睡眠が十分でなければ、翌日は補おうとするのが、命を守るために発達してきた睡眠本来の機能です。また、その日の体調によって寝つきが悪くなることも。

眠れない原因⑤睡眠習慣

安達さん「意外と気づきにくいのが睡眠のリズム。「休日に丸一日寝てしまった」など、生活リズムが乱れると寝つきに影響が出ます。ブルーマンデーは、この睡眠―覚醒リズムの乱れが原因だと考えられています」

知っておきたい睡眠のメカニズムと不眠が体に与える影響とは?

知っておきたい睡眠のメカニズムと不眠が体に与える影響とは?

そもそも、睡眠は心や体にとってどのような役割を果たすのでしょうか? 睡眠のメカニズムと、睡眠不足が続いた場合の体への影響について紹介します。

知っておきたい睡眠の基礎知識

睡眠には大脳を休めてメンテナンスする働きがあります。特に重要なのは、集中力や注意力、記憶力、想像力を担う「前頭葉」という部分。人間は他の動物よりも前頭葉が大きいため、クリエイティブなことができるのです。そんな前頭葉は睡眠によってのみメンテナンスされます。睡眠は人間の脳の活動に欠かせないものなのです。

安達さん「脳は休んでいる間だけ老廃物が排出されます。だから、ずっと考えごとをしていると、脳が常に活動を続けるため老廃物が排出されずにたまってしまうんです。

眠っている時の状態は2種類あります。脳が起きている状態に近い「レム睡眠」と深くなったり浅くなったりする「ノンレム睡眠」です。レム睡眠中は脳が活発に働いており、記憶の整理や定着が行われます。眠るとまずは深いノンレム睡眠になり、1時間ほど経つと少しずつ眠りが浅くなってレム睡眠へ移行します。その後、約90分ごとにノンレム睡眠とレム睡眠を3~5回ほど繰り返し、目覚めます。

新しい情報にたくさん触れたとき、私たちはレム睡眠でその情報を処理しています。だから勉強や仕事で頭をよく使う方やスポーツで能力を伸ばしたい方は、レム睡眠をいっぱいとるために長い時間寝てください」

睡眠不足が続くとどうなるの?

睡眠不足が続くと脳がメンテナンスされず、集中力の低下や注意維持の困難を招きます。また、感情のコントロールができなくなり、人の表情を理解できなくなる、攻撃的になる、自己評価が下がるなどの影響が出ることも。

安達さん「一般的に、脳を休めるために理想的な睡眠時間は6~7時間といわれています。まれに短時間睡眠でも活動できるショートスリーパーの人もいますが、100人に1人か2人で、ほとんどの人は6〜7時間以上の睡眠が必要です。

『日本人の睡眠不足は約15兆円の経済損失』というデータもあります。今まで6時間も眠れていなかった人が7時間眠れるようになると、この損失はなくなるそうです。また、人間が本当に覚醒していられる時間は起きてから12〜13時間まで。つまり、朝の7時に起床した場合、夜の7~8時には限界がきています。起床後17時間以上が経つと、飲酒時と同じくらい認知機能が低下してしまうんです。頭を使う作業は午前中のうちに取り掛かるようにすると、仕事を効率よく進められるかもしれませんね」

なかなか寝つけないときの対処法

なかなか寝つけないときの対処法

眠れない原因や睡眠のメカニズムについて理解できたかと思いますが、実際になかなか寝つけないときはどうしたらいいのでしょう? その場合の対処法を紹介します。

眠りの準備チェックリスト

まずは、ベッドや布団に入る前に「眠る準備」ができているのかをチェックしましょう。

  • 眠気が十分にたまっている
    こんな人はNG
    →昼間にうたた寝をしてしまった
  • 体は眠る準備ができている
    こんな人はNG
    →入浴後で体温が下がっていない、直前に食事をして内臓が活動している、夕方以降にコーヒーなどのカフェインを含む飲み物を何杯も飲んだ
  • 脳と心は眠る準備ができている
    こんな人はNG
    →興奮気味、考え事が頭から離れない
  • 眠りに適した部屋の環境になっている
    こんな人はNG
    →部屋の明かり・音・香り・温度で気になることがある、枕や布団などの寝具が合っていない

チェックがつかなかった項目がありましたら、下記の対処法を試してみてください。

眠気が十分にたまっていない場合の対処法

安達さん「眠気の波には、1日に1回訪れる『サーカディアンリズム』と、約半日周期の『サーカセミディアンリズム』、そして、90~120分の周期で訪れる『ウルトラディアンリズム』が密接に関わっています。眠くないときはいったん布団から出て、眠気がやってくるのを待ちましょう。ウルトラディアンリズムが巡ってきて眠気をキャッチしたときにスッと眠るのが最高の快眠法です。なかなか眠気が来ないと焦ってしまいがちですが、今どんなに眠くなくても、やがて必ず眠気の波がやってくるので安心してください」

  • サーカディアンリズム
    地球の自転周期に合わせた24時間周期のリズムのこと。「おおむね1日」であることから「概日リズム」とも呼ばれています。人間のサーカディアンリズムは正確には24時間よりも少し長いので、体内時計だけに頼った生活をしているとリズムがどんどんずれていきます。
  • サーカセミディアンリズム
    約12時間周期のリズムのこと。多くの皆さんが感じる昼間の眠気は、サーカセミディアンリズムが関係しているといわれています。
  • ウルトラディアンリズム
    サーカディアンリズムよりも周期が短い体内リズムの総称。呼吸や鼓動、消化や排せつなど、30分~4時間のリズムで行われる生理活動のことです。睡眠にはウルトラディアンリズムが深く関わっているため、90分周期でレム睡眠とノンレム睡眠を繰り返すといわれています。

体が眠りの準備ができていない場合の対処法

安達さん「食事はできる限り就寝の3時間前、入浴は就寝の1時間前に済ませるのが理想的です。入浴後はすぐに布団に入らず、リビングなどで過ごして適度に体をクールダウンさせましょう。個人差はありますが、コーヒーなどのカフェインを摂取すると眠れなくなるという人は昼間のうちに飲み終えるようするのがおススメです。

お酒を飲むとよく寝れるという人もいますが、確かに寝つきは良くなるんですが、そのあと利尿作用があって起きてしまうんです。利尿作用で目が覚めたあとはお酒が抜けてスッキリしてなかなか寝れないという話も聞きます。それだけでなく、体の眠る準備が整う前に強制的に寝ることになるので交感神経が休まらないともいわれています。パソコンでいうところの強制終了みたいなものですね。適度なアルコールを夜に楽しむことは問題ないですが、寝酒のような飲み方はやめましょう」

脳と心の眠りの準備ができていない場合の対処法

安達さん「考えごとが頭から離れなくて眠れないときは、『マスキング』といって、別のことで気をそらして考えごとを隠してしまうのが大切。ストレッチやヨガでリラックスするのもいいですが、布団の中で腹式呼吸に集中して思考をそらすこともおススメです。ゆっくりと呼吸をしながらおなかを膨らませたりへこませたりし、おなかに意識を集中しましょう。腹式呼吸以外でも、音楽を聴いたり、読書灯をつけて寝落ちするまで本を読んだりするのもいいでしょう」

眠るための環境ができていない場合の対処法

安達さん「明るい光の下にいると、眠りのホルモンであるメラトニンが分泌されませんが、就寝時は必ずしも部屋を真っ暗にしなければいけないわけではありません。大事なのは目に光が直接入らないこと。真っ暗な部屋が苦手な方は、足元に弱い明かりを設置するといいでしょう。就寝前から、間接照明などで部屋を明るすぎない状態にしておくことがおススメです」

季節によって対処法は変わる?

季節によって寝つきの悩みはさまざま。季節ごとの対処法を紹介します。

【春】
春は花粉症による鼻詰まりや目のかゆみなどで眠りが浅くなる方も多いはず。空気清浄機を使い、花粉によるストレスを減らすことが大切です。また、春は環境が変わることでストレスを受けやすい季節。ストレスに対応するために、いつもより長く眠ってしっかり脳をメンテナンスしましょう。

【夏】
室温が26℃を超えると身体は熱放散ができなくなり、目が覚めてしまいます。寝るときにエアコンを消す人も多いですが、つけっぱなしにして室温を一定に保つことが大切です。冷えすぎないように、エアコンの風を直接体に当てないようにしたり、肩や膝がかくれるくらいのパジャマを着たりすることで、エアコンが苦手な方でも快適に休めます。

【秋】
秋はもっとも眠りのリズムを作りやすい季節。なかなか寝つけない人は、この時期にいろいろと快眠法を試して、眠る前の行動パターンを決めて、自分なりの「就眠儀式」を確立するといいでしょう。秋も花粉症がある人は春と同じように空気清浄機を使ってみてください。

【冬】
寒い冬は電気毛布などで布団の中を暖めがちですが、暖めすぎると汗をかき、眠りの妨げになります。また、空気が乾燥していると口呼吸になりやすいので、加湿器を使うのがおススメです。

忙しい人必見! 最低限これだけでもやれば寝つきが改善するテク

忙しい人必見!最低限これだけでもやれば寝つきが改善するテク

眠れないときの対処法を紹介してきましたが、中には「こんな面倒なこと、仕事が忙しくてなかなか実践できない!」という方もいることでしょう。そんな方のために、「最低限これだけでもやれば寝つきが改善する」というテクを紹介します。

寝つきが改善するテク①夕食は分食にする

帰宅時間の関係でどうしても就寝時間の3時間前に夕食をとるのが難しい場合は、1食分を数回に分けて食べましょう。例えば、仕事の合間に軽い夕食をとり、帰宅後におなかが空いていたら軽いものをつまむなど。消化にかかる胃腸の負担を軽減し、寝つきをよくします。

寝つきが改善するテク②寝る間際はメールチェックだけでもやめる

スマホを見ること自体がダメではないですが、仕事のメールを見てしまうと、イライラしたり、不安になったりと感情が揺さぶられて眠りの妨げになりがちです。スマホのおやすみモードなどを活用し、「22時以降はメール・LINEを見ない」などの自分ルールを決めましょう。夜に返信をするとつい感情的な文面になったりもするので、翌朝冷静に対応した方が効率的です。

寝つきが改善するテク③部屋の明かりを間接照明にする

LEDの光は白熱灯に比べて青い波長が強く、睡眠の妨げになります。就寝の数時間前からシーリングライトを使わず間接照明だけにする、光量を調節するなどの工夫をしてみてください。

寝つきが改善するテク④お昼ころに15分だけ仮眠をとる

寝つきが悪くて昼間に眠くなってしまう方は、お昼頃に15分程度の仮眠を取りましょう。人間は起床後12時間が経過すると認知機能が低下しはじめ、17時間が経過すると酒気帯び運転のような状態になります。長時間勤務をされている方は、一度眠気をリセットすることも大切です。

休日の「寝だめ」に効果はある?

普段たっぷりと眠れない分、休日に「寝だめ」をするという人もいるかと思いますが、人間の身体は残念ながら寝だめができません。逆に、「睡眠負債」という言葉があるように、睡眠不足はいくらでも蓄積されてしまいます。日頃の睡眠不足は休日に返上したいところですが、だからと言って丸一日寝てしまうと、睡眠リズムがズレて不眠につながることも。疲れがたまっていて休日にたくさん寝たい場合は、いつもより1時間早く寝て1時間遅く起きましょう。いつもの睡眠プラス2時間で、翌日がかなり楽になりますよ。

どうしても眠れない場合はお医者さんに相談を

どうしても眠れない場合はお医者さんに相談を

これまで紹介した対処法を試してみても眠れない場合は、睡眠障害の可能性があります。

不眠症の定義は「日中の活動に支障があること」。眠れないことで日中の活動に支障がある場合は、専門の病院を受診しましょう。受診することで睡眠時無呼吸症候群が判明する方も多いのだとか。

安達さん「不眠の症状が現れる病気はたくさんあり、専門医じゃないと正しく見抜いてもらえないことも。最近は睡眠外来も増えてきているので、必ず専門の病院を受診してください。日本睡眠学会の公式サイトに「睡眠医療認定一覧」があるので、受診の参考にしてみてくださいね」

(掲載日:2023年3月2日)
文:吉玉サキ
編集:エクスライト

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