2021年3月期 決算説明会 主な質疑応答

日時 2021年5月11日(火)午後4時~午後5時30分
登壇者 ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一
ソフトバンク株式会社 代表取締役 副社長執行役員 兼 COO 榛葉 淳
ソフトバンク株式会社 代表取締役 副社長執行役員 兼 COO 今井 康之
ソフトバンク株式会社 取締役 専務執行役員 兼 CFO 藤原 和彦
  • 新規事業のスピード感を強調されているが、特にどのような領域・分野で新たに事業を立ち上げていきたいのか。

    まずは、スマホ決済サービス「PayPay」の周辺領域。銀行や証券など、今持っているビジネスアセットを加速させていきたい。また、ある程度日本で確立した当社のビジネスモデルを、今度はアジアに展開したい。例えば、この度当社グループに加わったLINE株式会社(以下「LINE」)が従来展開しているアジアの国々で、LINEの知見を生かしながら、現地の通信事業者や販売力のある現地企業などとも協力して、一緒にビジネスを展開できたらと考えている。中長期的には、自動運転領域にも取り組んでいきたい。具体的な内容が固まってきたら、ぜひご紹介したい。

  • カーボンニュートラルについて、情報通信業界は基地局やデータセンターで大量に電力を消費していると思うが、この業界の中でソフトバンクが「2030年温室効果ガス排出量実質ゼロ」という目標を打ち出したことの意義を、改めて教えてほしい。

    今回のカーボンニュートラル宣言にあたり、社内で議論を重ねた結果、2030年と宣言してそれをしっかりやり遂げようと決めた。もちろん、できるなら前倒しで実現したい。テクノロジーの進化で電力は抑えられると考えているので、基地局・データセンターにおける電力消費の効率化や、基地局とデータセンターをつなぐ中継部分のハードウエアの省電力化などに、テクノロジーを活用して取り組んでいきたい。

  • 2021年度の見通しにおける、営業利益の減益要因1,000億円の内訳は。

    ざっくりいうと、通信料値下げによる影響が年間700億円程度の減益要因で、残りの300億円がLINE統合に伴う無形資産の償却など。これらの減益インパクトを他の部分の増益で取り返して、会社全体で何とか打消しできるのではと考えている。

  • 先月、宮川社長自身が会社から200億円を借り入れて自社の株式を取得すると発表があった。あまりない取り組みだと思うが、狙いは。

    株式の買付けは4月2日に開始して4月23日に終えた。1,400万株近く取得し、平均取得単価は約1,435円だった。短期的な視点で見れば、株価が下がれば自分の懐も痛むということになるが、私は引き受けるからには10年続けるという気概で、社長の任を受けた。10年という物差しで見れば、多少のデコボコはあると思うが、私は十分にこの会社は伸ばせると思っている。200億円のリスクは、個人的にはあまり感じていない。

  • 通信料値下げによる2021年度の減益影響700億円のうち、3月から提供を開始した新しいオンライン専用ブランド「LINEMO(ラインモ)」の影響は。提供開始から1カ月以上がたつが、新プランの初動は。

    “ソフトバンク”と“ワイモバイル”のユーザーが“LINEMO”に少し移動しているのは事実。これは単価が下がる方向なので、収益悪化の要因の一つとなる。ただし、“LINEMO”への移動は最初からある程度見込んでおり、実際の数字も当初の想定の範囲内にとどまっている。

  • PayPay株式会社(以下「PayPay」)の収益化はいつ頃を目指しているのか。

    PayPayについては、加盟店に店舗手数料をチャージするタイミングがどこかで来る。そのタイミングはまだ公表する時期でないが、手数料チャージは必ず行っていくつもり。将来的にPayPayには事業として自立していってほしいと思っている。そのためには収益化が必須。これらはそう遠くない時期に起こり得る。

  • 今回、開示の充実に至った理由は。現在の適正な株価・時価総額、また近い将来に目標とする株価・時価総額があれば教えてほしい。

    個人的に、現在の当社の評価が少し足りないように感じたので、個別の開示に踏み切った。当社はもともと通信会社として成長してきたので、いまだに多くの方に通信会社だと捉えられているが、事業構造は通信会社の構造とは違うものがしっかり育ってきている。そこで、通信以外の事業についても、成長しているものは成長している、苦戦しているものは苦戦していると、はっきり開示しようと決めた。目標株価については、個人的に10年で株価を数倍にしたい。今回取得した200億円の自社株式は、社長の職を終えるまで売却するつもりはない。10年、人生をかけて社長をやる。社長になって1カ月強だが非常に大変。これが10年続くとなると悩ましいと思っているが、本気で10年間やって、株価は数%、数十%しか伸びなかったというのでは悲しい。少し大げさになったが、できれば現在の株価の数倍を狙っていきたい。

  • 新規事業の注力領域として金融ビジネスへの言及があったが、金融ビジネスは収益化がなかなか難しいと思う。PayPay銀行株式会社やPayPay証券株式会社などを、今後どのように成長させていくのか。

    例えば中国のアント・グループを見ると、PayPayと同様に決済サービスを基礎として、その上に収益化を行う金融ビジネスを立ち上げている。さらにそれらの金融ビジネスは、どれも短期間で立ち上げて、短期間で収益を上げることに成功している。PayPayについても、決済の上に収益化できるビジネスを乗せていくこのビジネスモデルが、数年のうちに全て形になると思っている。

  • 売上高に占めるモバイル通信料収入以外の割合が上昇しているとのことだが、2020年度の実績および2021年度の見通しにおける割合を教えてほしい。

    2020年度の売上高に占めるモバイル通信料収入の割合は、20%代後半。2021年度については、通信料の値下げを行ったことにより通信料収入が伸び悩む一方、法人事業やヤフー事業などの通信料以外の部分は伸びていくので、売上高に占めるモバイル通信料以外の割合は上昇していく。

  • 今回の通信料値下げが2020年度の業績に与えた影響は。

    新料金プランは2月、3月に提供開始したため、2020年度の実績にはほとんど影響を与えていない。

  • NTT(日本電信電話株式会社)による総務省への接待問題に対する受け止めは。

    現在は第三者委員会で検証していただいているところであり、その見解を聞いた上で議論していくことになる。

  • 楽天モバイル株式会社(以下「楽天モバイル」)に対し1,000億円規模の損害賠償請求権を主張しているが、1,000億円の計算根拠は。

    今回の不正競争により楽天モバイルが得たと当社が推定する利益の最大値である。つまり、基地局建設の前倒しが可能になったことによる効果。具体的には、新規契約者の獲得、解約の抑制、KDDI株式会社へのローミングコストの削減などを勘案して計算した。

  • 本日マレーシアのAxiata Digital Advertising(以下「ADA」)への出資を発表したが、今後の海外事業の方向性・考え方は。

    まず考え方として、投資会社であるソフトバンクグループ株式会社が行う海外投資と、当社の海外投資は全く異なる。事業会社である当社は、海外企業と手を組んで自社の事業を拡大するために投資を行う。今回出資したADAには、当社から人を派遣して一緒に事業を成長させていく。このような投資については年400~500億円の予算枠を設けており、当社の事業成長に寄与する案件に対して予算の範囲内で投資を行っている。

  • ADAとは今回データマーケティングの領域での提携だったが、同社の親会社であるAxiata Group Berhad(アシアタ・グループ)は決済事業も行っている。今後、PayPayとの連携の可能性はあるか。

    PayPayの海外展開については当然考えている。海外展開を自社だけで行うのか、現地でパートナーとなる企業を探すのかについては今後議論していく。

  • 通信料値下げによる2021年度の減益影響が700億円ということだが、1契約当たりの年間売上が約5万円として、2021年度の契約者数の純増が140万程度であれば、単純計算で700億円の増収は見込めるはず。合算すると業績インパクトはあまり大きくないと考えてよいか。

    料金が下がる分、契約数の増加でカバーしていく考え。数を積み上げてカバーできる範囲だと考えている。

  • PayPayが黒字化するのに必要な決済取扱高(GMV)の規模は。現在PayPayの赤字は年間800~900億円程度と思われるが、今後課金を開始する店舗手数料の料率を仮に1.0~1.5%とすると、決済取扱高が5~8兆円程度になれば赤字を相殺して黒字化が可能なのではないか。

    PayPayの決済取扱高は、2021年度ももちろん成長する。2020年度の3.2兆円の倍までいくかは分からないが、おっしゃるような規模感の近くまでいくと思う。店舗への課金のタイミング・料率については、今後の開示をお待ちいただきたい。

  • PayPayの決済取扱高が年間3.2兆円とのことだが、日本の個人消費の年間300兆円からすると1%とまだ小さい。今後この比率を高めていくにあたり、PayPayへの追加の投資がどの程度必要になると考えるか。

    PayPayの投資は、2019年度から2020年度にかけて少し減少している。ユーザー数が大きく拡大したので、投資効率も大幅に良化している。規模の拡大を続ける中で、最適な投資設計を常に検討していきたい。

  • PayPayは、小規模店舗を中心として手数料無料キャンペーンを理由に加入した店舗が多いと思うが、無料キャンペーン終了後の加盟店のPayPay離れへの対策は。また5月1日から施行された改正資金決済法がPayPayのビジネスに与える影響は。

    PayPayの具体的な戦略については回答を控えるが、立ち上げから数年で3,900万のユーザーに支持いただき、加盟店が全国に300万カ所以上ある。これらのインフラをさらに拡大することが、加盟店・加盟企業がPayPayを導入し続けるメリットにつながる。この強みをしっかりと訴求していくことが重要。