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社会にとって欠かせないインフラとなった通信。「どこでも、誰でも、つながる」環境を構築することは、ソフトバンクの使命です。
そんな社会を実現するために、宇宙空間や成層圏から通信ネットワークを提供するNTN(Non-Terrestrial Network:非地上系ネットワーク)の構築に挑むソフトバンクの取り組みに、自身も登山中に電波がつながらないエリアで遭難しかけた経験がある大橋未歩さんが迫ります。
PROFILE
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大橋 未歩
OHASHI MIHOフリーアナウンサー
1978年兵庫県生まれ。上智大学卒業後、2002年にテレビ東京に入社し、多くのレギュラー番組で活躍。2013年に脳梗塞を発症後、約8カ月の療養を経て復帰。15年間勤めたテレビ東京を退社し、2018年にフリーアナウンサーに転身。2023年アメリカ・ニューヨークに移住。日米を行き来しながら、テレビ、ラジオ、イベントなど幅広く活躍中。
登山中にあわや遭難。つながらないことの恐怖
ニュージーランドでの登山中に遭難しそうになったと伺いました。そのときの状況を教えていただけますか?
2022年の年末、ニュージーランドでの経験になります。夫婦で登山に出掛けた山中で、うっそうとした森を何十キロも歩くうちに登山道を見失ってしまって… 迷子になってしまいました。山は日が照っている時間しか歩けないのですが、日が暮れてしまったため、本来予定地ではないところでテントを張ってビバーク(緊急野営)し、夜が明けるのを待つ状況でした。
基本的にビジターパークなどの施設以外、山では電波が入りません。ビバークしたときも通信さえあれば、自分のいる位置や正しいルートを調べたり、最悪の場合は救助を呼んだりできます。しかし、そういうことが一切できないのが山なんです。
最初に、もし下山が遅れて帰りの飛行機に間に合わなかったら、日本で仕事を約束していた方たちにご迷惑をおかけしてしまう、という不安に駆られました。持参した食糧が尽きたり、助けが呼べなかったりと、最悪の状況を想像し、命の危険も頭をよぎったことは事実です。
翌日、無事ルートに復帰して、3日後に下山して電波を確認したときは本当にホッとしましたね。
登山では、電話やネットがつながらないような場所に行くことも多いと思います。そのようなとき、どんなところで不便や怖さを感じますか?
準備はしっかりしていてもいろいろ起きるのが山で、最後まで何があるか分からないものです。通信が確保されて初めて、ようやく万が一の事態への不安が払拭(ふっしょく)され、自分の安全を確保できたような安心感があるんですよ。ですからこのときに限らず、登山のたびに、下山してアンテナが立つのを確認したときの喜びは、何物にも代えがたいものがあります。
趣味を通して「つながらない」ことへの不安と同時に、通信のありがたみをいつも実感していますね。
登山時以外でも、「つながらない」ことで困ったことや不安を感じた場所、経験はありますか?
ニューヨークに移住して、地下鉄では通信が途絶えることを知りました。電車がプラットホームに入ってきたときだけ電波が入るのですが、走行中は途切れてしまうんですよね。ですから、電車が遅れたりして遅刻しそうなときなどすぐに相手に連絡ができなくて、ちょっとヤキモキすることがあります。
また、私は危ないことには遭遇したことがありませんが、ニューヨークの地下鉄は治安上、注意喚起がなされている場所です。万が一、車内で危険を感じたときに、通信でSOSを発信しにくい環境は不安ではあります。一方、日本は地下鉄も電波が入るなど、通信環境が恵まれていることを再認識しました。
山の中も、海上も。ソフトバンクの「どこでもつながる世界」に向けた取り組み
「どこでも、誰でも、つながる」社会を実現したいというビジョンの下、山間部や海上など従来は難しかった場所でも通信をつなげるため、ソフトバンクは「NTN(Non-Terrestrial Network:非地上系ネットワーク)」の構築を通して、 “空” への取り組みに注力しています。
ここからはソフトバンクのNTNソリューションについて、担当社員も交えて、深掘りしていきます。
NTNを担当
ソフトバンク株式会社 プロダクト技術本部 グローバル通信事業統括部 NTN戦略部 部長
才木 一志(さいき ひとし)
先ほど、日本では地下でも通信環境が優れているとお話ししましたが、ソフトバンクではNTNを通して “空” への取り組みも重視されているんですね。NTNが発展すれば、地上はもちろん、海上や山中でも通信がつながるようになるのでしょうか?
おっしゃる通り、空が見える環境であれば「つながる」ビジョンこそNTNです。ソフトバンクは日本を中心に事業を行っていますが、NTN領域についてはグローバルに展開する予定です。このビジョンの先には、ユビキタスネットワーク構想があります。これは、空からのアプローチであるNTNと、地上のモバイルネットワークを融合させることで、あらゆる場所でシームレスにつなぐことができる世界を作っていこう、という考え方です。
これまで圏外だったエリアで通信を提供できるのはもちろん、ユーザ視点では、地上のネットワークを使っているのか、NTNを使っているのか、特に意識することなくどこにいても通信を利用することができるようになります。
ユビキタスネットワークは、具体的にはどのような活用を想定されているのでしょうか?
今後、自動車やドローン、船舶などの自動運転など、あらゆるものが自動化される世の中がやってきます。実現にはどこにいても安定してつながり続ける通信環境が必要不可欠ですが、ユビキタスネットワークはそこに貢献します。
アメリカは自動車社会です。将来、自動運転が普及したときに、人々の安全性と利便性をソフトバンクが支えてくれるというのは、「アメリカ放題」を利用するいちユーザとしても心強いです。
地球にもやさしいソリューションを、未来へつなげるために
NTNの具体的なソリューションとして、「OneWeb」、「Starlink Business」、「HAPS」の3つに取り組まれていますが、それぞれの特徴や利点を教えてくださいますか?
詳細は次のようになります。
非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)
- NTN:宇宙空間や成層圏から通信ネットワークを提供するシステムのこと
- OneWeb:高品質な帯域保証付きの高速衛星通信サービスを提供
- 「Starlink Business」高速・低遅延の衛星ブロードバンドインターネットサービス(※ベストエフォート型)
- 「HAPS(High Altitude Platform Station)」:高度20kmの成層圏を飛行する無人航空機から電波を届け、スマホで利用が可能
こういった異なる特徴を持つNTNソリューションと、地上ネットワークを組み合わせて、お客さまのユースケースやニーズに合わせて最適な通信環境の提供を目指すのが、私たちの大きなゴールです。
ちなみに、他社と比較したソフトバンクの強みは何でしょうか?
複数のNTNソリューションを提供することにより、お客さまのユースケースに合わせた最適な通信環境を提供できることです。
例えば、OneWebの国内展開に向けて、販売パートナー契約の締結を発表しているのはソフトバンクだけです。また、HAPS業界のリーディングカンパニーとして位置しており、成層圏飛行・通信試験の成功や要素技術の開発において他社をリードしています。
中でも、ソフトバンクが開発するHAPS用無人航空機は太陽光で稼働するため、SDGsの目標7「エネルギーをみんなに そしてクリーンに」の達成にも貢献します。
同じSDGsの視点でいうと、ユビキタスネットワーク構想は、ソフトバンクが掲げるミッションの一つである「世界におけるデジタルデバイド(情報格差)の解消」にもつながると考えています。
私も便利な通信環境である日本を離れ、住環境が変わったことにより、地域ごとの通信環境に違いがあることを知りました。海上や山中だけでなく、生活の上でも「つながる」ことを世界規模で広げようとするソフトバンクの取り組みに期待しています。
励みになります。日本で地下鉄や新幹線に電波が通っているのは、各社が協力して、線路沿いにケーブルを這(は)わせているからです。
NTNソリューションもまたグローバル規模でのオペレーション対応など、1社では解決できない課題が多々あります。今後は、数多くの衛星通信事業者や、各国の移動体通信事業者(通信キャリア)との連携を深めていきたいと思います。
インターネットは、私たちの暮らしに数々の便利さ、快適さをもたらしました。そんな快適なインターネットにより多くの社会課題が解決され、多くの文化を生み出す一方、現在でも通信環境が整備されないエリアが存在します。ソフトバンクはNTNソリューションを日々進化させている過程で、今年9月には、ルワンダ政府と協力して、世界初(※)の成層圏からの5Gネットワーク接続の実証に成功しました。この試験を通じて、当社とルワンダ政府は、ルワンダなどのアフリカ地域におけるHAPSの活用の可能性と商用化に向けた研究に取り組む予定です。
このように、一人でも多くの人々がインターネットにアクセスするため、そして「どこでも、誰でも、つながる」社会を実現するため、ソフトバンクはシームレスなネットワーク環境構築のための「空への挑戦」を試みています。