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新卒1年目で開発リーダーに。AIを活用した循環器病の予防医療への挑戦

(仮)AIを活用した最先端技術で循環器病の予防医療に取り組む。若き開発リーダーがチームを牽引

昨今、AIやITなどテクノロジーの進歩に伴い、医療技術が発展しています。その一方、高齢化に伴い生活習慣病に罹患する人の割合と、それに関係する国民医療費が年々増加していることが課題となっています。ソフトバンクは国立研究開発法人国立循環器病研究センター(以下「国循」)と共同でAI(人工知能)を活用して生活習慣病に起因する冠動脈疾患の診断支援およびリスク予測を行う研究開発に取り組んでいます。

このプロジェクトの要であるAI開発のリーダーとしてチームを率いるのは、2021年の研究室開設時にはまだ新卒だったソフトバンクのエンジニア 片田 晃輔。若くして責任あるプロジェクトを任せられた経緯や、その活動について話を聞きました。

お話を聞いた人

片田 晃輔(かただ・こうすけ)

ソフトバンク株式会社 テクノロジーユニット プロダクト技術本部 西日本IoT技術統括部 関西IoT技術部
片田 晃輔(かただ・こうすけ)

医療知識ゼロからのスタート。願ってもない大抜擢に全力で挑む

新卒1年目でAI開発リーダーに抜擢された片田さん。これまでの道のりについて振り返ってもらいました。

新卒1年目でAI開発リーダーに抜擢された片田さん。これまでの道のりについて振り返ってもらいました。

このプロジェクトに携わることになった経緯・背景を教えてください。

2021年に入社して間もなく、上司から本プロジェクトへの参加、しかもAI開発リーダーとして、とお話をいただきました。

私が入社する前からこのプロジェクトは始まっていましたが、国循のある大阪に研究拠点を構えるため、関西で地域密着型の課題解決に取り組む私の所属部門がプロジェクトに加わることになり、そのタイミングでお声をかけていただいた形です。

新卒6カ月目で開発リーダーに。それは大抜擢ですね!

私の部署では、日頃から失敗を恐れず挑戦することが奨励されています。私も入社後「どんなことでもトライしてみよう」という気持ちで積極的に業務に取り組んでいました。この姿勢が上司に伝わり、挑戦の機会をいただけたのかなと思います。

もともと医療系の研究に興味はあったのでしょうか。

興味はありましたが、医療系の技術の知識は全く無かったです。幸いなことに医師にかかることも少なかったので、そもそもこのプロジェクトの研究対象である「循環器」って何だろうというところからのスタートでした。循環器というのは、心臓、血管、リンパ管などの体液を循環させるための器官を指します。私はまず、心臓とその血管である冠動脈について勉強を始めました。医学の専門用語も多く覚えるのは大変でしたが、今では国循の医師との会話にも困らなくなりましたし、医師が使うようなツールも扱えるようになりました。ちなみに学生時代は音響系のシステムを専攻しており、音の聞こえ方の研究を行っていました。聴覚にも関わる分野で人間の研究はもともと好きだったので、今回の研究に多少通じるところがあると思います。

まさにゼロからのスタート…。必死で勉強したんですね…! 医学知識の勉強に加えAI開発に取り組むのは大変じゃありませんか?

医用画像の解析についても研究しているので、検査機器のしくみや解析方法についての勉強、調査なども行いました。特に本プロジェクトにおいては医用画像のためのワークステーションも導入しているので、ワークステーションの業者に問い合わせを行ったりしながら、AIに学習させるための教師データの基となる画像データの作成も行いました。また、AIに関する知識もちょっとかじったことがある程度であったので、これも勉強を行いました。AIジェネラリストとしての知識を問うG検定や、実際に開発を行うE資格も取得しました。新規事業系のプロジェクトでは勉強すべきことが多いのは大変ではありますが、新しい知識やスキルを身につけることによって、自分自身の成長を感じられることは良い面でもあります。

AI開発リーダーとなり、医療知識を必死で勉強したという片田さん。努力で得た知識と技術を生かし、取り組むプロジェクトとはどのようなものなのでしょうか。

循環器病の予防が健康寿命の延伸・医療費の抑制へ

循環器病の予防が健康寿命の延伸・医療費の抑制へ

冠動脈疾患に関するプロジェクトとのことですが、取り組みの背景として現在どのような課題があるのでしょうか。

生活習慣病に起因する循環器病は、年々増加する国民医療費に占める割合が最も多く、深刻な問題となっています。また、循環器病の最大の課題は予後が悪いことで、発症するとさまざまな病気に派生し、介護が必要となるような後遺症が残る可能性があります。また、治療にあたっては長期にわたり投薬や定期的な検査が必要になるケースが多く、患者にとっても経済的負担の大きい疾患です。

そこで2019年に、国民の健康寿命の延伸や医療費抑制に貢献するため、国循とソフトバンクは循環器病対策の先端医療の研究開発に関する包括連携協定を締結し、生活習慣病・心房細動・脳卒中の3つをテーマに研究と調査を行っていました。2021年からは、大阪府吹田市にある国循のオープンイノベーションラボに研究室を開設し、冠動脈疾患に関する研究を本格的に始動しています。生活習慣病を放置し続けると循環器病を発症する恐れがあることが研究で分かっているため、AIやビッグデータを駆使することで、病気の予防と治療の両面からアプローチし問題の解決を図っています。

循環器の専門知識とソフトバンクの技術を掛け合わせた研究開発

国循内のオープンイノベーションラボに開設した研究室

国循内のオープンイノベーションラボに開設した研究室

AIを活用することで、どのように循環器疾患の予防医療が実現するのでしょうか。

このプロジェクトは画像や検査数値、生活習慣などから、冠動脈疾患の診断支援や重症化リスクなどの予測を行うAIを開発することで早期発見・重症化予防を目指しています。AIやICT活用に関して強みを持っているソフトバンクと、国内唯一の循環器に特化した医療研究機関として、知識や研究データを持つ国循だからこそできる研究開発だと思っています。

循環器病は前段階の動脈硬化を経て数十年かけて発症するものなので、過去に遡った検査データや生活習慣データも解析することで検証しています。国循の医師とはディスカッションを行ったり、AIに学習させるのに必要な作業の一部や評価にご協力いただいたりなど、密に連携を取りながら開発を行っています。

エンジニアとして、テクノロジーで世界をより良くする仕事を

エンジニアとして、テクノロジーで世界をよりよくする仕事

AI開発リーダーとしてプロジェクトを進める中で、苦労したことや得たことはありますか。

私は医療画像の取り扱いと教師データの作成を含むAI開発における要件定義やデータの準備に関係する部分を担いました。医師やAIエンジニアの間に立ってやり取りを行い、AIの研究開発も進めていました。循環器の専門医に教師データ作成の依頼をするのですが、その作業量は膨大となります。医師の方には当直の合間にご協力いただいていたので、忙しい中でどうやったら快く引き受けてもらえるだろうと思い、作業量を減らすためにさまざまな工夫を行いました。医師ともしっかりとコミュニケーションを取ることで、開発に必要な量の教師データ作成の依頼をすることができました。

プロジェクトに対しての展望を聞かせてください。

今は研究段階ですが、ソフトバンクとしてはやはり研究成果を事業化することがゴールになります。開発の成果をどのように社会に実装していくかを具体化していくに当たり、医師や利用者の生の声を丁寧に集め、ビジネスを構築していくことが大事だと思います。

エンジニアを目指している若い人に向けてメッセージをお願いします。

エンジニアにもいろいろあると思いますが、私が描くエンジニアとは、テクノロジーで世界をより良くする職業のことを指します。ソフトバンクに入社してから、その業務の規模の多様さに驚きつつも、その背後には「情報革命で人々を幸せにする」という理念があり、この仕事は誰かの世界をより良くすることにつながっていると確信しています。私自身はまだまだ未熟ですが、同じ志を持つ皆さん、ぜひ一緒に世界をより良くするために努力していきましょう。

ありがとうございました!

(掲載日:2023年4月5日)
撮影協力:国立研究開発法人国立循環器病研究センター
撮影場所:サイエンスカフェ、オープンイノベーションラボ ソフトバンク研究室
文:ソフトバンクニュース編集部