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多様性とデジタルで日本企業のイノベーションを

【ダイバーシティ×ソフトバンク】多様性とデジタルで日本企業のイノベーションを 【ダイバーシティ×ソフトバンク】多様性とデジタルで日本企業のイノベーションを

みんなのチカラやアイデアをかけあわせて、社会を良くしていくためにーー。さまざまな社会課題について、ソフトバンクはどのように挑みつづけているのか。X PROJECTでは、ソフトバンクが創ろうとする今と未来を、多角的な視点からひもといていきます。

今回のテーマは「ダイバーシティ」。女性や高齢者、障がいのある方や外国人など多様な人が分け隔てなく働きやすく、誰もがその人ならではの力を発揮できる。そんな職場環境をつくるダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを、多くの日本企業が進めています。それはソフトバンクも例外ではなく、「多様な人材が活躍する強いソフトバンク」というスローガンのもと、積極的にダイバーシティへの取り組みを推進しています。企業がダイバーシティ化を進めている背景、また取り組みを進めるうえで重要なポイントは何なのか。宮田裕章さんにお聞きしました。

PROFILE

  • 宮田裕章
    MIYATA HIROAKI

    慶應義塾大学医学部教授

    1978年生まれ。専門はデータサイエンス、科学方法論。「データサイエンスなどの科学を駆使して社会変革に挑戦し、現実をより良くするための貢献を軸に研究活動を行う」ことをテーマに幅広い活動を行なっている。コメンテーターとしてさまざまなメディアにも出演。

一人一人の幸せに焦点を当てる「ウェルビーイング」「ダイバーシティ&インクルージョン」

現在、多くの企業が「ダイバーシティ&インクルージョン」や「ウェルビーイング」という概念を経営に取り入れています。まずは宮田さんも力を入れている「ウェルビーイング」という言葉が注目されている背景、理由を教えてください。

宮田

産業革命以降、人々の暮らしは経済発展という巨大な流れのなかにありました。そのなかで個人の幸せを全面に出して社会を築くことは難しかったのが現実です。ただ近年、その時代の流れが大きく変わりつつあります。最初にグローバルな潮流となったのがサスティナビリティです。

これまでの経済一辺倒の社会のあり方を持続可能なものにしようとする発想です。その流れのなかで、ノーベル経済学賞受賞者のジョゼフ・ステグリッツらが提唱したのが「ウェルビーイング」です。これまでの物質的な豊かさではなく、一人一人の心の豊かさ、幸せが大事であり、それを追求しようという考え方です。

宮田さんは「ウェルビーイング」を踏まえた「Better-Co-Being」という概念も提唱されていますね。

宮田

一人一人の幸せが大事だとは言っても、個々人が全体を考えず、独りよがりなウェルビーイングを追求していては持続可能でありません。一人の人間が生き、働き、食べ、遊ぶことは全て他の人や地球環境とつながっています。よってウェルビーイングとサスティナビリティの調和のなかで、未来を考えていく必要があるのです。

そこで私は個々が全体との調和を考えながら、それぞれの幸せを追求する。それが全体のためにもなる。そのような社会を目指す「Better-Co-Being」というコンセプトを提唱させていただいています。ウェルビーングも「Better-Co-Being」も前提となる大事なポイントが、幸せのかたちは一人一人違うということです。そういった意味では多様な人が働きやすい職場環境を目指す「ダイバーシティ&インクルージョン」とも重なる概念です。

企業の競争力の源であり、経営戦略の根幹に置くべきダイバーシティ&インクルージョン

今、多くの企業がダイバーシティ&インクルージョンに取り組んでいる背景についても聞かせていただけますか。

宮田

まずは現在、企業は顧客や社会だけでなく、そこで働く社員を大切にしないと社会から信頼を得られなくなっています。そういった意味で多様な人が働きやすい環境をつくることは不可欠です。さらに大事なポイントが、イノベーションは多様性から生まれるということです。

近年、日本企業の時価総額ランキングが低下しているのは、日本の会社が男性中心で均一的な集団なため、イノベーションが生まれにくいからだと言われています。またZ世代やα世代は社会正義や公平性にすごく敏感です。そのためダイバーシティ&インクルージョンに不熱心な企業には、見切りをつける若い社員たちが増えています。そのため若者の意識が変わり、彼らを採用する経営陣の意識も変わる中で、中間層の社員だけが「ダイバーシティ&インクルージョンってなんだ?」と取り残される現象が起きています。未来の人材を引きつけることを考慮すると、もはやダイバーシティ&インクルージョンは企業競争力の源であり、経営戦略の根幹に置くべき重要なものになってきているのです。

ただ社員が多様であれば、それだけ環境整備やコミュニケーションのためのコストがかかります。

宮田

そうですね。それが今まで日本企業でダイバーシティ&インクルージョンが遅れていた理由です。多様な人が働きやすい環境を整備するには、それだけコストも労力もかかります。ところが今はデジタル技術によって、コストをかけずに多様な人に寄り添えるサービスが提供できるようになってきています。

デジタル技術を上手に活用することで、ダイバーシティ&インクルージョンを進めやすくなったのです。またデジタル技術の本質は多様なものを結びつけ、イノベーションを起こすことです。社会や組織のメンバーが多様であればあるほど、デジタル技術によるイノベーションも起きやすくなります。そういった意味ではデジタル技術とダイバーシティは、切っても切り離せない車の両輪なのです。

一人一人の違いや強みが力になる。全ての人が暮らしやすい社会を目指して

ここからはソフトバンクの担当社員にも参加していただきます。まずは木戸さん、ソフトバンクでのダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを紹介していただけますか。

ダイバーシティ施策の推進を担当

ソフトバンク株式会社 人事本部 人事総務PMO室 ダイバーシティ推進課 課長

木戸 あかり(きど あかり)

木戸

ソフトバンクでは、能力のある多様な人材の活躍がさらなる事業成長の原動力になると考え、ダイバーシティの推進を重要な経営課題として位置付けています。2017年から人事本部にダイバーシティ推進課を設置し、全社員対象のアンコンシャスバイアスのeラーニングや管理職対象のダイバーシティマネジメント研修、社員の意識を高め、自分ごと化してもらうための「ダイバーシティWEEK」といったイベントなどを開催しています。とりわけダイバーシティにおいては女性の活躍推進に焦点をあて、有識者をアドバイザーに迎えた女性活躍推進委員会を設置し取り組んでいます。

ダイバーシティに関連するソフトバンクの取り組みについては以下の記事でも詳しく紹介しています。

宮田

私も日本のダイバーシティの一丁目一番地は女性の活躍だと思っています。日本はジェンダーギャップ指数が世界最低レベルの非常に恥ずべき状況です。ぜひソフトバンクが先陣を切って女性活躍を進めていただきたいですね。LGBTQや障がい者に対する施策はいかがですか。

毎年ダイバーシシティについて理解を深める社内イベントを開催しています。

木戸

LGBTQについては社内の就業規則で差別やハラスメント禁止を掲げ、社内制度では同性パートナーを配偶者登録することができます。これにより同性パートナーの場合も、配偶者をもつ社員を対象とした休暇や慶弔見舞金などの社内制度が適用されます。聴覚に障がいのある方のためには日頃から音声認識アプリや筆談機器を使っています。文字を見ることに障がいがある人がいれば大きなモニターを準備し、混雑する時間に歩くことが困難な人がいれば通勤の時間や手段を個別に配慮する。最初から一律に大きな制度を導入するというより、共に働くなかで不都合があれば少しずつそれを改善していくかたちで取り組みを進めています。これからも社員一人一人のありのままの自分が肯定、尊重され、一人一人の違いや強みが力になる。そんな職場環境づくりを進めていきます。

ソフトバンクの施策や制度をうかがって、宮田さんはどのような感想をお持ちになりましたか?

宮田

すばらしいですね。経済的状況や健康状態などに大きな問題を抱えていない平均的な人には優しいけど、持病や非正規雇用、離婚などによる経済的困窮など、平均から乖離(かいり)した人にとっては、それぞれに対する足し算型の支援しかできず、なおかつ支援を受けるための申請ハードルも高く、優しくないのが日本です。ソフトバンクのようなデータ活用を得意とした企業がLGBTQや障がい者への施策を打ち出すことで、足し算のような支援じゃなく、掛け算での支援が可能になってくるはずです。

そして、ダイバーシティ&インクルージョンの取り組みを進めるうえでは、一人一人の立場になって対応を考えていくことが基本です。新たな制度をつくることで、疎外される人が生まれてもいけません。ひと昔前のユニバーサルデザインのように全体の平均値を狙うような発想ではなく、全ての人が使いやすいバランスを考える必要もあります。マイノリティー(性的少数者)や多様な人に寄り添うことが、全ての人にとって暮らしやすい社会につながっていくはずです。

情報革命を掲げるソフトバンクがダイバーシティ&インクルージョンを率先して推進することは、とても意義あることだと思います。これからは、デジタルの力によって個々人のエンパシー(共感)を生み出すことが重要だとされています。その先端的な取り組みが、社会全体を変えるきっかけになることを期待しています。

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