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未来のクルマは生活を変えて、地方も救う!? 自動運転の技術が解決できる課題をITライターが予想してみた

自動車やバス、タクシーが今後数年で自動運転車になる時代に変わろうとしています。しかし、その全貌はあまり知られていません。自動運転車は、コンピューターが人間の代わりにクルマのハンドルやブレーキの操作をするだけではなく、今よりクルマを快適に利用でき、安全で、環境にも良い社会へとつながっていくのです。今回は、自動運転とは何か、私たちの生活にどのように関わるのか、未来の予想を交えて解説します。

自動運転の技術はどこまで進んでいる?

自動運転の技術はレベル0~5の6段階に分けられていて、一部は既に実用化されています。レベル0は自動化されていない手動の運転で、レベル1~2は自動ブレーキ、車線をはずれたときの警告、車線を維持して自動で走るなどドライバーを補助する「運転支援」で、すでに市販車に実装されています。

今後、レベル3~5になると「コンピューターによる自動運転」が主体になります。レベル3は緊急時のみ運転者に操作がバトンタッチされ、レベル4は高速道路など特定条件下での無人運転、レベル5は場所や環境などを限定しない完全な無人運転です。自動運転のレベル分けについて詳しく知りたい場合はこちらの記事をチェックしてください!

自動運転で社会がどう変わるか予想

自動運転によって、社会がこんな風に変わるかもしれません。

未来予想①:自分で運転しないことで新たな時間が生まれる

クルマに乗って目的地を指定したら自分は操縦せず、コンピューターが運転。そのため、車中で本を読んだりテレビを見たり、自由な時間を楽しめるかもしれません。一部の産業ではこの車内で過ごす時間をビジネスにつなげられないか、検討を始めています。

未来予想②:駐車スペースを探さなくていい

駅周辺や繁華街でクルマを止める駐車場を探し回った経験がある人も多いでしょう。自動運転ではクルマを降りたら、クルマが駐車スペースを自分で探し、自動的に駐車します。駐車場所をスマホなどで通知を受けることもできますが、帰りも行きで降りた場所にお迎えが来るなんてことも可能になります。

未来予想③:自動車を持たなくていい

無人の自動運転タクシー「ロボットタクシー」が普及すると、スマホなどでロボットタクシーを呼び、目的地まで連れて行ってくれます。料金は1kmあたり11.7円と安価といわれていて、自家用車を所有する人は激減し、都市部の交通量は減り、安全性も高まると言われています。

  • 米国の調査会社が算出した1マイル当たり17セントを独自に1ドル=111円で換算した場合の金額。

自動運転バスが地域バスの問題を解決する

地方では人口減少もあり、都会に比べるとバスの利用者が減っています。また、ドライバーは高齢化や人手不足もあって、運行本数の減少や路線廃止などが懸念されている地域があります。そこで期待されているのが自動運転バスです。決められたコースを自動運転で周回すると、バスのコスト削減、ドライバー不足などの課題が解決されるんです。

また、最近は高齢者のドライバーによる交通事故が問題になっていて、政府は高齢者に自動車免許の返納を呼びかけていますが、自動運転バスにより運行本数の拡大など利便性が上がることで自家用車に代わる主要交通機関として普及するかもしれません。

SBドライブが、自動運転技術を研究・開発する先進モビリティと、日野自動車のバスをベースに共同で開発している自動運転バス。ANA(全日本空輸)と共同で、公道での実証実験が行われた

自動運転って安全? 事故が起きないための方法を開発中!?

自動運転で心配になるのが「自動運転って本当に安全なの?」ということ。コンピューターが人間より上手に運転できるなんて・・・と感じるのが本音かもしれませんが、自動車メーカーやシステム開発者は、人間の運転よりはるかに安全な自動運転車を目指して開発しています。

カメラとセンサーで360度周囲を監視

自動運転バスに装備されている最新の設備の例

人がクルマを運転するとき、道路における信号や障害物、ほかのクルマ、歩行者などを目で視認し、危険がないかを瞬時に判断します。自動運転車にも360度を見渡せる複数台のカメラが設置され、周囲の状況を見て、リアルタイムで確認できます。また、夜間や雨、霧など、悪天候でも周囲の状況を把握するためのレーダーセンサーも搭載されています。

コンピューターは人間では見づらいような視界でも正確に危険を察知することができるんです。

カメラ映像はAIが瞬時に解析して判断

イメージ図

カメラの映像から対向車や駐車しているクルマ、歩行者や飛び出してくる自転車などを正確に把握するためにAIの技術が使われています。現在は人間より正確に判別できるよう、精度を上げるための開発を行っていて、コンピューターが人間と同様に正確に判断できるようになるためには1.6兆kmもの走行データと経験が必要とも言われています。

そのため、日本を含めて世界の各地で、自動運転車の走行データを記録したり、そのデータを使って自動運転を行う実証実験が行われているんです。

  • 1兆マイルは1.6kmとして独自に計算。トヨタ自動車のAI研究所「Toyota Research Institute」(TRI)による見解。

自動車同士が通信する

将来、自動運転車は他のクルマと情報交換を行う機能を持つようになるそう。例えば、前のクルマが危険を察知した場合、後続のクルマにその情報を瞬時に伝えることで事故やトラブルを防ぐというもの。見通しの悪い交差点で、左から自転車が来ていることを後続車に伝える、などです。

信号や電柱も通信し、自動運転車に情報を伝える

信号機や街灯、カーブミラーなど、街の設備が自動車と通信できるようになります。これは「スマートシティー構想」の一環で、例えば信号と自動車が通信すれば、「信号の見落とし」や「信号無視」を防ぐことができ、自転車や歩行者、対向車などのクルマから見えない危険を事前に察知できるかもしれません。

万が一のことを考えて人がチェック! 自動運転を遠隔で監視、操縦できるシステム「Dispatcher(ディスパッチャー)」

無人運転においてコンピューターで判断できない不測の事態が発生することがありえます。しかし、そこに運転者は乗っていません。そこで自動運転車が異常事態を監視センターに通知し、監視センターが遠隔から状況を把握し、対処を行うというシステムがあるんです。

ソフトバンクグループのSBドライブが独自で開発した遠隔運行管理システム「Dispatcher」(ディスパッチャー)というもので、既に自動運転バスの実証実験での試験運用を重ねています。このシステムは運転者の目の代わりとなり、乗客を安全に輸送できていることを確認できます。さらに、車内の乗客が着席したか、転倒していないかという安全を確認する役割も担っています。無人運転でも車内や運行の安全が遠隔から管理されていると思うと安心ですね。

SBドライブ・プレスリリース「空港における自動運転バスの導入に向けた取り組みを開始」

自動運転が本格的に導入されるのはいつ?

自動運転の実用化に向け、技術以外に法律やルール、事故の責任などについて政府を中心に検討が進められています。国交省では2020年頃に限られた地域で無人運転での移動サービス、高速道路などでの無人トラックを従えての隊列走行を実現し、2025年頃には高速道路での一般向け完全自動運転(レベル4)の実現を目指しているそうです。

無人運転で走行するクルマやバスで通勤・通学するといった様子が当たり前になる時代はすぐそこのようですね。

無人トラックの隊列走行で物流を効率化

SBドライブと先進モビリティによる隊列走行の実証実験の様子

運転手が操縦するトラックの後を無人のトラックが追従して走る「隊列走行」も自動運転技術の一つです。一人のドライバーが輸送できる貨物の量を増やすことができ、高齢化によるドライバー不足や、トラック走行による渋滞やCO2排出など環境面における課題も解決できると期待されています。

隊列走行に関する記事をチェック

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(掲載日:2018年8月7日)
文:神崎洋治

神崎洋治(こうざきようじ)

神崎洋治(こうざきようじ)

TRISEC International,Inc.代表。
ロボット、AI、IoT、インターネット、デジタルカメラ、セキュリティーなどに詳しいテクニカルライター兼コンサルタント。雑誌、「ロボスタ」等のウェブメディア、新聞等にも数多く寄稿。IT関連の著書多数。