サステナビリティ調達調査
サプライチェーンにおける潜在的なサステナビリティリスクを特定し、適切に対応するために重要サプライヤーに対するサステナビリティ調達調査を毎年実施しています。
リスクの管理とKPI
以下の手順でサプライチェーン全体のサステナビリティリスクを特定し、管理しています。
- 重要サプライヤーに対して年次で「サステナビリティ調達調査」を実施し、調査結果を分析してサプライチェーンにおける潜在的なサステナビリティリスクを特定
- 調査の結果、「ハイリスクサプライヤー」に該当したサプライヤーに対して、当社が重要と考える評価項目(人権等)に関する改善予定の有無等を確認するヒアリング、および現地監査を必要に応じて実施。監査は購買担当者による第二者監査および第三者監査を実施(項⽬は各国の法令要求事項、ILO条例やRBA等のグローバルスタンダード監査基準の要求事項を基に構成)
- ハイリスクサプライヤーに対して、要改善項目に関する改善提案を送付し、取り組みの改善を共に推進
- 年次のサステナビリティ調達調査等を通じて要改善項目の改善状況をモニタリング
サステナビリティ調達調査の実施においては、当社が目指す「サプライヤーとの公正で良好な取引関係」を実現するために以下のKPIを設定し、共にサステナビリティに関わる課題に対処し、お客さまに安心で安全な製品やサービスを提供し、社会から信頼される企業活動を行うことを目指しています。
KPI | 目標 | 目標年 | 実績 | |
---|---|---|---|---|
2023年度 | 2024年度 | |||
サステナビリティ調達調査票の回収率 | 90%以上 | 毎年 | 94% | 97% |
ハイリスクサプライヤーに対する改善活動の支援 | 100%実施 | 毎年 | 100% | 100% |
サプライヤー視察および監査の実施 | 2023年度: 15社以上 2024年度: 20社以上 |
毎年 | 16社 | 22社 |
サプライチェーンの状況
当社のサプライヤーは、世界中に約2,000社以上存在しますが、サプライチェーンマネジメントにおいては、取引量や代替可能性の観点に加え、環境、社会、ガバナンスのESG側面を考慮し、重要サプライヤーを定め、幅広いサプライヤーの中における重要サプライヤーとして、適切なサプライチェーンマネジメントを⾏っています。
サプライヤー分類 | 2024年度 | |
---|---|---|
1次サプライヤー | サプライヤー数 | 2,800社※ |
重要サプライヤー | 1次サプライヤー数 | 76社(購入金額全体の85%)※ (ソフトバンク関連会社は調査対象外) |
2次以降のサプライヤー数 | 7社※ |
- [注]
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- ※
第三者検証を実施しています。
- ※
調査実施概要
当社は、2020年度から重要サプライヤーに対するサステナビリティ調達調査を毎年実施しています。
2024年度から第三者評価プラットフォームのEcoVadis※1と、3社(NTT・KDDI・ソフトバンク) サステナブル調達共通SAQ※2(自社評価調査)を調査対象サプライヤー※3に対して導入し、お取引先さまとのさらなるエンゲージメント強化に向けて取り組んでいます。重要サプライヤーの67%にEcoVadisを受審いただいていますが、今後もEcoVadisを推奨し、透明性・公平性の高いサステナビリティ評価を拡大していくことにより、サプライチェーン全体のリスク管理とさらなるエンゲージメント強化を目指していきます。
調査手法 | 合計サプライヤー数 | 重要サプライヤー数 |
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EcoVadis | 92社 | 54社 |
3社サステナブル調達共通SAQ | 80社 | 27社 |
合計 | 172社 | 81社※4 |
- [注]
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- ※1
「環境」「労働慣行と人権」「倫理」「持続可能な資材調達」の4つのパートで構成されるサステナビリティ評価サービス
- ※2
2023年度に、NTT株式会社、KDDI株式会社および当社の3社で標準化したサステナビリティに関するアンケート。SAQは、環境、人権・労働、安全衛生、公正取引・倫理、品質・安全性、情報セキュリティなどの項目を抽出し、業界を問わずバイヤーとサプライヤー間で共有できるよう構成
- ※3
調査対象サプライヤー:2024年度は購入金額の上位約85%に含まれる重要サプライヤー
- ※4
第三者検証を実施しています。
- ※1
調査結果
SAQの8項⽬を合計した全体の平均得点率は77%でした。得点率の⾼い項⽬は「1.法令遵守・国際規範の尊重」、「5.公正取引・倫理」である⼀⽅、得点率の低い項⽬は「4.環境」と「8.事業継続計画」でした。
調査対象サプライヤーに対して、各項目の分析結果をフィードバックし、サプライヤーが自社の得点率と他社の平均得点率を項目毎に比較することにより、自社の活動における強みや弱みを再確認し、継続的な向上に努めていただく際の参考にしていただいています。

項目 | 最大得点率 | 平均得点率 |
---|---|---|
1. 法令遵守・国際規範の尊重 | 100% | 87% |
2. 人権・労働 | 100% | 84% |
3. 安全衛生 | 100% | 82% |
4. 環境 | 100% | 61% |
5. 公正取引・倫理 | 100% | 86% |
6. 品質・安全性 | 100% | 73% |
7. 情報セキュリティ | 100% | 75% |
8. 事業継続計画 | 100% | 70% |
全体 | 100% | 77% |
リスクの特定
当社は、サプライヤーの人権、労働、環境に対する行動が十分でなく、人権侵害の発生により私たちの企業評判に影響を及ぼす、良好でない労働環境により製品・サービスの品質が低下する、環境や労働に関連する法令に違反するなど、当社の事業活動に大きな負の影響を及ぼす可能性の高い状態を「サステナビリティハイリスク」と定義しています。
サステナビリティ調達調査により、8項目の平均スコアが65点以下かつ特に重大リスクが存在するものと捉える項目を満たしていないサプライヤーをDランクとして、共に取り組みの改善を推進しています。
2024年度は、⼈権項目、GHG排出量削減⽬標の設定等の環境項⽬についての対応に遅れがあるサプライヤーをDランクとして特定し、是正措置の対応を進めるとともに、当社のサプライヤー倫理⾏動規範の要求レベルの周知に努めています。
リスクランク | 評価点 | 2024年度 | 説明 |
---|---|---|---|
Aランク | 合計86点以上で重大リスク項目の該当なし | 35社 (44%) |
基本的に当社のサプライヤー倫理行動規範の要求レベルで行動ができている |
Bランク | 合計66~85点で重大リスク項目の該当なし | 32社 (40%) |
当社のサプライヤー倫理行動規範の要求レベルで行動ができていない項目があるが、自主的改善が可能 |
Cランク | 合計65点以下で重大リスク項目の該当なし | 6社 (8%) |
当社のサプライヤー倫理行動規範の要求レベルで行動ができていない項目について、改善計画に基づき状況モニタリングが必要 |
Dランク (ハイリスク) |
重大リスク項目の該当あり | 7社 (9%) |
当社のサプライヤー倫理行動規範の要求レベルで行動ができていない項目(人権、労働、環境等の一部項目)について、潜在的にリスク有と判断し是正措置計画の作成が必要 |
合計 | 80社 | 調査対象に重要サプライヤーを含む |
改善活動の支援
人権、環境等に関する項目を含むサステナビリティ調達調査の結果、サステナビリティリスクが特定されたサプライヤーに対し、(1)分析結果を共有し、(2)追加ヒアリングを行うことで懸念事項を明確化し、(3)対応の方向性を協議することで改善支援につなげています。ただし、対象となるサプライヤーは、サステナビリティ調達調査の結果に基づき毎年見直します。2024年度は、潜在的なリスクがあると判断したサプライヤー7社に対し是正措置計画の作成を依頼すると共に、今回のアセスメントを機に取り組みの改善を依頼しています。
リスクの種類 | 内容 | 2024年度 改善支援社数 |
改善指導率 |
---|---|---|---|
人権 | 人権・労働の規程が定められていない | 3社 | 100% |
温室効果ガス(GHG)排出量 | GHG排出量について、排出状況が可視化されていない、定量化した具体的な削減目標を設定していない | 4社 | |
合計 | 7社 (うち重要サプライヤーは4社)※ |
100% |
- [注]
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- ※
第三者検証を実施しています。
- ※
視察および監査の実施
当社は、2021年度から購買担当者によるサプライヤーの⼯場などの現場視察時に、人権・労働、安全衛生、環境分野などにおける「サプライヤー倫理⾏動規範」の遵守状況を点検し、その記録を蓄積する取り組みを実施しております。
また、2022年度から第三者監査の実施を開始しており、項目は各国の法令要求事項、ILO条例やRBA等のグローバルスタンダード監査基準の要求事項を基に構成されたものを使用しています。
監査の結果、改善が必要と評価された場合、監査実施後、改善計画を策定し、取り組んでいただいています。
訪問調査 | 2023年度 | 2024年度 | 2025年度 |
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目標 | 15社以上 | 20社以上 | 23社以上 |
実績 | 16社 | 22社※ | - |
- [注]
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- ※
第三者検証を実施しています。
- ※
責任ある鉱物調達
購買活動における社会的な責任を果たすため、サプライヤーと連携し、⼈権侵害を⾏う反政府勢⼒の資⾦源となっている紛争鉱物が含まれる製品の不使⽤に向けた取り組みを推進しています。
具体的には、サプライヤー倫理⾏動規範において、コンゴ⺠主共和国およびその周辺諸国において、⼈権侵害を⾏う反政府勢⼒の資⾦源となっている紛争鉱物(タンタル、スズ、タングステン、および⾦)を使⽤しないことを定め、サプライヤーにもその遵守を求めています。
調査結果
2020年度以降、一次サプライヤーに対して、製品に含まれる紛争鉱物の原産国調査を紛争鉱物調査テンプレート(Conflict Minerals Reporting Template:CMRT※1)を用いて実施し、17社から回答を得ました。
調査 結果 |
タンタル | スズ | タングステン | 金 |
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精錬所および 精錬所総数 |
39 (うち対象国※2は 1社) |
87 (うち対象国※2は 1社) |
50 (対象国なし) |
156 (対象国なし) |
- [注]
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- ※1
CMRT(Conflict Minerals Reporting Template):紛争鉱物に関する国際ガイドラインを制定しているRMI(Responsible Mining Initiative)により提供された、紛争鉱物報告のための調査フォーマット
- ※2
紛争鉱物の対象国として指定されているコンゴ、アンゴラ、ザンビア、タンザニア、ウガンダ、南スーダン、ルワンダ、中央アフリカ共和国、コンゴ共和国、ブルンジの計10カ国
- ※1
サステナビリティ調達調査において、第三者による保証を取得(一般財団法人日本品質保証機構)しています。