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雲上の基地局「HAPS」。無人航空機の成層圏テスト飛行とスマホ同士の通信に世界で初めて成功

雲上の基地局「HAPS」。無人航空機の成層圏テスト飛行とスマホ同士の通信に世界で初めて成功

地上約20キロメートル。常に気候が安定し気温もほぼ一定の領域「成層圏」を飛ぶ無人航空機に基地局を設置して、災害時でも途絶えない、安定的な通信サービスの提供を目指しているソフトバンク傘下のHAPSモバイルが、2020年10月、ついに成層圏における無人航空機のテスト飛行に成功したことを発表。

HAPSモバイルが挑戦した、二つの大きな取り組みを紹介します。

HAPS(ハップス)モバイルとは

HAPSモバイルは、世界の情報格差をなくすことを目指し、HAPS(High Altitude PlatformStation)事業の企画・運営を目的に、ソフトバンク株式会社の子会社として2017年12月に設立。主に、HAPS事業に向けたネットワーク機器の研究開発や、コアネットワークの構築、新規ビジネスの企画、周波数利用に向けた活動などを行っています。

HAPSモバイル株式会社についてはこちらをご覧ください。

機体開発開始から、約3年という短期間で成層圏に到達

2020年9月21日(米国山岳部時間)、HAPSモバイルは米国ニューメキシコ州の宇宙関連施設「Spaceport America」で、ソーラーパネルを搭載した成層圏で通信基地局の役割を果たす無人航空機「Sunglider(サングライダー)」の5回目のテストフライトを実施し、飛行高度6万2,500フィート(約19キロメートル)に到達したことを確認。テスト飛行は20時間以上続き、そのうち成層圏の滞空時間は5時間38分でした。

Sungliderは、2017年に開発が開始されたHAPSモバイルの無人航空機です。NASAのアームストロング飛行研究センター)やSpaceport Americaで、数多くのテスト飛行を実施し、着実に飛行時間と高度の更新を重ねながら、機体開発開始から約3年という短期間で成層圏への飛行に成功しました。

太陽光を動力に飛行するSungliderは、成層圏を飛行しながら周回して 地上の携帯電話に電波を発信するため、まさに「雲上の基地局」。広範囲な通信網の構築が可能なため、通信インフラの構築が困難な国やエリアへの通信サービスの提供が可能になります。

また、Sungliderは地上の天候の影響を受けない成層圏を飛行するため、災害が発生したときににも通信サービスの提供が可能。天候に左右されず、災害時でも途絶えない、安定的な通信の、新たな方法として期待されています。

Sungliderの成層圏飛行試験の様子はこちらをご覧ください。

日米2人の「インターネットの父」が、HAPS経由でのビデオ通話に参加

雲上の基地局「HAPS」。無人航空機の成層圏テスト飛行とスマホ同士の通信に世界で初めて成功

さらに、今回のテストフライトでは、Sungliderの翼の下に設置したペイロードと呼ばれる成層圏対応無線機を使用したインターネット通信の試験にも成功。自律型航空式のHAPSによって、成層圏から地上へのLTE通信を世界で初めて成功させ、厳しい条件下にもかかわらず、テスト飛行中に15時間にわたって安定したLTE接続を提供しました。

本実験に参加するメンバーは、それぞれの活動拠点からこのLTE接続を利用してビデオ通話を実施。 HAPSは衛星を使った通信とは異なり既存の電波と同じ周波数のため、通常のスマートフォンを使用して、ニューメキシコ州にあるSpaceport America、東京、カリフォルニア州のマウンテンビュー、ワシントンD.C.の四つの拠点を結んで行われました。

このビデオ通話にはそれぞれ「インターネットの父」として広く知られている日米2人の著名人も参加。Google, LLCのバイスプレジデント、Chief Internet Evangelistであり、TCP / IPプロトコルとインターネット・アーキテクチャの共同設計者である、Vint Cerf(ビント・サーフ)氏と、日本初の大学間ネットワーク(JUNET)を開発し、慶應義塾大学 環境情報学部の教授で、HAPSモバイルの社外取締役でもある村井純氏が、このビデオ通信を通じてHAPSの意義やインターネットの未来について語りました。

雲上の基地局「HAPS」。無人航空機の成層圏テスト飛行とスマホ同士の通信に世界で初めて成功

Cerf氏は、高解像度ビデオ通話を「(通信の技術革新の中で)大変重要な取り組み」と表現し、「この技術は、まだインターネットにつながっていない域に通信ネットワークを提供するといった、通信の未来に確かな影響をもたらすものになる」と、HAPSが果たすコネクティビティーの将来に大きな期待を寄せました。

村井氏は、このデモの結果が「大成功」であるとして、 「成層圏からのモバイルインターネットの提供は、これまでに実現されてきた、数々の革新的な技術に加わるインターネットが次に迎える最も革新的な挑戦。昨今のインターネットの大きなミッションである自然災害時の復旧や、情報格差のない世界の実現のために、HAPSの技術はとても重要です」と語りました。

今後HAPSモバイルは、さらなるテストデータの分析や追加のテストフライト、検証などを重ね、2023年のサービスの商用化を目指す予定。HAPSモバイルの代表取締役社長 兼 CEOである宮川潤一は、歴史的な試験飛行とビデオ通話試験の結果を振り返り、「改良の余地はまだありますが、これからも夢の実現に向けてまい進していきます」と述べ、モバイルインターネット革命に取り組む決意を新たにしました。

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(掲載日:2020年10月13日)
文:ソフトバンクニュース編集部