プレスリリース 2015年

次世代光通信技術を用いた
2テラビット スーパーチャネル伝送実験の成功について

2015年4月24日
ソフトバンクモバイル株式会社

ソフトバンクモバイル株式会社(以下「ソフトバンクモバイル」)は、データ通信量の増大や高速化に対応し、ネットワークサービスやクラウドサービスの提供能力を強化するための技術として、次世代の光通信技術である直交振幅変調方式(16QAM:16 Quadrature Amplitude Modulation、以下A参照)を用いた2テラビット毎秒(Tbps)スーパーチャネル(以下B参照)の伝送実験を、ソフトバンクモバイルが保有する陸上ケーブルおよび海底ケーブルを使用して実施し、成功しました。この技術により、1本の光ケーブルで伝送できるバックボーンネットワークの通信容量が、従来の8.8Tbpsから20Tbps程度に拡張され、より高速かつ安定的なサービスの提供が可能となることが期待できます。なお、2Tbpsスーパーチャネルの安定した伝送を実際に敷設された光ケーブルで確認したのは日本で初めてです。

今回の実験では、ソフトバンクモバイルが保有する商用陸上ケーブルと海底ケーブルを使用して、2つの伝送実験を行いました。陸上の光ケーブルを用いた実験では、神奈川県横浜市と三重県四日市市間に往復761kmのシングルモード光ファイバー(以下C参照)で構成される伝送路を構築し、途中10カ所の中継局において、通常の光増幅器に加えて分布ラマン増幅技術(以下D参照)を適用することで、2Tbpsスーパーチャネルの安定した伝送を確認しました。なお実験には、商用ネットワークの将来の容量拡張性を検討するために、実際に東京-大阪間の商用100ギガビット毎秒(Gbps)伝送サービスで使用中の中継局を利用しました。

海底の光ケーブルを用いた実験は、北海道室蘭市と青森県八戸市間に敷設されている海底ケーブルを用いて行いました。この海底ケーブルは280kmと非常に長いため、海底ケーブル内で生じる損失を補償するために遠隔励起光増幅器(以下E参照)を採用しています。さらに分布ラマン増幅技術も併用することにより、2Tbpsスーパーチャネルが安定して伝送ができることを確認しました。

今回の伝送実験の成功により、国内で最もデータ伝送需要が多い東京-大阪間の伝送路をはじめとして、ソフトバンクモバイルが保有する光ケーブルを用いて、次世代の超高速光伝送技術が適用可能であることが確認できました。

ソフトバンクモバイルは、動画配信などの広帯域サービスや、スマートフォンなどの急速な普及によって爆発的に増大するデータ通信需要に対応すべく、高品質で低コストの先進的な伝送技術を使ったインフラ構築を実現し、お客さまに高速かつ安定的な通信サービスを提供していきます。

今回の伝送実験に用いた中核技術の詳細については、以下をご参照ください。

[注]
  • 当社調べ。(2015年4月24日現在)

伝送実験に用いられた中核技術ついて

  • A.
    直交振幅変調方式(16QAM:16 Quadrature Amplitude Modulation)

    現在、ソフトバンクモバイルの主要光伝送路では、ひとつの波長で100Gbpsの大容量通信を行います。これにDWDM(Dense Wavelength Division Multiplexing)技術※1を用いると最大88波(8.8Tbps)までの大容量データ通信が可能ですが、今回の伝送実験においては、次世代光通信技術として最近注目されている多値変調方式である直交振幅変調方式(16QAM)を採用しました。これを用いることにより、従来の100Gbps伝送に用いられている変調方式(QPSK:Quadrature Phase Shift Keying)※2に比べて2倍、すなわち1波長あたり200Gbpsの伝送容量を確保することが可能になります。

  • B.
    スーパーチャネル技術

    インターネットの世界では400ギガビットイーサネットや、さらにそれを上回る超高速のイーサネット技術が検討されています。このような超高速インターネットを伝送するための光信号は、従来のように1つの波長で実現することが容易でないため、複数の波長を用いて実現することが検討されています。このように、複数の波長をまとめて1つの信号として取り扱うものを「スーパーチャネル」と呼んでいますが、本実験では1波長200Gbpsの光信号を10波長束ねて2Tbpsスーパーチャネルを構成して伝送を行いました。また、従来の100Gbps DWDM伝送に用いられている光信号の波長間隔は50GHzですが、今回のスーパーチャネル伝送ではこの波長間隔を37.5GHzまで狭めることに成功し、これらの技術を用いることで1本の光ファイバーでおよそ100波長の伝送が可能となり、16QAMと組み合わせることにより、およそ20Tbpsの大容量データ通信が可能となりました。

  • C.
    シングルモード光ファイバー(ITU-T G.652準拠※3

    世界的に最も普及しているシングルモード光ファイバーで伝送路を構築することで、長距離伝送時に低損失な伝送特性を実現できます。またシングルモード光ファイバーは、国内で多く敷設されている分散シフト光ファイバー(ITU-T G.653準拠※4)に比べて、ファイバーの有する非線形光学効果※5が低いため、直交振幅変調方式の適用時に良好な特性を実現できます。

  • D.
    分布ラマン増幅技術

    データ伝送用光信号が伝送している光ファイバーに、一定波長離れた非常に高い電力の光信号を同時に伝送することにより、データ伝送用光信号が光ファイバー中で増幅される現象を用いた増幅技術。1波長あたり200Gbpsの光信号を従来の100Gbps信号の伝送に用いていた中継局間隔で伝送するには、分布ラマン増幅技術の併用が不可欠であると言われています。分布ラマン増幅技術を実敷設された光ケーブルで実現するには、光ケーブル上に反射点がないなど、高品質なケーブルであることが求められます。ソフトバンクモバイルの保有する陸上伝送路は、主に鉄道の線路沿いなどの安定した環境に敷設されているため、分布ラマン増幅技術の適用にあたっても安定した運用が可能であることを確認しました。

  • E.
    遠隔励起光増幅器

    およそ200km以上の海底ケーブルでは、海底部分に光信号を増幅するための海底中継器が必要です。海底ケーブル内の導体を用いて電力を供給する必要がある海底中継器を用いると、電力供給のための大掛かりな設備が必要です。そこで、海底中継器の中には光信号の増幅媒体のみを入れておき、電力供給の代わりに、陸側から高電力の光を海底ケーブル内の光ファイバーから増幅媒体に供給して必要な増幅性能を得ることにより、簡便に海底中継器を構成することができます。このような増幅器を遠隔励起光増幅器と呼んでいます。

[注]
  • ※1
    光信号の波長を少しずつ変えて、複数の光信号をまとめて光ファイバーに伝送することにより、1本の光ファイバーで伝送できる情報量を増やすための技術。
  • ※2
    光の4つの異なる位相を用いて信号を伝送する技術。従来用いられていた光の有無(1,0)により変調する技術(強度変調)に比べて2倍の伝送容量を確保できる。
  • ※3
    ITU-T(国際電気通信連合の電気通信標準化部門)によって制定されているシングルモード光ファイバ(SMF)の標準規格。
  • ※4
    ITU-T(国際電気通信連合の電気通信標準化部門)によって制定されている分散シフト光ファイバ(DSF)の標準規格。
  • ※5
    光ファイバーのガラス材質は、ファイバーを通過する光の強度が大きいとその屈折率が増加する特性がある。これを非線形光学効果と呼んでおり、光ファイバーの種類により異なる。一般に非線形光学効果は低い方が光信号の伝送特性が良好となる。

陸上ケーブルを用いた伝送実験の構成図

陸上ケーブルを用いた伝送実験の構成図

海底ケーブルを用いた伝送実験の構成図

海底ケーブルを用いた伝送実験の構成図

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