自宅にいるときに地震が発生。家の中の物が散乱し、気がつけば食器棚の下敷きに…。もしあなたが同じような状況に置かれたら、一体どうすればいいのでしょうか?
正しい知識とすぐにできる小さな行動が防災意識を高め、あなたとあなたの大切な人を救います。
今回は、ガレキや家具など重い物の下敷きになってしまったときの正しい対処法をご紹介。
(自宅で地震が起こった際に役立つ対策や準備)
この災害テーマのポイント
- ケガの約半数は、家具・電化製品の下敷きが原因
- もし下敷き状態になったら、状況を把握。音を出して存在をアピール
- 家具の「配置」と「転倒防止策」で、家具の下敷きは大幅に防げる
この災害テーマのポイント
- ケガの約半数は、家具・電化製品の下敷きが原因
- もし下敷き状態になったら、状況を把握。音を出して存在をアピール
- 家具の「配置」と「転倒防止策」で、家具の下敷きは大幅に防げる
目次
- リスク:地震によるケガの約半数は、家具・電化製品の下敷きが原因。長時間の圧迫ではクラッシュ症候群のリスクも
- 対処法:もし下敷きになったら、落ち着いて状況を把握。音を出して存在をアピールしよう
- 事前の備え:あなたの命を救うのは「家具転倒防止策」と「家具の配置」。特に寝室には配慮が必要
- 地震による下敷き状態を防ぐためなどに役立つサービス・ウェブサイト
リスク:地震によるケガの約半数は、家具・電化製品の下敷きが原因。長時間の圧迫ではクラッシュ症候群のリスクも
内閣府によると、地震による負傷原因の3〜5割が、家具や電化製品の転倒や落下によるもの。マンションの高層階であるほど地震の揺れは大きくなるため、家具の下敷きになるリスクも高まります。さらに、本震が収まったあとも余震は続くため、ひとたび地震が発生したら、家具転倒に対しては長期間注意を払っておく必要があります。
(大地震発生後は余震に注意)
阪神・淡路大震災では、負傷者の約半数が家具の下敷きに
1995年の阪神・淡路大震災では、家具類の下敷きによる負傷者は46%。次のグラフのように、家具と飛散ガラスによる負傷が全体の7割を占めています。また、地震で亡くなった6,400人のうち約7割にあたる4,400人が、倒壊家屋による窒息死・圧死で、そのうち約9割の方が、地震発生後15分以内に亡くなりました。
無事にガレキや家具の下敷きから救出されたとしても、長時間、体が重い物に圧迫されたことで起こる「クラッシュ症候群」の心配があります。救出直後は軽傷のように見えるのに、数時間後に突然容体が悪化して、死に至るケースも。
クラッシュ症候群の症状
- 挟まれていた部分がパンパンに腫れる
- 血尿や濃い茶色の尿が出る
- 挟まれていた部分の感覚がない
- 挟まれていた部分が動かない
- 筋肉痛や手足がしびれる
対処法:ガレキや家具の下敷きになったら、落ち着いて状況を把握。音を出して存在をアピールしよう
① 自分が下敷き状態になったときのアクション
- 無理に身体を動かさず、何が倒れてきたのかを把握する
- ケガがあるようなら、その状態を把握する
- スマホや近くにある物で音を出して、自分の存在を周囲に知らせる
声を出して叫び続けると体力を消耗するので、なるべく物を使って自分の居場所を知らせてください。スマホを持っていれば、電話で被害状況を知らせるほか、アラーム音や着信音も有効です。
② 他人が下敷き状態になっているときに役立つアイテム
余震に十分注意しながら救出活動を行いましょう。救出は、狭くなっている隙間などがそれ以上狭くならないように、固いものを挟んでおくなど、安全措置をとります。その際、次のような大工道具が近くにあれば、ケガ人の救出に役立ちます。
- ノコギリ
- チェーンソー
- エンジンカッター
- ハンマー
- (車のタイヤ交換時に使う)ジャッキ
- バール
- ロープ
ノコギリやチェーンソーは、大きな家具をバラバラにでき、ジャッキや大きめのバールは、重たい物を持ち上げることができます。無事救出できても、2時間以上下敷き状態になっていたらクラッシュ症候群の恐れが。その場合、ただちに人工透析などの処置を受けなくてはいけないので、容体をよく確認するようにしましょう。
事前の備え:あなたの命を救うのは家具の「配置」と「転倒防止策」。特に寝室には配慮が必要
寝室レイアウトのチェックポイント
- ケガをしないか:ベッドの両脇に本棚や洋服ダンスがないか?
- 避難口を確保できるか:家具が倒れても、ドアを開閉できるか?
- 火災の恐れはないか:家具の近くにストーブがないか?
寝ているときは無防備で身を守るのが難しくなるため、寝室には家具や物を極力置かないのがおススメ。ベッドはドアの近くに配置し、家具を置くならベッドから離して部屋の奥に置くようにしましょう。
家具転倒防止策のポイント
- 重い物を下の方に収納し、家具の重心を下げる
- 家具の下にストッパーを付け、壁にもたれ気味にする
- L字金具などで家具を壁に固定する
- 家具を金具で壁に直接固定できない場合は、天井に固定する「つっぱり型」、床との接地を強固にする「くさび型」など、2種類以上の器具を使って、できるだけしっかりと対策する
- 食器棚には中の物が飛び出さないよう、ストッパーを付ける
- キャスター付きの家具や家電製品は固定する
建物強度の3段階とその違い
建物の地震に対する建物強度を確保する構造には、大きく分けて3つの種類があります。
耐震 | 建物の強度を上げ、地震の揺れに耐える構造。揺れの強さを軽減できるものではないため、上階に行くにつれて揺れが大きくなり、家具の転倒などの被害が増える可能性がある。 |
制震 | 地震の揺れを吸収する装置を建物内に組み込み、振動を弱める構造。耐震構造と比べると、上階への揺れが軽減できる。建物自体の損傷は抑えられる他、免震に比べるとコストパフォーマンスに優れている。 |
免震 | 建物と建物の基礎の間に免震装置を組み込み、揺れそのものが建物に伝わりにくくする、揺れを受け流す構造。地震が来たとき、地面の振動が緩やかになるため、上階特有の大きな揺れも防ぎ、家具の転倒や食器類の飛散などの被害を最小限にとどめることが期待できる。ただし、地震の揺れと建物の揺れの周期が合わさり、振動が増幅する「共振現象」では免震装置の効果を発揮できない場合もある。 |
地震による下敷き状態を防ぐために役立つサービス・ウェブサイト
① 内閣府「特集 地震発生! あなたの住まいは大丈夫? 耐震補強、家具転倒防止……震災の備えは住居から!」
家具転倒防止策や家具の配置について、実例を踏まえてガイドしています。
② Yahoo!防災速報
災害が起こる前に、地震・豪雨・津波などの情報を知らせてくれるアプリ。アプリをダウンロードして設定すると、位置情報を利用した現在地と、あらかじめ設定しておいた3地域の情報を、プッシュ通知で受け取ることができます。
③ 緊急速報メール
気象庁が゙配信する緊急地震速報や気象などに関する特別警報、国・地方公共団体が配信する災害・避難情報などを、回線混雑の影響を受けずにスマホに発信するサービス。
④ 緊急通報の位置情報通知
ソフトバンクの携帯電話から緊急通報(110番、118番、119番)を行った場合、緊急通報した場所の位置情報が、警察、消防、海上保安庁などに自動的に通知されるサービス。ソフトバンクの携帯電話はすべて対応しています。移動中や外出中に災害やトラブルに巻き込まれ、お客さまが自分のいる場所をうまく説明できない場合でも、位置情報をもとに救助隊が駆けつけます。
⑤ みまもりマップ
家族がお互いの居場所をマップで確認できるソフトバンクのサービス。災害発生時には、家族が災害エリアにいることを知らせてくれたり、周囲に救援を求めたりすることもできます。また、平常時には、大切な家族が今どこにいるか、学校・病院などの指定エリアに到着・出発できたかなどの確認をすることが可能です。
⑥ Yahoo!ショッピング
Yahoo! JAPANが運営する日本最大級のオンラインショッピングモール。日用品などはもちろん、転倒防止棒などの防災グッズなども幅広く取りそろえています。
監修者:防災講師・防災コンサルタント 高橋 洋(たかはし・ひろし)
1953年、新潟県長岡市生まれ。1976年、練馬区に就職し、図書館、文化財、建築、福祉、防災、都市整備等に従事。1997年より防災課係長として、地域防災計画、大規模訓練、協定等に携わる。現在は、防災講師・コンサルタントとして、自治体等で講演、ワークショップ指導などを行う傍ら、復興ボランティア、終活ガイド・エンディングノート認定講師としても幅広く活動の一員として、福島県南相馬市小高区等で活動。防災関係著書・論文、防災関係パンフレット類監修多数。
(掲載日:2020年4月1日、更新日:2022年12月27日)
監修:高橋洋
文:内藤マスミ
編集:エクスライト
イラスト:高山千草