2023年3月期 第1四半期
決算説明会 主な質疑応答

日時 2022年8月4日(木)午後4時~5時
登壇者 ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一
ソフトバンク株式会社 取締役 専務執行役員 兼 CFO 藤原 和彦
  • KDDI(株)の通信障害についてどのように受け止めたか。

    対岸の火事という認識は一切なく、自分事だと捉えている。同様の原因による通信障害が当社でも起こりえるのか細かく検証したが、対策済みの箇所であったため、起こりえないのではないかと思う。しかし、今後、他の原因による通信障害は当社でも起こる可能性がある。対策チームを設けて一から見直しているところだ。

  • 通信障害発生時のローミング(通信事業者間のモバイルネットワークの相互接続)についてどう考えているか。

    過去、通信障害発生時や有事の際のローミングについてコメントしたことはあるが、通信事業者間で話が進んでいなかった。モバイルサービスは、SMS(ショートメッセージサービス)を用いた本人認証や「PayPay」をはじめとする決済などにも使われており、社会インフラとしての重要性が増している。現在、警察や消防などへの緊急通報について主に議論されているが、その実現だけで通信障害発生時の世の中の混乱が収まるかというとそうではないと思う。今後、総務省中心にローミングについての議論が始まる。通信障害発生時や有事の際に、MVNOの形式で他の通信事業者のモバイルネットワークに切り替えられるような仕組みを用意し、電話・メール・LINEのメッセージの送受信など、最低限の通信ができるようにすれば良いのではないかと考えており、今後の議論の中で提案していきたい。

  • KDDI(株)の通信障害に係るお詫び返金200円(対象契約当たり)に対する評価は。ソフトバンク(株)における今後の約款の返金基準の見直しの必要性は。

    KDDI(株)のお詫び返金額の多寡についてはコメントを控える。当社の約款の見直しの必要性は現状感じていない。

  • 総務省から要請があった携帯販売代理店へのインセンティブの見直しへの対応は。また、携帯キャリアと携帯販売代理店とのあるべき姿は。

    インセンティブの仕組みは常々見直しており、急に何かを大きく変えることはないと思っているが、今後議論を深める中で改善すべきところが出てくれば改善していきたい。また、携帯販売代理店は当社にとってのパートナー。お客さまにとって不利益となる契約にならないよう、健全な業界づくりを目指し、現状置かれた環境の中で議論を進めていきたいと考えている。

  • 2023年度の増益に向け体制を整えているとのことだが、2023年度の増益に貢献すると見込んでいる事業は何か。

    まず本業の通信業において、2022年度の通信料の値下げによる前年対比でのマイナス影響は900億円程度だが、2023年度には500億円程度に縮小すると見込んでいる。この500億円程度のマイナス影響は、2023年度からの減価償却費の減少などによるコスト削減のプラス影響で相殺できると見込んでいる。他の事業は順調に伸ばせるため、増益要因になると捉えている。
    2022年度は5G関連の投資で設備投資額がピークになる予定だが、2023年度には一巡すると見込んでいる。そのため、設備投資を1,000億円ほど削減できると考えている。

  • 携帯事業において契約数が増えているブランドは。また、KDDI(株)の通信障害による純増への影響は。

    契約数の純増へ貢献している大部分は“ワイモバイル”になる。しかし、“楽天モバイル”の0円プラン廃止以降は“LINEMO”も純増に貢献している。KDDI(株)の通信障害直後はMNPでKDDI(株)に移行する数が一時的に減った。長期的な影響があるかどうか注視している。

  • “楽天モバイル”の0円プラン廃止の発表についての受け止めは。

    0円プラン廃止を発表した後は“楽天モバイル”への転出が減り、転入が増えているので、ユーザーが順調に増えている。

  • “楽天モバイル”への流出が減っている一方、解約率が昨年度と同水準なのは、他の携帯キャリアとの競争が激化しているからか?

    携帯キャリアを移行する際の条件が緩和され、顧客の流動性が高まっている。「PayPay」が順調に成長し、LINE(株)がグループ企業となるなど、スマートフォンと親和性が高い事業がグループ内に多くあるので、それらを活用してスマートフォンの純増にこだわっていきたいと考えている。ARPUが下がることによるマイナス影響を契約数が増加するプラス影響が上回れば通信料収入は増加するので、それを目指していきたい。

  • エネルギー価格の高騰による事業への影響は。

    電気代の高騰は現状の事業計画にも織り込んでいるため、急激に経営が悪化するとは考えていない。

  • 前回の決算発表では、引き続き「PayPay」への積極的な先行投資を継続する方針を示していたが、PayPay(株)の連結子会社化を発表し、考えに変化はあるのか。

    「PayPay」のユーザーは引き続き増加しているので、先行投資を継続した方が将来のPayPay(株)の企業価値の向上に繋がると考えている。決済取扱高(GMV)が拡大しているので、投資しながらも黒字化に向けてコントロールしていきたい。黒字化のタイミングについては事業を運営する中で判断していきたい。

  • 金融事業をセグメントに追加するとのことだが、どのような将来展望を持っているか。

    現状、グループ内の金融サービスを提供している会社として、PayPay(株)やSBペイメントサービス(株)などの会社がある。PayPay経済圏はこれからもどんどん拡大していく見込みで金融事業に対する期待値は非常に高い。金融事業を当社の屋台骨にできるような事業規模にしていきたいと考えている。

  • PayPay(株)が銀行・カード・証券を100%保有し運営する事業体にできれば非常に強くなると思うが、そのような方向を目指していくのか。またそうなった時のグループ構造をどう考えるか。

    PayPay(株)の企業価値を高めるためのグループ再編の方向性については様々な選択肢があるが現時点で決まったものはない。今回のPayPay(株)によるPayPayカード(株)の100%子会社化や、PayPay(株)の親会社となる中間持株会社をZホールディングス(株)と設立し、Zホールディングス(株)を強く巻き込んだ目的は、PayPay(株)の企業価値を最大化すること。仮にPayPay(株)が上場すれば、ソフトバンク(株)の株式ではなく、PayPay(株)の株式を直接買えるようになるので、ソフトバンク(株)に投資する意義を問われると思う。当社は当社自身を「デジタル技術を社会実装する会社」と定義しており、あらゆる産業のデジタル化に向けて様々な企業と協業していく。その中で、PayPay(株)は当社グループにおける金融の中心と位置付けている。