2022年3月期
決算説明会 主な質疑応答

日時 2022年5月11日(水)午後4時~午後5時30分
登壇者 ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一
ソフトバンク株式会社 代表取締役 副社長執行役員 兼 COO 榛葉 淳
ソフトバンク株式会社 代表取締役 副社長執行役員 兼 COO 今井 康之
ソフトバンク株式会社 取締役 専務執行役員 兼 CFO 藤原 和彦
  • 2022年度中にPayPay(株)を連結子会社化するとのことだが、今後の持分比率の考え方は。

    PayPay(株)の現在の議決権保有割合は、ソフトバンクグループ(株)が50%、当社が25%、当社の子会社であるZホールディングス(株)が25%。加えて、当社とZホールディングス(株)は、PayPay(株)の優先株式を保有しており、2022年4月から普通株式への転換が可能となった。これらが全て転換された場合、両社の議決権保有割合はそれぞれ33%へと増加する。Zホールディングス(株)が当社の子会社であることを踏まえると、当社のPayPay(株)への支配権は66%ということになり、当社はPayPay(株)を連結子会社化することが可能になるという考え方だ。現在、PayPay(株)の株主間で戦略面やガバナンス面などの協議を行っており、合意すれば連結子会社になる予定。

  • 2022年度は通信料値下げによる減益影響を900億円見込んでいるとのことだが、具体的にユーザーのどのような動きが要因となっているのか。

    当社は“ソフトバンク”、“ワイモバイル”、“LINEMO”の3ブランドを提供しているが、現在最も支持を得ているのは割安な“ワイモバイル”。モバイル全体のユーザー数は好調に増加していくとみられるものの、これまで“ソフトバンク”ユーザーの割合が多かったところから、段々と“ワイモバイル”ユーザーの割合が増えてきていることが、結果として全体の減益に繋がっている。

  • 通信料値下げによる減益影響がかなり大きい印象を受けたが、背景を教えてほしい。

    簡単に言えば、全体のユーザー数は増えている一方で、ユーザー一人当たりの単価が下がっているため、結果として減益になっている。単価の低下は、“ソフトバンク”から割安な“ワイモバイル”に移るユーザーが多いこと、他社から転入してくるユーザーが“ワイモバイル”を選ぶことが多いことが主な要因。また、キャリア変更やブランド変更まではしないというユーザーにおいても、同ブランド内の割安な新料金プランへの移行が徐々に進んでいる。

  • 先日、NTT(日本電信電話(株))とスカパーJSAT(株)が、2025年にも日本でHAPSサービスの提供を開始する予定だと発表したが、ソフトバンク(株)の日本における取り組み状況は。

    もちろん、当社も日本でのHAPSサービス立ち上げに向けて取り組みを進めている。まずはHAPSの国際標準化を目指し、複数の業界団体を通じて政府機関にアプローチを行っているが、国際標準化の完了は2027年頃となる見込み。一方でプレサービスについては、2026年には開始したいという思いで準備をしている。ただ、日本の上空には非常に激しいジェット気流が流れており、事業者からすると難易度の高いエリア。商用化に向けては、日本よりも気流の安定したエリアから開始するのがよいのではないかと考えており、中でもオーストラリアはサービスのニーズが高いので、そこでのスタートを計画しているところだ。

  • モバイル契約の純増数が2021年度後半に大きく持ち直した要因は。

    2021年度後半から、ユーザー獲得のためのコストを多めに投じる意思決定を行ったことが一つの要因。これに関しては社内でさまざまな検討を行ったが、モバイルユーザーを増やしていくことが、結果としてヤフーやLINEも含めたグループ全体の成長に繋がると考え、最終的に決断した。また、2021年度下期からコロナ禍に伴う行動制限などが少しずつ緩和され、当社の強みである対面の営業力を生かしてユーザー獲得に繋げられたというのが2点目の要因だ。

  • 5Gについて、人口カバー率は最終的にどの程度を目指していくのか。

    現在5G人口カバー率は、90%を少し超えたところ。最終的には、現在の4Gと同等の水準まで人口カバー率を引き上げたいと思っている。超高速・大容量、超低遅延、多数同時接続といった5Gの特長を生かしたデバイスが普及するタイミングを注意深く見極めながら、効率的な投資を行っていきたい。

  • 端末販売に関して、2021年度に高価格端末の構成比が上昇した要因は。

    「iPhone」のハイエンドモデルの販売が好調だったほか、「Google Pixel」のようなハイエンドのAndroid端末でもユーザーのニーズに応えることができたことが要因だと考えている。

  • 「PayPay」のユーザーへの還元についての考え方は。

    今後もユーザーへの還元は積極的に行っていきたいと思っているが、最終的にはPayPay(株)が判断することになる。

  • 非通信ビジネスが今後の成長の柱となると思うが、全体に占める非通信ビジネスの割合はどの程度を目指しているのか。

    将来のありたい姿については、来年5月に発表する中期計画の中できちんと説明したいと思っている。現在の私の考えでは、将来的には通信ビジネスが3分の1、残りが非通信ビジネスという構成を目指したい。通信と非通信の両方のビジネスを成長させながら、非通信ビジネスの割合を大きくしていくことが最も望ましいと思っている。

  • PayPay(株)の黒字化の時期は。

    PayPay(株)は昨年、中小加盟店向け決済手数料の有料化を実施し、これにより固定費を粗利(売上総利益)でカバーできるようになった。すでに現在は、販促費をコントロールすれば黒字化も可能な状態だ。一方で、もう少し攻めの姿勢で成長投資を行うか、ここで投資を止めて収穫期に入るかで言えば、個人的にはまだ前者でも良いように感じる。今後PayPay(株)の親会社になる立場の当社としては、小さな収穫で満足するのではなく、大きな収穫期を迎えてほしいと思っている。

  • 「PayPay」の金融サービスとLINE(株)の金融サービスとの棲み分けをどのように考えているか。

    当社はグループ内に複数の金融サービスを有しており、再編成に向けて社内で議論を進めているところだ。「PayPay」を基軸にして金融サービスを大きく成長させていきたい。

  • NTTのグループ再編を受けて、今後の競争環境をどう見ているか。

    NTTグループの一体化は正直脅威に感じているが、我々が努力して一つずつ積み上げてきたものもあるので、頑張って戦い抜いていきたい。総務省が禁止行為などの監視を強化すると聞いているので、競争政策の中でその適正性をきちんと見ていただければ良いと考えている。

  • PayPay(株)を連結子会社化するということは、もう同社の上場は考えていないのか。

    現時点で決まっていることはない。当社は以前から、株式をサム・オブ・ザ・パーツ方式で評価してもらいたいと考えている。PayPay(株)は当社の重要なアセットの一つであるので、将来的にはPayPay(株)の価値を顕在化したいという思いはある。

  • 2022年度はPayPay(株)の連結影響で営業利益が1兆円に達するということだが、具体的にどの程度のプラス影響を見込んでいるのか。

    PayPay(株)の連結影響の内訳として、連結子会社化の際の再評価益と連結子会社化に伴い認識する無形資産の償却費、子会社化後の同社の損益があり、これらを合算すると2022年度でプラス影響を見込んでいる。PayPay(株)の損益は現時点ではまだ赤字だが、反対にプラス影響を見込むのが再評価益だ。PayPay(株)はこれまで先行投資による赤字を計上してきたため、現在当社から見た同社の連結簿価は限りなく低い状態にある。連結子会社化のタイミングで同社に一定の価値が付けば、再評価益は十分期待できると思っている。PayPay(株)関連の具体的な数字については然るべきタイミングでの開示となるが、営業利益1兆円は十分に見込めるだろうと考えている。

  • 2022年度の営業利益見通しについて、コンシューマ事業と法人事業を合わせて前年比約1,400億円の減益となっているが、これは今後何年で取り戻せるのか。

    2023年度の1年で取り戻せるとは思っていないが、数年の間には十分に取り戻せると考えている。全社営業利益からPayPay(株)連結影響を除いたベースでは、2023年度以降に増益基調に回帰すると見込んでいる。

  • モバイルサービス収入は2024年度以降も減収を見込んでいるのか。

    ある程度は見込んでいるが、今後数年という単位では取り返していけるチャンスは十分にあると考えている。

  • 2023年度以降もモバイルサービス収入の減少が続いていく中で、フリー・キャッシュ・フローは6,000億円を維持していくとのことだが、これを支えるものは何なのか。

    2023年度以降は業績が底打ち反転していく計画であるため、フリー・キャッシュ・フローは6,000億円水準を維持していくことが可能だと考えている。モバイルの契約数の増加が続いていけば、単価が下落する中でもモバイルサービス収入を増加に転じさせるチャンスが今後2~3年の中ではあるかもしれないと思っている。

  • フリー・キャッシュ・フロー6,000億円を今後も維持できる場合、現在の配当水準や総還元性向の方針も維持していくという認識で良いのか。

    2023年度以降の還元方針については、現時点では未決定。今後、社内の然るべき議論を経て決定していくことになるが、個人的な考えとしては、フリー・キャッシュ・フローが6,000億円あるうちは現在の年間4,000億円強の株主還元を維持していきたい。フリー・キャッシュ・フローがさらに上振れるようであれば、もちろん株主還元を強化しても構わないと私は考えている。株主の皆様の期待は良く理解しているつもりなので、期待に応える経営を目指していきたい。