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生成AIを使いこなすコツは指示の出し方。書き方ひとつで最適な回答が引き出せるプロンプト作成術

ChatGPTから最適な回答を引き出すためのプロンプト使いこなし術

企業や学校など、さまざまな場面で生成AIの導入が進んでいますが、皆さんは、生成AIを使ってみたことはありますか? 試しに使ってはみたものの、欲しかった回答が返ってこなくてガッカリした、なんて経験がある方もいるのでは?

実は、生成AIをうまく使いこなすには、「プロンプト」と呼ばれる指示や質問の仕方が大事なんです。今回は、最も普及した生成AIの一つであるChatGPTを例に適切な回答を引き出すためのコツを紹介します。

監修

ソフトバンク株式会社 IT統括 ビジネスシステム開発本部

青木 拓磨(あおき・たくま)

2019年新卒入社。入社5年目。コンタクトセンターのオペレータ管理システムを担当。生成AIに興味を持ち、休日は情報収集をしつつ最良のプロンプトを考え、社内に発信している。ChatGPTのGPTsやOpen AIのAPIを用いたツール生成などを行い、さらに開発だけでなく趣味の小説の執筆などさまざまなケースで生成AIを利用している。

初めに知っておきたいChatGPTの特徴

生成AIには、画像や動画を生成したり、音声や音楽を生成できるものなどさまざまな種類がありますが、その中でもChatGPTは人工知能がテキストベースの会話を行うシステムで、現在無料で利用可能なGPT-3.5と有料版のGPT-4が提供されています。

どんなことでも答えたり、作ったりしてくれそうなChatGPT。でも実は得意なことと、苦手なことがあるんです。

得意なこと 苦手なこと
  • 文章作成
    • 質問への回答
    • 要約
    • メールなどの文章作成
    • 翻訳
    • 小説やゲームなどのシナリオ作成
  • アイデア出し
  • 企画書作成、プレゼン資料のひな型作成
  • 表の作成
  • データ分析
  • プログラムのコード生成
  • 計算
  • 正確な情報の提供
  • 最新情報の提供
  • 有料版はWebブラウジング機能に対応しており最新情報取得可能

ChatGPTは、インターネット上の大量のテキスト情報を学習し、質問に答える、話題を提供するなど、さまざまな会話要素をモデル化して質問や指示に自然な文章で回答することができます。話し相手としてChatGPTと雑談したり、悩み相談もできますよ。

一方、短期記憶の持続性に問題があり、長い対話では話の連続性を失う傾向があります。また、質問に対して正確な事実を提供する能力は完全ではなく、実際には存在しない情報を生成することもあります。このように誤った情報を提供してしまうことを「ハルシネーション」と言います。

つまり、ChatGPTが出す回答が必ずしも正しいとは限らないということを理解し、生成AIが質問の意図を正しく理解できるように簡潔に指示を与えることが必要です。

また、ChatGPTは与えられた立場や人物像になりきって回答することもできるんです。設定した立場やキャラクターによって回答の内容も変わるので、最良の答えを導き出すために自分の役割を正しく理解してもらえるよう、適切に指示することが鍵になってきます。

そこで登場するのが「プロンプト」です。プロンプトとは、ChatGPTに質問するときにボックスに入力する文章や質問のこと。
この書き方次第で、AIの思考や回答が変化するので、明確に要望を伝えるプロンプトの書き方を知っておくことが、使いこなしの近道なんです!

人も生成AIも同じ? 丁寧で具体的な指示が最適なレスポンスにつながる

生成AIに指示を出す、というとプログラミングのようなものを想像するかもしれませんが、難しく考える必要はありません!
皆さん普段人に何かを頼むとき、目的や何をしてほしいかを説明しますよね? それと同じように、相手(ChatGPT)に正しく理解してもらえるよう具体的に説明することを意識すると、スムーズに回答を引き出しやすくなるかもしれません。

プロンプトの基本3つのポイント

まず、押さえておくべきは3つの要素。

  1. 役割を与える

    先ほど紹介した通り、ChatGPTは指定した人物像になりきった回答ができますので、どんな立場で回答してほしいのかを伝えましょう。役割を与えることで、回答を生成するための視点や専門性をコントロールします。

  2. タスクを詳細に伝える

    「文章を作成してほしい」「分析してほしい」など、ChatGPTに何をしてもらいたいのかを明確に伝えましょう。

  3. 制約条件で補足する

    タスクの指示だけでは情報が不十分な場合があるので、細かい条件を補足して的外れな回答を防ぎましょう。

この3つの要素を自然な会話文で伝えても良いのですが、より生成AIが理解しやすい形で書くことで、タスクの内容や求める応答品質が伝わりやすくなり、スムーズな対話の進行に役立ちます。

では、生成AIが理解しやすい指示の仕方とはどのようなものでしょう? 3つの要素を使った基本的なプロンプトの作成例を見てみましょう。

基本的な構文

#役割
あなたはプロの[職業名]です。

#タスク
以下の制約条件から[タスク]を実行してください。

#制約条件

  • <条件1>をする
  • <条件2>をする

実際の例

#役割
あなたはプロの小説家です。

#タスク
以下の制約条件からミステリー小説を執筆してください。

#制約条件

  • 読者を引き込むような表現を多用する
  • 登場人物を魅力的にするために、全員に個性的な性格、背景などを持たせる
  • 衝撃の展開を入れる

このように3つの要素「役割」「タスク」「制約条件」に分けて箇条書きにしています。
「#」など、記号をうまく利用すると、要素ごとの区切りも明確になり、指示を分かりやすく記述することができますよ。

  • #:ハッシュタグ。プロンプトの指示の区切りなど分かりやすくする。
  • <> []:パラメータ(変数)。任意の文字を入れてほしいときなどに使用する。

知っておきたい豆知識

プロンプトを書くときに以下のポイントを意識すると、より精度の高い回答が得られると言われています。ぜひ参考にしてみてくださいね。

  • 丁寧すぎるくらいに詳細に指示を書く
  • 条件は文章よりも箇条書きで書く
  • 「しないでください」よりも「してください」と具体的に指示する

敬語を使うと回答の質が上がる?
「~しろ」など命令調よりも「~してください」のように丁寧語や敬語を使って書くと、より質の高い回答が返ってくるという話も。ぜひ試してみてください!

個人情報や機密情報の入力はしない
プロンプトなどに書かれた情報も学習して別の回答に利用してしまう可能性があるので、個人情報や重要な情報は書かないようにしましょう。

ここからは、「役割」「タスク」「制約条件」の3要素を踏まえ、さまざまなシーンでのプロンプト作成例を詳しく解説していきます。

作成例① 役割を任命:専門家視点の分かりやすい説明で調べ物が楽に

何か知りたいことがあってネットで調べても、たくさんの検索結果から最適なページを探すのが面倒だったり、書いてある内容が難しくて理解しづらいときがありますよね。そんな時は、ChatGPTに分かりやすく説明してもらいましょう。

今回は、確定申告のメリット・デメリットと、申告の手順について回答してもらいます。

プロンプト作成のポイント

  • 役割
    • 専門知識を引き出せる役割を与える

      専門的で詳しい情報も網羅できる可能性が上がります。

  • 条件
    • 説明の分かりやすさを指定する

      「中学生でも分かるように」など、読解力のレベルを設定することで難しい用語などを分かりやすい言葉で説明してくれます。

    • 回答の出力形式を指定する

      表組みでの出力を指定することで視覚的に分かりやすくなり、情報が整理しやすくなります。

今回は確定申告について知りたいので税理士という役割を与えて、読解力のレベルは高校生で設定してみます。

作成例① 役割を任命:専門家視点の分かりやすい説明で調べ物が楽に

ChatGPTの回答は…

作成例① 役割を任命:専門家視点の分かりやすい説明で調べ物が楽に

  • ここに掲載されている回答が必ずしも正確ではない可能性があります。

知りたいことが箇条書きと表でまとめられていて分かりやすいですね!

会話形式で説明させることも可能

自分で全部質問しなくても、生成AIに複数人の登場人物を設定することで会話形式で情報を取得することもできますよ。

プロンプト作成のポイント

  • タスク
    • 会話形式で説明させる

      会話形式にすることで、長文でも頭に入ってきやすくなります。

  • 条件
    • 登場人物を設定する

      自分では気付けない観点で議論できるようにします。

教師と高校生の2人にキャラクターを設定して、確定申告について会話させてみます。無料版のGPT-3.5でも可能ですが、有料版のGPT-4を使うと、より登場人物の性格が反映された回答を得ることができます。

会話形式で説明させることも可能

ChatGPTの回答は…

会話形式で説明させることも可能

自分だけでは気付けないさまざまな観点から知りたい情報について学ぶことができますね!

作成例② フォーマットを指定:情報を要約してポイントを明確化

議事録や音声メモなどを使って情報を整理する際、文章量が多くて時間がかかりがち…。そんなときにChatGPTを活用して文章を要約することで業務効率化につなげることができます。

プロンプト作成のポイント

  • 条件
    • 文字数を制限する

      「200文字以内で要約」など、回答の文字数を自在に制御することができます。

    • 回答の出力形式を指定する

      箇条書きや項目ごとに分けるなど、自分の好きな形式で生成させることができます。このように具体的な例を伝えて出力の形式や回答形式を引き出す方法を「few-shotプロンプティング」といいます。

ここでは、「業務におけるChatGPTの活用」をテーマに行われた議論を文字起こししたテキストから内容を要約してもらいましょう。フォーマットは「#想定出力イメージ」の内容で条件を指示してみます。

作成例② フォーマットを指定:情報を要約してポイントを明確化

ChatGPTの回答は…

作成例② フォーマットを指定:情報を要約してポイントを明確化

指定したフォーマット通りになり、文章量も少なく読みやすくなりました!

作成例③ 思考法を指定:固定概念にとらわれない斬新なアイデアを提案

新しい企画や問題の解決策を考えるとき、また絵や音楽といった創作活動など…、どんなに考えてもアイデアがなかなか浮かばないときってありますよね。そんなときはChatGPTに相談してみましょう。回答を導き出すための思考法を指示することで、新たなアイデアのヒントがもらえるかもしれません。

プロンプト作成のポイント

  • 条件
    • 思考法を指示する

      目的や求める回答イメージに応じて思考法を指定します。

      • 水平思考:さまざまな角度から柔軟に物事を考える手法
      • 垂直思考:データや根拠に基づき論理を深めていく分析的思考
      • デザイン思考:ユーザ視点で物事の課題を見つけ、解決策を考える手法
    • 提案数を指定する

      数を指定することで、必要な分のアイデアを入手できます。

      ※ 「さらに10個考えて」などと追加で回答させることもできます。

      ※ 「さらに10個考えて」などと追加で回答させることもできます。

    • アイデアを出すための材料となる情報を明示する

      詳細に書くほど、要望を取り入れてもらえるようになります。

大ヒットするSNSサービスの企画アイデアをChatGPTに提案してもらいましょう。ターゲット層など企画の詳細を具体的に伝えます。また柔軟にアイデアを提案してもらいたいので「水平思考」を指示してみます。

作成例③ 思考法を指定:固定概念にとらわれない斬新なアイデアを提案

ChatGPTの回答は…

作成例③ 思考法を指定:固定概念にとらわれない斬新なアイデアを提案

すでに存在するようなサービスに近いものもありますが、多様な分野をテーマにしたアイデアが出てきました!

作成例④ より詳細な補足情報を提供:要件に合わせ表現や出力形式も最適化

これまで紹介した質問への応答、会話形式の文章、要約など幅広い文章生成以外にも、ChatGPTでは仕事に役立つプレゼン資料の構成を作成することができます。

プロンプト作成のポイント

  • 条件
    • タスクに必要な補足情報を付ける

      発表時間やオーディエンスなど、資料作成の材料となる情報を指定しましょう。

    • 詳細な要望を箇条書きで記載する

      資料に加えてほしい項目や強調すべきポイントなどを明確に指定することで表現や構成を考えてくれます。

先ほど、ChatGPTが提案してくれたサービスのアイデアを使って、プレゼン資料の構成を作成してもらいましょう。提案してもらいたいのは、各スライドの主要なポイントとオーディエンスに刺さるメッセージ。

作成例④ より詳細な補足情報を提供:要件に合わせ表現や出力形式も最適化

ChatGPTの回答は…

作成例④ より詳細な補足情報を提供:要件に合わせ表現や出力形式も最適化

作成例④ より詳細な補足情報を提供:要件に合わせ表現や出力形式も最適化

  • 回答内容は一部割愛して紹介しています。

スライドの構成を作成することができました! 資料作りで悩みがちな構成作りが少しは楽になるかもしれませんね。

作成例⑤ 複数の人物による対話を指示:第三者の視点で頭の整理をサポート

物の購入や投資、キャリア形成など大事なことを決めるときは、できるだけ判断材料が多い方が安心ですよね。そんなときは、プロンプトで登場人物を複数指定して、さまざまな観点からの意見を参考に、頭の整理をサポートしてもらいましょう。

プロンプト作成のポイント

  • 条件
    • 複数の登場人物で議論をさせる

      異なる立場の意見で議論させることで、自分とChatGPTの1対1の関係では気付けない視点を取り入れることができます。

    • 議論のステップ化

      複雑な課題や議論を結論付けるために選択肢を減らしていく「Tree of Thoughts(ToT)」という手法を活用することで自分が求めている回答を絞ります。

    • 思考法の指定

      データや根拠にもとづく「垂直思考」を指定することで、論理的な評価を導き出すことができます。

先ほど作成したプレゼン資料の内容をもとに、ChatGPTにサービスを利用すべきかについていくつかの立場から意見交換をしてもらいましょう。

複数の登場人物による会話自体は無料版のGPT-3.5でも可能ですが、このお題では一定の結論まで回答を絞るために、「Tree of Thoughts(ToT)」の思考法や、自らの考えが間違っていたと気付いた場合に退場するように指示が可能な有料版のGPT-4を使用します。

作成例⑤ 複数の人物による対話を指示:第三者の視点で頭の整理をサポート

ChatGPTの回答は…

作成例⑤ 複数の人物による対話を指示:第三者の視点で頭の整理をサポート

このようにさまざまな視点から意見を聞き出すことができました。

いかがでしたか? ChatGPTに限らず、プロンプトの書き方次第で、生成AIの回答の精度や使いこなし方が大きく変わります。まずは「役割」「タスク」「条件」の3つのポイントを押さえて、さまざまなシーンでぜひ活用してみてくださいね。

(掲載日:2023年12月12日)
文:ソフトバンクニュース編集部