年末の風物詩「冬コミ」こと、冬のコミックマーケットの時期がやってきました。多くのアニメ・漫画好きに親しまれているコミケには、1日で10万人を超える来場者が見込まれており、ソフトバンクなどの通信キャリアは会場での通信品質を保つために電波の強化対策を行っています。その対策の一つ、移動基地局の設置の様子を取材してきました。
コミケ電波対策の担当社員
ソフトバンク株式会社 テクノロジーユニット統括 エリア建設本部 関東ネットワーク技術統括部
写真左から
内田 慶彦(うちだ・よしひこ)
若林 和希(わかばやし・かずき)
通信が集中するエリアのつながりにくさを解消
103回目を迎える「コミックマーケット103」は、2日間の開催期間中に合計2万6,000以上ものブースが出展され、グッズ販売やコスプレ、イベントなどを楽しみに、遠方からも多くの人が訪れる巨大イベントです。8月に行われたコミケでは2日間で26万人もの来場者を記録するなど、会場の東京ビッグサイトには今回も多くの人でにぎわうことが予想されています。
会場の東京ビッグサイト
大勢が集まることで一つ課題となるのが、通信品質です。会場への入場待機列では、空いている時間にスマホを使う方が多くいます。同じ場所で多くの方が一斉にスマホなどの通信機器を利用すると、通信が遅延したりつながりにくくなってしまう「輻輳(ふくそう)」が発生します。
東京ビッグサイトの屋内には基地局が十分に設置されているため、会場内の通信は問題が起きにくいのですが、コミケのような大きなイベントになると屋外の待機場所に人が集中するため、臨時の通信トラフィック対策が必要になるのです。
第100回コミケの待機列の様子
そこでソフトバンクでは、このような混雑が見込まれる際には、移動基地局車を設置することで通信を分散させ、ネットワークの混雑を解消しています。
確実に間に合うよう、スケジュールを逆算して準備
日程が決まっているイベントの電波対策は、開催前までに確実にさまざまな準備を終わらせて臨む必要があります。その動き始めは、2カ月以上も前から。主催者との交渉から、設置場所やアンテナの方向、周波数などの設計、電波を発射するのに必要な免許申請、伝送路の手配など、さまざまな手続きがあります。
イベント開催時期がお盆の時期や年末の場合は、作業の規制があったりお休みをとる人も多いので、事前に関係部門に体制を用意してもらうこともあるのだとか。確実に間に合わせるためには、これぐらい前から準備を始めなければならないんだそうです。
事前準備の主な内容
|
設営時の対応
|
「イベントの日程はあらかじめ分かっているので、確実に間に合わせるために、スケジュール管理は特に強く意識していますね」
そして迎えた設営初日。設営作業は3日間かけて行われるそうです。取材した初日は、朝9時から設営作業が始まりました。事前の設計通りに移動基地局車を配置。4G・5Gの無線機やアンテナの数、方向が合っているかを確認しながら、移動基地局車の上にアンテナを組み立てていきます。移動基地局車のアンテナは伸ばすと約12mあるそうです。そのため、車体が倒れないようしっかりと固定しなければなりません。


移動基地局車内の無線機との配線や、アンテナを伸ばせることが確認できたら、1日目の作業は終了です。翌日からは、周辺にある基地局とのバランス調整、通話試験、走行試験などを行います。また実際に訪れる人数を想定した環境で、通常の通信だけでなく、消防署や警察署、海上保安庁などへの緊急通報の通話も問題なくつながるかを確認します。
スイッチで自動的に昇降が可能。アンテナは伸ばすと車体の2倍以上の長さに
「公園や広場、河川敷で行われる花火大会や野外音楽フェスなどは異なり、都市部で行われるコミケは周辺の基地局とのバランスなど特別な対策が必要になります。 また、朝は待機列が混雑していますが、昼ごろには建物内、夕方は帰りの来場者で駅前が混雑するなど、時間帯によって混雑する場所が変動するのも、コミケならではの特徴ですね」
コミケ当日は、待機列ができ始める時間に間に合うよう、前日までに設置した移動基地局を朝6時ごろから立ち上げて電波を発射。電波測定を行い実際に通信が安定しているかを確認します。時間帯によって混雑の場所が変わるので、当日の測定がとても重要なんだそうです。このような手順を経て、ようやく電波対策が完了です。
「今回のコミケも電波対策はバッチリです。ストレスフリーでコミケを楽しんでいただけたらと思います! 」
夏のコミケ電波対策の様子はこちら
(掲載日:2023年12月28日)
文:ソフトバンクニュース編集部