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介護を理由に仕事を諦めない。介護と仕事を両立するための制度

介護を理由に仕事を諦めない。介護と仕事を両立するための制度

将来、身近な人に介護サポートが必要になったとき、どのような行動をとるかイメージできていますか? 超高齢社会に身を置いていても、実際に当事者にならないとなかなかイメージがつかめないという人も多いのではないでしょうか。近年より拡充されている、介護をしながら働く人を支援するための制度についてソフトバンクの人事担当者に聞きました。

話を聞いた人

久保 由衣(くぼ・ゆい)

ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 人事本部 人事企画統括部 労務管理部 ライフサポート課
久保 由衣(くぼ・ゆい)

介護・育児支援制度の企画・運用を担当。

目次

決して他人ごとではない介護

周りに介護に携わっている人がいるのといないのとでは、介護に関する認識にも大きく違いがあるのではないでしょうか。まずは介護を取り巻く社会の現状を見ていきましょう。

介護を必要とする人は増えているのでしょうか?

超高齢社会の日本では、介護保険制度における要介護または要支援の認定を受けた人の数は年々増加してきており、今後も上昇傾向は続くと言われています。

出典:厚生労働省HP「令和2年度 介護保険事業状況報告(年報)概要」

出典:厚生労働省「令和2年度 介護保険事業状況報告(年報)概要」

ということは、介護をしている人も増えていますよね。介護をしながら働いている人の割合はどのぐらいなのでしょうか?

総務省統計局の調査資料によると、介護をしながら働いている人は、2012年の291万人に対して2017年には346万3千人と、約55万人増えており、現在はさらに増えていることは間違いありません。介護をしている人全体における有職者の割合も増えています。

総務省統計局「平成24年および平成29年就業構造基本調査」より作成

総務省統計局「平成24年および平成29年就業構造基本調査」より作成

半分以上が、働きながら介護をしている状況なのですね! ちなみに、介護は一般的にどのくらいの期間かかるものなのでしょうか?

数カ月~10年以上とさまざまです。厚生労働省のデータによると、2019年の平均寿命と健康寿命(健康でいられる寿命)との差は男性が9歳、女性が12歳。つまり自立して生活できない期間が9年、12年ということになり、介護期間もそのぐらいあると見てとれるでしょう。育児と違って、いつ始まっていつまで続くか分からないのが介護でもあります。

介護を理由に離職してしまう人も多いのでしょうか?

厚生労働省の「雇用動向調査」によると、2020年に介護・看護を理由に離職した人は約7万人います。うち男性が約1万8千人、女性が約5万3千人と女性が多いですね。幅広い年代で千人以上が離職しています。

2020年の離職者数 単位(千人)

2020年の離職者数 単位(千人)

政府統計の総合窓口e-statで作成

やはり両立は大変なのでしょうね…。

家族の介護をできる限り全て当事者自身でやりたいという考え方もあると思いますが、介護はいつまで続くか分からないもの。ずっと当事者だけで介護し続けるのは大変です。地域包括支援センターをはじめとする専門家に相談し、社会資源や地域の力を活用しながら介護をするという意識を持つことが大切だと言われています。
そのような介護を抱えている労働者が仕事と介護を両立しやすくなる体制を整えるために、休業・休暇制度や勤務措置が法律で定められています。

「介護休業」と「介護休暇」で体制を整える

育児・介護休業法では、仕事と介護を両立できる体制を整えるために使える制度として、「介護休業」と「介護休暇」が制定されています。

どちらも、労働者が要介護状態(負傷、疾病または身体上もしくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態)にある対象家族の介護や世話をするために利用できる制度です。

  • 対象範囲:配偶者(事実婚を含む)、父母、子、配偶者の父母、祖父母、兄弟姉妹、孫

なんだか似ていますが、どう使い分ければ良いのでしょうか。

介護休業と介護休暇のポイント

制度 内容 どのようなときに使う?
介護休業 対象家族1人につき3回まで、通算93日まで取得可能
  • 介護/世話のために長期間に渡って休みたいとき
  • 仕事と介護を両立できる体制を整えるとき
介護休暇 対象家族が1人の場合は、年5日まで。2人以上の場合は、年10日まで取得可能 通院の付き添いや介護サービスの手続きなどのため、短期的に休みたいとき

久保

ざっくり言うと、ある程度長期的に取得する場合は「介護休業」、単発など短めの取得には「介護休暇」を使います。
例えば長期で取得できる「介護休業」は、地域のケアマネジャーに相談してさまざまな外部サービスや施設を探したり検討するなど、体制を整えるためにまとまった期間が必要なときに。「介護休暇」は、通院の付き添いや地域のケアマネジャーと日常の介護計画を立てたり修正するような際に1日単位で取得するようなイメージです。

介護休業や介護休暇が取得できない場合もある?

雇用期間が短いケースなど、取得できないケースがあります。

取得できない条件

  • 介護休業
    • 日々雇用者
    • 有期雇用者は申出時点で、取得予定日から起算して、93日を経過する日から6カ月を経過する日までに契約期間が満了し、更新されないことが明らかであること。
    • (労使協定を締結している場合)入社1年未満の労働者、申出の日から93日以内に雇用期間が終了する労働者、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者。
  • 介護休暇
    日々雇用者、(労使協定を締結している場合)入社6カ月未満の労働者、1週間の所定労働日数が2日以下の労働者

知っておきたい、働きながら介護を続けていくための支援制度

介護の体制を「介護休業」で整えつつ、時々「介護休暇」を取得しその後のフォローをする。あとは日々の仕事との両立をいかに続けていくか…。働き方を支援する勤務措置制度も制定されています。

介護をしている社員が利用できる勤務措置

  • 所定労働時間の短縮等(時短勤務等)
  • 所定外労働の制限(残業免除)
  • 時間外労働の制限
  • 深夜業の制限
  • 日々雇用者は除く。その他、適用除外要件あり

久保

上記制度が法令で用意されており、必要に応じて活用できるようになっています。自分に合った働き方で、無理なく仕事を続けやすくなっています。

独自制度で社員をより強力にサポート

介護と仕事の両立を支援する制度が法律で定められていますが、法定以上の制度を設けている企業も多く存在します。

介護休業や介護休暇制度について、ソフトバンク独自のものはありますか?

制度内容の拡充をしています。「休業」が法令では93日まで、分割回数は3回までと制限がありますが、当社では分割回数制限なしの最大1年間取得可能。「休暇」についても、法令の5日間より拡大して、対象家族1人あたり10日間取得可能にしています。また、法令では給与の定めはありませんが、当社では積立年休を充当すれば有給にすることも可能です。

被介護者の条件では、2週間以上の期間にわたり常時介護が必要な状態でなくても、介護が必要な状態であれば制度利用可能としている点です。被介護者がある程度自分で動くことができるとしても、日常生活で一部介助を必要とされていれば、いずれの制度も利用可能です。一部介助と言うと簡単に聞こえるかもしれませんが、ご家族やご本人にとっては、その頻度が多くなると負担は増えます。また、高齢の方は必要な介助内容が急変することもあり、当社としては柔軟に取得できるようにしています。

制度 内容 被介護者の条件
介護休業
  • 回数制限なし、通算1年間取得可能
  • 積立年休充当時、給与支給あり
介護が必要な状態
介護休暇
  • 対象家族1人につき年間10日間取得可能
    (例:2人の場合は20日まで、3人の場合は30日まで)
  • 積立年休充当時、給与支給あり

対象範囲も拡大しているのですよね?

法定では含まれていない、2親等以内の親族全てに拡大しています。法定で対象範囲に含まれていない家族を介護しているという相談が社員から寄せられていたため、2親等以内の家族は全て対象にすべく、2022年1月に改正しました。勤務措置を利用する際の対象範囲の考え方も同様としています。

社員をより強力にサポート。ソフトバンクの独自制度

働き方に関わる制度についても、独自のものがあれば教えてください。

介護が必要な期間はずっと所定労働時間の短縮ができるようにしています。そのほかには、要件を満たせば新幹線や特急列車通勤を可能にしている点や、新型コロナ感染症の対策もあり在宅勤務の制度を大きく緩和している点。これらを活用することで、仕事と介護を両立しやすくなった社員は増えたと思います。

勤務措置

  • 所定労働時間の短縮に、期間の制限なし

介護支援制度

  • 必要な要件を満たす場合、新幹線などの特急列車通勤を許可
  • 場所にとらわれない柔軟な働き方で効率的な時間活用を促進

今後に向けて、介護関連の制度改革にどのように取り組んでいきますか?

介護についてはいま世の中でも課題になっていますが、当社は2019年12月に勤務措置制度の対象を広げるなど、数年前から段階的に積極的に制度を拡充してきました。当社は平均年齢が40.5歳のため、介護支援制度を利用する人数はまだ少ない状況ですが、今後増えることを見越し、そのときに介護を理由に仕事を辞めなくてすむようにと、これまで法定事項を上回るような制度を設けて環境づくりを進めています。今後もニーズを汲みながら、改善を重ねていきたいと思っています。

ありがとうございました。

(掲載日:2022年11月8日、更新日:2022年11月9日)
文:ソフトバンクニュース編集部

  • 社内介護制度の使用条件(被介護者の条件)について誤解を招く表現があったため、一部内容を修正しました。

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