2021年3月期 第3四半期 決算説明会 主な質疑応答

日時 2021年2月4日(木)午後4時~午後5時45分
登壇者 ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮内 謙
ソフトバンク株式会社 代表取締役 副社長執行役員 兼 CTO 宮川 潤一
ソフトバンク株式会社 取締役 専務執行役員 兼 CFO 藤原 和彦
  • 携帯料金の値下げによる2021年度の業績インパクトはどれほどか。またそのインパクトを非通信などの分野でどの程度補っていけるか。

    保守的に見積もって、コンシューマ事業のモバイル通信料の営業利益は来期少し落ちるだろう。一方で、ここまで値段が下がってくると顧客数をかなり取っていけるのではないかと思っている。もちろん実際に新プランを開始してみなければわからない部分があるため、当社としては最大の減益幅を見越したうえで、コストダウンに取り組むとともに法人事業やヤフー事業などのアップサイドを追及していく。

  • 4月に社長就任予定の宮川副社長に、ソフトバンク株式会社(以下「ソフトバンク」)が取り組むべき課題を3つ挙げてほしい。

    1つ目は業績について。当社は増益し続けることにこだわって企業を経営してきた。その志を引き継いでいきたい。たとえ料金値下げでコンシューマ事業が少し痛手を被ったとしても、法人事業やその他の事業で稼ぐことで増益を達成していきたい。
    2つ目は、5Gによる大きな転換期。今まではヒトとヒトとの通信だったものが、ヒトとインターネットやサービスが繋がりだし、今度はモノとモノが繋がるようになる。あらゆる産業が再定義され大きく変わる時期になる。このような状況の中、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉以上に、いろいろな産業改革の中に当社自身が入っていかなければいけない。このチャレンジが、来年以降の大きなテーマとなる。そのためには当社は、今までの通信会社とは違った構造の会社になっていく必要がある。
    3つ目は、AI。現在、当社グループ全体を挙げてAIに注力し、さまざまな取り組みを行っている。今は人材育成にようやく目処がついてきたところで、LINE株式会社(以下「LINE」)が合流することでたくさんの技術者が仲間になる。テクノロジー部隊のAIの知見をもっと深めていき、当社がAI業界のリーダーになれるようなポジショニングを作っていくべきだと思っている。来年以降の戦略としては「総合デジタルプラットフォーマー」になること、その骨子としてAIを中心にチャレンジすることが課題。

  • なぜこのタイミングで社長交代なのか。1年前に社長交代の議論を始めようと思ったきっかけは何か。ソフトバンクが事業のターニングポイントに達したからなのか、それとも宮内社長自身で区切りをつけたのか。

    企業とは永遠のバトンタッチリレー。永遠に発展していくためにはバトンタッチを上手く進めていくのが重要だと、私は常々思っている。また、堀場社外取締役を委員長とする指名委員会から、次の世代をきちんと作っていくべきとの提言もあった。私は2015年の5社合併から6年間、社長としてソフトバンクを見てきた。2018年の上場時には「Beyond Carrier」戦略を実現するとみなさまにお約束したが、その後川邊社長の率いるZホールディングス株式会社(以下「ZHD」)が加わり、さらに3月からはLINEも合流する。ようやく「Beyond Carrier」の姿が見えてきた。当社はこれから本格的に、単なるキャリアからプラットフォーマー、インターネットテクノロジーカンパニーになっていく。社長交代のタイミングは、今を逃したらないと思っている。私と4名の社外取締役で構成される指名委員会で議論を重ね、孫会長の同意も得て決定した。とてもよいタイミングだと思うし、晴れやかな気持ちだ。今後、私はリタイアするわけではなく、新規事業に集中したいというのが今の心境だ。

  • 2015年以降は宮内社長がCEOとして全体を取り仕切ってきており、孫会長は経営にタッチしてこなかったと思うが、ソフトバンクにとって孫会長はどのような役割を果たしてきたのか。また孫会長は取締役会長から創業者取締役という立場となるが、これからどのような存在になるのか。

    孫会長は現在、当社の日常のオペレーションには関与しておらず、月に一度の取締役会にのみ出席している。取締役会の席では激論を交わすこともあるが、ズバッと鋭い指摘をもらえることが、当社にとって大きなプラスとなっている。さらに今後ソフトバンク・ビジョン・ファンドで成功したユニコーン企業と連携を進めていくにあたっても、孫会長からさまざまなアドバイスをもらえると期待している。孫会長の素晴らしい知見や取締役会でのユーザー視点からの発言は非常に経営に役立っており、その意味もあって、単なる取締役ではなく創業者取締役という肩書きにさせてもらった。

  • 携帯料金の値下げによる業績インパクトをあらゆる成長領域でカバーしていくとのことだが、特に来期に成長を見込める領域は何か。

    まず法人事業の伸びが見込める。当第3四半期は前年同期比27%増の営業利益を上げている。今後は5Gも本格化するため、法人事業で利益の積み上げが期待できる。ZHDも増益を見込む。流通事業はこの間まで50億円の営業利益だったが、現在は200億円を超えてきている。また持分法適用会社であるPayPay株式会社(以下「PayPay」)の赤字も来期は半分以下になる見込み。サイバーリーズン・ジャパン株式会社やSBペイメントサービス株式会社も順調。要するにデジタル化の需要が非常に大きい。これらを積み上げていき、コストダウンと合わせて、少なくとも減益にならないように努力していかなければならない。当社の事業全体はデジタル化の流れに乗っていっている。たとえ部門によって増減があっても全体で吸収していくのが経営だと思っている。事業の多様化を進めてきた理由もここにある。

  • 楽天モバイル株式会社(以下「楽天モバイル」)に転職した元社員について、どの部分がソフトバンクにとって重要な情報だったのか。また、今後の対処方針について教えてほしい。

    当社の営業秘密が不正な手段により持ち出されたことは、非常に重大な事案だと受け止めている。当社の営業秘密が楽天モバイルの事業に利用されることがないよう民事訴訟を提起することになっている。4Gおよび5Gネットワークの基地局のバックホールに関する情報で、どこに基地局を建てるかという重要な情報。当社が長年取り組んで得てきたノウハウであり、許されないことだと思っている。捜査当局が調べているので実際にどのような状況なのかわからないが、当社としてはしっかりと対応していきたい。

  • PayPayについて、証券会社から将来的な上場についての提案があったのか。上場した場合、企業価値は1,000億円を超える規模になるのか。

    PayPayの上場については証券会社から提案を受けたということであり、当社が意思決定したわけではない。私自身は、PayPayにはヤフーと同じくらいの価値があると思っている。

  • コストコントロールをするのであれば、例えば新本社ビルのフロアを縮小するといったことも考えられるのではないか。

    当社は今後ニューノーマルになっても出社比率は5割程度に留まると想定し、分散させていたオフィスを新本社ビルに集結させることで、年間コストが相当下がるように手を打った。グループ関連企業も含めて集結するのでトータルのフロア面積は半分になり、コストダウンとなる。

  • 中期的な戦略として、コア事業の上に新しい事業をどうやって付けていくのかについて知りたい。「PayPay」の今後の収益化について、手数料を有料化すれば今後の売上や利益に繋がっていくと思う。その後、生活にまつわるサービスを加えていく構想だと思うが、金融などを並べていって本当に売上と利益が立つのか、どのように見込んでいるのか知りたい。

    「PayPay」は今まで2年かけて3,500万を超えるまでユーザー数を一気に伸ばしてきた。そのためには、使えるお店が多くなければならないが、現在280万くらいまで増やしてきた。現在、一般の小さなお店は手数料を0円としているが、仮に将来手数料をいただくようになった場合、低い料率で設定したとしても、これだけの数があるので、PayPayの業績はブレークイーブンになる。さらにフィンテックを使った金融サービスを追加していくことにより、それなりの収益を上げていくことができると思っている。今はユーザー数を増やし、店側と「PayPay」ユーザー双方に良いと思ってもらえる体験を増やすことに焦点を当てていきたい。

  • 統合後のLINEはNAVER Corporation(以下「NAVER」)とソフトバンクが株主として運営していくことになる。今後はグローバルな会社であるNAVERと一緒に「Beyond Japan」という形でグローバル戦略をやっていくことになると思うが、グローバル展開についてお聞きしたい。

    NAVERとは月1回くらいの頻度で会議を行っている。LINEは台湾、タイ、インドネシアなどに進出しており、タイと台湾では圧倒的なシェアを占めている。NAVERの持っている技術は素晴らしい。また、エンジニアを多数抱えており、当社のエンジニアとの交流も始めている。大変パワフルな会社であり、NAVERと一緒にBeyond Japanをやることにより、昔より具体性が出てきたと感じている。NAVER創業者のイ・ヘジンさんと意気投合している。

  • 楽天モバイルが先月発表した新料金プランについて、来年度以降、携帯通信市場やソフトバンクの競争環境にどういう影響を与えそうか教えてほしい。また、楽天モバイルのプランは小中容量の料金で競争力があると世間では受け止められているが、ソフトバンクはどのような戦略で今後対応していくのか。

    当社は5年前、総務省がMVNOに舵を切られた時に、“ワイモバイル”を作ってユーザー数を減らすことなく、どんどん増やすことができた。なおかつ今回は4Gと5Gに対応する“ワイモバイル”の新しい料金プランを出した。これで相当対応できるとみている。“ワイモバイル”と“ソフトバンク”はネットだけではなく、販売チャネルという大きなインフラを持っている。要は価格だけの勝負ではない。それからネットワーク品質。日本ではネットワークのクオリティーが問われる。さらに5Gのネットワークがやってくる。5Gにどこまで投資してネットワークを拡げられるかということの競争が起きている。その意味で当社には相当の利があるとみている。端末の品揃え、お客さまサポート、いろいろなコンテンツなどの総合力だと思っている。その意味で当社は競合他社に十分対抗していけると思っている。

  • 宮川副社長から「挑戦し続ける企業でありたい」というメッセージがあったが、挑戦というキーワードを出した背景を教えてほしい。

    挑戦という言葉を出したのは、どんなに企業が大きくなっても、いつまでもベンチャー企業であり続けたいという思いからだ。ソフトバンクは創業以来、常に挑戦し続けてようやくここまで来た。孫会長も「挑戦し続けることが進化に繋がる」と常々申しており、我々はそれを実行してきた。私もその精神を受け継いで、次の代まで伝えていきたいと思っている。

  • 今後はAIに注力していくとのことだが、競合他社もAIや先端技術に取り組んでいる中で、この領域におけるソフトバンクの強みは何か。

    我々はAIを単に便利にするだけの道具とは考えていない。今後、単にコンテンツをユーザーに提供する従来のビジネスモデルから、企業と企業が協業してお客さまにサービスを提供するB2B2Cのモデルに社会全体が変わっていく。そこで重要になるのがユーザーとのタッチポイント。ソフトバンク、ヤフー、LINE、PayPayのいずれもが多数のユーザーを抱えており、全体で一つの大きなプラットフォームになっている。我々が目指しているのは、このプラットフォームを開放し、その上で協業先企業にビジネスを行っていただき、それによって当社のユーザーに喜んでいただくというB2B2Cのビジネス構造を確立することであり、その核となるのがAIだと考えている。一つ一つのプラットフォームをAPIで結んでより強固なプラットフォーム連携をしていく時に全体最適化するのがAIの役目。当社の目指すAIは世の中全体を最適化するためのAIであると捉えており、これをソフトバンクの核に仕上げていきたい。そのために、社内では毎日AIについて議論しており、他社と比べても見劣りするポジションではないと思っている。また東京大学と共同で設立した「Beyond AI 研究推進機構」では、今のAIをいかに超えていくかという議論を日々行っている。