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日本の上下水道の歴史が変わる日。地域の水道問題解決プロジェクト「Water2040」を発表

日本の上下水道の歴史が変わる日。地域の水道問題解決プロジェクト「Water2040」を発表

水問題の解決に取り組んでいるWOTA株式会社(以下「 WOTA(ウォータ)」)は、株式会社日本政策投資銀行や資本・業務提携をしているソフトバンク株式会社などと連携し、愛媛県や東京都利島村の住居において「小規模分散型水循環システム」を実装し、水道事業の財政問題解決に向けたプロジェクト「Water2040」を開始しました。

  • 冒頭の画像は左から、WOTA株式会社 前田瑶介代表取締役兼CEO、ソフトバンク株式会社 法人事業統括デジタルトランスフォーメーション本部第一ビジネスエンジニアリング統括部統括部長 河本亮、株式会社日本政策投資銀行 原田文代常務執行役員、愛媛県 山名富士デジタル変革担当部長(兼)出納局長会計管理者、東京都利島村 村山将人村長

遠隔地・過疎地での水道事業が直面する、人口減少・上下水道設備老朽化の課題

戦後、日本の上下水道事業は大規模な浄水場に配管をつなぎ各家庭に給水する仕組みで拡張整備が進められ、2021年には水道普及率は98.1%と高い水準に達しました。一方で、給水人口は2010年を境に減少し続けており、さらには施設の老朽化に伴う設備投資コストが遠隔地や過疎地などで課題になっています。

給水人口と水道設備建設投資額の推移

給水人口と水道設備建設投資額の推移

浄水場から遠隔地や過疎地まで長い配管を引く費用は1kmあたり約1億円とされており、配管費用を負担するための十分な収入が見込めないような人口の少ない自治体は、収支のバランスが厳しい状況にあります。すでに水道料金収入だけでは、給水・下水処理費用を賄えなくなっている自治体も出てきています。その赤字額は2022年時点で全国において1.2兆円に上り、今後さらに赤字幅が拡大し2040年には4兆円に達することが予想されています。

上下水道費用から料金収入を差し引いた赤字額の試算

上下水道費用から料金収入を差し引いた赤字額の試算

遠隔地・過疎地での水道事業が直面する、人口減少・上下水道設備老朽化の課題

日本が抱えている上下水道の財政問題について説明した、株式会社日本政策投資銀行 原田文代 常務執行役員は、「浄水場からの道管の長い遠隔地や過疎地域において、WOTAの水循環システムを代替手段とすることで、水道財政全体を好転させる効果があるのではないかと考えている」とし、「水は安価で自由に手に入ると思いがちだが、新しい水の使い方や、水に対する意識に変革が必要な時期にきている。ネットワーク、ノウハウを結集して推進したい」とプロジェクトへの期待を寄せました。

上下水道を使わずに全生活排水を再生・循環できる「小規模分散型水循環システム」

上下水道使わずに水を再生・循環できる「小規模分散型水循環システム」

「Water2040」の実証実験で導入する「小規模分散型水循環システム」は、WOTAが独自開発した水処理自律制御技術により、生活排水の100%近くを再生循環する仕組みを構築しています。雨水や生活排水をその場で回収・処理し、再び同じ家に給水することで、既存の上下水道インフラに頼らず、独立した環境下で生活用水を全て賄うことができます。

WOTAはこのシステムを上下水道の配管の維持コストが高額な遠隔地や過疎地の住居に提供することで、水道事業の赤字構造の抜本的な改善を目指していきます。

愛媛県3市、東京都利島村で実証実験を開始

給水原価が高く住民生活にまで、水問題が顕在化している愛媛県内の3市と東京都利島村に水循環システムを2023年より先行導入し、今後12カ月間以上の水利用や処理など運用に関連するデータを取得し、今後の開発に生かされていきます。

愛媛県3市、東京都利島村で実証実験を開始

「瀬戸内海気候」特有の少ない降水量や雨水を保水しづらい急峻(きゅうしゅん)な地形など、水資源に乏しい特徴を持つ愛媛県は、2060年までの人口減少率が40%超という推計があり、ほぼ全域で過疎地域を抱えています。さらに、水道供給区域でない地域では、自前で山の湧水や川の水をろ過し、各家庭に引き込む飲料水供給施設を運用しているものの、ろ過装置や取水口の掃除も住民が担っており高齢化が進む中で、間もなく限界がくるという喫緊の課題があります。

そこで、愛媛県は県内3カ所の市と連携し実証実験を行います。うち、伊予市はすでに8月22日より水循環システムの導入が開始されており、今秋ごろからは今治市、西予市の住宅でも順次開始していきます。

愛媛県の山名氏は、今回の実証を通じて、県内の他地域での横展開を目指すとし、「全国にも普及できる『愛媛モデル』の創出に取り組みたい」と話しました。

愛媛県3市、東京都利島村で実証実験を開始

人口約300人が暮らす東京都の離島である利島村には川がなく、かねてより安定した水確保に課題がありました。現在では、海水淡水化装置の導入により水供給は安定化しているものの、提供価格の約14倍にもなる高額な給水原価が水道財政を圧迫しています。水不足やそれに伴う給水原価の高騰は、全国の島しょ地域にも共通する課題になっています。

また移住者の増加や核家族化が進む利島村には水の確保の他にも、平地が少ないことでの住宅用地不足、インフラが来ておらず建設工事が長期化してしまう課題もあります。

これらの背景を踏まえ、利島村では2023年6月より、WOTA、北良株式会社、ソフトバンク株式会社と連携し、「小規模分散型水循環システム」に加え、太陽光発電を搭載した「オフグリッド型居住モジュール」において、実際に住民がコンテナで生活している状態でのデータを取得し、安定性・運用性・コストなどを検証する実証実験を開始しました。北良はモジュール住宅の提供、ソフトバンクはプロジェクトマネジメントや通信面の提供などを担っています。

愛媛県3市、東京都利島村で実証実験を開始

利島村は、全国の島しょ地域に横展開できる「島しょ地域モデル」の確立を目標に、すでに開始している実証実験に加えて、今後は将来建設予定の公共施設への実装も視野に入れ、村の水インフラの最適化を図ることを目指していきます。

利島村の村山氏は今後の展望を次のように述べました。「昔から水に苦労してきた村で、この取り組みによって住民の皆さんが少しでも水に苦労することのない環境を実現したい」

この水循環システムを全国に展開するための主要パートナーを担うソフトバンク株式会社の河本亮は、水循環システムの全国的な需要について「WOTAのソリューションは、非常に合理的で抜本的な解決策になりうる、という声を多くの自治体からもらっている」と紹介し、水インフラの課題を解決していくためには、強固な官民連携の仕組みが絶対的に必要であると強調しました。

愛媛県3市、東京都利島村で実証実験を開始

また、「PayPayを始めとするキャッシュレス決済の普及やMaaSなど、通信の枠を超えて全国規模のインフラとして構築を実現してきた実績を生かしていく。今回の水循環システムにおいても、地域ごとの特性に応じて、社会実装を強烈に推進し、全国の自治体に輪を広げていきたい」と意気込みを語りました。

ソフトバンクの次世代水インフラソリューション

ソフトバンクは、WOTA株式会社と資本・業務提携し、水利用の課題解決に向けて取り組んでいます。水に関する自由の実現と環境への責任を両立し、より創造的で持続可能な暮らしの実現を目指しています。
ソフトバンクの次世代水インフラソリューション

2040年の解決に向け、3つのフェーズで推進

2040年の解決に向け、3つのフェーズで推進

「Water2040」プロジェクトは3つのフェーズに分割され、第1フェーズである本年2023年は、給水原価が高く住民生活にまで、水問題が顕在化した地域から先行導入を開始し事例を創出。第2フェーズでは2030年までに、標準モデルを確立させ、財政赤字で老朽化設備を更新しづらい地域の代替手段として日本全国に実装を広げていきます。

そして第3フェーズの2040年までに、人口密度の低い地域における標準的な水インフラとなり、次の世代が安心して使える持続可能な水インフラの確立を目指していきます。

2040年の解決に向け、3つのフェーズで推進

WOTAの前田瑶介 代表取締役 兼 CEOは、さまざまな課題を乗り越えなければ、次世代に持続的な水インフラを残せない状況であるとし、やりたいではなく、やらなくてはならないプロジェクトであると「Water2040」を位置付けると、「創業9年、この日のためにやってきた。日本の上下水道の財政問題を解決し、ひいては世界の水問題解決をしていきたい。日本、そして世界の水問題の歴史的スタートの日」であると決意を示しました。

(掲載日:2023年9月19日)
文:ソフトバンクニュース編集部