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奈良県から学校教育DXの新たな波を。子どもたちや教員がワクワクする授業を目指す産官学連携によるチャレンジ

奈良県から学校教育DXの新たな波を。子どもたちや教員がワクワクする授業を目指す産官学連携によるチャレンジ

教育現場のICTの活用を推進するGIGAスクール構想が2019年末に掲げられてから3年強が経過し、2021年には国内のほぼ全ての小・中学校に子どもたち一人一台のタブレットやパソコン、高速インターネット環境が整備されました。現在は整備されたICT環境の利活用を促進する段階に進み、新たな課題が見えてきています。
奈良教育大学とソフトバンクは、教育DXの推進によるよりよい授業づくりや先生と子どもたちが楽しく学べる環境づくり、教員の働き方改革の推進を目指し、2023年3月に連携協定を締結しました。それを記念し共催でオンラインセミナーが開催されました。

教員の課題を解決したい思いは一緒。授業動画共有サービスで質の向上や効率化を目指す

奈良公園に位置する奈良教育大学。敷地内に歴史遺産や古墳が残る歴史ある大学ですが、教員養成や教育現場支援において国内をけん引する役割を果たしていきたいと、宮下俊也学長と前田康二副学長は話します。

日本の大学としては数少ない「ユネスコスクール」に加盟しており、教育面からSDGsの達成を目指す「ESD(持続可能な開発のための教育)」と、GIGAスクールを全国に推進していくのが大学のミッションであると紹介がなされました。

2022年4月には「ESD-SDGsセンター」を設立し、SDGs達成が可能な教員への認定制度の開始や、近畿地方のESD推進拠点となるコンソーシアムの運営を行っています。

奈良教育大学と、ソフトバンクが今回連携を行うに至った背景について、同学教職大学院の小崎誠二准教授は「現場に立つ教員は、自身の授業の質を向上させたいと考えているが、現状はさまざまな課題がある。具体的な要望や解決策が見えてきたとき、ソフトバンクのソリューションをぜひ活用したいと考えた」と説明しました。

教員の課題を解決したい思いは一緒。授業動画共有サービスで質の向上や効率化を目指す

安心安全な動画共有プラットフォームの環境下で授業動画を活用

今回の取り組みで利用する動画共有プラットフォーム「ビジュアモール ムービーライブラリ」について、ソフトバンクの教育ICT推進部の田中光太郎が紹介。このサービスに至った背景として、1分間の動画でWebページの3600ページ分に相当する情報を伝えることができるという研究成果にも着目したことを挙げます。そこで、教員の学びのコンテンツに動画を生かしていく試みが開始されたと振り返りました。

サービスのデモ画面では、数々の授業動画がサムネイル写真とタイトルなどの情報にまとまって並んでいます。任意のサムネイルをクリックするとプレイヤー画面になり、再生ボタンを押すとすぐに動画が視聴できました。

安心安全な動画共有プラットフォームの環境下で授業動画を活用

田中 「難しい操作はありません。YouTubeのような普段多くの方が使っている動画サービスを使う感覚で、違和感なく利用できるのではないでしょうか。使いやすいユーザーインターフェースに加え、動画とドキュメントをセットで共有できる機能やしっかりしたセキュリティ対策など、教育現場が求める要件に応えられる機能を満たしていると思います」

安心安全な動画共有プラットフォームの環境下で授業動画を活用

実際の授業動画では、音声もクリアで黒板に書かれた文字も読むことができ、授業の様子がはっきり分かります。田中は「撮影に特別な機材は不要で、一般的な三脚とスマホやタブレットで対応可能です。その後の共有が簡単なことも想像していただけると思います」と説明しました。

小崎准教授 「『動画共有』と聞くと、どんなコンテンツを作って配信するのかと構える反応が多い。教員がフィードバックを得たいのは、誰かが視察にくる特別な日のものではなく、普段の授業なんです。日常の授業の様子がたくさん残っていて、それを好きな時に見ることができ、コメントを残せたらとてもいい。いつもの授業から学びにつなげる取り組みなんだということを、ソフトバンクと一緒にしっかり広めていきたいですね」

あと数年で次のステップへ。教育現場でICTを使いこなすために、今が正念場

あと数年で次のステップへ。教育現場でICTを使いこなすために、今が正念場

第2部では文部科学省 初等中等教育局 学校デジタル化プロジェクトチームリーダーの武藤久慶氏が登壇。なぜGIGAスクール構想が必要なのか、さまざまなデータを提示しながら、改めてその背景と意義を解説しました。社会のあり方が大きく変化してきた時代に学校の役割はより大きくなっているとし、「学校は、将来の社会の創り手である子どもたちに生き抜く力を付けてもらい、選択肢を広げる場所。ICTとの付き合い方を教え、学びの道具として使いこなせるようになると、課題を発見して議論してアウトプットして… というように、探究型の学びが展開できる。従来の学習スタイルに合わせるのが難しかった子も活躍できるなど、1人1人を尊重できる」と力を込めました。

また武藤氏は、2025年には多くの自治体がGIGA端末の更改時期を控える「今」の時期の重要性を強調します。「授業でさまざまな工夫をしている事例もたくさんある一方、教員たちは日々の授業や校務で限界まできている。校務にもICTを浸透させることで働き方改革を進めることからもGIGAを推し進めていきたい」と今後の取り組みについて語りました。

あと数年で次のステップへ。教育現場でICTを使いこなすために、今が正念場

第3部では小崎准教授と武藤氏に加えて、認定NPO法人ほっかいどう学推進フォーラム理事長の新保元康氏を迎え、これからの時代に活躍する教員の学び方についてディスカッションが行われました。奈良県の教員へのアンケート調査結果からは、校務、教務含めたスキル全般を先輩や同僚の先生から習得していることが多い一方、授業のやり方はさまざまな手段で学んでいることが分かりました。新保氏はこれまでは経験の継承がうまくいっていたとしつつも、今後はそれが通じない時代になったと指摘。「もともと教員は日常から学ぶ習慣があると思うが、違う領域の学びも深めていく必要がある」と、変化への対応が求められると示唆しました。小崎准教授は、ICTをうまく取り入れている学校での効果を挙げながら「そうした授業の動画を見て学べたらどうなるか。奈良教育大学とソフトバンクの取り組みにご期待ください」と意欲を見せました。

あと数年で次のステップへ。教育現場でICTを使いこなすために、今が正念場

最後に、今回のセミナーをグラレコ(グラフィックレコーディング)にして紹介。グラレコは近年注目されており、イラストと文字を使って会議などを可視化する手法です。セミナーをリアルタイム視聴していたグラフィックレコーダー安積津友香氏がiPadで書き起こした分かりやすい絵図は、後日ブラッシュアップして視聴者へ配布されました。

あと数年で次のステップへ。教育現場でICTを使いこなすために、今が正念場

あと数年で次のステップへ。教育現場でICTを使いこなすために、今が正念場

あと数年で次のステップへ。教育現場でICTを使いこなすために、今が正念場

 

6月には文部科学省の公募事業「教員研修の高度化に資するモデル開発事業」に奈良教育大学が採択され、ソフトバンクもその取り組み構成メンバーとしてソリューションの提供や開発、実用化に取り組む予定です。

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(掲載日:2023年7月4日)
文:ソフトバンクニュース編集部