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“おいしい魚” の品質規格をつくる。魚の鮮度やうまみの測定手法の確立を目指す「品質規格標準化プロジェクト」

“おいしい魚“ の品質規格をつくる。魚の鮮度やうまみの測定手法の確立を目指す「品質規格標準化プロジェクト」

ソフトバンクは、魚の価値の向上を目指し、魚の鮮度やうまみの測定手法の確立に向けた品質規格標準化プロジェクトを開始しました。またプロジェクトの実現に向けて、コンソーシアムを設立。参画企業とともにプロジェクトの内容についての発表会が行われました。

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米や肉に等級・グレードがあるように、魚にも「おいしさ」の評価を

ソフトバンク株式会社 IT&アーキテクト本部 アドバンスドテクノロジー推進室 室長の須田和人は、養殖のスマート化プロジェクトの概要について説明。「生産」・「流通」・「輸出」3つの柱で養殖産業の再定義を目指すとし、データドリブンな経営により、生産性の向上や漁獲量の推定など生産の課題を解決していくとしました。

流通の面では、ドライバーの労働時間に上限が課されることで発生する「2024年問題」の解決策として、魚の品質を落とさずに輸送可能な冷凍魚の品質を保証する規格作りが重要だと言います。「おいしさ」の評価として、米は等級、肉は等級・ランク、果物は糖度で分類されますが、魚にはその共通基準がないと指摘。そこで今回発足した、「品質規格標準化プロジェクト」では、参画企業からの協力のもと、魚の鮮度およびうまみ成分をAI分析や化学分析を行い、魚の品質規格を標準化します。また、冷凍に適した魚の定義も明確化します。

米や肉に等級・グレードがあるように、魚にも「おいしさ」の評価を
魚の品質標準化プロジェクト 実用化イメージ図

須田は、「魚の価格は魚種と重量で決まります。いくら鮮度が良くても価格を上げることができません。統一した品質規格を定め、『おいしい魚』の定義と『冷凍に向いた魚』の定義を明確化し、2024年問題で生魚の輸送が著しく制限されることが予想される中、 冷凍時の品質保証をすることで、生よりおいしい冷凍魚を作ることが可能になる。これにより、生産者と消費者の双方にメリットをもたらす」と述べ、海外への展開も視野に入れていると語りました。

実用化に向け、まずはマダイを使い、冷凍魚の鮮度やうまみの測定方法を確立し、品質を落とさずに輸送するスキームの確立を目指します。ソフトバンク株式会社 IT&アーキテクト本部 アドバンスドテクノロジー推進室 研究責任者(PI)の石若裕子は、「魚の鮮度を測る指標『K値』は存在するが、魚のうまみを定量評価するものは存在しない」と触れ、ハンディセンサー(分光センサー)を使用し、マダイの鮮度とうまみの両方を計測できる手法の確立を目指すと述べました。

米や肉に等級・グレードがあるように、魚にも「おいしさ」の評価を
研究目的と効果

ソフトバンクはAIを活用し、Labテストや官能テスト、センサーによる結果や評価から、うまみ成分の特徴抽出のため、正解データをもとに機械学習モデルを生成します。機械学習から、魚のうまみの評価軸を作成し、さらに冷凍に適した魚の定義づけを行います。

魚のうまみの評価軸

各業界のエキスパートと連携しコンソーシアムを設立

品質規格標準化プロジェクトの実現に向けて、ソフトバンクは、赤坂水産有限会社(以下「赤坂水産」)、愛媛県産業技術研究所、フィード・ワン株式会社(以下「フィード・ワン」)および株式会社ライドオンエクスプレス(以下「ライドオンエクスプレス」)とコンソーシアムを設立。各参画企業が、魚の品質規格の標準化に向けて取り組みます。本プロジェクトは、愛媛県のデジタル実装加速化プロジェクト「トライアングルエヒメ」の2023年度の採択案件にもなっています。

各業界のエキスパートと連携しコンソーシアムを設立

各参画企業の役割と代表者が本プロジェクトに向けてコメントしました。

冷凍魚の育成方法や、加工・冷凍タイミングを検証

愛媛県でマダイなどの養殖を手がける赤坂水産 取締役の赤坂竜太郎氏は、日本の水産物生産量が低迷している理由について言及。養殖マグロやブリなどは天然の稚魚から育成しており、養殖も天然資源に依存していることや、安定的に飼育が可能な海域が限定的であることを挙げました。また、マダイは海外輸出量も少なく、「われわれ生産者は、食べていただける方にとって特別な魚を作らなければいけない。遠く離れた海外にも冷凍技術を用いて、活魚以上においしい魚を提供できるように研究していきたい」と本プロジェクトにかける思いを語りました。

化学的分析からうまみ成分の検討や、官能テスト方法および指標作りをアドバイス

宅配寿司「銀のさら」などを運営するライドオンエクスプレスで、食材の調達を担当するブランドマーケティング部 調達グループマネージャー 原島一郎氏は、これまで愛媛県産の養殖魚や天然魚を多く取り扱ってきたと説明。本プロジェクトでは、ユーザー視点での食味官能評価を行うと説明し、「鮮度は同じでもマダイのうまみはそれぞれ。上質な魚が評価される仕組みを確立していきたい」と述べました。

冷凍養殖魚の飼養管理の取り組みや、冷凍魚に適した専用飼料を開発

畜・水産の配合飼料の製造・販売などを行うフィード・ワン株式会社 上席執行役員 山上浩史氏は、生産物の付加価値向上法の開発は従来の重要テーマであるとし、「冷凍に適した養殖魚に向けた専用飼料の開発や、飼養技術の確立を目指していきたい。冷凍技術の発展は国内の養殖事業の拡大だけでなく、日本の水産業の活性化にもつながる」とコメントしました。

K値や遊離アミノ酸などの化学的分析からうまみ成分を検討

水産分野の食品加工や分析を行う、愛媛県産業技術研究所 食品産業技術センター 主任研究員 石井佑治氏は、波風の影響などを受けない愛媛県は養殖に適した環境にあると言い、養殖マダイの生産量は全国一位を誇ると説明。「魚の冷凍保存や貯蔵温度、期間によって魚の品質にどのような影響を与えるかの研究を行い、変化する項目を明確にしていく。これらを明らかにすることによって、水産物の流通改革と輸出拡大に期待したい」と述べました。

また、本プロジェクトが採択案件になった愛媛県のデジタル実装加速化プロジェクト「トライアングルエヒメ」の概要について、スマート行政推進課 水越康寛氏が説明。地域や地域の事業が抱える課題をデジタルで解決することを目的とし、デジタル企業の成長、地域事業者の稼ぐ力の向上、地域の発展の 「三方良し」の愛媛県を目指します。本プロジェクトについて、「愛媛県で事業を展開する赤坂水産、ソフトバンクをはじめ、さまざまな企業がタッグを組んでコンソーシアムを築かれており、プロジェクトの実現性と持続性を期待できる」とコメントしました。

ソフトバンク株式会社 IT&アーキテクト本部 本部長の北澤勝也は、「一次産業の課題を解決することで、持続可能な社会を実現していきたい」と本プロジェクトに対する期待を述べました。

上段左から、大塚浩二氏(フィード・ワン)、赤坂竜太郎氏(赤坂水産)、山上浩史氏(フィード・ワン)、玉井浩二氏(愛媛県産業技術研究所)下段左から、石若裕子、須田和人、北澤勝也(ソフトバンク)、原島一郎氏(ライドオンエクスプレス)、石井佑治氏(愛媛県産業技術研究所)

上段左から、大塚浩二氏(フィード・ワン)、赤坂竜太郎氏(赤坂水産)、山上浩史氏(フィード・ワン)、玉井浩二氏(愛媛県産業技術研究所)
下段左から、石若裕子、須田和人、北澤勝也(ソフトバンク)、原島一郎氏(ライドオンエクスプレス)、石井佑治氏(愛媛県産業技術研究所)

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(掲載日:2024年1月16日)
文:ソフトバンクニュース編集部