プレスリリース 2009年

障がい児の学習支援を目指した携帯電話の活用事例集
「あきちゃんの99の魔法のポケット」の発行について ~障がいごとの事例をまとめ、効果的な学習を支援~

2009年11月5日
東京大学 先端科学技術研究センター
ソフトバンクモバイル株式会社

東京大学 先端科学技術研究センター(所在地:東京都目黒区、所長:宮野 健次郎)の中邑 賢龍(なかむら けんりゅう)教授らの研究グループとソフトバンクモバイル株式会社(本社所在地:東京港区、社長:孫 正義)は、本年6月より、「あきちゃんの魔法のポケットプロジェクト」を進めてまいりましたが、このたび本プロジェクトの成果をまとめ、携帯電話を活用した、障がいのある子どもたち向けの学習支援マニュアルを作成しましたので、お知らせします。

プロジェクトの概要は以下のとおりです。

1. 目的

本プロジェクトは、携帯電話が生活や学習支援に役立つ活用事例を広く紹介することで、障がいのある子どもたちの学習機会を増やし、社会参加の促進を目指すものです。両者は今回のプロジェクトを通して、既存のテクノロジーである携帯電話を上手に活用することで、障がいのある子どもたちが生活上感じる困難を軽減し、社会の多様な場面に今まで以上に参加できるようになることを目指しています。

2. 主な内容および成果

障がいのある子どもたちと実際に触れ合いながら、発達障がい、知的障がい、聴覚障がいなどの障がいごとに携帯電話の活用事例をまとめ、マニュアルを作成しました。マニュアルには、携帯電話の機能とそれぞれの活用方法を分かりやすくまとめたマトリックス形式の一覧表も掲載しています。

なお、障がいに合わせた携帯電話の活用方法の事例サンプルは以下のとおりです。そのほかの事例については上記より事例集をダウンロードし、ご覧いただけます。

(1)音声読み上げや音楽再生機能で耳から聞く読書を

障がい
読み書き障がい(ディスクレシア、ディスグラフィア)
活用方法
音声読み上げ機能、音楽再生機能
事例

読み書き障がいのあるA君は文字を認知することに障がいがあります。しかし、耳から聞いて理解することはできます。そこで、携帯電話の音楽再生機能を使用し、教科書のテキスト部分を音声として記録したものを自分で聞いています。学校での読書の時間など、その場で文字を読んで理解することが難しい場面でも、携帯電話機能の活用により内容を耳から聞いて理解することで、困難を軽減しています。

(2)携帯ツールで書字が困難でもメモが取れるように

障がい
筋ジストロフィ
活用方法
メモ帳機能、カメラ機能、音声録音機能、 かな漢字変換機能、予測入力機能
事例

B君には筋ジストロフィという疾患があります。これは体の筋力が徐々に衰えていく進行性の疾患で、自由に動かすことのできる体の部分が限られてくるという肢体不自由につながっています。B君の場合、指先が比較的自由に動かすことのできる部分です。

メモ帳機能と携帯電話のキー入力による、かな漢字変換機能を利用することにより、指先の動作だけで文字を入力することができるので、ペンで文字を書くよりも自由にメモを取ることができます。音声録音機能やカメラ機能を使って、文字を書かずにメモしたいことをすばやく記録することもできます。

また、学校での勉強の場面では、教科書や辞書を持ち運んだり、すばやくページをめくったりと腕から手先全体を使う作業が多くあり、肢体不自由のあるB君にとっては困難です。しかし、この文字入力機能と辞書機能を利用することで、指先だけでの作業が可能になり、重い辞書のページをめくることなく調べたいことを自由に調べることができます。

(3)思い出すことを助けるリマインダー機能の活用

障がい
自閉症
活用方法
予定表機能、タイマー機能
事例

自閉症のあるC君は時間の感覚を把握することに困難を感じています。そのため、予定を把握してそこに参加することに困難さを感じています。また、視覚的に何かを示されると理解できますが、耳から聞いた言葉の意味を理解することが苦手です。

例えば、「今から45分間この作業をしよう」と言われても、時間の長さをうまく把握することができないため、パニックを起こしてしまいます。そんな時、C君は携帯電話の予定表機能やタイマー機能を活用します。残り時間の長さを視覚的に示すことで、理解できるようになります。集団行動やスケジュールの決まっている行事に参加するときなどには非常に大切なツールになっています。

3. 今後の予定

今後両者は、セミナーやワークショップなどの啓発活動を通し、障がいのある子どもたちの親をはじめ、教育関係者や社会福祉士を目指す学生などを対象に、携帯電話が障がいのある持つ子どもたちの生活や学習支援に役立つ活用事例を広く紹介していく予定です。

今回のプロジェクトを通し、障がいのある子どもたちの学習環境の改善にとって、携帯電話は極めて有効なツールであることが確認されました。現在、携帯電話の学校への持込みに関しては原則禁止とされていますが、少なくとも障がいのある子どもたちに関しては、この有効性を踏まえた対応が望ましいと考えられます。

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