2024年3月期
決算説明会 主な質疑応答

日時 2024年5月9日(木)
午後4時~5時35分
登壇者 ソフトバンク株式会社 取締役会長 今井 康之
ソフトバンク株式会社 代表取締役 社長執行役員 兼 CEO 宮川 潤一
ソフトバンク株式会社 代表取締役 副社長執行役員 兼 COO 榛葉 淳
ソフトバンク株式会社 取締役 専務執行役員 兼 CFO 藤原 和彦
  • LINEヤフー(株)の親会社であるAホールディングス(株)の株式を、ソフトバンク(株)がNAVER Corporation(以下、NAVER)から取得し、持分を増やす方向で協議していると思う。仮に持分を引き上げた場合、ソフトバンク(株)としてLINEヤフー(株)の経営をどのように改革できると考えているか。

    当社は、Aホールディングス(株)を通じて、すでにLINEヤフー(株)を子会社としているため、Aホールディングス(株)の持分を少し引き上げた程度であれば、大きく変わることはないと考えている。現在は、LINEヤフー(株)からの強い要請を受け、セキュリティガバナンスや事業戦略の観点でNAVERと資本関係の見直しを協議している状況である。

  • ソフトバンク(株)は、Aホールディングス(株)の持分比率をどの程度持ちたいという意向なのか。

    現在のAホールディングス(株)の持分比率は、当社とNAVERで50%ずつ保有している状況である。当社の事業展開に影響のない範囲で、NAVERと資本関係の見直しについて協議したいと考えている。詳細はお話しできないが、当社とNAVERとの間には協定があるため、LINEヤフー(株)の増資を当社が引き受けることはないと理解いただきたい。また、当社のエクイティを使ってのやり取りもあり得ない。この2点は完全否定させていただく。

  • LINEヤフー(株)は、「LINE」の利用者情報などの流出に係る再発防止策を2024年7月1日に提出するよう総務省から求められている。LINEヤフー(株)の資本関係の見直しについてどのようなスケジュールを考えているのか。

    その日を意識して取り組むことになるが、非常に難易度が高いと思われる。相手のあることなので、時期については明確に申し上げられない。引き続き、NAVERと協議を進めていく予定である。

  • LINEヤフー(株)の資本関係について、韓国内からの反発もあるが、両社が納得するための重要な点は何か。

    ソフトバンク(株)とNAVERは共に上場会社であり、多くの利害関係者がいると理解している。資本関係の見直しによって、片方が我慢するような公平性を欠いた結論になることは望んでいない。

  • LINEヤフー(株)は、NAVERへの業務委託を終了していく方針を発表した。資本関係の見直しまで踏み込む必要はどの程度あるのか。

    2024年3月5日の総務省からの行政指導において、LINEヤフー(株)はNAVERとの共通システムの分離と、同社への業務委託の見直しを求められた。強い資本的影響力があるNAVERが業務委託先であり、管理監督が適正に行われているとは言い難いという指摘だったと理解している。NAVERへの業務委託を終了するというLINEヤフー(株)の意思をまずは尊重したい。資本関係の見直しについては、LINEヤフー(株)から強い要請を受けているので、親会社として真剣に向き合う必要があると考えている。

  • LINEヤフー(株)の資本関係の見直しについて、NAVER側は消極的なのか。

    LINEヤフー(株)の中長期的な成長にとって、一番良い選択をしていこうという認識で互いに一致していると考えており、消極的であるとは捉えていない。

  • 今後、LINEヤフー(株)のセキュリティガバナンスにはどのように関わりたいと考えているのか。

    協力できることは、全面的に協力したいと考えている。当社のCISO(Chief Information Security Officer:最高情報セキュリティ責任者)も、LINEヤフー(株)の「グループCISO Board」へ参画した。

  • 「LINE」と「PayPay」のアカウント連携の時期が見直しとなったが、グループシナジーの創出に影響はあるか。

    アカウント連携の時期が延期となることは残念だが、LINEヤフー(株)のセキュリティ対策をまずは強化してもらいたい。「PayPay」と当社のモバイル事業の連携は順調に進んでいる。

  • 日本電信電話(株)(以下、NTT)は「ユニバーサルサービスをモバイル主体にするべきだ」と主張しているが、どのように受け止めているか。

    今後、人類がデータと関わる上で、ユニバーサルサービスにすべきものは光ファイバーしかあり得ないと考えている。引き続き議論を深めていきたい。

  • 改正NTT法が国会で可決されたが、どのように受け止めているか。

    研究成果の開示義務の撤廃や、社名変更などに係る規制の緩和については、大きな異論はない。今後の見直しについて、慎重な検討を求める附帯決議がなされたことは、国益・国民生活を保護する観点から非常に意義が大きいものであると考えている。この意義について今後も主張していきたい。

  • スマートフォン契約数が増加している要因は。

    過去数年間で、「Yahoo! JAPAN」のeコマースとの連携など、グループシナジーを強化し、ユーザーからの根強い支持をいただいている。また、端末価格の上昇に対応し「新トクするサポート」を提供するなど、ユーザーのニーズに応えるサービスを提供していることも要因の1つ。加えて、ソフトバンク/ワイモバイルショップや量販店との関係性を重視してきたことも奏功している。さらに、新型コロナによるさまざまな制約がなくなったことで営業活動が活発化したことや、ネットワーク品質に対する評価が向上したことなど、総合的な取り組みがスマートフォン契約数の増加に寄与していると考えている。

  • コンシューマ事業が増益となり、通信料値下げという長いトンネルを抜けたと思うが、どのように受け止めているか。

    「ようやく抜けた」という思いだ。当初の予定よりも早く改善させることができ、大変嬉しく思っている。通信料値下げの影響をカバーするために、エンタープライズ事業をいかに伸ばすか、コストをどう削減するかなど、さまざまなことに知恵を絞ってきた。トンネルを抜けてみれば、苦労した甲斐があったと思っている。引き続き、ライフスタイルに即したサービスの提供によるお客さまの満足度の向上や、AIの活用によるコスト削減によって、より高い目標に向けて取り組んでいきたい。

  • KDDI(株)とソフトバンク(株)で協業している「5G JAPAN」の取り組み拡大は、NTT法の議論とつながりはあるのか。また、他に参画企業を増やすこともありえるか。

    「5G JAPAN」は5Gへの大規模投資を効率化するために始めた取り組みであり、NTT法の議論と直接は関連していない。引き続き、KDDI(株)とは一緒に取り組める範囲で協力し、競争すべき範囲では競争していく予定である。他の企業が参画したいということであれば、議論を進めることは可能である。

  • PayPay(株)の成長はどこまで続くのか。成長が鈍化してきた場合、どのようなシナジーを生み出し、拡大させたいと考えているか。

    PayPay(株)は決済サービスのさらなる成長に加えて、金融サービスとの連携により、大いに伸び代がある。まだまだ「鈍化」という言葉が出てくるには早いと考えている。

  • AI計算基盤に約1,500億円(経済産業省による「クラウドプログラム」の認定に伴う助成 最大421億円考慮前)を投資するとのことだが、具体的な資金使途は。

    基本的には、「NVIDIA H100 Tensorコア GPU」「NVIDIA B200 Tensorコア GPU」へのハードウエア投資である。AI計算基盤構築に係る人件費は含んでいない。

  • AI計算基盤への投資が次期中期経営計画の柱になるとの説明だったが、ソフトバンク(株)は営業利益で1兆円規模を創出する会社なので、もっと投資しなければ柱にならないのではないか。

    AI計算基盤の貸し出しというIaaS(Infrastructure as a Service)の領域だけで成長を目指すのであればもっと設備投資を増額しなければならないが、我々が目指しているのは主にPaaS(Platform as a Service)の領域での成長である。これはつまり、1兆パラメーターまで持ち上げた日本語ベースの大規模言語モデルを、ソリューションやアプリケーションとして提供するビジネスである。1兆パラメーターまで持ち上げるためには、この設備投資額で足りるであろうと試算している。PaaS領域での成長には、設備投資の多寡よりも、エンジニアの数や専門知識が十分にあるかどうかが重要になってくると考えている。

  • 5G投資が一段落し、生成AIへの投資に移行している印象がある。中長期の設備投資の方針は。

    「AI-RAN」で通信と生成AIに用いる設備が共用化される時代が来ることを見据えて、中長期的な目線で積極的に研究開発を進めている。アンテナ設備や基地局などで構成される無線アクセスネットワーク(RAN)にAIが搭載されるようになると、RANの高度な運用にAIを用いるだけでなく、空いたリソースを生成AIの処理に動的に割り当てられるようになると考えている。今は過渡期なので別々の投資に見えるかもしれないが、将来的には5G/6Gへの設備投資と生成AIへの設備投資は共通の投資になる部分が増えると理解してもらいたい。

  • 日銀がマイナス金利政策を解除し、金利を上げていく方針であると言われているが、ソフトバンク(株)の資金調達に影響はあるか。

    短期的には大きな影響はないと考えている。金利上昇を想定し、数年前から借り入れを長期に切り替え、備えてきた。現状、約9割が長期の借り入れである。

  • 偽造マイナンバーカードを身分証として使い、スマートフォンのSIMカードを騙し取る問題が発生したが、どのような対策を取るのか。

    携帯ショップの店頭では、マイナンバーカードの原本確認と本人確認の二重チェックのプロセスで運用している。しかし、一部店舗でその運用が不十分なケースがあった。大変申し訳なく思っている。二重チェックの再徹底を指示するとともに、システム対応を決めたので順次導入を進めていく方針だ。