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【ここばなVol.20】LGBTとレインボープライドを語る@新宿2丁目 足湯カフェ

皆さんは「東京レインボープライド」というイベントを知っていますか?

LGBT※1などのセクシュアル・マイノリティー(性的少数者)への偏見をなくすことや多様性の尊重を伝えることを目的に、毎年開催されているアジア最大級のイベントなんです。GWの期間、代々木公園を中心に行われ、年々参加者が増えています。

一般的な認識が変わりつつあるLGBTについて、「東京レインボープライド」共同代表理事の杉山文野さんをゲストに迎え、座談会を実施しました。

  • ※1LGBT:Lesbian(レズビアン、女性同性愛者)、Gay(ゲイ、男性同性愛者)、Bisexual(バイセクシュアル、両性愛者)、Transgender(トランスジェンダー、性別越境者)の頭文字をとった単語で、セクシュアル・マイノリティーの総称のひとつ。体の性、心の性だけでなく、性的指向(異性、同性、両性を好きになるということだけでなく、特定の誰かを好きにならないなども含む)によっても異なり、セクシュアリティーの形はさまざま。
LGBT層は約11人に1人

昨年実施された「LGBT調査2018」※2では、LGBT層に該当する人は約11人に1人(ちなみに、日本の名字ランキングのトップ4「佐藤・鈴木・高橋・田中」さんは20人に1人)と言われているほど、身近な存在になっています。そんな中、LGBTに関する取り組みを行う企業が増えています。

  • ※2電通ダイバーシティ・ラボが全国20~59歳の個人60,000名を対象に調査したデータ。
  • ※2電通ダイバーシティ・ラボが全国20~59歳の個人60,000名を対象に調査したデータ。

座談会に参加いただいた皆さん

NPO法人東京レインボープライド 杉山 文野(すぎやま・ふみの)さん

共同代表理事。トランスジェンダーであり、各地でLGBTに関する講演会やメディア出演など、多岐にわたって活動中。

石田さん

ソフトバンク 石田 恵一(いしだ・けいいち)さん

人事本部 人事企画部 労務厚生企画課 課長。人事制度の策定・運用や、働き方改革の推進やLGBT支援などを担当。

ソフトバンク 徳山 裕子(とくやま・ゆうこ)さん

デジタルトランスフォーメーション本部 DX事業戦略室 企画課。法人事業における業務の傍ら、2017年4月にLGBTとアライ※3の社内コミュニティー「カラフル・プロジェクト」を発足し、活動中。

  • ※3アライ:多様な性のあり方に理解のある、非当事者の支援者。
実施した場所は新宿2丁目にある足湯カフェ「足湯cafe&barどん浴」

足湯cafe&barどん浴

“多様なセクシュアリティーを受け入れてきた新宿2丁目だからこそできる、カテゴライズにとらわれないフラットな居場所”がコンセプトの足湯カフェ。

住所:東京都新宿区新宿2-7-3 ヴェラハイツ新宿御苑203
営業時間:14:00~23:00
(水・木・金曜のみ11:30~14:00でランチ営業、火曜は定休)

足湯cafe&barどん浴

目次

変わり続けるLGBTを取り巻く状況。日本ではどう受け入れられてきたのか

石田さん

私は一昨年初めて代々木公園でやっている「東京レインボープライド」のイベント会場に行き、昨年はパレードにも参加したのですが、年々盛り上がっている印象を強く受けます。立ち上げから参加されてきた杉山さんご自身の実感として、ここ数年での国内のLGBTを巡る状況の変化は感じますか?

杉山さん

一言で言うと、「だいぶ変わったなあ」と思います。日本では1994年に国内初となるプライドパレード※4「第1回レズビアン&ゲイパレード」が開催され、形を変えて継承されてきました。2011年には任意団体「東京レインボープライド」が発足し、翌年から同名のイベントを実施しています。2012年の初回では約4,500人の動員でしたが、昨年(2018年)は約15万人が参加。この数字だけを見ても、大きな変化を感じますね。

  • ※4「セクシュアル・マイノリティー(性的少数者)のパレード」を指す。欧米諸国を始め、世界の主要都市で開催されており、ニューヨークやサンパウロなどでは100万~300万人の動員を記録したものも。

徳山さん

私も昨年参加して、老若男女・国籍を問わず、本当に多くの人が楽しそうに参加していたのが印象的でした。イベントはもちろんですが、社会全体の変化も感じていますか?

杉山さん

行政の取り組みとしては、2015年に東京・渋谷区や世田谷区が同性カップルに対してパートナーシップ証明を発行する条例を施行したことが、LGBTについてより知ってもらえる大きなきっかけになったと思います。

セクシュアリティーは外見を見ただけでは分かりませんし、それまではLGBT当事者の存在自体がいない者とされ、社会が見て見ぬふりをしていた気がしますね。

自分が当事者だと言わなくてもよいのが当たり前な社会に

石田さん

行政や社会の取り組みが広がっていく一方で、当事者である杉山さんが大きな課題だと感じている部分はありますか?

杉山さん

例えば、ある女性に「彼氏はいるの?」と質問します。これって、質問した人に悪意は全くないのですが、その女性が当事者だった場合には無言の大きなプレッシャーになるんですよね。これが「パートナーはいるの?」とか「恋人がいるの?」と聞いてもらえるだけで、当人からしたら安心の度合いが大きく異なるんです。LGBTのことが正しく知られていくにつれ、こうしたコミュニケーションの一つ一つが変化していき、やがて自分が当事者だと言わなくてもよいのが当たり前な社会になるのではないでしょうか。

徳山さん

そうした「想像力を働かせたコミュニケーション」を取ることによって、職場での心理的安全性※5も高まるのでしょうか?

  • ※5心理的安全性:チームメンバーの一人ひとりが、そのチームに対し気兼ねなく発言でき、本来の自分を安心してさらけ出せる、と感じられる場の状態や雰囲気。

杉山さん

そうですね。当事者からすると対個人・対社会への信頼があって初めて、カミングアウトがあると僕は思っています。カミングアウトをする、しないの判断は人それぞれですが、心理的安全性の度合いは職場においても大きなポイントですね。
また、日本でも「LGBT報道ガイドライン」が策定され、当事者にとって違和感のない報道のあり方や、トラブルになりそうな事例の共有も少しずつ広まっています。もちろん、アメリカのガイドラインに比べるとまだまだ小さな一歩ではありますが、日本でもこうして少しずつ心理的安全性が確保されてきていると思います。

働きづらさを解消することで、誰もが挑戦できる環境を

杉山さん

ソフトバンクさんと言えば、2006年に実施した家族割引サービスの改定は、LGBT当事者の間で大きな話題となりました。それまでは血縁や婚姻関係にある人のみが家族と定義されていたことが多かったのに「同住所であること」も家族の条件に追加されており、感心したことを覚えています。

石田さん

当初はLGBTの方に向けて強く意識したわけではありませんでした。結果的に同性パートナーも家族として含むことができたため、LGBTの方々からも好評だったと聞いています。

杉山さん

当事者の立場からすると、僕たちを特別扱いしてほしいわけでは全くないんですよね。僕の活動も、あくまで「可能な限りすべての人にとって優しいスタートラインを整えませんか?」というスタンスなんです。

石田さん

社内でよく出てくる話として「マイノリティーの人たちが働きやすい会社にすることが、結果として誰もが働きやすい会社になるのでは」ということなんです。ソフトバンクには「挑戦する人にチャンスを」というポリシーがあるのですが、働きづらさを解消することで、誰もが挑戦できる環境を整えていきたいと思っています。

杉山さん

実情が見えにくい部分はあると思いますが、続けていくことに意味があるのではないかと思いますね。

誰もが自分らしくいられる職場づくりを目指して。企業ができるLGBTの取り組み

杉山さん

ソフトバンクさんの社内には、LGBTを支援するためのコミュニティーがあると訊きました。具体的にはどのようなものですか?

徳山さん

カラフル・プロジェクト」のことですね。“誰もが自分らしくいられる職場づくり”を目標に活動しているLGBTとアライのコミュニティーで、LGBTに関する正しい知識の啓発活動を行っています。
私は新卒で入社後、2016年に産業カウンセラーの資格を取得し、健康的に働ける職場環境づくりの相談役となるピアサポーター※6として活動を始めました。その一環として、2017年にこのコミュニティーを立ち上げたんです。

  • ※6ピアサポーター:産業カウンセラーなどの資格を持つ社員が、一定の選考などを経て、ボランティアで社員からの相談に対応、悩みを抱える社員へ声掛けを行う。

石田さん

「カラフル・プロジェクト」を立ち上げたきっかけは、徳山さん自身の経験もあったんですか?

徳山さん

大きなきっかけは、2016年に開催されたピアサポーター向けのLGBT研修ですね。その研修で当事者である外部講師の方が「前の職場で心無い言葉をかけられ悲しい思いをしたことがあった。一般社員やマネジメント層がLGBTに関する最低限の知識を持っていれば、働きやすくなる」とおっしゃっていて、その話が心に残りました。
思い返せば、学生の頃にはLGBTであることをカミングアウトしている海外の友人が複数人いたので、身近にLGBTの方がいるのが普通だったのですが、社会人になってから周りでカミングアウトしている方を見かけたことがあまりなく、「私の知らないところで悲しい思いをしているLGBTの方がいるんだ」ということに気づき、プロジェクトを立ち上げました。
具体的な活動としては、LGBTに関する基礎知識やニュースをまとめたメルマガの発行、LGBTに関する映画上映会の開催などを行っています。

杉山さん

映画はどんな作品を見るんですか?

徳山さん

先日は、女優の東ちづるさんが手がけたドキュメンタリー映画『私はワタシ~over the rainbow(オーバー・ザ・レインボー)~』を、社内で上映しました。この映画上映会は、さまざまな部署の社員が参加して非常に好評でした。

杉山さん

映画や漫画は感情移入しやすく、当事者の気持ちを少しでも感じてもらえるようで、LGBTに関する知識を得るにはオススメですよね。昨年公開された『カランコエの花』という映画もディスカッションしやすく、ぜひ多くの人に見てもらいたい1本です。

LGBTについての理解が深まる映画作品

「私はワタシ~over the rainbow(オーバー・ザ・レインボー)~」
企画・キャスティング・プロデューサーの東ちづるさんが、40人以上のLGBTsセクシュアル・マイノリティーの人たちにインタビューを行い、その言葉と映像を紡いだ作品。

映画「私はワタシ~over The Rainbow~」公式サイト

『カランコエの花』
とある高校のクラスで、突然行われたLGBTについての授業。他のクラスでは行われていない授業がきっかけとなり、「うちのクラスにLGBTの人がいるんじゃないか?」と、生徒らの日常に波紋が広がっていき……。

映画『カランコエの花』公式サイト

セクシュアリティーへの誇りが芽生えてはや50年。今年の「東京レインボープライド 2019」はどうなる?

石田さん

「東京レインボープライド」の話題に戻るのですが、このイベントの目玉と言えばプライドパレードですよね。杉山さんが初めてパレードに参加されたのはいつだったんですか?

杉山さん

僕が最初に関わったのは2013年でした。それまではパレード=過激というイメージを持っていて、僕自身は興味がなかったんです。ただ、実際に参加してみると「なんて楽しいんだろう」と。

徳山さん

参加してみると、あの熱気や楽しさに誰もが笑顔になりますよね。ベビーカーを押して、家族みんなで参加されていたりと、幅広い年齢層の方々に興味を持ってもらっているのを感じます。

杉山さん

そうですね。そもそも、LGBTの人たちが自分たちのセクシュアリティーにプライドを持つきっかけになったのは、1969年にニューヨークのゲイバーで起きた「ストーンウォールの反乱」が大きなきっかけになったと言われています。その後、1970年にパレードの原点となるデモ行進が行われ、日本では1994年にスタートしました。「ストーンウォールの反乱」から、今年でちょうど50年ですね。
日本でスタートした頃は、「当事者のための当事者によるイベント」という色が強かったのですが、こうして回を重ねていくごとに広がっている実感はすごくあります。

石田さん

ソフトバンクもこのイベントを応援・賛同しており、去年はパレードの通り道にある「ソフトバンク表参道」の装飾をレインボーの特別仕様にしました。有志でパレードに参加してくれた社員からは、「心から楽しめて元気をもらった」「ハッピーな空気に満ちていた」という声をもらっています。非常に好評でした。

杉山さん

今年は4月28・29日の2日間にわたって、代々木公園でイベントを開催します。昨年の浜崎あゆみさんに続き、今年もm-floさんや、青山テルマさん、水曜日のカンパネラさん、清水ミチコさんなど多数のアーティストによるステージパフォーマンスや、70ほどの参加・体験型イベントなど充実したラインアップとなりました。
パレードに取り組み始めた当初は、前日まで「参加者が少なかったらどうしよう…」と思っていましたが、今では会場に入りきらないほどの方々にご来場いただけるようになり、パレードで事故が起きたりせず安心安全に終えられることを第一に考えています。
今年もソフトバンクさんには参画いただいていますが、当日はお二人も参加される予定ですか?

石田さん

もちろんです。

徳山さん

またあの楽しい空間に加わることができるかと思うと、今からワクワクしてきます。

杉山さん

うれしいですね。当日、ぜひよろしくお願いします!みんなで楽しみましょう!

アジア最大級のLGBT関連イベント「東京レインボープライド」はGW期間中に開催!

年々盛り上がりを見せる「東京レインボープライド」は2019年4月27日から5月6日の10日間にわたり、東京の代々木公園をメイン会場に開催されるそう。
そして、期間中の28日に参加者1万人規模のパレードが開催されますが、そのコース沿いに位置する「ソフトバンク表参道」が28日と29日限定で「レインボー」をテーマに装飾され、レインボーで装飾したショッピングバッグの配布や、ソフトバンク クルーがオリジナルTシャツを着用して皆さんを迎えてくれるとのこと。

GW、時間がある方はこの機会に「東京レインボープライド」に参加してみませんか?

東京レインボープライド

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(掲載日:2019年4月26日)
編集:エクスライト
文:村田奈緒子
撮影:高島啓行