ニューノーマルとは? 2021年の働き方とビジネスの行方

2021年3月29日掲載

新型コロナウイルス感染症の流行で急速に浸透した新しい生活様式「ニューノーマル」が、人々の生活に大きな変化をもたらしている。マスク着用はもちろん、企業もテレワークやDXの推進、オンラインへのシフト、事業継続性の高い経営の重視など、変化を迫られている。本稿では、ニューノーマルで起こったビジネスの変化と、上手に適応した企業の事例、ソフトバンクの取り組みなどを解説する。

目次

ニューノーマルとは

定義

ニューノーマルとは、New(新しいこと)とNormal(正常、標準、常態)を合わせた造語。「新しい生活様式」と訳され、Withコロナ・Afterコロナの時代に求められる生活様式のことを指す。 新型コロナウイルス感染症の対策は個人でも企業でも徹底することが求められている。こうした社会情勢の変化に対応し、自身の行動をアップデートして生活していくことが、ニューノーマル時代に求められている。
なお、ニューノーマルという言葉自体は2000年代初頭から使われているとされるが、現在は主に新型コロナウイルス感染症の文脈で使われている。

ニューノーマル時代と今までとの違い

ニューノーマルの生活環境は、今までの時代と大きく変化した。外出時のマスク着用やソーシャルディスタンスの確保などは最たるものだ。
在宅勤務やテレワークに代表されるように、働き方の面でもニューノーマル時代には急激な変化を迫られた。従来は、一部の企業のみが取り組んでいたテレワークだが、現在では多くの企業が実施している。
東京都が行った調査によると、2021年1月時点のテレワーク導入率は、従業員300人以上の企業で76.5%、100~299人の企業で63.6%、30~99人の企業で47.0%、全体平均でみると57.1%と実に半数以上の企業が取り組んでいることが分かる。
ニューノーマル時代の企業は、テレワーク環境でもオフィスと変わらず業務を行える環境を整備することが求められているとともに、事業継続への取り組みが一層求められるようになった。コロナ禍でのニューノーマル時代への変化が、企業のDXを加速させる契機になったと言えよう。

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ニューノーマルのビジネス・企業の変化

対面からオンラインへ

ニューノーマル時代となり、ビジネスは対面からオンラインへと変化している。BtoCでは窓口や店舗での接客に代わりオンライン相談窓口やチャットボットでの対応、Webやアプリ上での試着などが導入され、BtoBでは営業活動や打ち合わせのオンライン化が急速に進んだ。現在、競争力を維持するためにはオンラインを軽視することはできない。
またEC市場の伸び率は顕著であり、経済産業省の市場調査によれば、2019年度のBtoCのEC市場は前年比7.65%増の約19.4兆円まで拡大している。ニューノーマルに突入して巣篭もり需要が増加した2020年度は、さらに大きく伸びていると予想される。

インサイドセールスの活用

非接触が求められているニューノーマル時代において、電話やメール、オンライン会議ツールなどを活用して非対面で営業活動を行う「インサイドセールス」の活用シーンが増えている。
インサイドセールスは、ニューノーマルに対応できることはもちろんだが、顧客訪問にかかる交通費や移動時間が削減できる。さらに、移動時間がなくなることでフィールドセールスよりも多くの企業と打ち合わせができることに加え、場所にとらわれず全国の人材を活用できるため人手不足の解消にもつながる可能性を秘めており、新型コロナウイルス感染症拡大の抑え込みに成功した後の世界でも継続して使われていくことだろう。
ニューノーマル時代では、足で稼ぐフィールドセールスから、デジタル技術を駆使して稼ぐインサイドセールスへの変化が求められていると言える。

DXの推進

ニューノーマル時代に生き残るため、企業はDXの推進を迫られている。社会やビジネスを取り巻く環境、働き方が大きく変化する中、デジタル技術の活用は避けては通れない。
クラウドやコミュニケーションツールの導入だけでなく、各部署がそれぞれ構築してきたレガシーなシステムを刷新して統合管理できるITシステムを構築する、業務を効率化するシステムを導入する、WebアプリケーションやAIの活用で顧客対応を自動化させて品質向上に努める、など企業が取り組むべきDXは多岐にわたる。
DXの推進は、ニューノーマル時代の企業にとって競争力の源泉となる重要な変化と言えるだろう。

事業継続性の高い経営の重視

近年、私たちは、新型コロナウイルス感染症や、地震・豪雨といった自然災害など、予測が難しい事態を経験している。そのため企業には、万が一に備えた事業継続性の高い経営がより求められるようになった。言い換えれば、事業継続性の高い経営体質にならければニューノーマル時代を生き抜くことは困難であると言えるだろう。あらゆるリスクを想定し、備えるためのBCP(事業継続計画)を企業は考えていかなければならない。

健康経営

ニューノーマル時代では、従業員の健康を守るとともに、メンタルヘルスにも力を入れ、生産性の向上を図る健康経営が求められている。
従業員の健康へ投資することで、長期的に企業を活性化させ、業績の向上に繋げることが目的だ。企業はニューノーマル時代に対応するために、健康経営へ取り組む組織体制の構築や制度、施策、改善などを行っていくことが必要になってくる。
近年では、先端ICT技術を活用したヘルステックと呼ばれる企業やサービスが生まれており、健康経営をサポートするサービスを活用する企業も増えてきている。オンライン健康医療相談サービス「HELPO」のように、従業員が専門医に気軽に相談できるチャットサービスや、食事や運動、睡眠、メンタル、労働意欲などをデータ化して改善のためのフィードバックを行うアプリなど、健康経営を支えるさまざまなサービスが登場している。

ニューノーマルの働き方の変化

テレワークの推進

前述の通り、ニューノーマルの働き方としてテレワークが広がりつつある。
グループウェアやオンライン会議システム、チャットツールなど非対面でも情報共有やコミュニケーションができるクラウドサービスを活用し、オフィスにいなくてもオフィスと同様の業務環境を整えテレワークを実現している、というケースが多いだろう。
テレワークの普及は、通勤時間や訪問先への移動時間の削減、多様な人材の確保などメリットも大きい。また、オフィスにいなくても仕事ができる環境になったことで、東京一極集中型から地方への移住や関心が高まっている。国土交通省の調査によれば、ほぼ完全にテレワークでの勤務が可能となった場合、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の東京圏在住の約4割が引越しを検討したいと回答しているという。
さらに踏み込んだ動きとしてワーケーションなどの新しい働き方を進めている企業もある。今後は働く場所にとらわれないテレワークが、さらに推進されるだろう。

対面コミュニケーションの減少

ニューノーマル時代は非接触が求められるため、対面でのコミュニケーションが大幅に減少している。対面で会話をするコミュニケーションから、オンライン会議ツールを使った非対面の会議や、メールやチャットを利用した文字のやり取りが増加している。
こうした非対面でのコミュニケーションは、社内外を問わず進んでいる。一方で、非対面のコミュニケーションは、対面と比べて相手の表情や仕草、温度感を読みづらい部分もあり、意思疎通が図りにくいという声もある。多くのビジネスパーソンがテレワークで仕事をする今、非対面でも質の高いコミュニケーションと意思疎通ができることは、ビジネスにおいて欠かせないスキルとなっている。

オンラインサービス利用の増加

ニューノーマル時代のビジネス環境は、オンラインサービスの利用が欠かせない。特にグループウェアやチャットツール、オンライン会議ツールなどの利用は必須と言える。
作成したファイルをクラウドの共有フォルダに保存して社内に共有する。チャットツールでリアルタイムに双方向のコミュニケーションを図り、オンライン会議で画面を共有しながら議論する。タスク管理やプロジェクト管理をオンラインツールで行う。契約書は印鑑が不要な電子契約サービスを活用する。人事評価はクラウド型ツールで行い、採用もオンラインで行う。こうしたさまざまなオンラインツールを安全に使うためのセキュリティサービスもオンラインで提供される。
ニューノーマル時代のビジネス現場では、複数のオンラインツールを使いこなすことが当たり前になっていると言えよう。

新たなワークスタイルを導入した企業の事例

テレワークの全社導入 - 株式会社ラック

株式会社ラックではテレワークを全社導入したことにより、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が顕著になった2020年4月以降、7割以上の社員が在宅勤務へ移行できている。
総務部や人事部などバックオフィス部門では90%の在宅勤務を達成し、24時間365日監視が必要なセキュリティ監視センターも「TeamViewer」を活用してのテレワーク化に成功している。在宅勤務で懸念されるセキュリティ面も、セキュリティ監視と端末へのセキュリティ対策を行い、オフィス勤務時と変わらないセキュリティレベルを保っている。
ラックでは従来からの準備に加え、セキュリティレベルなどを担保できた結果、以前よりも生産性が向上したと回答している社員が90%を超えており、今後もライフ・ワーク・バランスを意識した仕組みづくりが必要だと感じているという。
さらにラックでは、自社のテレワークを行ったノウハウなどをまとめた、「テレワーク導入便覧」をWebサイト上で無料公開している。自社のみならず、テレワーク導入を目指す企業のサポートも行っており、普及に努めている。

参考:全社一斉テレワークで何が起きたか?見えてきた課題と事業を止めないためのヒント | 株式会社ラック

新しい人事評価 - 株式会社メルカリ

株式会社メルカリでは、新しい人事評価として「OKR」と「バリュー評価」を取り入れている。
「OKR」とはGoogleやFacebook、Intelが導入している目標管理方法だ。メルカリでは四半期ごとにグループ全体から各個人までのOKRを設定し、個人の進捗についてグリーン、イエロー、レッドという表現で達成度合いをチェックしている。基本的にはOKRを達成した度合いではなく、グループ全体のOKR達成にどのように貢献できたのかのプロセスを見ていくという。
「バリュー評価」では、メルカリが掲げている3つの行動指針「Go Bold」「All for One」「Be Professional」を行えていたかを評価している。
またバリュー評価制度には「mertip(メルチップ)」という制度を導入。社員の9割以上が5段階評価で満足度4以上の評価をしている。「mertip(メルチップ)」とは、社員どうしでポイントを譲り合うもので、相手を賞賛したい時などに与えられる。ポイントは1ポイント1円で換算され、集まったポイントは毎月の給与に反映されるという。また個人で受け取ったポイントや賞賛の内容は可視化されるので、社員どうしの相互理解にもつながるという。
これは「ピアボーナス」という制度で、メルカリではリアルタイムで賞賛し合える仕組みづくりに活用し、社員どうしで賞賛を送り合う文化を構築している。

参考:
OKRのリアルなハナシ 〜(株)メルカリの場合〜
同僚から月60回「成果給」を受け取った人も!メルカリの「ピアボーナス」運用の裏側

新しい人事評価 - 株式会社メルカリ

株式会社エイチームは2019年度採用から会社説明会を廃止し、オンライン選考を行っている。地方や海外在住の応募者に対して、平等な情報提供を可能にするためだ。
2020年には新型コロナウイルス感染症の影響から、「A-LIVE!(エーライブ)ぜんぶエイチームの合同企業説明祭!」をオンライン配信で開催。ビジネスプロフェッショナル向けとクリエイター向けでそれぞれタイムスケジュールを公開し、業種ごとに個別のセッションで説明を行うため、学生は見たいセッションを選択して自由に参加できる。
結果として、参加した学生数は500名と多く、「初めてのWeb説明会だが安心して視聴できた」といったポジティブな反応が多く得られたという。オンラインでの会社説明会は遠隔地にいる人材の発掘など利点も多い。今後はますます広がりを見せていくだろう。

ニューノーマルに向けたソフトバンクの取り組み

ソフトバンクではニューノーマルに対応するため、さまざまなデジタルソリューションを提供している。オンライン会議サービスやコミュニケーションツール、電子契約、VPNやリモートアクセスなどのセキュリティツール、オンライン採用、従業員の健康医療相談まで、幅広いソリューションの導入を手厚くサポートしている。

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まとめ

新しい生活様式である「ニューノーマル」も、我々の日常に定着してきている。マスクの着用やソーシャルディスタンスに加え、新しい働き方にも多くの人が慣れつつある。新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行が一段落を迎えたとしても、ニューノーマルによって動き出したDXの流れやビジネス環境の変化が止まることはないだろう。
企業やビジネスパーソンが変化を止めてしまったとき、競争力は減少し、時代の変化の波に飲まれ、生き残ることは難しくなる。変化していくことは怖さもある。だが、ニューノーマル時代に対応していくために従来のやり方を踏襲するだけでなく、企業や自身のあり方をアップデートしていくことが求められているのだろう。

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