プレスリリース(旧ソフトバンクテレコム) 2007年

商用ネットワークを利用した光通信量子暗号(Y-00)方式による
中継伝送実験の成功について
~2.5Gbpsによる約200kmの光伝送路上でIPデータおよびファイバチャネルを世界で初めて伝送~

2007年4月6日
ソフトバンクテレコム株式会社
日立情報通信エンジニアリング株式会社
玉川大学

ソフトバンクテレコム株式会社(本社:東京都港区、代表取締役社長:孫 正義、以下ソフトバンクテレコム)、日立情報通信エンジニアリング株式会社(本社:神奈川県横浜市、代表取締役社長:若井 勝郎、以下日立情報通信エンジニアリング)、玉川大学 広田教授(東京都町田市)は、日立情報通信エンジニアリングの開発した2.5Gbpsの光通信量子暗号(Y-00)送受信機とソフトバンクテレコムの所有する商用光ファイバ伝送路および商用光増幅器を接続させ、同方式による総延長約200kmの光多段中継伝送と、IPデータ(ギガビットイーサネット)、およびファイバチャネルのY-00暗号化伝送に世界で初めて成功しましたのでお知らせします。

実験に使用したY-00送受信装置は、次世代のネットワークで期待されている新しいセキュア通信を実現するために玉川大学広田教授の理論・方式に基づいて日立情報通信エンジニアリングが開発しました。

  • ファイバチャネル伝送:企業等のコンピュータがデータセンターに保管してあるストレージデータへのアクセスに利用する高速通信方式

1.今回の実験の特徴

(1)安全性の向上

従来のY-00伝送装置は送信機と受信機が一対で片方向の情報伝送を行うものでしたが、今回、日立情報通信エンジニアリングは送信機と受信機が一体になった伝送速度2.5GbpsのY-00送受信装置を新たに開発し、通常の通信サービスと同様な双方向伝送を可能にしました。さらに光変調多値数を従来の256値から1024値へと増加し、また安全性増強策を付加することによって、安全性能と長距離伝送性能を向上しました。

(2)長距離化

ソフトバンクテレコム本社とデータセンター間の48kmの商用光ファイバ伝送路において、減衰した光信号を光増幅器により増幅して中継することにより、光強度変調方式のY-00送受信機として世界最長の192kmの長距離伝送を実現し、ビットエラー率10のマイナス12乗以下のエラーフリー通信を確認しました。(光増幅器で3中継、48Km×4スパン)

(3)WDMへの適用

2対向のY-00送受信機の光信号を光カプラで合波し、1本の光ファイバに伝送するWDM(Wavelength Division Multiplex:波長多重)伝送を行い(伝送距離 96km 2スパン)、エラーフリー通信を確認しました。

(4)標準通信プロトコルへの適用

上記(1)の192kmの光伝送路上にメディアコンバータを用いて2.5GbpsのSDH(Synchronous Digital Hierarchy)プロトコルの通信パスを構成し、さらに同パス上にギガビットイーサネット(速度1.25Gbps)およびファイバチャネル(速度1Gbps)のデータを同時に載せ、IPパケットおよびファイバチャネルプロトコルのY-00暗号化伝送のパケットロスレス伝送を確認しました。

(5)アプリケーション応用

上記(3)で構成したギガビットイーサネット上に動画ファイルのストリーミング伝送、ファイバチャネル上にはストレージアクセスネットワーク(SAN)のファイル転送を実施し、各アプリケーションが良好に動作することを確認しました。

2.実験の目的

本実験は次世代のネットワーク等で期待されている新しい高セキュア通信技術の確立と、現在広く利用されている商用ネットワークサービスへの適用可能性の検証を目的として行われました。

ソフトバンクテレコムは本実験を2005年12月に発表した次世代ICTプラットフォームサービス構想「IRIS:アイリス」の新サービス開発プロジェクトの一環として行いました。IRIS構想では次世代の様々なプラットフォームサービスの開発を進めており、本実験はその中で超高強度のネットワークセキュリティを実現するプラットフォームソリューションへの適用性を確認する目的で行いました。

日立情報通信エンジニアリングでは、次世代の通信ネットワークの実現に貢献する様々な技術開発を行っており、そのひとつとして2002年より玉川大学広田教授の理論、方式に基づいた高セキュアな光通信量子暗号(Y-00)伝送装置の研究開発を推進してきました。今回の実験は同方式による次世代高セキュアネットワークの実現技術確立と市場適用性の検証を目的として行いました。

3.今後期待される展開

本実験では、長距離ネットワークに適用可能な光増幅器による多段中継伝送と、ブロードバンド環境における様々な商用ネットワークサービスへの適用性が確認できました。

将来的には、本方式をIP-VPNサービス/広域イーサネットサービスといった企業向けブロードバンドIPネットワークサービスや、インターネットアクセスサービスを提供するISP向けバックボーンネットワークなどへの適用が考えられます。また、WDM伝送方式の利用により大容量化が可能であるため、テラビットクラスの伝送路への適用も期待されます。

更には、ソリューションサービスとして、(1)政府や地方自治体の重要拠点、発電所等の最重要インフラ拠点、軍事機密施設などミッションクリティカルな環境における対テロ・対ハッカー対策用のセキュリティネットワークとしての適用 (2)法人企業ユーザーのデータセンターのストレージに保管した機密情報アクセスにおけるセキュリティソリューションへの適用などが想定されます。

現時点ではサービス化については未定ですが、今後、このような高度セキュリティネットワークへの市場ニーズやビジネスモデルの可能性を検討しつつ、研究開発を進めていく予定です。

4.Y-00について

Y-00とは、光通信に用いるレーザー光が不可避に持っている量子雑音を暗号化に利用することで、大容量データを高速に直接暗号化して長距離通信を可能とする新しい量子暗号方式です。

Y-00は通信事業者が既に広く採用している光通信方式(光強度変調方式)との親和性が高く、現在商用ネットワークでも使用されている障害時の切替制御方式(SDH冗長機能等)が応用できるなど、通信事業者の商用バックボーンネットワークへの適応性が非常に高い方式です。またIC化が可能であるため、現在普及している光伝送装置等への組み込みが容易であり、様々な分野への幅広い普及が期待できます。

以上

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