2021年3月期 第2四半期 決算説明会 主な質疑応答

日時 2020年11月4日(水)午後4時00分~午後5時30分
登壇者 ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮内 謙
ソフトバンク株式会社 代表取締役 副社長執行役員 兼 CTO 宮川 潤一
ソフトバンク株式会社 取締役 専務執行役員 兼 CFO 藤原 和彦
  • 先日、総務省が発表したアクションプランに含まれているeSIMの促進や、eKYC(電子本人確認)の導入に関する方針について教えてほしい。

    当社はeSIMやeKYCの導入について前向きに考えており、eKYCは9月から“ワイモバイル”ブランドで始めている。eSIMの導入も前向きに検討するが、セキュリティ上はeKYCと合わせて行う必要がある。当社としては、事業を拡大させるためにもeSIMやeKYCの導入を前向きに進めていこうと考えている。

  • 日本電信電話株式会社(以下「NTT」)による株式会社NTTドコモ(以下「ドコモ」)の完全子会社化についてどう考えているか。

    正直驚いている。約29年前にNTTから分離してエヌ・ティ・ティ・移動通信企画株式会社(現 ドコモ)が設立されているので、このたび完全子会社化をして一体になっていいのかという意見もあると思う。東日本電信電話株式会社(通称 NTT東日本)と西日本電信電話株式会社(通称 NTT西日本)が基幹回線を持っているので、完全子会社化により公正な競争がゆがめられる懸念がないか議論し、意見を公表したい。

  • “ワイモバイル”ブランドが新料金プラン「シンプル20」を出したことで、「メリハリプラン」を提供する“ソフトバンク”ブランドとの差がだいぶ縮まってきたと感じた。今後“ソフトバンク”ブランドのプランをより大容量にしていくなど、二つのブランドを差別化していく考えはあるか。

    現在の料金プランの中で、20GBのプランは提供できていない部分であった。50GBの「メリハリプラン」は人気が高く、調査によると85%以上のユーザーが満足している。満足していないユーザーは20GBのプランに移る可能性もあり、それも想定して計画を策定している。ユーザーのニーズに応え、競争環境の中でユーザー数を増やすことが重要である。

  • 先日、5Gに対応したGoogle Pixel やiPhone 12が発売された。5Gの契約者数の伸びにどれほど影響があると見込んでいるのか。

    10月に6機種を発売し、11月13日にiPhone 12 miniとiPhone 12 Pro Maxが発売される。Google Pixel の販売も順調だが、iPhoneの販売により5G端末の普及に勢いがついている。Android、iPhoneともにさまざまな性能と価格の端末が発売されており、これによって、今後5Gの契約者数は大きく増えると考えている。

  • 新料金プラン「シンプル20」の今期の業績影響について教えてほしい。また、来期から本格的にユーザーの移行が進んだ場合、最大どの程度の利益の押し下げ影響があると見込んでいるのか。

    「メリハリプラン」から「シンプル20」への移行により当然ARPUは減少するが、私たちは契約数を伸ばすことで利益を増やしてきた。より低価格の「シンプル20」の提供を通じ、他社から乗り換えていただく、あるいは“ワイモバイル”ブランドの低容量の利用者がより大容量のプランにアップグレードすることが期待できる。今回の新料金プラン導入により利益が大きく減少するとは見込んでいない。

  • 安倍前首相が退任を表明された8月末から15%程度株価が下落している。10月28日に新料金プランを発表された後も株価回復の兆しが見られていない。市場はさらなる値下げを警戒していると思うが、“ソフトバンク”ブランドを含め、既存プランの値下げや新たな料金プランの検討状況について教えてほしい。

    株価の下落は大変重く受け止めている。今後の通信業界に関する懸念のほか、9月に1.2兆円の株式売出しを行った影響もあったと考えている。当社の事業は多様化が進んでおり、各事業の成長を通じ、評価いただけるように努めていく。5Gの無制限プランなども今後発表できると思う。

  • “ソフトバンク”ブランドの料金プランの値下げについての考えは。

    5Gの無制限プランを利用しやすい価格で提供できるよう検討している。既存プランを値下げするということについては現状考えていない。

  • 携帯電話番号ポータビリティ(以下「MNP」) 手数料を撤廃すると発表されたが、宮内社長は8月の第1四半期決算説明会で、来店か電話で手続きを行う場合にMNP手数料は有料が妥当と述べていた。どのタイミングで判断を変えたのか。また、来店か電話の場合にMNP手数料は1,000円を上限として設定可能であると総務省がガイドラインを出しているが、あえて全て無料化にする理由について教えてほしい。

    社内で議論した結果、方法によって手数料を変えると混乱を招くとの意見があり、思い切って全て無料にしたほうが良いと判断した。

  • NTTによるドコモの完全子会社化によって競争環境が変わると思うが、今後のソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)の事業戦略を変える必要はあるのか。

    NTTの100%子会社になることで、ドコモの事業にプラス面マイナス面の両方があると考える。ただし、公正な競争環境の確保については声をあげていく必要があると考えている。

  • ソフトバンクグループ株式会社(以下「SBG」)は、ソフトバンク株式の追加売出しを行わないと発表していたが、宮内社長にも同様の連絡があったのか。

    SBG社長の孫から、これ以上の売出しはないと聞いている。SBGのプレスリリースでも明言されている。この売出しを通じて少数株主が59.8%になったということは、上場企業としての健全性が高まったと考えている。今後、SBGが日本において投資先企業を成長させるためには、エンジニアも営業人員もいる当社の役割が非常に大きい。よって、SBGは40.2%の筆頭株主であることを維持すると思う。

  • ソフトバンクとSBGは親子関係であり、利益相反の関係が否定できないと思う。ソフトバンクの株主はどのように守られているのか、ガバナンスの考え方について教えてほしい。

    ガバナンス面で申し上げると、現在4人の社外取締役がいて、毎月開催される取締役会議で活発に議論している。利益相反というより、むしろお互いウィンウィンの関係になっている。例えば、SBGの投資先企業とさまざまなジョイントベンチャーを作っているが、決して押し付けられたわけではなく私たちからやらせてと言っている。世界中の有望な企業と簡単に繋がれる今の環境というのは、当社にとって大変プラスになっている。決して、社長の孫が当社をコントロールするということはない。私は36年間も孫と付き合っているので、言いたいことがあれば言っている。

  • 10年間で5G・6Gに2.2兆円を投資するとのことだが、基地局数やKDDI株式会社(以下「KDDI」)との取り組みなどについて詳しく教えてほしい。また、HAPSモバイル株式会社(以下「HAPS」)への投資の規模について教えてほしい。

    以前発表したとおり、今年度末に5G基地局1万局を目標としており、現在ハイピッチで工事を進めている。来年度末は約5万局、そして5年後を目途に約20万局を立ち上げるというのが当社の計画である。LTEの時代に23万局を立ち上げたが、5Gユーザーのトラフィック状況を見ていると、おそらく5GはLTEの時代のトラフィック増加よりも勢いがある。また、1社だけでは5Gの基地局を作ることが困難な地域があるため、KDDIと共同でネットワークを構築していく。基地局数の計画は現段階で述べられない。
    HAPSは、年間数十億円を投資して実験を進めている。3年以内には、プレ商用サービスを開始し、10年かけて本格的な事業化を行う計画である。現在の投資水準をキープし、全体的なコストを抑える考えである。

  • 菅首相の「携帯大手の営業利益率20%は儲けすぎ」という発言に対してどう感じているか。

    民間企業にとって、成長しなおかつ収益を上げ、それを還元することが最も大事である。当社としては、マルチブランド戦略を通じてユーザーからの支持や信頼をいただき、きちんと利益を上げていくのが民間の役割だと思っている。当社が利益率を維持あるいは上昇させていくことは、結果として税金を多く納め、株主に多く還元することになる。一方、過去14年間、ネットワーク構築に約5兆円投資してきた。これからも5Gやそれ以外に相当な投資を行っていくことが、ライフラインである私たち通信事業者の役割である。さまざまなご指摘があるかもしれないが、ユーザーに満足いただきながら増収増益をすることが私に課せられた使命である。