災害は、いつだって突然起こるもの。いざというときにとっさに身を守るためには、「正しい行動」を知っておくことがとても重要です。でも、あなたが正しいと思っている行動の中には、間違っているものもあるかもしれません…。
今回は、「防災行動ガイド」シリーズから、間違えやすい災害時のNG行動を7つピックアップしてご紹介。頭に入れておきたい大切な知識を、一緒におさらいしてみましょう。
監修者:防災講師・防災コンサルタント 高橋 洋(たかはし・ひろし)
1953年、新潟県長岡市生まれ。1976年、練馬区に就職し、図書館、文化財、建築、福祉、防災、都市整備等に従事。1997年より防災課係長として、地域防災計画、大規模訓練、協定等に携わる。現在は、防災講師・コンサルタントとして、自治体等で講演、ワークショップ指導などを行う傍ら、復興ボランティアの一員として、福島県南相馬市小高区等で活動。防災関係著書・論文、防災関係パンフレット類監修多数。
目次
意外と間違えやすい災害時のNG行動「地震・津波編」
① 車の運転中に大地震が発生。車を置いて避難する場合は…?
しっかりとドアをロック。キーは忘れずに持っていく
ドアをロックしない。エンジンキーは付けたままにしておく
高橋「運転中に突然強い揺れを感じたら、まずは急ハンドル、急ブレーキを避け、ハザードランプを点滅させながら、ゆっくりと減速。周りの状況を確認し、前後の車に注意しながら、ゆっくりと道路の左側に停車しましょう。揺れが収まるまで、ラジオなどで情報を入手しつつ、車内で一時待機してください。また、道路の状況によってはその場で停車をせず、安全な場所までそのまま走行しましょう。
車を置いて避難する場合は、エンジンキーは付けたまま、ドアをロックせず、財布、スマホなどの貴重品を持って避難しましょう。車が緊急・救援車両の通行の妨げになったとき、すぐに移動できるための対処法です」
② エレベーター乗車中に大地震が発生。閉じ込められてしまったら…?
内側からドアを開ける、天井に登るなどして、いち早く脱出を試みる
非常ボタンを押して管理センターへ通報。通じない場合は、携帯電話で通報する
高橋「エレベーターは内側から開きにくいため、無理に扉を開けようとしたり、天井から脱出しようとしたりするのは大変危険です。閉じ込められてしまった際は、まずインターホンや非常ボタンを押して、管理センターへ連絡。通じない場合は、携帯電話で管理センターや消防・警察へ通報しましょう。
また、助けを呼ぶために叫び続けると、いたずらに体力を消耗してしまいます。ドアの外に人の気配を感じたら、カバンでドアをたたくなど、なるべく体力を消耗しない方法で存在を知らせましょう」
③ 海や海岸付近にいるときに大地震が発生したら…?
できるだけ「遠く」に避難する
できるだけ「高く」に避難する
高橋「海や海岸付近にいる際、強い揺れ、もしくは数分単位で揺れが続いた場合は大津波の危険があります。揺れの大きさや警報・注意報発表の有無に関わらず、すぐに海から離れ、高台や津波避難タワー、津波避難ビルなど、できるだけ『高いところ』へ避難してください。
また、津波は第一波の高さが最高とは限らず、第二波、第三波で被害にあうケースもあります。たとえ発表された津波の到達予想時刻を過ぎて津波が到達しなかった場合も、警報・注意報が解除されるまで、避難を継続しましょう」
意外と間違えやすい災害時のNG行動「大雨・集中豪雨・台風編」
④ 大雨・集中豪雨・台風で道路が冠水してしまったら…?
すぐに車で避難する
安全なうちに、原則徒歩で早めに避難。状況によっては自宅にとどまる
高橋「車は30cm程度の冠水でもエンジンが動かなくなり、それ以上冠水すると、ドアが開かなくなったり、車ごと流されたりする危険があります。特別な場合を除いて車での避難は避け、原則徒歩で、状況が安全なうちに早めに避難するようにしましょう。また、暗くて道が見えづらい夜間や、浸水状況によっては自宅にとどまった方が良いケースもあります。今いる場所の危険度を判断して、命を守る最善の行動を見極めましょう」
⑤ 台風による風圧で、窓ガラスがガタガタ鳴っているときは…?
窓への負担を減らすため、少しだけ窓を開ける
窓は絶対に開けない。飛来物の飛び込みに備えて、カーテンやブラインドを下ろす
高橋「暴風の最中に窓を開けると、気圧差でガラスが割れたり、強風によって天井や屋根が吹き飛んだりする恐れがあります。窓は絶対に開けないようしましょう。事前に飛散防止フィルムを貼ったり、雨戸やシャッターを閉めたりする、また、飛来物の飛び込みに備えて、カーテンやブラインドを下ろすことをオススメします。
万が一、窓ガラスが破損してしまったときは、反対側の窓を少しだけ開けて、風を通り抜けさせましょう。割れた窓から入る風の風圧によって、別の窓ガラスが割れたり、屋根や天井が吹き上がったりする被害を抑えることができます」
意外と間違えやすい災害時のNG行動「火災・その他編」
⑥ 自宅で火災が発生。天井まで炎が燃え広がってしまったら…?
炎がこれ以上大きくならないよう消火を試みる
「火事だー!」と大声を出して周りに知らせ、直ちに避難する
高橋「火災が発生したとき、『炎を消す』か『逃げる』かの見極めポイントは『天井』です。煙が充満してきたり、天井まで炎が燃え移ったりした場合は、「火事だー!」と大声を出して周りに知らせ、ただちに避難してください。炎が自分の背丈よりも小さく、視界の中に火元が見えている状態の場合は、同じように『火事だー!』などと周りに知らせながら、早めに消火器などで消火しましょう。また、避難の際は、煙を吸わないよう、できるだけ低い姿勢で逃げるよう心がけてください」
⑦ 「2020年〇月〇日、〇〇地方で大地震が起こる」という地震予測をSNSで見かけたら…?
できるだけ多くの人に早く知ってもらうため、直ちにSNSなどで拡散する
信頼できる情報かどうか、きちんと確認。デマは自分のところでストップさせる
高橋「出どころが定かでない情報は、たとえ善意の情報でも要注意。受け取ったら、まずは公的機関など信頼できる発信元からの情報かを確認しましょう。受け取った情報の中に発信元・情報源の記載があるもの、認証済みバッジが付いているSNSアカウントの発言などは、信頼度の高い情報です。疑わしい情報だと感じたら、自分のところでストップさせるようにしてください。
ちなみに、現在の科学的知見では、『〇年以内に、日本の内陸部で、マグニチュード〇の地震が起こる確率が〇%ある』というように、可能性や確率を予測することしかできないため、日時と場所がピンポイントに絞られた地震予測はすべてデマ。拡散しないよう注意しましょう」
万が一の災害時、頼りになるのは「正しい知識」と「正しい行動」!
今回紹介した7つのうち、あなたはいくつ正しい行動を知っていましたか? もし間違って覚えていた行動があったら、いざというときのためにしっかりとアップデートしておきましょう。
(掲載日:2020年8月27日)
監修:高橋洋先生
文・編集:エクスライト
イラスト:高山千草