寒い日のお出掛けで「スマホのバッテリーがすぐなくなる気がする…」と思ったことはありませんか? 実は、気温が低いときバッテリーは実際に減るのが早いんです。なぜ寒いと減りが早くなってしまうのか、そしてできる対策はあるのか、ソフトバンクの品質管理担当者に話を聞きました。
目次
教えてくれた人
ソフトバンク株式会社 テクノロジーユニット統括 プロダクト品質部
写真左から
朝枝 隆裕(あさえだ・たかひろ)
角田 真隆(かくた・まさたか)
モバイル端末を中心とした品質管理や開発検証におけるハードウェア品質保証、仕様策定、PL・法令の適正な品質確保や業界連携による安心安全活動などを担当。
寒いときにバッテリーの減りが早いのはどうして? 理由はリチウムイオン電池の特性にあった
早速ですが、どうして寒いとバッテリーの減りが早くなってしまうんでしょうか?
そうですね。理由をお話しする前に、まずはスマホのバッテリーに使われている「リチウムイオン電池」の構造について説明しますね。
リチウムイオン電池とは、電極にリチウムという金属を含んだ化合物を使い、リチウムイオンの移動によって放電または充電する電池のことです。この充放電によってバッテリーを動かすもとになる電気エネルギーが発生します。リチウムイオン電池は小型で軽量、かつ起電力が高くて充電可能であること(二次電池)が特長です。
リチウムイオン電池の内部構造
内部はこの図のような構造になっていて、一般的に正極と負極、電解質、セパレータで構成されています。正極と負極は皆さんがよく使う電池のプラス極・マイナス極と同じですね。電解質は液状の物質で、リチウムイオンが正極から負極、またはその逆に移動できるようにする役割を果たします。セパレータは正極と負極を物理的に隔てるもので、電池内部のショートを防いで安全性を確保しています。
電池の内部では、正極と負極の間をリチウムイオンが行き来することで充電と放電を繰り返しています。一般的に、多くのイオンは液体や固体の中を動きにくいのですが、リチウムイオンは動きやすい性質を持っているので、電池の材質として適性があるというわけです。
では、肝心の「寒いときにバッテリーの動作が悪くなるのはなぜか」というお話ですが、これは電池内部に原因があります。温度が低くなると電解質の粘度が上がって電荷移動がしづらくなってしまい、内部抵抗が大きくなることにより電圧降下が起きるためです。人の体が寒さで凍えるように、リチウムイオン電池も寒いと力が出しにくくなり、普段通りの力が出せなくなるということですね。
実は、スマホにとっての「快適な温度」があるんです
普段何気なく使っているスマホですが、使う場所の温度を気にしたことはありますか? 実はバッテリーには動作に適した温度があり、その範囲内での利用が推奨されているんです。範囲外の状態で使うとどんなことが起こるのか聞いてみました。
スマホを使うには適した温度があるということなのですが、具体的にはどのくらいなのでしょうか?
機種にもよりますが、基本的には5℃から35℃の範囲での利用が推奨されています。この通り、気温が低すぎる環境での使用はバッテリーに負荷がかかり駆動時間もかなり短くなってしまいます。
バッテリーがフル充電の状態からゼロになるまでの時間の違い
温度 | -10℃ | 0℃ | 25℃ |
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バッテリーが落ちるまでの時間 | 3時間25分 | 6時間44分 | 7時間28分 |
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ソフトバンク調べ
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各温度で端末の負荷テストを行い、バッテリー残量推移を計測。表内の「バッテリーが落ちるまでの時間」はバッテリーが0%になるまでの推定時間を表したもの
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スマホが損傷する可能性がありますので、絶対にまねしないようにしてください
マイナス10℃では25℃の場合と比べて、バッテリーの駆動時間が半分以下になってしまうんですね! こんなに違いがあるとは知りませんでした。
そうなんです。適温環境以外の過度な寒さは、バッテリーにとって大きな負荷になってしまいます。他にも、動作不良や充電不良、電池持ちが悪くなるといったことが挙げられます。また、保護機能が作動して停止してしまうこともあります。場合によっては故障や事故の原因になることもあるんですよ。
寒いだけでなく暑すぎるのもバッテリーにとっては大敵です。先ほど挙げたようなものだけでなく、変形や発火など大きなトラブルにつながることもあるので、適した温度の環境で使っていただきたいですね。
スマホを使う人間が過ごしやすい環境は、バッテリーにとっても過ごしやすい環境であるということですね。ちなみに、温度の低い場所から適温環境に移動するとバッテリーの減り方などのパフォーマンスが元通りになるのだそうです。ただし、減ってしまったバッテリー残量が元に戻るわけではないので注意しましょう。
寒いときでもバッテリーを長くもたせたい! どんな対策があるの?
スマホを使うには適した温度がある… といっても、イルミネーションや初詣、ウインタースポーツなど冬もお出掛けやアウトドアの機会は多いですよね。どうしても気温が低い場所でスマホを使いたいときにやっておきたい対策についても教えてもらいました。
朝晩や真冬の外出は冷え込むこともありますが、寒い日にできる対策はあるのでしょうか?
バッテリー消費を抑える必要があるので、例えばディスプレイの明るさを暗くしたり、必要でない通信の機能をオフにするなどが挙げられます。また、省電力モードなどバッテリーの消費を抑える設定を有効にするのも手ですね。他にも、カバンやポケットに入れて急激な温度変化や外気による影響を避けることも有効です。ただし、ハンカチなどに包む場合はスマホが滑り落ちないように気を付けてくださいね。外出の時間が長い場合は、予備のバッテリーを持っておくと安心だと思います。
ディスプレイや通信はスマホの中でもバッテリー消費が特に大きいので、画面の明るさ調整やダークモードの使用などは私たちもやってますね。目にもやさしいですよ。
スマホの温度を保つことが大事なんですね。スマホが冷えてしまうと、つい温めたくなってしまいますが…。
暖かい室内に持ち込むのはいいんですが、カイロやストーブなどで温めると急激な温度変化でスマホ内部に結露が発生してしまうことがあるので、絶対に避けてください。バッテリーの劣化を早めることにもつながってしまうんですよ。最近は温度が低めのカイロもありますが、これもお使いの場所によっては急激な温度変化を引き起こす可能性があるので避けていただきたいですね。
カイロなどで温めても、スマホ自体が温まるわけではないんです。外側は温まったように感じても、内部は冷えたままなのでまた寒い場所で使うとその温度変化が結露を引き起こします。冬の寒い日、電車に乗るとメガネが曇ったりしませんか? それと同じなんですよ。

スマホ内部にゴミが残っていたりすると、そのゴミが結露を吸い込んでいつの間にか湿って故障した、なんてことも。普段通り使っているのに水没症状で使えなくなったというような場合は、結露による故障の可能性がありますね。
屋内でも玄関先や空調の入っていない部屋など低温になりやすい場所がありますが、このような場所でもスマホの使用や充電は問題ないのでしょうか?
温度が低い場所での使用や充電はバッテリーに負荷がかかってしまうので推奨はしていません。また、何度も寒い場所で繰り返し使っているとバッテリーの劣化も進んでしまいます。とは言え、どうしても… というケースもあると思いますので、できるだけスマホ本体が冷えないように布で包んだり、使用を短時間にするなど工夫していただければと思います。スマホを長く安全にご利用いただくためにも、なるべく適温になる環境で使っていただきたいですね。
バッテリーより長く保つためのポイントは、すぐにできるものばかり。早速取り入れて、寒い日でも快適にスマホを使ってくださいね。
寒い日はこたつでぬくぬく… 温まりすぎて故障につながる、なんてことも!
温度が低い場所だけでなく、暖かい室内でも気を付けたい場所があるんです。こちらの記事も合わせてチェックしてみてください。
ソフトバンクでは、スマホを正しくご利用いただくための啓発活動を行っています。安全にお使いただくための情報を掲載していますので、ぜひご覧ください。
(掲載日:2023年12月8日)
文:ソフトバンクニュース編集部