近未来をテーマにしたSF映画では、目の前に立体映像が映し出され、遠く離れた家族や友だちと会話したり、テーブルや壁にタッチパネル画面のような映像が表示されて、手のひらで画像やアイコンをタップするといったシーンなどが描かれています。
今までパソコンやスマホなどで創り出されていた映像や画面が、さまざまな映像技術を用いることで近い将来、現実世界のものになるのではと予想されているんです。
何か映像技術というと難しそうですが、最近よく耳にするVR、AR、MRとは何かを解説します。
その場所にいるかのような臨場感が味わえるVR(バーチャル・リアリティー)
そんな近未来に続く映像技術の一つが「VR」。日本語で「仮想現実」と訳されます。VRの最も大きな利点は、あたかもその場所にいるかのような臨場感が味わえること。VRゴーグルやヘッドマウントディスプレー(HMD)と呼ばれる機器を装着することで、視界に仮想現実の世界が広がります。現実感をもたらすのはリアルな映像だけでなく、頭や顔の動きに合わせて視界も変わること。360度の仮想現実の映像なら、顔をグルリと回せばそれに合わせて視界もグルリと変わるんです。
VRを使った例として、2018年3月に福岡ソフトバンクホークスのホームゲーム4試合のVR映像をライブストリーミングで配信するという実験を行いました。バックネット裏、一塁側内野席、ライト側外野席の3つの座席のアングルを自在に切り替えて野球観戦を楽しめるというもの。今後会場に足を運べないユーザーも、どこにいてもスタジアム観戦と同じような臨場感で楽しむことができますね。
このコンテンツを楽しむためにはいつも使っているスマホを装着して「VRゴーグル」になるVRヘッドセットを使います。「没入感」(没頭感)がアップして、顔の動きに合わせて視界も変わります。
VR動画を実際に体験してみよう!
ソフトバンクニュースではイベントの様子を体験できるVR動画を公開しています。
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VRでまるで別世界で生きる自分になれる!?
VRをもっと楽しみたい場合は、スマホを組み込むタイプだけでなく、ソニーの「PlayStation VR」やHTCの「VIVE Pro HMD」といった多機能な専用のVRゴーグルが市販されています。機種によって特徴は異なりますが、主にハイレゾ画像と3Dオーディオなどによって臨場感や没入感が追求されていたり、使いやすいコントローラや長時間装着しても疲れにくいなどのポイントがあげられます。
そして、VRは体を使って体験する「体験型アクティビティー」に活用されているんです。そのひとつの例がVRを使った新感覚のスポーツ「WARP BALL(ワープボール)」。期間限定の体験イベントとして2017年7~8月にかけ実施しました。VR空間のスタジアムで宙に浮かぶボールをゴールにたたき込むスポーツです。
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本イベントは終了しています。
都内では多数のVR体験施設もオープンしています。施設によっては、VRゴーグルだけでなく、ハンドガン(銃)やソード(剣)、手や足にVRマーカー等を装着し、プレーヤーの位置情報や全身の動きをリアルに仮想世界に反映するアトラクションも登場しています。身体全体の動きがリアルに反映され、跳んだり跳ねたり、撃ったり斬ったりと、別の自分になりきって仮想世界が体験できます。
また、中には人気アニメや人気レースゲームなどのキャラクターを使ったVRアクティビティーがあり、最近では人気ロールプレイングゲーム(RPG)も登場し注目を集めています。4月からは人気ロールプレイングゲーム(RPG)が登場し注目を集めています。草原を仲間と共に旅をしてモンスターと遭遇したり、お城の中を歩いたり、ゲームの世界の中に自分が入り込んだかのような体験ができるそうです。
VRとは違うARとMR
VRのほかに「AR」と「MR」が注目されています。
実際の景色に文字や画像を追加できるAR(オーギュメンテッド・リアリティー)
日本語では「拡張現実」と呼ばれます。VRはカメラで撮影された動画・画像をコンピューターが創ったデジタル空間、仮想世界に没入するリアリティーを実現するものに対し、ARは実際の景色にコンピューターで創った文字や画像を重ね合わせ、現実の世界を拡張、補完するものなんです。ARの代表作として大ヒットした「Pokémon GO」や、写真を加工するアプリ「スノー SNOW」がありますね。
以前ソフトバンクはARに対応した名刺を作りました。見た目はPepperがデザインされているだけと思いそうですが、専用アプリを起動し、名刺をスマホのカメラを通して見ると、「Smart」と「Fun」のボタンが浮かび上がり、Pepperが話しかけるんです。
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すでにAR動画の再生は終了しています。
この技術を活用すると、街並みの景色を見たときに、それぞれの建物の名前や、建物内に入っているお店の情報を見ることができるなどの用途にも活用できます。自動車の運転中に幹線道路からは見えづらいコンビニや公園などの場所をサインで教えてくれたり、ドローンの映像に建物の名前を追加表示することなど、便利に利用できると考えられています。
仮想空間に実際の空間が反映された世界を体験できるMR(ミックスド・リアリティー)
「複合現実」とも呼ばれます。「MR」はコンピューターが創った仮想空間に実際の世界をリアルに反映させる技術です。カメラを通して見える現実世界はコンピューターのデジタル空間であり、画面内の手の動きにあわせてポップアップ・メニューが空間に表示されたり、アイコンや文字情報も空間内に表示されます。
MR技術を活用した例として、世界初の歯科治療シミュレーションシステムは驚きです。歯科治療の研修は普段トレーニング用の人形が使われるのですが、MRゴーグルをつけている人にはCGの女性が診察台に寝ている様子に見えるんです。
また、カメラを通して見る実際の景色に操作メニューが表示されたり、歯の治療にあたっても器具をあてる角度や削る深さなどの情報が表示されます。MRでは患者を想定した人形にも触われるし、施術作業もリアルなトレーニングが可能になるなど、VRやARにはない利点があります。
VR、AR、MRはどんどん進化し、身近になっています。仮想現実、映像が空間に浮かび上がって見える「ホログラム」が日常の生活に溶け込んで、新しい刺激や便利さを提供してくれる、そんな未来はもう目の前です。
未来の生活に関する記事
(掲載日:2018年5月11日、更新日:2018年5月17日)
文:神崎洋治
神崎洋治(こうざきようじ)
TRISEC International,Inc.代表。
ロボット、AI、IoT、インターネット、デジタルカメラ、セキュリティなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。雑誌、ウェブメディア、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数。