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家族だけでなく地域全体で見守る。行方不明の認知症高齢者をスマホアプリで捜索支援|SoftBank SDGs Actions #16

認知症による行方不明者を一刻も早く見つけ出す。高齢者を見守る社会へ|SoftBank SDGs Actions #16

「すべてのモノ・情報・心がつながる世の中を」というコンセプトを掲げ、SDGsに取り組んでいるソフトバンク。「SoftBank SDGs Actions」では、いま実際に行われている取り組みを、担当社員が自らの言葉で紹介します。16回目は、スマートフォン(スマホ)を使って行方不明となった認知症高齢者の方を地域全体で早期発見するサービス「オレンジセーフティネット」です。

話を聞いた人

田中 賢治(たなか・けんじ)

田中 賢治(たなか・けんじ)
CSR本部 地域CSR企画室 企画課 担当課長
2022年10月よりオレンジセーフティネットの自治体への導入や戦略検討を担当。過去に東北震災復興の子ども向けイベント開催やPCR検査センターの立ち上げ、移動型スマホ教室を担当。

今井 潤一(いまい・じゅんいち)

今井 潤一(いまい・じゅんいち)
CSR本部 地域CSR企画室 企画課
2022年10月よりオレンジセーフティネットの導入済み自治体のアフターフォローを担当。ICT活用推進に向けて2020年3月よりソフトバンクと連携協定を結ぶ岐阜県恵那市役所より出向。自治体では税務関連業務や町づくり活動などに従事。

行方不明になった認知症高齢者を捜索するアプリ

田中「オレンジセーフティネットは、スマホのアプリを活用して、認知症高齢者の方が行方不明になったときに早期発見し保護することを目的としたサービスです。

行方不明になる恐れのある認知症高齢者を事前に登録し、実際に行方不明となったときに、家族の方などがアプリを通じて捜索依頼を出すことで、捜索協力者がグループトーク機能や位置情報の共有により、捜索活動をより円滑に行うことができます。イメージはLINEに近いですが、行方不明者の名前や年齢、性別、眼鏡の有無などの基礎情報や写真など、入力できる項目が細かく設けられていることが特長です。

家族などから捜索依頼があると、行方不明者の基礎情報や行方不明になった場所などが捜索協力者に通知され、捜索を行うという仕組みです。捜索協力者の構成メンバーは自治体職員や厚生労働省が提供する養成講座を受講した『認知症サポーター』という資格保有者、住民のボランティアなど、各自治体によってさまざまですが、住民の中には親子で協力してくださる方もおり、使命感を持って捜索に携われていると感じます」

自治体での捜索訓練の様子

自治体での捜索訓練の様子

今井「行方不明者を早期に発見するために、GPS発信機やQRコードがついた服や靴を高齢者本人が身に着けるといったサービスもありますが、オレンジセーフティネットの特長は、本人が特に何もする必要がないこと。協力者の方に能動的に捜索に携わっていただけるところです。『近所のおじいちゃんが行方不明になったから探そう』といった地域の見守りネットワークの構築をサポートするように意識しています」

捜索協力者に向けて発信される捜索依頼

捜索協力者に向けて発信される捜索依頼

行方不明者の情報が共有される

行方不明者の情報が共有される

捜索協力者に向けて発信される捜索依頼/行方不明者の情報が共有される

捜索協力者に向けて発信される捜索依頼/
行方不明者の情報が共有される

数時間以内に見つからないと命の危険性も

今井「行方不明者は10年前に比べると2倍ほど増加しており、今後も増加すると予想されています。行方不明になってから時間が経過するとともに事故に遭遇する可能性も高くなるため、早期に発見できるかどうかということは生死に関わる問題です。

行方不明者は部屋着のまま外に出てしまうことも多く、本サービスへ問い合わせの多い北海道では、寒さの強い冬場ですと保護は一刻を争います。行方不明者はボイラーの裏側や自動車の背後など、家の近くの暖かいところに隠れていたり、以前の勤め先や通勤経路、山や川など自分の好きな場所で発見されることも多く、行方不明者と顔見知りの住民が探せば、短時間での発見につながる可能性も高くなります。

数時間以内に見つからないと命の危険性も

厚生労働省の大きな方針として、ひとり歩きによって行方不明となった認知症高齢者を早く見つけ出すための仕組み作りが自治体に求められています。独自の高齢者見守りネットワークによる捜索体制を設けている自治体もありますが、ファックスやメールなど手作業で時間がかかるため初動が遅れてしまうことも。

オレンジセーフティネットについてお問い合わせのある自治体のほとんどが、行方不明者捜索の解決策を模索しておられます。お問い合わせの際は、オンラインでのデモンストレーションを行うことでサービスのイメージをつかんでいただいています。導入を検討中であれば実証実験の実施をサポートするなど、自治体目線でのサービス提供を心がけています」

行方不明者をICTの力で救いたい。そこに地域住民の理解は不可欠

行方不明者をICTの力で救いたい。そこに地域住民の理解は不可欠

田中「最初は、高齢の行方不明者をICTの力で救えないかという思いがきっかけでした。自分自身の経験から、認知症の高齢者を家族だけではなく、社会全体で見守ることができるのが望ましい姿だと思っていて、オレンジセーフティネットを使えば、そんな社会を実現できると思っています。地域住民の方々が認知症や高齢者への理解をさらに深めることで、捜索に協力いただける方が少しでも増えるのではないかと考えています」

今井「われわれがまず取り組んだのが、自治体と定例会を設けて、有事の際にアプリをどう活用できるか一緒に考えることです。導入したもののアプリの使い方が分からないという自治体担当者には、本番を想定して行方不明者役を捜索する訓練を行い、あわせて一般の方も参加可能な認知症や高齢者に関する勉強会を警察と連携しながら開催しています。訓練を重ねる中で、アプリの地図機能を使って、司令本部と捜索隊員という捜索本部態勢で行方不明者の発見につなげられるといった気づきもありました」

行方不明者をICTの力で救いたい。そこに地域住民の理解は不可欠

マップを使って捜索

マップを使って捜索

行方不明者を発見

行方不明者を発見

マップを使って捜索/行方不明者を発見

マップを使って捜索/行方不明者を発見

他人任せではなく、地域で見守るやさしい社会へ

他人任せではなく、地域で見守るやさしい社会へ

田中「認知症を持つ高齢者の行方不明は、取り組むべき社会福祉の課題の1つです。自治体の町づくり計画でもSDGs達成に向けた取り組みが行われており、自治体の課題感をうかがいつつ、現場目線で何が求められているのか、一緒に考えていくことが大事です。自治体から出向してきてくれている今井くんの『自治体目線』は非常に貴重だと感じていますね。

ソフトバンクでは『すべてのモノ・情報・心がつながる世の中を』というコンセプトを掲げSDGsに取り組んでいます。私自身、常に大きいゴールを意識しているというよりは、目の前にある課題に真摯に取り組むことでそれがSDGsにつながっているのではないかと思っています。誰かがやってくれるのではなく、自分たちで身近な人を救っていく世界を目指していきたいです」

今井「オレンジセーフティネットは、いざというときに備えて町全体で準備をしていこうというものです。本来であれば使わないことが望ましいものですが、行方不明者が出た場合に、すぐに対応できるようなコミュニティ作りや万全な体制を整えておくことが大事だと考えています。本サービスをきっかけとして、社会全体が認知症への理解を深め受容していき、地域における高齢者の見守り体制が整った社会につながればいいなと思います」

(掲載日:2023年3月13日)
文:ソフトバンクニュース編集部

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今回紹介した内容は、「人・情報をつなぎ新しい感動を創出」することで、SDGsの目標「1、3、4、8、9、10、11」の達成と社会課題解決を目指す取り組みの一つです。

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