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コロナ禍で社員の働き方や健康にどんな影響があった? 人事担当者が語るベストミックスな働き方

コロナ禍で社員の働き方や健康にどんな影響があった? 人事担当者が語る当時と今

コロナ禍からアフターコロナとなり、働き方が大きく様変わりしてきた中で、ソフトバンクでも新しい働き方が定着してきました。

働き方の変化は生産性やコミュニケーションにどのような影響を与えたのか、また現在社員に起こっている健康上の課題や、今後ソフトバンクが目指していく人事の在り方とはどのようなものなのか、ソフトバンクの人事担当者に話を聞きました。

大神田 賢翔(おおかんだ・けんと)

ソフトバンク株式会社 コーポレート統括 人事本部 人事企画統括部
人事企画部 ワークスタイルデザイン課 課長

大神田 賢翔(おおかんだ・けんと)

年休取得率は減少し、総労働時間が増加したコロナ禍初期

新型コロナウイルス感染症が流行し始めた当時、社員の働き方はどう変わったのか教えてください。

ソフトバンクは2015年度から、在宅勤務やサテライトオフィスでの勤務、コアタイムなしでメリハリのつけた働き方ができる「スーパーフレックス制度」を段階的に導入するなど、コロナ禍前から柔軟な働き方を推進してきましたが、2020年の新型コロナウイルス感染症拡大を契機に、感染対策として有効とされる在宅勤務を主とした働き方にシフトしました。特に人事としては、「生産性」や「コミュニケーション」がどう変化していくのか注視していたところです。

在宅勤務にはさまざまなメリット・デメリットがありますが、仕事の生産性という観点では具体的にどのような影響があったのでしょうか?

コロナ禍に入って間もない2020年度に実施した社員アンケートでは、生産性が「上がった」または「変わらない」と約8割が回答していることから、働き方が急激に変化する中でも業務継続に大きな問題は出ていないと判断していました。

年休取得率は減少し、総労働時間が増加したコロナ禍初期

社内アンケート結果(2020年度、回答者数 10,026人)

一方、労働時間については、コロナ禍直後は時間外労働時間が増加。さらに、旅行控えの影響だと思いますが、年次有給休暇の取得率の減少が見られました。特に、連続休暇の取得率が激減していました。

年休取得率は減少し、総労働時間が増加したコロナ禍初期

労働時間が増加した要因には、どのようなことが考えられますか?

分析した結果、在宅勤務の際に「業務開始時間は少し早くなるが終業時間は変わらない」という全社的な傾向が明らかになったんです。おそらく、通勤時間が短縮された分を、一部仕事に割り当てているのではないかと考えました。

業務開始時間が早まっていたんですね!

1日平均では10分程度ですが、1カ月換算で約3時間。時間外労働時間が月単位で3時間以上も増えれば、全社的にもかなり大きな変化です。

早めに仕事を始めることができた分、早めに終了すべきところが、なかなかできていないということですね。

働き方が柔軟になったので、早めに始業したらその分早めに終業し、その時間をプライベートや学びの時間に活用できると良いですよね。例えば短時間勤務の方からは、通勤時間がなくなったことで今までより始業時間や終業時間を柔軟に調整できるようになったというポジティブな声が聞こえてきています。一方で、出社のときより所定時間での終業がしづらくなったという声もあります。

働き方の変化の中で、柔軟であることと、メリハリを持った働き方をすることのバランスが、新たな課題になっていると考えています。

今の時代に合った休み方へ。年休取得率はコロナ禍前と同水準に

年休取得率の低下に対しては、どのような対応を行ったのでしょうか?

当時は旅行控えの影響で、社員に対して連休取得を奨励する従来のアプローチがうまく機能していませんでした。そこで、「月に1回休んで、外出しなくても自宅で仕事以外の時間を作ろう」という働きかけのほうが今の時代に合ってるのではないかと仮説を立てて、月に1回の休暇取得を推奨する方針に変えたんです。

効果はありましたか?

当初は反応が鈍かったものの、経営陣への働きかけや各部門内での推進により、年休取得率は回復し、2022年度にはコロナ禍前の水準に戻りました。

今の時代にあった休み方へ。年休取得率はコロナ禍前と同水準に

もちろん年休取得は会社が強制するものではありませんが、「取りたいのに取りづらい」という雰囲気をなくしたかった。実際に「年休が取りやすくなった」というコメントも社員から届くなど、人事の発信や部門内での呼びかけにより、年休が取りやすい風土醸成ができたことは良かったと思います。アフターコロナに移行する中で、年休の取得方法も多様化してきていますね。

過半数以上がコミュニケーション量の減少を実感

コミュニケーション面ではどのような影響がありましたか?

アンケートでは、「コロナ前と比べてコミュニケーション量が減った」と回答した社員が半分以上。単純な業務報告や進捗確認などはテレワークでも十分機能しますが、同僚との関係構築や新企画の立案には、アイコンタクトや身振り手振りでを使った非言語コミュニケーションができる対面のほうが好ましいという声がありました。

大幅に減ったコミュニケーション量を、今できる方法で増やす

コミュニケーション量が減ってしまったという点に関して、どのような対策をしたのでしょうか?

コミュニケーションは、組織で物事を進めていくに当たってとても大事なことです。それが減ったという人が半分以上というのは見逃せない課題です。

オンラインでもコミュニケーションの質を高めるために、Slackなどのコミュニケーションツール導入、1対1での面談の積極的な活用や、管理職の在宅勤務時におけるマネジメントを支援する研修を実施。また、オンラインでの全社朝礼を通して、経営陣と社員とのコミュニケーション機会を設けるなど、「今できることは何だろう」という視点で施策を取り入れてきました。

新しいワークスタイルによる影響は、社員の健康にまで及ぶ

在宅勤務がメインとなったことで、社員の健康面に変化はありましたか?

コロナ禍直後には気付けなかったのですが、毎年全社員を対象に実施する健康意識調査の結果から、日常活動や健康面への変化が徐々に現れてきました。

メリットとしては以下の点が挙げられます。

  • 通勤時間の短縮により、趣味などの活動に使える時間が増え、生き生きとしている
  • 22時以降に食事をとることが減った
  • 睡眠時間が増えた

喜ばしいメリットですね! デメリットはありましたか?

運動機会の減少や肩こりなどは初期から見られましたが、1年が経過して健康診断結果で「所見あり」と記載される人の割合が急増したことが判明しました。特にBMIとLDLコレステロールが顕著です。これらの要因として一般的に言われるのは、運動不足に加え、食生活。22時以降に食べることが減ったという要素がある一方で、食事量が増えたのではないかと予想しています。

健康は大切ですよね。会社としてどんな対策を行っているのでしょうか?

例えば、ソフトバンクグループの社内起業制度「ソフトバンクイノベンチャー」での検討案件と連携して、食生活を改善するダイエットプログラムを新たに始めたところ、定員以上の申し込みがありました。

また、特に心配なのが、業務中トイレに行くときにしか席を立たないなど、日常生活で活動量が大幅に不足していることです。スマホの歩数計を見たら2桁だったということがないようにする目線が大事と考え、強い運動というよりは、ウォーキングイベントや全社朝礼前のヨガなど、軽度の運動習慣を促す取り組みを新たに取り入れました。

新しいワークスタイルによる影響は、社員の健康にまで及ぶ

軽い運動であれば気軽に続けられそうですね。

他にも、「睡眠がうまく取れていない」ことから生じる問題が徐々に増えています。コロナ禍で急激な変化が訪れた2020年度、2021年度は「食事」「運動」が注目されていましたが、最近は「睡眠」「リフレッシュ」「オンオフの切り替え」への関心の高まりを感じ取っています。
ソフトバンクでは毎年10月を「こころとカラダの健康月間」とし、さまざまな健康増進施策を社員向けに実施していますが、今年はメインテーマとして「睡眠」を取り上げる予定です。ぜひ皆で自身の睡眠について見つめ直す機会にできればと思います。

部署や仕事内容に合わせて柔軟な働き方を推奨することが大事

コロナ禍を経たことで、働き方について改めて気付いたことはありますか?

オフィスや在宅勤務、サテライトオフィスなどを組み合わせる「ベストミックス」という方針を、2020年7月の時点で定め、早くから状況に応じて実行してきました。「オフィスでないと働けない」というのは思い込みで、コロナ禍を経て「在宅勤務でもできることもあるが、全てできるわけではない」ということを学びました。

対面のほうが向いているコミュニケーションもありますし、ソフトバンクには、販売やコールセンター、基地局運用など、どうしても現場に行かないとできない業務に携わっている方もいます。業務を継続いただいた社員の皆さんを、私も一人の社員としてとても尊敬しています。現場に行くことが欠かせない業務に携わる方も含めてソフトバンクが今後も事業を行っていくという目線では、全てを在宅または出社に固定するのではなく、それぞれに適切な働く場所を推奨していくことが重要なのではないかと思っています。

部署や仕事内容にあわせて柔軟な働き方を推奨することが大事

在宅勤務と出社をどのように使い分けるのがベストだと思いますか?

テクノロジーがどんどん進化していく中で、オフィスの意義や在宅でできることの概念は常にアップデートが必要であり、「ベストミックス」の方針も一度決めたら終わりではなくアップデートしていかなければならない。その意味では人事としても、テクノロジーをキャッチアップして取り入れていくことが大事だと考えています。

部署や仕事内容にあわせて柔軟な働き方を推奨することが大事

テクノロジーの進化と働き方は密接に関わっているということですね。
そういう意味では、今の時代における出社の意義とは何でしょうか?

「組織と個人のパフォーマンスを最大化する」という観点で働き方を選んでいく考え方に立ったとき、300年先まで組織風土を継承していくためには、今の時代では対面コミュニケーションの価値は欠かせないものだと思っています。久しぶりにメンバーに会う楽しみや幸福感も含めて、出社の機会をコミュニケーション機会創出の場としてもフル活用してもらいたいと思っています。

コロナ禍での体験で得た気付きを生かして、ソフトバンクは今後、どのように働き方や健康経営に取り組んでいくのでしょうか?

社員一人一人が心身ともに健康で生き生きしているということが、経営基盤として最も重要です。その考え方の下、これまでソフトバンクが取り組んできた働き方改革や健康経営については「日経Smart Work大賞2023」大賞や「健康経営銘柄2023」選定など、外部評価もいただいています。

今は働き方改革と健康経営と言葉が分かれていますがこれらを融合させて、一人一人が活躍できるためにかけるお金をコストではなく投資として捉え、会社も個人も成長していけるようリードしていきたいと考えています。

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(掲載日:2023年8月23日)
文:ソフトバンクニュース編集部